牽牛星のよろず日記

自分の興味あることを思うがまま記述したいと思います。

マフラーを巻きし男の決闘(シン・仮面ライダー評論)

1971年4月~1973年2月までテレビ朝日で放送されていた仮面ライダー。現在に至るまで多くのファンを生み出し、そのフォロワーにより様々な仮面ライダーが作られてきた。

 

仮面ライダー生誕50周年企画として、何度目かのリブートが計画。監督に選ばれたのは、脱構築映像作家である庵野秀明であった。

 

弊ブログでも何度も触れている通り、庵野秀明は過去アーカイブからの引用とオマージュによって現代的な解釈を与えるデコンストラクションスペシャリストであり、本企画における最適者であることは異論のない事実だ。

 

シン・テトラロジーの最終作となる今作。庵野はいったいどんな脱構築作品を世に放ったのか、キャッチコピーは

 

『変わるモノ。変わらないモノ。そして、変えたくないモノ。』

 

庵野は何を変え、何を変えなかったのか。そこに注目し論を展開する。

 

 

第1章 筋

 

本作は緑川ルリ子役浜辺美波の発言通り4部構成となっており、4部それぞれに台本が用意されていたそうだ。なので4部に分け補足も適宜挟む。補足は()を付けている。

 

1-1 VSクモオーグ

本郷猛(以下で本郷と呼称)はサイクロン号と呼ばれるバイクに緑川ルリ子(以下ではルリ子と呼称)を乗せていた。その後ろから人外融合型オーグメントであるクモオーグとその部下が迫り、ルリ子は捕縛。裏切り者は許さないが生け取りにせよとの命令を受けているのでお仕置きだけにするとクモオーグがルリ子に手を下そうとした刹那にバッタオーグに変身した本郷はクモオーグの部下を次々に撲殺しルリ子を抱えて山中のセーフハウスに逃げ込むことに成功。

 

本郷の力に驚いたクモオーグ、しかしクモオーグ以上に本郷自身が自身の腕力と身体能力の増強と暴力性に驚き、自身の肉体が人外の様相を呈していること、そして血で染まった自身の手を見て、大量殺戮を働いた自身に恐怖していた。その時セーフハウス内で緑川弘博士がルリ子の紹介と共に、本郷の肉体に昆虫合成型オーグメンテーションプロジェクトとして改造実験を行ったことを告白し、自身の組織を親子で裏切り、組織壊滅作戦への協力を依頼。ルリ子は本郷の首に赤いマフラーを巻く

 

『君は組織の開発した昆虫合成型オーグメンテーションプロジェクトの最高傑作だ。体内とエナジーコンバータに残存しているプラーナを強制排除すれば人の姿に戻るプラーナは君の生命力そのものを直接支えていく。君を超人に変えたのも圧縮されたプラーナの力だ。君の身体に施されたプラーナの吸収増幅システムがその源。防護服の胸部コンバーターラング、そしてベルトとマスクに連動している。』

 

緑川博士の説明を聞き理解する本郷(原作でもTV版でも本郷は頭脳明晰で運動神経抜群の出来杉君と大谷翔平を足して2で割らないみたいな造形。しかし大抵は訳の分からないキャラを登場させて質問を重ねることで観客と同じ視線を確保するのだが、そこは庵野流、ハイスピードで独自体系の説明がノンストップで繰り広げられる。)であった。

 

(早い話が、遺伝子工学実験によって人間に多種生命体の能力を付加したキメラみたいな能力を与えるのがオーグメント実験で、その実験で鍵を握るのがプラーナという物質、それは魂のようなもの、その力を増幅させることで肉体の強靭化を達成すると同時に、その強大な力をマスクやベルトスーツといった人工物でコントロールしようという感じ。ここは強大な能力を持つ怪物を機械でコントロールし兵器化するエヴァと酷似。)

 

プラーナの力を用いて人類に害を成そうとしていることから緑川博士は裏切りを決意し、本郷をバッタ人間にすることで目には目を、オーグにはオーグをということで一緒に戦ってほしいと言われる刹那にクモオーグの急襲を受け、目の前で緑川博士を殺害、ルリ子も連れ去られてしまう。本郷は博士の説明の中でプラーナの放出を実演しており能力を一時的に失っていた。そして本郷ごとセーフハウスは爆破される。

 

博士の最後の言葉『ルリ子を頼む』を受け、本郷はサイクロン号に乗り加速すると風を胸部のコンバータラングが受けて風力をプラーナに変換。そして本郷はバッタオーグに変身。そしてクモオーグと格闘し、その中で自身をバッタオーグではなく、仮面ライダーだと自称する。そしてライダーキックによってクモオーグを殺害。しかし殺害すると泡の塊のようになって跡形もなく消え去ってしまった。肉体を残すと組織の情報が知られるためこういう死に方をするらしいとルリ子は語る。

 

父を守れなかったことを詫びる本郷。しかしルリ子は悲しむ表情は見せず淡々と現実を受け入れる。そして2人の”タンデム”は続いていく。(TV版ではクモオーグ戦ではルリ子が本郷こそ父を殺害した本人だと誤解する場面と、それを解消していく過程があるのだが、それをやってるとダラダラするので、いっそルリ子が悲しまない設定を組み込むあたりさすが庵野と手を叩いたものだ。そして何故悲しまないのかも合理性の取れた設定を準備していることを後に我々は知る。)

 

1-2 VSコウモリオーグ

クモオーグ戦の後に、ルリ子は密かに準備していたセーフハウスへ本郷を案内し、私は用意周到なのと言いながら部屋に入ると、そこには政府の男と情報機関の男がいた。そしてそこで緑川博士とルリ子がいた組織の事実が明かされる。

 

Sustainable Happiness Organization

with Computational Knowledge Embedded Remodeling

持続可能な幸福を目的とする愛の秘密結社

 

の頭文字をとり、SHOCKER(以下ショッカーと呼称)と呼ばれるその組織は政府の摘発対象となっていた。その活動に本郷とルリ子に参加して欲しいと持ち掛ける。そのオファーを受け、反ショッカー同盟が結成され、戦いは再び幕を開ける。

 

ショッカーは創設者によって人工知能に人類の幸福を達成するための計画の立案を演算させた結果、最大多数の最大幸福ではなく、最も深い絶望を抱えた人間を救済する行動モデルを実行することに価値があると判断。その目的の達成のために作られたのがショッカー。

 

次なる敵はコウモリオーグ。戦いを逡巡する本郷に任せておけないと単身コウモリオーグの研究室を襲う。しかしコウモリオーグはヴィルースと呼ばれる独自開発された成分を用いてルリ子を服従させる。(TV版ではビールスと表現されていたのでウイルスの独特な言い換えというオマージュか?)

 

戦う決意を固めて乗り込んで来る本郷。その前に大勢の人々がコウモリオーグの拠点で立っていた。そしてコウモリオーグが合図をするとその人々は次々に死んでいった。ルリ子を殺されたくなければ服従せよと命令するコウモリオーグ。しかし本郷には全く効果がなく、またルリ子も服従したふりをしていただけだった。

 

コウモリオーグは敗北を悟り逃走。バッタオーグの跳躍可能高度を超えた高度を維持するもサイクロン号の噴射角度を調整し空中飛行を可能にした本郷の前には無力と化しあえなくライダーキックで踏み潰され絶命し消失する。

 

血で染まった右足を眺めながらも戦いは続く。

 

ライダーにばかり任せておけないと、治安機関も躍動する。サソリオーグを発見し猛毒性化学兵器に苦しみながらも本郷たちの力を借りずに制圧。ルリ子は化学兵器には流石の仮面ライダーも苦労するだろうから助かったと安堵していたが、とある副産物がその後の彼らに悲しい結末をもたらすことになる。

 

1-3 VSハチオーグ

次なる敵ハチオーグは効率的な奴隷制度による統制された世界システムの再構築と実現を目指すべくテストモデルとして選んだ街を支配していた。ルリ子と本郷は本拠地に向かう道中でルリ子から本郷に『サーバーを見つけて欲しい、あなたの方が感覚が鋭いから』と依頼、アジトに乗り込むと、ハチオーグは自身の理想を叶えるためにも帰ってきて欲しいとルリ子をルリルリと呼び穏便に勧誘する。

 

操られた人々を巻き込むことはしたくないために戦略的撤退を選択する本郷とルリ子。ヒロミと名前でハチオーグを呼ぶほどの関係性であったことから投降を呼び掛けるべく作戦を練りながら野宿をする本郷とルリ子。そこでルリ子は自身は人間ではなく人工子宮によって生み出された生体電産機と告白する(綾波レイ的な立ち位置で何ともエヴァ庵野らしいデザイン)。

 

打ち込まれたデータをインストールしながら本郷にプラーナと研究について話し始めるルリ子。緑川博士の開発したプラーナシステムは大気中に圧縮された他生命のプラーナを自らの生体エネルギーに変換する装置であり捕食なしに生命維持が可能。しかし全人類がプラーナシステムを装備すると結果としてプラーナの奪い合いになることから緑川博士は組織を抜けることにしたと説明した(そんなことは考案段階で気づいてないとおかしいので、ここら辺に脚本の怪しさは漂っている)。

 

本郷は作戦を提案し、ルリ子は了承。再びハチオーグのアジトへ向かう。ハチオーグは部下のプラーナを奪うことで人間から変身。ルリ子が対峙した刹那に、本郷によるサーバ破壊が成功。これで服従していた無垢の民は解放。心置きなく戦うことができるようになった。日本刀を用いて本郷と戦うハチオーグだったがあえなく敗北。投降を呼びかけられる中で、協力者の1人は銃弾をハチオーグに見舞う。

 

銃弾など効くはずがない、そんな余裕を見せるハチオーグとは裏腹に被弾した左肩からは流血。ルリ子は気づく。『サソリオーグの毒を利用した銃弾?』ハチオーグは人間の放った銃弾の前に絶命するのであった。

 

順調にオーグを壊滅させていく一同。しかしルリ子にはある確信があった。ショッカーの暫定的リーダーにして自身の兄である緑川イチローがチョウオーグとしての完全体に進化したと。治安当局がチョウオーグを急襲するも、後に応援が入った頃にはチョウオーグは姿を消し、残されていたのは笑みを浮かべた外傷のない無数の遺体であった。

 

イチローはプラーナを奪い殺害に至っていた。いわば魂の殺人であり、そのことをハビタット空間に送ると表現する。イチローの狙いは全人類の魂の殺人計画であるハビタットシステムの完成にあった。そのためにはルリ子のデータを読み込む必要がある。だからこそ生け取りにこだわっていたのだ(ただこれは家族への執着という部分が大きかったと思われるが)。

 

こうしてラスボスであるイチローとの戦いが幕を開ける。

 

1-4 VSチョウオーグ

 

イチローのアジトにやってきた本郷とルリ子。イチローの凄まじいプラーナの前にルリ子は意識を失ってしまう。さらにイチローはルリ子を置いていけば手を出さないと本郷に約束するも、当然ながら本郷は拒否。最終決戦が始まるかと思いきや新たな刺客を放ち、任せると言い残して消え去った。第2バットオーグである一文字隼人である。

 

風がなくとも変身出来る一文字に苦戦する本郷。その間に意識を取り戻したルリ子は十文字の脳洗脳を解くプログラムを構成し始める。一文字によって右足を骨折させられ戦闘不能になり終わりかと思ったその時(この右足負傷というのもTV版での1号役の藤岡弘が右足を骨折して2号を登場させることになったことへのオマージュ)、ルリ子が完成させたプログラムを十文字にインストールし脳洗脳の解除に成功。

 

『あなたもライダーになって彼を助けて』そう言いながら赤いマフラーを巻く。ここに仮面ライダー2号が誕生した。

 

しかし、死角から出現したカマキリ・カメレオンオーグ、通称KKオーグによってルリ子は腹部に刃物を突き刺さされその場に倒れ込む。寝返ったルリ子を処断しようとしたKKオーグは新たな裏切り者である一文字に殺されるという皮肉な結末を迎えるも、ルリ子はマフラーが似合っていて良かった。と言い残しライダーマスクに残された遺言の存在を告げて絶命(TV版でもルリ子は突然留学とかでいなくなってしまうので、突如いなくなるという表現をしたかったのかも)。

 

遺言を聞いて感涙する本郷。ルリ子のために人類を救うことを固く誓う。

 

一文字はジャーナリストという立場上権力側の人間との共同タッグに難色を示すもルリ子を死に追いやる一因になったことへの自責の念と、そのことを自身の無力さゆえと捉えてイチローに立ち向かおうとする本郷の姿を見て加勢を決意する。

 

イチローのアジトへ向かう本郷。その前に大量発生型変異バッタオーグメント11体が襲いかかる(実はこれは原作の石ノ森章太郎漫画版の展開であり、13人のライダーという話で、本郷を除く12人の偽仮面ライダーが襲ってくる。そのうちの1人が一文字であり、最終的に本郷は死亡、しかし激戦の中で一文字の脳洗脳は解け、その罪滅ぼしとして本郷の意思を残したライダーマスクを被り仮面ライダー2号として生きるという流れ)。

 

絶体絶命の中、一文字の加勢により撃退に成功、イチロー戦へと向かう。イチローは完全体への変異しており、ベルトを巻いて青いマフラーを巻き付け自身を仮面ライダー0号と自称。サーバーを隙を見て破壊し弱体化させたはずの0号の前に全く歯がたたないダブルライダー。しかし一文字が何とかイチローの仮面を破壊することに成功、そして本郷は自身のマスクをイチローに被せルリ子のプラーナを通じて魂と会話する。

 

母親を無差別殺人で殺されたイチローと父親を無慈悲に殺された本郷、他者を信じることを苦手とする両名が相交え、そしてイチローは消滅を選択、自身をハビタット世界に送ることを決める。また本郷もプラーナを使い果たしていた。『ルリ子が信じた人間を信じることにする』と言い残したイチロー、『あとは頼んだ』と言い残した本郷。両者は悲しみの記憶を受け入れ、絶命し消失するのであった。

 

『なんだよまた1人かよ、』そう一文字は呟く。イチローと本郷の相討ちに終わった決戦の後、組織の男と情報機関の男から本郷のプラーナを入れたライダーマスクを渡され、意志を継いでくれないかと依頼される。名前を名乗れないような人間とは手を組めないなと軽口を飛ばす一文字。

 

そんな一文字に、立花、滝とそれぞれ名乗る(これはTV版で本郷をサポートしていた、おやっさんこと立花藤兵衛とFBI捜査官の滝和也からの引用、ただ立花瀧という君の名は。の主人公の名前を出すことで、自身の後継者として新海誠を指名したということも含めているのかもしれない、考えすぎか)。そしてコブラオーグの対処を依頼。一文字は受け入れ、本郷のプラーナが入ったライダーマスクを被りサイクロン号にまたがる。

 

『風を感じたい、サイクロンを加速してくれ』という本郷の声が聞こえる一文字。

 

サイクロンを加速させて一文字は呟く。

 

『俺たちはもう1人じゃない、ずっと2人だ。』

 

背中にはBATTA-AG 02+01 

 

一心同体ダブルライダーをのせたサイクロン号が加速し続け、物語は幕を閉じる。

 

第2章 イシュー

2-1 良かった部分

 

本作は52年前の『仮面ライダー』を構成していた東映生田スタジオの作り出したテレビシリーズや劇場映画、石ノ森章太郎先生のテレビシリーズを補完すべく描かれた漫画等を分析・検証・変換・再構成することで新たな劇場映画として形にすることを目指しています。

 

これは監督・脚本を務めた庵野秀明の言葉である。

 

端的に言うと本作はこの言葉に集約されており、仮面ライダーの良かった部分はそのままにしながらも改善点を修正し、初代仮面ライダー2年分を120分に集約することを目指している作品である。

 

具体的に注力している点としては

 

①初代仮面ライダーの問題点の解消

②2時間映画への圧縮における課題の解消

 

①に関しては、ルリ子の突然のフェードアウトであったり、ラスボスとなる首領があっけなく倒されてしまった事といった部分への修正が挙げられる。

 

そもそも首領がショボい理由としては、ショッカー内部の人間関係の掘り下げが不十分なことに起因するのでネルフ、ゼーレ、巨災対、禍特隊、といった組織の中で繰り広げられる大人の政争を描いてきた庵野はやはりというかショッカーも同様のデザインに仕上げてきた。これによってTV版よりもラスボス戦は盛り上がりを作ることは出来た。

 

②に関しては、上述したルリ子のフェードアウトと同様、前作のシン・ウルトラマンの評論の時にも述べたが

lilin18thangel.hatenablog.com

 

そもそも何十話もあるシリーズものを2時間に圧縮しようとするとどうしても展開が急になったり、その何十話の積み上げによって成り立つ展開が無理筋になってしまう。なので自分もTV版における緑川博士の死亡を本郷が殺したと誤解したルリ子、その誤解を解くための奔走といった流れを落とし込む難しさを危惧していたが、完全に今回は短縮することに成功している。

 

そもそも緑川博士に対して愛情自体をさほど持っていないし誤解も生じないという設定にすることで大幅にテンポを上げ、クモオーグ、コウモリオーグの2戦を通じて仮面ライダーの設定の整理。理論武装の導入。ライダーとして出来ること/出来ないことの提示も出来ており、2幕までは完璧と言えよう。

 

そして本郷死亡に関しても自分はやるのでは、と踏んでいた。

 

            限界庵野ヲタクの素晴らしい予言

 

原作準拠をするのなら2号への継承は役者の怪我ということではなく、むしろ偽仮面ライダー集団に襲われ絶命し、本郷の意識を宿したマスクを一文字が継承することで仮面ライダー2号を生み出すのでは、と予想もしていた。

 

しかし、画的にはダブルライダーは見せたい。なので偽ライダー集団との戦いで死ぬのではなく、順番を調整することで原作における自己献身する本郷、TV版におけるダブルライダーによるショッカー破壊という両取りを狙い成功したと言える。

 

まとめると

 

ショッカーの力学体系の整理と首領の作り込み

TV版のダブルライダーの活躍

ルリ子の誤解解消物語をスキップしテンポアップ

漫画版の本郷の死亡と一文字への継承

 

これらを軸にした物語にすることで2時間で改造人間にされ人間に戻れない絶望と人間を救うために自身と同じ境遇の改造人間を殺す同族殺しの宿命を背負った悲しき男の献身の物語という最も重要な部分は表現されていたと結論づけられる。

 

2-2 課題

 

長所は短所と言うが本作はその通りで、マニアにしか伝わらない部分があまりにも多すぎて、明確なカタルシスポイントが少ないと言える。というのも確かに全体として見れば上手くいっているのであるが、ハッキリ言うと3幕以降はかなり無駄なポイントが多かったように思える。

 

端的に言うと3幕ハチオーグ戦は不要というのが自分の意見だ。

 

そもそも怪人は今回のような2時間圧縮ものであるなら、出すことに意味があるべきである。クモオーグ戦では戦いのスキルを学び、コウモリオーグ戦ではサイクロン号を利用したスキルが描かれる。ではハチオーグはどうか。サソリオーグの毒の件も含めてここは要らなかったし、第3幕ではバッタオーグの群れと戦うので良かったのではないだろうか。

 

そしてバッタオーグの群れの一文字によってルリ子が死ぬ展開にして、脳洗脳が解けた後に、その懺悔としてイチロー戦で苦戦する本郷の元に現れて加勢。そして本郷は前作のウルトラマン同様に、自分の命を捨てる覚悟でイチローに攻撃を仕掛け同士討ちという形の方が自然に見える。

 

というのも今作、ルリ子誤解パートをスキップした割には無駄な怪人や無駄なシーンがあまりにも多すぎるのだ。

 

そしてTV版のリスペクトをするあまり当時の殺陣レベルであったり倒し方がTV版まんまで、また当時の質感に近づけた結果、現代の映像レベルとしては作り物感が強くなり、そこに加えて複数台のカメラによる強烈なカット割によって、アクションがどうしてもしょぼく見えてしまうのは事実

 

そして、CGの粗悪さであるが、これも自分はやってくると確信はしていた。というのもシンエヴァにおいて庵野自身があえて作り物らしい演出をすることで、これはあくまでも虚構にすぎないと表現し、虚構と現実に明確な線引きを与えるために、わざと意図的に作り物のような粗悪さを出すのは庵野のシンシリーズではお馴染みだからである。

 

血も涙もないことを言うと仮面ライダーはストーリー云々よりもとにかく何か分からんけどアクションが凄いというモメンタムで解決してきてる部分があるので、画像の質が低くなり無数のカット割で構図が分かりづらくなり何が起こっているのかが分かりづらくなり、その結果、それを言葉で説明してしまっているので、映画的でないのだ。

 

今回のシン・仮面ライダーにおいては庵野の思い入れとルーティンワーク嫌いゆえの偶発性の産物としての画像にこだわるあまり、結果としてであるが

 

映像として景色以外に見るべきものが極端に少ない作品になってしまっている。

 

こだわりを詰め込んだ結果、純粋映像作品としての出来が残念なものになってしまったのはおそらくだが映画評論家からは酷評されるに違いない。

 

ただ、これらがそもそもの予算の問題でやりたいことが出来ないので、ならいっそ粗悪な虚構性を露呈させる方面に振り切ってしまった結果、言葉で説明を加え続ける必要が出てしまったのかもしれない。

 

2-3 シンシリーズ総論

 

良かった部分と悪かった部分をそれぞれ見てきたが、庵野秀明仮面ライダーを心底好きなのは本当に伝わった。しかし低予算と独特の撮影手法とこだわりが裏目に出ている部分が少なくなく、多くの賛否両論を生む出来になってしまった。贅沢な二次創作の域を出ていないという痛烈な批判も与えられよう。

 

前作の庵野秀明インタビューでもあったように、おそらく実写作品としては今回が年齢的にも体力的にも最後になるのではないかと考えられるわけで、残酷な結論であるが敢えて語るが

 

結局、シン・ゴジラが凄すぎたんだなと。

 

そしてゴジラエヴァウルトラマン仮面ライダーという4コンテンツで一番庵野秀明熱量がなかったのがゴジラ、というのも示唆的で、思い入れがあるものはさほど面白くならず空回り感が否めないのだ。

 

そしてシン・ゴジラには3.11というユニバーサルがあったことも否めない。こういうユニバーサルがないと庵野作品は全て注釈を付けないと楽しめないヲタクの2次創作になってしまうという抜本的な問題が浮かび上がってしまったと言える。

 

今回も、マスク、感染症といった部分においては時事ネタを放り込むことは出来たように思える。サスティナブルにもそこまで触れられておらず、どうしてもユニバーサルがなかったように思える。

 

90年代の混沌模様を落とし込んだエヴァ

3.11を落とし込んだゴジラ

 

こうしたユニバーサルな出来事と、それを落とし込むことが出来るかどうか。この部分にシン・シリーズが成功するか否かのポイントがあるのだろう。

 

次回作があるなら、提案ではあるがパンデミックをテーマにした作品の方が良いのではないだろうか。具体的な名前を挙げるなら貞子である。

 

何を言い出したか、と言われそうだが実は貞子とは遠隔感染するリングウイルスという疾病を広げてしまうというもので実に現代的テーマと合致するのだ。しかも庵野はホラーにはそこまで興味もなさそうなので一定の距離感も取れて、シン・ゴジラ超えの可能性もありそうなのだが。

 

シン・リング

 

いつか見れると良いのだが笑。

 

最後に

 

自分は脱構築マニアである。庵野、ペップ、秋元をずっと追いかけてきたし彼らのプロダクトをずっと研究してきた。彼らの代表的なプロダクトとしてはシン・ゴジラ、ペップバルサ欅坂46が列挙される。

 

そしてそれらには奇跡的な出会いがあった。

 

ペップがメッシに出会ったからペップバルサが生まれた

秋元康平手友梨奈に出会ったから欅坂46が生まれた

庵野が3.11を経験したからシン・ゴジラが生まれた

 

このように僕の追いかける脱構築系作家は皆、奇跡的なユニバーサルと出会った時に素晴らしいプロダクトを生み出す

 

そしてそれは絶望的な事実も浮き彫りにする。

 

奇跡は2度も起こらない。

 

このクラスの出会いが起こらない以上、いくら彼らを追いかけてもである。

 

ペップはペップバルサ劣化版のチームしか生み出せず

秋元康欅坂46劣化版のアイドルグループしか生み出せず

庵野秀明シン・ゴジラの劣化版の実写映画しか生み出せな

 

そんな未来しか訪れないのだろう。

 

辛いという字は幸という字と一本線があるかないかの違いでしかない。

 

ユニバーサルと出会えるか否か、それはそんな紙一重の事象でしかないのかも知れないが、どうしても自分は最高傑作が更新されると信じて見てしまうのだ。

 

だからこそ、ペップも秋元も庵野も、いつか最大値を更新するプロダクトを作り世に放つと自分は期待し応援したいと思う。

 

紙一重の奇跡を信じてしまう。

 

なぜなら。。。

 

牽牛星脱構築マニアである。


牽牛星を改造した脱構築作品は紙一重の奇跡である。


奇跡をもう一度観測するため、

 

牽牛星は悲壮な諦念と戦うのだ。

 

 

どうするペップ(22/23前期ペップシティ選手名鑑風)

中東での季節外れのムンディアルの熱狂は極東の我々も直に感じることが出来、寝不足になりながらも多くのフットボール愛好家にとってクラブシーンを少し忘れる事の出来る貴重なブレイク期間となった事だろう。

 

今回は今季22/23シーズンのペップシティについて丁度良い機会なのでつらつらと話すことにする。普段マンチェスターシティを熱心に追っていない方にとって現状のマンチェスターシティに関して、定点観測者である自分の文章が理解を補助するものとなれば幸いである。

 

ペップ政権始まって最もミニマムになったスカッド。その構成員を紹介しながら今季のペップシティのイシューを書き連ねることにする。

 

            (fig0) 新監督による布陣の説明

 

 

 

 

2 ウォーカー

[http://Embed from Getty Images :title]

NPBの花形ポジション、遊撃手は類稀なる運動神経と第2の捕手のような司令塔的立ち回りに加え多くの負荷を要する。そんなショートでスターとなった野村謙二郎宮本慎也鳥谷敬は30代中盤になると加齢が隠せずコンバートする形で”延命”を図り2000本安打を達成し球史に名を刻んだ。

 

サッカー界で似た挙動を見ることが出来るポジションがSBである。文字通りサイドのバックすなわちピッチ外側後方を根城とする選手を指すが、現代のSBにそんな選手はいない。60年代のアズーリファケッティが進撃する前方遷移SBの描像を示し、80年代のセレソンのラテラルだったジュニオールがMF転移性を見せた。その結果SBとは名ばかりで、まさに”遊撃手”とも言うべき重労働を担う多様性溢れるポジションとなっている。

 

2010年代の英国を代表するSBの1人がカイル・ウォーカーだろう。トッテナムのRBとして印象的な活躍をした後に17/18シーズンから同国のコンテンダークラブのペップシティへ移籍し現在に至るまで確固たる評価を確立した名SBである。

 

TOT時代にレンタル生活を終えスタメンに定着した11/12シーズンからの6年を見よう。

 

11/12(21才)  3231min(リーグ) 4029min(全体)

12/13(22才) 3161min(リーグ) 4290min(全体)

13/14(23才) 2298min(リーグ)  2961min(全体)

14/15(24才) 1307min(リーグ) 1758min(全体)

15/16(25才) 2943min(リーグ)   3123min(全体)

16/17(26才) 2704min(リーグ) 3176min(全体)

 

この6年間でリーグで見ると3000min出場と言う鉄人ラインを2度超え13-15の2年間は体調が優れなかったが、概ねイニングイートに問題はないように見える。そしてプレースタイルに関してだが

      (fig1)ウォーカーのヒートマップ 左15/16右16/17

 

上図のfig1を見て分かる通り右端のライン側をアップダウンしていることがよく分かる。そして27才という年齢と2年の停滞を経た経験から、彼はコンバートを決意する。しかし配置を変えることはなく、内実的な意味でのコンバートだった。

 

       (fig2)ウォーカーのヒートマップ 左17/18右18/19

 

     (fig3)ウォーカーのヒートマップ 左19/20右20/21

 

    (fig4)ウォーカーのヒートマップ 左21/22右22/23


スパーズ時代末期のfig1とシティ移籍後のfig2~fig4を見比べてもらうと分かる通り線形的に縦に広がっていた挙動は消え去りセンターサークルへ侵食しようかという程に横方向への挙動が顕著に現れている。

 

チャンスクリエイト数、ドリブル成功率 タックル成功率の順に眺めると

16/17(TOT) 39 35/65 51/72

17/18(MCI) 30 26/38 31/47

18/19(MCI) 24 18/40 26/40

19/20(MCI) 18 23/31 18/28

20/21(MCI)  8  24/41 19/29

 

TOT最終年からドリブル自体を挑まなくなっておりタックルの数も減り肉体的接触を減らし急加速するシーンが限定化されていることやチャンスクリエイトが減っているため、より後方での”脇役”での立ち位置が増えたと考えられる。アップダウンするSBからシティではSBという仮面をつけた事実上の3バックの右HVとなった

次にシティ時代の耐久面を見ていこう。

17/18(27才)  2787min(リーグ)  3782min(全体)

18/19(28才) 2777min(リーグ)  4272min(全体)

19/20(29才) 2397min(リーグ)  3426min(全体)

20/21(30才)    1946min(リーグ)  3457min(全体)

21/22(31才)  1756min(リーグ)   2739min(全体)

 

現状では緩やかにではあるがイニングが食いづらくなってることは否めない。しかしながらこれでも頑張っている方と言えよう。18/19シーズンは全体では4000min超えを果たしており20/21シーズンまでは支配層RBとして素晴らしい活躍を見せていると言える。

 

チームとしてはウォーカーに対しては2年毎に課題を与えているように見える。

 

初期2年はRHVへのコンバートと縦方向の挙動の抑制と横方向への挙動の装備

 

次の2年はIHの補助も踏まえてカンセロロールのような前方への貢献も求め

 

直近2年は偽SBとRHVの兼任という到達点を求めている。

 

選手寿命を伸ばす意味でもペナ角とペナ角の間の縦の距離の中で横方向との連携で肉体への負荷を下げる。そしてTOT時代には報われなかったタイトルにも恵まれた。だがそこに加えて縦方向の挙動も求められ始めたことに加えて30歳の大台に乗ったことから20/21シーズンには衰えが隠せなくなってきている。

 

RBとしてのウォーカーはピークアウトした、と見て良い。

 

22/23(32才) 563min(リーグ) 653min(全体)

 

シーズン途中とは言え、今季の耐久力を見るに厳しいものを感じる。ラモスやアラバがCBにコンバートしていったようにウォーカーは残りのキャリアはCBとして本格コンバートさせるべきかもしれない。決戦時にはRBで出場し、主にCBで寿命を伸ばす。こういったことも提案できようかと思う。もう彼に残された余命は少ないかもしれないが。

 

3 ルベン

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今季で移籍3年目を迎える事実上の主将CBは過大評価との声が上がっている。正直それは仕方ないと思う。それはルベンディアスという選手にペップらしさを感じないからだ。というより普通に良いCBなのである。ペップチームの選手というと、当該ポジションの描像を大きく覆す挙動を見せる(そのことが評価を歪めもするのだが)。

 

統率力によって安定をもたらせる存在として、チームに加入しストーンズを復活させウォーカーも加えた後方はカンセロという”遊び”をチームに許容させた。風前の灯だったペップ政権の再建はこの男抜きにはあり得なかった。そういうストーリ抜きに1人のCBとして見た時、ルベンとはどんな選手なのか、今回はそういうアングルのお話である。

 

プレミアリーグという舞台で戦う支配層CB、と聞くとファンダイクが思い起こされる。ダイクも最近は色々言われているが実際どうなのだろうか。

 

シーズン 出場時間(リーグでの出場時間) タックル成功率

の順で見てみると

18/19 4555min(3385min) 28/38

19/20 4410min(3420min) 12/23

20/21 568min(371min)   2/3

21/22 4591min(3060min) 10/16

 

20/21は怪我でほとんど出られていないが、18/19と19/20をみると、そりゃ壊れるやろという恐ろしい出場時間であり、国内カップを捨てる戦略をクロップがとってこれなのでいかにLIVの最終防衛ラインにおいて必須の選手かがよく分かる。そして大怪我から帰ってきても当たり前のように4000min出場するという鬼ハードモード。

 

タックル数は年々減少傾向にあるものの、そもそものチームのコンセプトとしてチアゴを入れて引いた相手を崩す、という方向性に動き始めたことも起因しているのか、上のパラメタを見ている限りにおいてタックル数は減ってはいるものの、依然として支配層CBと言えるだろうし、そもそもLIVの選手はサラーもそうなのだが極めて頑丈なのである。

 

同様にルベンを見ていくと

 

20/21 4603min(2845min) 13/24

21/22 3262min(2403min) 19/26

 

20/21の大車輪の4000min超え出場、そして翌シーズンに怪我で離脱、そうですよね、普通人間は4000なんて無理ですよね笑。タックル数や成功率もダイクとそこまで差は開いておらず支配層と遜色ないなら十分優秀なのでは?というポジティブトランジションしてしまうのであるが。

 

ルベンはダイクを見る限り、全体では3000min中盤、リーグでは2000min中盤くらいに抑えないと壊れてしまうかもしれないので気をつけて運用してもらいたいところだ。

 

コンパニみたいに飛び出して潰すという偽9番許さないマンのような派手さはないもののシティに必要な絶対軸で、相方がフィジカル的に無理のきくタイプだとより輝く。こういうタイプだと単体で見た時はやはり物足りなさが映ってしまうのかもしれない。

 

4 フィリップス

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ここまでのハイライトは

 

           (fig5)仮面を被ってイキイキする背番号4

 

企画でチームメイトを恐怖ビジュアルで驚かせるという乃木坂工事中の堀未央奈ロール

 

       (fig6) 堀未央奈の全盛期

 

出てない選手にあれこれ言うのは難しい。かと言って当たり障りのない文章を書き並べるのもケタクソ悪いので、ここでは少し思い出話も含めて今後のペップシティについて書き続けることとしよう。

 

ペップバルサと言えばメッシにバイタルでボールを持たせて前を向かせるチーム。ペップバイエルンと言えばレバミュラにクロス爆撃を供給し続けるチームだった。では、ペップシティとはどんなチームなのだろうか?

 

それはロークロス爆撃集団である。それは初年度から今に至るまで徹底されている。そしてまともなLBがいない。それも初年度から徹底されている(どっかの性犯罪者のせいで)。つまりペップシティとは左後方のリスクを上回るほどのベネフィットをもたらせる最終生産過程の構築を目指したチームと言えよう。

 

バルサではバイタル、バイエルンではサイド、そこへひたすらにボールを運搬し続ける再現性の高さが売りのチームだった。シティでの供給先はハーフスペース。しかし、そこでプレーするデ・ブライネとシルバの得点力はアグエロには遠く及ばない。ではそこに得点能力のあるIHを置くとどうなるか、その答えが最終到達点に思える。

 

ロークロス爆撃の的アグエロ/ハーランドの後方に得点能力の高いIHとしてフォーデンとアルバレスを置く配置。これが初年度の青写真の具現体となるだろう。さらに、最終生産を少数で完遂させられるならば後方に人数を割いて問題ない。4年目の後方の強度不足から来る消極的4レーンアタックではない。前方は4枚、ハーランド、デブ神、フォーデン、アルバレスの4人で攻撃を完遂し、後方に6枚を割くことが可能となる。

 

ペップバイエルンのような後方の4+2、その2ボランチをフィリップスとロドリで構成するのではないかと予想する。そして最後方の4バックに攻撃はいらない。前だけで十分に攻撃が完了するのだから。そうなると4人のCBを並べる構成となるのではないか。ストーンズ、ルベン、アカンジ、アケの4人か。将来的にはアケのところにグヴァルディオルを招く可能性もあるだろうが。

 

何にせよ、LBの穴を塞げる攻撃ユニットの構築とLBのレベルの向上の2つがペップシティの長期的な目標となってきた。端的に言うならば

 

格下虐殺特化型のスターリングに依存しない最終生産過程の確立

守備では穴にしかならないカンセロに依存しないLBの獲得

 

前者がクリアされかけている今季、後者に手をかけて完成形を作り出す。その猶予は幸か不幸か2年延長された。サイクル3のハーランド時代の集大成を24/25シーズンに完成させるのか、それとも今季に一気に完成させるつもりなのか。

 

昨季から始まった4レーン攻撃、SB両ボランチ化の2323、今季に見せ始めている間延びからの少数精鋭生産体制、今季は未だに手筋を見せ切っていないところもあるのだが、そのためにもフィリップスの復帰に期待したい。

 

 

5 ストーンズ

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健康なら屈指の支配層CBの1人であり、無理のきくフィジカルとルベンとの相性、何より国産コアとして最高のCBである。しかし、引退するまでずっと”健康なら”という接頭語がついて回るだろうことも事実であり、代表が絡むと耐久力は限界に達するのか、高確率で離脱を繰り返してしまう。

 

昨季にはRBに挑戦し幅を広げたり、かつては中盤でもプレーしておりUTの人というのも言い過ぎではないのかなと思うが、やはり課題は耐久力と言えよう。

 

総出場時間(リーグ出場時間)を表記すると

16/17 3170min(2013min)

17/18 2205min(1305min)

2018W杯 586min

18/19 2821min(1762min)

ネーションズ18/19 360min

19/20 1555min(1119min)

2020EURO 619min

20/21 2863min(1934min)

21/22 2249min(1118min)

2022W杯 437min

 

今季はシーズン途中のW杯という前例のないシーズンであるとはいえ、もう、どっかで絶対数ヶ月は離脱するなぁという諦念が胸に去来する次第である。

 

大型契約でコアとして扱う前提で囲ってしまったいるのだが、出来ればUTとしてベンチに置きながら大一番ではスタメンCBとしてルベンと共に栄光に導いてもらいたいところで、RBでの起用も負担は軽くはないはずなのでアカンジが来てくれたのはとても大きいはずだ。

 

今季はリーグで2500min程度のイニングイートで大一番では先発させ、使う時には先発投手のようにインタバールを設定するといった配慮は必要。上手く運用出来ると本当に素晴らしい選手なのだが。。

 

6 アケ

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明確な新規性を見せない(敢えてか?)今季において鍵を握る重要人物の1人がアケだと個人的には考える。LBとLCBの両方でプレー出来るUT性と対人守備は使いどろこさえ間違えなければシティの残りシーズンでの武器となれるはずだ。

 

昨季にジェズスが、もしシティに純正9番がいたら、という仮想実験を可能にしたように、守備型LBがシティにいたらという仮想実験をもたらすかもしれない。

 

3バックのLHVもこなせるため、やはりオフはラポルテを放出してグヴァルディオルを取れたら最高ではある。ベンチに置いとければ良いのだが、昨季は出ていきかけたのでどうなるかは不透明である。シティの中でサラーとのデュエルに勝てるのは大きいし、タイプ的にはグヴァとアケは似てはいるのでアケを出してラポ残しになるチーム判断もあるか。

 

勝負所のLBで守備で貢献しながら、格下相手の時はCBの保険として機能してもらえるとありがたいのだが、耐久面も実はひっそりと良くないので、そこらへん考えるとマフレズと同様に勝負所に力をためておいてもらえるとありがたい。

 

メンディさんも今季で契約も切れますし、そういう意味でも、あの悲劇を塗り替えるためにもグヴァルディオルに全力で投資して欲しいですね。

 

7 カンセロ

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守備能力の向上を望むのにも疲れた、というのが正直なとこであり個人的にも以前の文章の中で目指すのは守備力を身につけた攻撃的ラテラルではなく、攻撃全振りのベイルでは?と書いたこともあるが、今でもそう思っている。

 

ブスが一生懸命に痩せても、痩せたブスにしかならないのだから。短所の是正よりも長所を伸ばした方が良いのだ。しかしカンセロの1番の問題は守備力というよりも得点能力の低さに思えてならないのだ。これが年間でWGで出場しようもんなら二桁ゴールくらいを上げてくれるなら(どんなSBやねんと思うが笑)、それこそ10/11ベイルのような成績を残してくれるなら十分にアドも取れる上にフォーデンをIHに回せるので最高なのだが、そうは上手くいかない。

 

というかよく考えると、なぜカンセロはLBにいるのか。

 

WGで使うには突破力もなく、SBで使うには守備力が足りない。だいたいこういう中途半端な選手はWBに回すのが通例なのだが、5バックを採用しないチームでは置き場所がないものだがそれでもリスク覚悟で使う。シティのカンセロだと5レーン攻撃の停滞を補助する6人目として、そしてデブ神不在時に後方からファンタジアで崩しを担う目的でベネフィットを産む。

 

IHの絶対軸の不在をIHに代役を置くのではなく、SBにトリッキーファンタジスタを使うことで補おうとする、よく考えると異常な光景ではある。LIVにおけるTAAも似たようなものだ。IHにIH性がないからこそ、IHの要素をSBから注入する。

 

ただ直近2年を見てもトップレベルで使うにはリスクの方が勝つのは事実で、その意味でも将来的にはRBもLBも出来るUT選手としてベンチにいてもらう方が助かる

 

似たようなことを以前も背番号7の選手に言っていた気がするが、これは偶然なのか?

 

愚痴はこの辺にしてペップシティとSBについて話すとしよう。

 

ペップが到来した16/17にSBとして競争力をもたらせる選手はおらず翌季には”フルーツバスケット”となり、ウォーカー、メンディ、ダニーロが獲得された。メンディが想定を上回る耐久力の低さから起用が困難なのとクロス爆撃の重要な同足LWGサネを活かすためにLBに求められたのは偽SB型であり、多くの時間を攻撃に割くシティにとってはMFをSBに置いておいても何の問題もない、というよりボランチ状態の方が多いのだからむしろMFの方が良い。

 

そして、ここから今に至るLBにはMFをRBにはCBを、という要請からペップシティにおいての両ラテラルはRBはウォーカー、LBはデルフと2代目デルフのジンチェンコが起用された。攻撃時は32型へ変容する布陣で英国を制圧するも、同格以上になるとLBの守備能力の低さが露呈し欧州覇権は遠かった。

 

そしてアグエロがピークアウトし、スターリングとジェズスの最終生産者王位問題が浮上するも両名ともに不適格で同人数の5バック相手には仮想5トップは空転し続ける。その解消としてカンセロという飛び道具が用いられ、格下殺しのカンセロ/格上耐久用ジンチェンコで5年目は大耳にあと一歩だったがジンチェンコでは限界だった。

 

そして昨季はカンセロをリスク覚悟でLBで使い、やはりマドリーに狙われ続けまたも大耳を逃すこととなった。最終生産能力が低く左サイドに弱みを抱えるというウィークポイントをカバーするために毎年毎年SBだけは異常な開発の憂き目に遭ってもいるわけだが、

 

RHV、LBのMF化、二段階変異の要請、と欠落を埋める狂気のカタルーニャおじさんグアルディオラの最新作は今季開幕戦で現れた。SBのIH裏のカバーによる鬼ネガトラ大作戦である。今季のシティは2323に再挑戦する可能性は高いが、ネガトラで前で潰すのであれば、そこを抜かれた際の保険として後方の守備力をどう担保するのか、来季以降の構想も考えてのことなのかSBの過重労働は続きそうである。

 

しかし前述したウォーカーの限界問題を考えると4231に最終的には帰着しそうな気がするのである。散々色々なことをSBに求めた挙句結局のところアップダウンするSBの描像が相手にとっては新鮮に映るのも事実だろうし、今季の残りはSBへの要請の度合いに注目したい。

 

8 ギュン

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主力であるデブ神とベルナルドの控えとして潰しのきくスタイルと差別化出来る武器を持ちベンチに座っても文句を言わないMFとしては文句のない、かつてはペップの愛人と批判されてもいたが、出過ぎずペップの意図を理解した立ち振る舞いで家庭(チーム)の輪を乱さないという意味で愛人さながらのムーブをかます残り契約1年の男は今季も変わらず働いている。

 

残り契約1年という事だが、おそらく残留するのではないかと見ている。指導者としてのキャリアに興味がありそうだし、そういう意味でもシティグループにいた方が何かと得るものは大きいはずだ。シティで数年プレーした後はシティグループ傘下のチームで余生を過ごし、そこでコーチ業をスタートさせる、というのが理想に思える。

 

とまぁ、ギュンについてはこの辺にして少しW杯の話でもしようかなと思うのですが、まさかのドイツが日本に敗戦。やはり最終生産者なきポジショナル型は一発勝負に脆いなぁと感じますし、日本と共に勝ち上がったスペインも攻め手を欠いてしまいPKで敗北。

 

PKは運なんかじゃないんだ、だって俺たちは選手にPK1000本蹴る練習をするようにって言ってるからな、というルイスエンリケの完璧なフリからのPK敗北。

 

ただ、個人的には一発勝負はいずれこうなるだろうとは思う。というのもゲームをハックする戦術やスキームが容易に見透かされて攻略され模倣されてしまう昨今、もはや戦術的な優位性を獲得するのは難しく高速後出しジャンケンが延々と繰り返されてしまうので、得点がミス絡みでないと生まれず結果として

 

流れからの得失点は消えてしまう

 

という未来。セットプレーでしか試合が決さないという領域はいつかやってくるのではないか、逆に言えば、それを見越してセットプレーにおける優位性の獲得が次のトレンドになるのかなぁ、そんな事を感じるわけですが、ギュンを下げたフリックの判断は悪手でしたねぇ。最終生産の困難さと支配力のトレードオフを解決するためにフリックがどういうチームを次は作ってくるのか。

 

補強が出来ないナショナルレベルでのペップチームの危険性はこの辺にあって、だからこそペップはクラブレベルでしか無理なのではないのか、と思えてならない。最終生産の理不尽性によってトレードオフを解決する以外の手段は持っていないので、2年の延長は、ある意味では正解なのかもしれない。。

 

 

9 ハーランド

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驚き以外の何者でもなかった。まずシティに到来したこと、毎節のようにハットトリックを果たしたこと、そして一番は耐久力である。

 

lilin18thangel.hatenablog.com

 

21/22 1915min 22G7A

20/21 2410min 27G6A

19/20 1066min 13G2A

 

19/20の冬から加入したドルトムントでの2年半での成績を見るに以前から自分は、左足でのフィニッシュ依存の傾向と耐久力の心配があった。だからこそアルバレスと適宜使い分けながら順応の1年にするだろうと、しかしどうだろうか。

 

13試合 1041min出場 18G3Aである。

 

ハーランドの得意技を見極めて、ハーランド用の最終生産課程を建築するはずの1年が、シティのこれまでの形にすっぽりハマり一切の修正をせずともフィットしてみせた。

 

確かに言われてみれば、得意技がゲート破りという相手DFの間を抜いてボールを受けての左足ドッカンなので、今までのシティがやっていたポケットからの折り返し、ロークロス、裏狙いといった武器に合わないわけはないのである。

 

そして、このゴールラッシュを受けて、メッシとの比較論争も飛び出し始め、スターリングとジェズスのゴール未遂に憎悪の悪魔を胸に巣食っていたシティズンからすると涙そうそうの展開である。

 

ただ、このメッシ比較論は個人的に面白いと感じていて、自分は今季のペップシティを12/13のバルサに近いと思えてならない。配置を整えて殴るよりも、相手の陣形が定まらないような無秩序状態においてセスクとメッシの2人で全てを完結させてしまう方が効率的なのでテンポは早くなりメッシは凄まじい勢いでゴールを積み重ねたシーズンを思い出す。

 

この無秩序の誘惑がチームを崩し始めているのは事実で、あの時のバルサもメッシは酷使されてしまいアレグリのミランに封殺されかけ、セスクは外されてMVPトリオが使われ、そしてあの地獄の記憶バイエルン戦でのナナゼロナを迎えるわけである。

 

こう見るとペップバルサ5年目の仮想実験とも言える今季。4231でバランスを取り直すのか、それともCL用では無秩序アタックを進めるのかペップの判断に注目したい。

 

10 グリーリッシュ

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素人受けしやすいデータの物足りなさから移籍金の無駄遣いと揶揄される悲しげな色男であるが。ゴール、ゴールうるさいと思い、先制点を取って喜んでいたら相手DFに飛び蹴りされるなど前世で何してきたんだという感じである。

 

『THE Athletic』でも昨年取り上げられた通り、アシスト期待値はリーグトップであり、優秀な選手の1人であると評されたし自分もそう思う。グリーリッシュはそもそも主力選手としてというよりはベル離脱のバックアップとデブ神を休ませられてギュンも退団の可能性もあった中でWGにも回せる潰しのきく国産10番ということで獲得されたはずだ。

 

そもそもGAに関しての期待はそこまでなく、IHを軸にWGもボチボチやってくれたらいいなぁという感じで昨季の攻撃陣はコアが欠けることなくフィニッシュ出来たのはグリーリッシュの成果とも言える。

 

チームの得点担当のハーランド、フォーデン、マフレズが左利きなので、どうしてもアングル作りのために右に流れがちで左はボールを納めて落ち着けてから右に展開して刺すのが理想の崩しになっていて、今季はWGは両方を偽化させて大外を突かずにWGは下がりIHが両翼へ大きく動く、これはデブ神の神クロスを使いたいことや、いずれはアルバレスやフォーデンを中央へ移す名目でのテスト運用もある。

 

秩序だった無秩序の構築とUTの完備の幻惑で勝ってきたシティだが、ここにきて無秩序だった崩れた陣形からのカウンターの方がクリティカルなのでボールが早く動くようになってしまい前線でのタメがなくなり緩急が死んでいる。その是正として今季はMFをWGに置いてボールを落ち着けるような采配が見え、それがグリとベルのWG起用に繋がっている。しかし、これが相手に対する仮想5トップとして弱くなってしまっている問題があり、どうしても大外での脆弱性が透けて見える。

 

この方向性を後半も進めるのか、WGとIHの変換を求めていくというならフォーデンとアルバレスを組み込む可能性もあり、さらに、グリがいないときに勝てない問題も、どっちかと言うと前線でのタメがなくなり、ボールが早く動き続けるために守備陣が耐えられずに失点するシーンが増えたように感じる。

 

ハーランドという火力、無秩序陣形という誘惑、これらを抑えるための偽翼。

 

後半どう処していくのかペップの腕の見せ所であろう。

 

14 ラポルテ

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怪我明けで欠場が続いている間は、ハーランドがゴールする度に喜びのツイートを繰り返すなどノリノリのおうち時間を過ごしていたフランス人スペイン代表CBは無事にピッチに帰ってきた。ストーンズほどの対人能力はないものの、3番手のCBとしては十二分の選手なので、まぁ今季は怪我明けなんでな、まぁ、そのなんだ、、出場機会は限定しないとな、だって体が資本だもんな論法で3番手を受け入れさせたいところ。

 

とはいえ、息をするように離脱するストーンズがいるので結局はスタメン取ったり!だった昨季と異なるのがアカンジの存在。そつなくルベンの相方をこなしていて今のところはルベンジがベストコンビ。

 

ドライブやフィードの能力はあるものの

 

18/19 3057min

19/20 1104min

20/21 1342min

21/22 2834min

 

とリーグでの出場時間を記録しており昨季は終盤にだいぶ無理をしたので30前の年齢を考えると、そろそろピークアウトの足音も聞こえるところで、早い話が”売り時”なのだ。

 

おそらくアケとラポルテのどちらかは売られるはずだ。そしてグヴァルディオルを獲得したいというのがチームの方針か。選手としてのタイプだけならアケとグヴァは似ているのでラポルテを残留させる可能性はあるが、どっちの方が売り手がつくか、で決まるだろう。

 

”DFのギュン”くらいの立ち位置なら最高なのだが。。

 

16 ロドリ

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支配層4番の道を邁進するロドリ。昨季はフェルナンジーニョがトップレベルには程遠く、すき家の深夜バイトの如くワンオペでボランチを切り盛りし、アーセナル戦でクラッチゴールを決めるとグーナーの前へ躍り出てのセレブレーション。大卒とは思えないヤンチャっぷり。

 

そして今季はフィリップスも来るし楽できるかな、と思った矢先に肩の怪我でフィリップスがほぼ全休状態。応援のパートのおばさん来ないなぁと不安がりながらも今年もワンオペで牛すき焼き御膳を配膳する日々を送っている。

 

そしてプレースタイルもラロハでCBのプレーにもW杯で挑戦しておりまずまずの出来。こうなるとCBロドリ、DMFフィリップスでの共存も可能になるし、DFコアが脆いということを考えてもシティとしてはありがたい(エンリケGJ!!)。

 

ロドリの課題としては中長距離のパスの精度と対人能力の向上であるが、その部分はフィリップスが担当するので、正直何もいう事はない。

 

ただ不安なのが、ロドリの弱点である周囲に選択肢のない状況でのプレー精度の極端な悪化というのがあるので無秩序状態になることによるベネフィットにチームが揺らいだ時に、そこで安定的なプレーが出来るのか、そこが気になる。

 

17 デ・ブライネ

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最終生産装置という念願のおもちゃを買ってもらってウッキウッキの神のアシストショーと化している今季は昨季のST寄りのプレースタイルを本来のチャンスメーク型に変更、ハーランドにボールを運搬するポジトラの鬼として支配層MFの本領発揮。

 

しかし、である。

 

ペップシティはこれまで最適配置を徹底するためUT性を用いて選手の柔軟なポジションチェンジによって相手を幻惑し、再現性のあるビルドとポゼッションから深く抉って折り返すロークロスに飛び込むことで試合を支配してきた。しかしながら支配力が高まれば高まるほどに相手の人の壁は強固になってしまうので、同格以上になるとLBの弱みを突かれてしまい敗北するという有様だった。

 

そこでペップがバルサバイエルンでも用いてきた理不尽支配層最終生産者の最終生産効率の最大化によって支配力の増強と最終生産の成功確率の向上を両立させることをシティでも果たそうと獲得されたのがハーランドである。

 

そしてハーランドの武器がシティ既存のものと合致したことから早期にフィットしたものの、ある誘惑が残った。配置が整わない状況、間延びしたような状況の方がデブ神とハーランドのカウンターが刺さりやすく相手にクリティカルにヒットするのである。

 

ゼロトップ時代3年間の反動からか、どうしても早く攻めてしまわないと相手陣形が整ってしまうという恐れからボールはどうしても早く前線に向かい緩急がなくなって来ている。だからこそグリーリッシュやベルナルドをWGで使いボールを落ち着けようとしているものの、依然として残るのが、無秩序陣形によるカウンターという武器をどのように処すかである。

 

今まで取り組んできた最適配置の緻密性は日を追うごとに失われ、gdgdの陣形からデブ神とハーランドの個人能力でゴールを割るも、ボールが速すぎるのでネガトラが十分に働かずに後ろに負担がかかり、コアレベルが怪我でいないこともあって失点も増えているという状況である。前がかりにこない色気のないチームの場合の苦戦さは昨季以上なのが現状だ。

 

この6年間の積み上げと個人カウンターの両立をどのように処すのか、個人的には4231導入によって後ろの人数を増やすのでは、と見ているが果たして。

 

 

18 オルテガ

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エデルソンをLBで起用して欲しいの会が、今、揺れている。

 

このGKのフィールドプレイヤー起用の話はエデルソンのところで話すとしてですね。最近行った名古屋旅行のお話をします。

 

そろそろ修士課程も修了できる目処がたったとのことなので、このタイミングで名古屋旅行に行こうかと数ヶ月前からの計画を実行に移したわけですが、いやー名古屋ってめちゃくちゃ広いんですね。名古屋名物らしいものはあらたか食べたのですが、まぁ美味しいものもありますし、名古屋駅から栄までの都市部分とそれ以外の田舎部分のコントラストも激しく、今、話題のジブリパークにも行って来ました。

 

名古屋駅には、うまいもん通りというのがあり、ここで名古屋グルメは大体が揃っていて大変助かりました。

www.nsk-eki.com

 

ノースとかコロンビアといったアウトドアブランドショップも立ち並んでいて一番テンションが上がりましたね。でも品揃え的にはどーかなーという感じでした。まぁ行った時期が12月なので人気商品は出払ってしまいますからね。それにノースやコロンビアはセレクトショップの方が割引とか使えて良いので、そっちで買ったほうが良いと思います。

 

この時期だと冬物の人気アウターは売り切れでしょう。しかし、ベースレイヤーなら売っていると思うので、ぜひ。モンベルのベースレイヤーは特におすすめです。

 

ジオラインとメルノウールが二大巨頭です。前者は速乾性が良く夏におすすめです。特にVネックの一番薄いものは僕は愛用しています。白シャツの下にも着れるのでめちゃくちゃ着心地良くて愛用しています。後者は保温性も高く冬におすすめ。クルーネックの中間の薄さのものはパジャマとしても使えたりして素晴らしいプロダクトだと思います。

 

一見分厚いアウターの方がみなさん飛びつきやすいのですが、大事なのはベースレイヤーなんですね。登山される方はみなさん仰います。一度お試しください。値段はベースでも高いですがモンベルはその中でもお手頃なので一度試されると良いと思います。

 

レーヨン素材のヒートテックでは汗冷えを起こしてしまう危険性もあるので、避けられる傾向にあるので、その辺は一度アウトドアブランドのベースレイヤーをお試しください。

 

あ、名古屋旅行の話でしたね、、笑

ごめんなさい、アウトドアブランドヲタクなんで、、笑

 

名古屋では、うまいもん通りで中華料理屋の味仙で昼ごはんを食べました。青菜の炒め物やニンニクチャーハン、そして台湾ラーメンを注文しました。いや、甘く見てましたね、結構、量もあり、何より台湾ラーメンって結構思ったより辛かったです。お気をつけあれ。

 

晩御飯としては、山本屋本店に行きました。味噌煮込みうどんのお店ですね。人生で初めて味噌煮込みうどんを食べたのですが、発見だったのが麺が固めなんです。味噌も結構濃いかなぁと思っていたんですがスープもグイグイ飲めて、めちゃくちゃ美味しかったです。

 

あとジブリパークですが、めっちゃ遠いしめっちゃ広いです笑。

 

まず名古屋駅から東山線で終点の藤が丘駅まで30分くらいかけて移動、その後にリニモに乗って愛・地球博公園まで15分かけて移動しました。ただ個人的にはリニモは乗ってみたかったので達成感は高かったです。中も相当に広く、まぁ万博跡地なので当然と言えば当然なんでしょうね。パーク外だけでもどんだけあんねんという笑。

 

そして他に行ったのが東山動植物園、ここも広い、広すぎる笑。あまりの広さから園内を走る電車みたいなのもありましたし、まぁ面白いとこでした。

 

あとは事前に調べておいたセンスありげなセレクトショップを巡った感じですね。余力があれば徳川博物館にいきたかったんですよねー笑。もう疲れてクタクタだったので笑。

 

そしてお土産に関してですが

 

両口屋是清の和菓子はおすすめです。名鉄百貨店や名古屋高島屋で売られています。をちこちというムラサメやささらがたという小型の和菓子のセットなんかは賞味期限が1ヶ月程度ですしお土産として喜ばれるかと思います。またういろうで有名な青柳もおすすめですね。青柳のういろうは小型の5本セットが良いかもしれません、ひよこの形をしたお饅頭も売られており、これも良きですね。大須のういろバーとか、和菓子が有名なんですね名古屋は。

 

名古屋駅のグランキヨスクにほとんど売っているので、そこで買うのが良いかと思います。

 

しるこサンド小倉トーストラングドシャ、シュガーバターの木の名古屋限定の味だったり、本当に色々なものが売られていますので、ネットなどで情報を集めてぜひ読者様も名古屋へ行ってみてください。本当に楽しくって良い旅行でした。

 

19 アルバレス

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ハーランドの耐久力が低いので、ある程度の出場時間は取れると思ったのに、まさか、という感じで、それでも持ち前のカバー範囲の広さ、ミュラーのようなSTとしてのプレーなど光るものを複数見せており後半の活躍に期待できそう。

 

シルバの得点力増強版がフォーデンならデブ神の得点力増強版がアルバレスだろう。この2人がIHに並ぶと初期に見た夢が具現化されるので是非試してほしい。

 

今季としては4231でも433でもWGやSTといったポジションでハーランドを活かしながら自分自身も活躍するのがベスト、IHはデブ神とベル、WGをフォーデンとアルバレスというのが今季のベスト布陣になるか、LBアケがハマれば意外と大耳いけちゃう?笑、なんていう妄想もしてしまいそうだ。

 

言語面でも必死のトライを見せており、そういう意味でも今季は順応の一年としてくれたらと思う。アルゼンチンの至宝の成長に期待したい。

 

20 ベルナルド

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ベルちゃんはやめへんでー2022夏を終えて迎えた今季

 

難しいのが寿退社決まってる社員をプロジェクトに参加させて大丈夫なんでしょうかね?的なノリなのか分からないが、現状ではWGでボールを落ち着けるという仕事をこなしながらもWGとしての突破力はないので5トップの弱体化にはちゃっかり貢献してしまっている。

 

巷ではベリンガム獲得も噂されているが、それは厳しいと思う。LIVは明確にIHの位置が空いているし、シティとしてはベルとギュンの去就が不透明でしかないし、もしかした残るかもだから動きづらいのだ。仮に2人とも残るとなると本格的に使い所に困ってしまうし、ベリンガム側もそこは理解しているだろう。

 

アロンソのいるマドリーへ行って失敗したシャヒン

ルーニーのいるUTDに行って失敗した香川

 

ここら辺を理解しているはずなので、まぁベリンガムは来ないでしょうね。

 

ただ狙うかもよーーというポーズだけはとって移籍金を引き上げてLIVに資本的打撃を与える程度は出来るので、ハッキリとしたスタンスは出さないだろうが。

 

個人的に疑問なのがバルサは本当にベルを欲しがってるのか?である

 

前もブログに書いたが

lilin18thangel.hatenablog.com

 

今のバルサに必要なのはレヴァの能力を引き出すためのレバミュラ2.0を構成するSTタイプであるし、ベルがプレー出来るWGとIHに関しても前者ではファティ、デンベレ、ラファ、フェラン、後者ではペドリ、ガビ、フレンキーがいることを考えると本当に必要なのか不思議でたまらないのだ。

 

バルサとしてはブスケツ退団で4番の欠落を埋める補強を考えるだろうが、ブスケツの後継者など見つかるはずない、なら2ボラで対応するのがベターであり、ガビ、フレンキー、ペドリを使うべきだろう。そしてSTにはフェリックスやラウタロを招ければ最高で、レバミュラ2.0の装備が叶えばCLクラスのバウトでも理不尽で相手に勝ち切れるはずだ。

 

DFラインに関しても今季CL敗退の原因となったコアレベルの離脱に対する脆弱性を考えると1人はDFが欲しい、ならラポルテやパウを取るべきだろう。現在のスカッドにいない左利きのフィードプレイヤーであり、クロス爆撃をする上でも中長距離のパスで左右に散らせることのできる選手は有用に感じる。

 

ベルナルドは居ても困らないだろうが、正直バルサよりもマドリーの方が合うように感じる。まぁベルは契約終了までシティにいて、そこからベンフィカに帰還すると予想している。まぁそうなるとあと2回ベルちゃんはやめへんでーを見ることになるのだが笑。

 

21 ゴメス

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3代目ファビアン・デルフ

 

ペップ、左利きなら誰でもシティのLBにして良いと思ってる説を密かに提唱しているのだが、いよいよフォーデンもLBで使われ始め、そしてデルフの血統も途絶えるかと思った矢先、2代目がアーセナルへ旅立つと、やって来たのがユース年代で名前をよく聞いたゴメスだった。

 

助っ人外国人感の強そうな名前のゴメスは、MF出身らしいテクニックはあるが対人守備は期待できなそうで、体が意識に追いつかずレッドカードで退場を宣告されてしまうほど、まだまだ経験不足の感は否めない。

 

しかしながら左アウトサイドレーンをカバー出来る貴重な選手としてグリーリッシュとの相性は良さそうなので、そこでの活路は開けるか。個人的には2代目同様に、ある程度金銭を置いて移籍してくれるようになれば良いかなレベルの期待しか現状は持っていない。

 

ククレジャ、欲しかったなぁ。。。

 

25 アカンジ

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アウトレットでゼータジャケット半額で買ってこれたくらいの満足感のある買い物が出来たのがアカンジである。本当にこんな選手、この金額でもらって良いの?とドルトムントさん、いやドルトムント様には頭が上がりませんね。

 

ラポルテ離脱、ストーンズは当然のように居ない中、ルベンの相方としてそつのないプレーを見せており暗算が得意で考え込みすぎる性格からスランプに入るとプレーが鈍化すると言われてはいるものの、今の所、本当に良くやってくれている。

 

出来ればRBでのプレーにも挑戦してプレーの幅を広げると共に、伸びていって欲しいところではある。ウォーカーとストーンズの耐久力に多くを期待できない中、前半のMVPはハーランドになるのだろうが、この男の活躍も、もっと評価されてほしい。

 

今の所のDFラインの布陣としては

VS格下

RBアカCBルベラポLBカン

VS格上

RBウォCBルベストLBアケ

 

みたいな運用ができたらベストと考える。

 

 

26 マフレズ

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明らかに鈍化した感の否めないアルジェリアエストレーモは昨季くらいから特にスロースターターになった印象がある。

 

ドリブルのキレも悪く、そもそも運動神経を利用したスタイルというよりもトリッキーなテクニックと独特の間合いでぬるぬるボールを運ぶタイプの技巧派なのでスランプに入ると主だった蘇生法もなく、とりあえずは使ってみる、しかないのも辛いところ。

 

ただマフレズの一番の使い所はCLや同格以上とのバウトでの左足1発なので、そこまでに調子が上がればいいなぁくらいに気楽には見ている。

 

18/19 1339min

19/20 1941min

20/21 1955min

21/22 1491min

 

とリーグ戦で出場してきているが、契約延長したこともあるが、シティとしては枯れるまで保有する、という選択をした。パーマー、アルバレスがある程度のレベルまで育つまで繋ぎ、メンターとして影響を与えてくれれば、あとはCLで得点を取ってくれれば問題はない。

 

ハーランドのシティ勧誘にも貢献してくれたし、ボチボチ本領発揮してくれば。

 

ただドリブル成功率を見ても

19/20 58.4%

20/21 55.5%

21/22 52%

 

と、リーグ戦での成功率も下がってきているし、今季は試合数が少ないとはいえ45%と、2回に1回突破できているかどうか。いっそトップ下にコンバートしてみてはどうだろうか?

 

ホアキンネイマールのように、WGから徐々に10番へと変異することが出来れば、選手寿命を伸ばせる可能性もある。

 

 

31 エデルソン

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GKのフィールドプレイヤー転用性

 

自分が、ここ6,7年ずっと議論していることである(ちなみに誰も議論に付き合ってくれなくて寂しいが)。時にペップバイエルン2年目、グアルディオラはあるコンバート実験を実施しようとしていた。

www.football-zone.net

 

ノイアーボランチ起用。

 

ルンメニゲは傲慢な振る舞いとして説得し止めたそうだが、個人的には何やってくれとんねんおっさんという気分である。では、いったいペップは何をしようとしていたのか?

 

それはトータルフットボール思想の具現化である。

 

そもそもトータルとは典型描像の解体と再構築、すなわち脱構築行為を用いて当該ポジションにおける典型的な挙動というポジションに紐づいた目的や所作を整理し直し、そのロールをその他のポジションに対して分配することで、チーム全体としてのロールの保全と相手に対する異常挙動の提示による優位性の確保を目指すものである。

 

CFという最も攻撃的な選手に対して守備を命じ

GKという最も守備的な選手に対して攻撃を命じる

 

こうした普通では考えられない挙動を命じ実行させることによって相手の基準点をずらし確保された優位性を保つというのが狙いと言えよう。

 

これはトータル云々というよりサッカー、もっと言うと娯楽の根源にある予定調和の破壊という概念の具現化とも言える。

 

攻撃しないと思われていたSBがサイドレーンを進撃し、サイドにいるもんだと思っていたSBが中央でボランチの振る舞いを見せ、外に張っているだけと思われていたWGは中に入ってゴールに迫ったり、守備しかしないと思われていたCBが進撃したり司令塔のように振る舞いボールを分配したり、そして止めることしかしないと思われていたGKはビルドアップに関与し始めたりロングボールを左右に分配する司令塔となったり、、、

 

サッカーの歴史とは古典描像という予定調和を、いかに壊すか、といった観点で成長してきたとみることが出来る。ペップのもたらすそれは”偽”と呼ばれ、サッカー偽物語の作者として数々の偽〇〇を生み出してきた。

 

フィールドプレイヤーのUT性を推し進めることで多彩なポジションチェンジが出来るばかりか相手の想像を超えた挙動を実現できるように訓練すること、この方向性でペップは14年間海外サッカー界をリードしてきた。

 

しかし、ポジションチェンジが不可能な場所がある。

 

GKである。

 

GKだけは完全固定され、複数選手のローテも難しく、それゆえにGKは共存できない。そう言われてきた。

 

職業野球に目を向けると似た概念がある。それが投手と野手の兼任、すなわち二刀流である。大谷翔平が成し遂げた偉業をサッカーヲタクに分かりやすく言うならば、GKとしてリーグ屈指の活躍を果たしながらCFで得点王ランキングに入っている、と言うことになる。

 

では、これは実現可能なのか?

 

NO!

 

そんな声が大きいからこそ大谷は歴史的と絶賛されるのだ。

 

仮にGKのフィールドプレイヤー転用がなされるとどうなるか。それはGKの共存不可という価値観は揺らぐ、そして2ndGKのコスパが良くなるわけだ。そもそも2ndGKはカップ戦で少ないイニングを食うだけ、そんな選手を抱えるのはひとえにGKというポジションの特殊性ゆえである。

 

仮にGKが故障すればフィールドプレイヤーでは補いきれない、非可換だから。

      (fig7) そんなことないよーと叫ぶウォーカーさん

 

確かにフィールド→GKは厳しい。

 

ではGK→フィールドなら?

 

できなくはないように思える。というか出来ると考えたからこそノイアーはMFで出場しかけたのである。相手に合わせてGKを使い分けることも出来るし、GKの転用がなされれば、それはトータル思想をさらに広げ、11人のUT集団という新たな次元が広がることを意味するわけである。

 

大谷翔平が投手野手二刀流をやろうとした時

 

多くのOBやファンが『そんなにプロは甘くない』『中途半端に終わるだけ』

 

そんな声を浴びせる中、大谷翔平は歴史を変えました。

 

しかし、大谷のプロ入り前に肯定的なコメントをしている人がいました。

 

私は大賛成です。周りは、みんな否定的なこと言うけどね

野球OBの人たちは最近の野球選手は個性がない、個性がないって非難するけど

いざ、大谷のような個性が出てきたら全力で否定する。

やる前からやめた方がいいんじゃないかとか

本人がやりたいって言うならどっちもやらせますよ

どっちやらせても面白いもん

 

これは3度の三冠王に輝いたNPB史上最強右打者にして8年間連続Aクラス入りの実績を作った覇権集団中日ドラゴンズを率いた

 

落合博満の言葉である。

 

僕もグダグダ書いてきたがなぜエデルソンのLB起用を見たいかというと

 

面白いからである。

 

だって見たくない?笑

 

サッカー界の大谷翔平は意外と近くにいる、そんな気がしてならないのである。予定調和の呪いを打ち破るのは狂気を秘めたペップシティしかないような。。。

 

47 フォーデン

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UTDとのタービー戦でのハーランドとのハットに胸躍らせたサポーターも少なくない。無事に契約延長にも合意し、これで名実ともにシティの看板選手としてのキャリアが本格的に始まったといえよう。

 

ここ数年は、複数ポジションに出ては印象的な活躍を果たし、選手の幅を広げると同時に経験を積ませるというタームだった。LWGを根城にしているが、やはり彼こそEDSが産んだ得点の取れるダビシルバであり、国産のイニエスタなのだから、最終的には中央、IHでプレーするのが理想に思える。

 

ハーランドをフォーデンとアルバレスで支える形の433でも面白いし、しばらくは複数ポジションで使われるだろう。しかしゴール前、出来たら中央に置きたいのでIH起用したいのだがデブ神、ベル、ギュンがいるので、とりあえずWG起用が続いている。

 

IHで出て欲しいなぁと見ていたらLBに回されたりしてコアUTここに極まれりといった感じなのだが、IHでみたいなー、IHでみたいなーと考える次第である。

 

いずれハーランドの勢いは止まる。その時の抑止力としてフォーデンには期待したい。アグエロのシャドーにスターリングとジェズスがなれなかった二の舞にならないように順調に怪我なくシーズンを過ごしてほしい。

 

IHでみたいなーーーーー笑

 

80 パーマー

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                             (fig8) シティユースを語る9210氏

 

合成麻薬みたいな呼ばれ方をしているチームことEDSであるが、今季の市場における売りオペレーションが多く実施され、1軍への戦力供給よりも集金の方が印象が強くなっており、多くの”同志”が換金されていったわけであるが、戦力に対しての評価額を超過すれば一文もださねぇぜおじさんのチキべギリスタインがいる限り、若手の突き上げがないとどうしてもスカッドのレベルが厳しいものになってしまう。

 

今季のようなミニマムな布陣だと、複数の怪我人が出てしまうと一部の選手に負荷がかかってしまい、その事と過密日程から要所の試合においてコアレベルの選手を欠き、厳しい試合展開を招いてしまうのは事実なので、換金の夏を免れた選手たちの一段の成長を願いたいところなので、1軍で最もスタメンに近い男であるパーマーには期待せずにはいられない。

 

EDSの試合を見るに低い位置でのロストがあるものの基本的には上手くて強くて速さも少し兼備してるタイプに見え、主にはIHとWGでプレーしておりマフレズが本調子に程遠いRWGで覚醒を期待したいところだろう。

 

前述したようにペップシティ初年度の課題でもあったIHの得点力不足の課題からかEDSにおいては、"得点の取れるダビシルバ"が大量生産されており、フォーデン、マカティ、パーマーと似たようなタイプが多い。

 

出場時間も少ないものの独特の間合いでリズムを刻んでのドリブル突破でチャンスメイク出来ると良くRWGよりもLWGに挑戦してクロスマンになれるとフォーデンをIHに回せて良いのだが。何はともあれ出場が少なすぎて比較もしづらいので、とりあえず使ってくれよペップというお気持ちである笑。

 

 

最後に

 

今年も僕のブログを読んでくださった方々に感謝申し上げます。脱構築ヲタクの駄文があなたの隙間時間を有意義なものに出来ていたら幸いに存じます。

 

良いお年を。

 

来年もよろしくねー。

 

牽牛星 拝

3.11トリロジー(『君の名は。』『天気の子』『すずめの戸締まり』批評)

11/11(金曜)新海誠の最新作『すずめの戸締り』が公開された。本ブログは脱構築が大好きな自分が愛する様々な脱構築アーティスト

 

ペップ・グアルディオラ

庵野秀明

秋元康

 

といった面々のプロダクトに焦点を当ててきた。そして現在の”大作画時代”の旗手にして新時代の"宮崎駿"たる新海誠についての評論を執筆することにした。自分は新海については庵野ほどの情熱を持っては見ていないが、それでも確実に細田守新海誠は確実にアニメ界の王様になるだろうと見ていた

 

まず、現在のアニメ界に広がる大作画時代について説明し、そして新作も含めた新海誠が世間に”バレてしまった”時代の作品

 

君の名は。

天気の子

すずめの戸締り

 

の3本についての総評という形での評論を以下に与える。

 

 

第1章 革命の始まり

 

1-1 細田による”父殺し”

 

大作画時代、2010年代中盤から目に見える形で覇権クラスの作品群が纏う雰囲気は相当に似てきている。アニメブームが2000年代後半から再び始まり、何度目かの声優ブームの到来、ヲタク相手の商売にすぎなかったアニメ界で唯一国民的なユニバーサルを生み出すことの出来た宮崎駿の”生前退位”を受けて、緩やかにアニメ業界は変容する。

 

駿の息子、駿に見限られた男、駿の弟子、数々のアニメ作家が宮崎駿玉座に座るべく様々なアプローチがなされたが、革命は辺境から始まるいうが、アニメ業界も例外ではなく、駿の息子である宮崎吾朗でも弟子の庵野秀明でもなく、駿に見限られた男であった細田守によってアニメ世界の一大トレンドは生み出される

 

スタジオジブリの研修生試験に不合格後、東映動画で実力をつけた新進気鋭のアニメーターであった細田は『劇場版デジモンアドベンチャー』で監督デビューを果たす。そして細田自身にとって大きな作品となる『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』でブレイクし、かつて自身を不合格にしたスタジオジブリから声がかかる。

 

ジブリ宮崎駿/高畑勲の両巨頭の年齢を考慮し、看板監督を探していた。宮崎の引退の意向も踏まえてポスト宮崎駿として招かれたのが細田守だった。しかし制作は難航し細田版のジブリ作品(ハウルの動く城)は中止となり、細田は2度目のジブリからの失格の烙印を押され下野することになる。

 

細田守は終わった。

 

当然のように業界にはそう伝わった。ジブリは後継者を、細田はキャリアを失った

 

しかし、細田守は結果として宮崎駿の時代を終わらせることになる。

 

14年間勤めた東映に別れを告げた細田はフリーとなり新作映画を作り出す。

 

時をかける少女』である。

 

小規模上映でありながら、筒井康隆の名作を脱構築し新たな”時かけ”は多くの人々の心を掴んだ。興行成績も上々の中、3年後に作ったのが『サマーウォーズ』この作品は構成はジブリへの2度目の挑戦権を勝ち得たぼくらのウォーゲーム!』の脱構築作品だった。そしてこの作品のデジタルと土着的アナログの対比、圧倒的な作画、エモーショナルな音楽、わかりやすいシンプルな脚本、これらの組み合わせがジブリ宮崎駿の時代を終わらせる。

 

そして細田守作品の最高傑作である『おおかみこどもの雨と雪』を生み出し、細田守はポスト宮崎駿の最右翼にのしあがった。細田はアニメ映画、ひいてはアニメの形を変えてしまったのだ。デジタルと手書きの併用だけではない。要は音と画の力だけで作劇の不備は簡単に隠蔽できてしまうという事である。

 

どんな物語なのか、そんなのはどうでもいいのだ。作劇は過去引用で事たる。一番大事なのは作画をどこまで美しくできるか、そこに美しい曲を載せられるか、この出力が一定の割合を超えると作劇の不備は吹き飛ぶ、という高出力の時代を細田守は作り出した

 

そしてジブリは、この高出力時代に耐えられなかった。デジタルと手書きのミックスで圧倒的な作画力を要求される中で手書きにこだわり、作品の内容もオリジナル要素が強くモダニズムといったこだわりの強いテーマを懇切丁寧に描くジブリ流は勢いを失っていくことになる。

 

これは野球界にも見られる。投手の投げる球速はどんどん向上し続け100マイル超えの4シームを投げる投手も増えた。例えばデグロムは4シームとスライダーしかほぼ投げない。緩急など必要ないのだ。圧倒的な出力があればツーピッチ(2球種しか投げない投法)で十二分に通用してしまうのだ。それに比例するように野手のフィジカルも向上し続け、野村克也の提唱していたアウトロー最強説はいとも簡単に崩れ去っている。例えば2022年CSでの藤浪VS村上、アウトローの154kmの直球はスタンドに吸い込まれた。

 

高出力の前では技巧は無力と化すのである。高出力投手陣とパワー型野手を揃えたソフトバンクの前にジャイアンツは日本シリーズで2年連続のスイープ負けを食らった、

 

2012年にはアニメ界からの”家出”から帰り実写映画制作に諦めを感じた庵野秀明エヴァ脱構築はQで破滅を迎え、宮崎駿本人も2013年の『風立ちぬ』で事実上の引退をした(この後に帰還するが笑)。

 

そして”父”も”兄弟子”もいなくなった長編アニメ映画界において唯一のユニバーサルとなった細田守は大作画時代の王として次のフェーズへと向かう。時かけ、サマウォ、おおかみで脚本協力をしていた奥寺佐渡子と決別し、全権を掌握した男は満を辞して時代を闊歩しようとするのである。

 

しかし、時代を終わらせた男は皮肉にも自身の作り出した”ウォーゲーム”を、もっと上手くプレー出来る男によって2番手へと追いやられることになるのである。

 

その男こそ、新海誠である。

 

1-2 辺境の革命家

 

2015年の細田の『バケモノの子』がヒットはしたものの60億弱と宮崎駿の後継者として若干寂しい数字を残す中で翌年、興行成績250億という恐ろしい数字を叩き出す映画が作られることになる。その映画を生み出した男である新海は大作画時代のトレンドを抑え、細田の生み出した世界で細田を一足飛びに追い越す

 

細田を狂わせたのは『おおかみこどもの雨と雪』である。初めての純粋なオリジナル脚本であり奥寺の影響力を”協力”に抑制した結果、最高傑作が生まれてしまった。この事で細田は誤った自信を有してしまったのだろう。奥寺と決別し、その後の『バケモノの子』『未来のミライ』『竜とそばかすの姫』はヒットこそしているものの100億の大台には乗る事はなかった。

 

これまでも宮崎の血脈王位継承戦争に突如として出現した新海誠は、どこからやってきたのだろうか?

 

大手ゼネコンの父親の資本的余裕のある暮らしを得ながらも、親の会社を継ぐことを拒否した新海誠は、ゲーム制作会社日本ファルコムに入社する。そこでゲーム制作を志望するも叶わずパッケージのデザインといった仕事を任される。この当人の”飢え”が業務終了後の自主制作アニメへと繋がる。

 

朝昼はデザインを描き、家に帰るとアニメを作る。こうして出来たのが『彼女と彼女の猫』('00)である。このショート映像は新海と篠原美香の二人で共同制作されており、これはファルコム退社後のフリーで作った作品『ほしのこえ』('02)でも同じだ。新海と篠原は婚約関係にあったとも言われているが、現在の新海誠の奥方は三坂知絵子であるため、婚約解消に至ったのでは、とも噂されているが真相は闇の中だ。

 

ただいずれにせよ、この2作品、特に『ほしのこえ』は現在の新海誠の要素が相当数詰め込まれている。二人の男女の若者、遠く離れてしまう残酷な運命による別離、SF要素を取り入れ、そして何より背景の作画は圧巻の出来となっている。新海誠の、その後の仕事はほしのこえ脱構築し続けているとも言える。評価と売り上げは上がれど、生活は豊かにならず、それでも新海は作品を作り続ける。

 

次作『雲のむこう、約束の場所』('04)では3人の男女の物語が描かれ、平和の均衡を担う少女の処遇を巡り選択を迫られる物語となっている。ユニバーサルな世界か僕とキミというローカルなセカイが交わり合うセカイ系の物語を書いており、またSFや分断社会といった、地続きの世界を軸にしながらSFでメタ構造を作ることを目指した作品となっている。

 

そしてミニマムな制作スタイルで次に挑んだのはオムニバスだった。3編からなる映画『秒速5センチメートル』('07)を発表する。そこで描かれたのは環境と関係の等価性。すなわち、環境を残酷な運命によって引き裂かれた結果、それは関係断絶に繋がり、そして断絶のトラウマに苛まれ続け、そのトラウマと喪失を受け入れ乗り越えようと決意するまでの物語となっている。別れた女への執着は、監督自身のメタなのでは?という声は、上に書いた篠原婚約者説に立脚するものなのだろう。

 

自身のネタを出し切ったと考えたのか、新海はグアルディオラのように中東に向かう。そこでさまざまな文化に触れ、そして商業主義に殉ずる覚悟を決める。

 

見てもらえなければ映像作品に価値はない、という考えに至ったのかもしれない。

 

そして新海は、自身の集金装置としての完備性向上に至っていく

 

1-3 集金装置への挑戦

 

これまで書きたいものを新海は書いてきた。それは当たり前で、元々の彼の制作は会社で満たされない創造意欲の発散だったからだ。その後の物語も若者を軸とした環境と関係の等価性をめぐる物語をSFやセカイ系といった要素を入れながら作り上げていった。良い意味で新海は客を見ていなかったのだ。

 

しかし、そんな新海は商業主義、すなわち、多くの人の目に映るものの創作を試みる。そこで作り上げられた作品が『星を追う子ども』('11)である。血も涙もない表現になるが、この作品はジブリ崩れである。また、これまでとは規模の違うチームワークでの制作ということもあり苦戦し、興行的にはお世辞にも成功したとは言えなかった。

 

新海自身はとてもショックを受けたそうだが、皮肉にも観客を意識して作った結果、観客に拒否されることになったのである。

 

しかし、新海を天は見捨てていなかった。2011年3月11日、東日本大震災発生。この大悲劇こそが新海誠を国民的アニメ作家へとのし上げる”具”となるのであった。

 

新海自身に大きな影響を与えながらも、当人はジブリ化の失敗から反省し、新作『言の葉の庭』('13)を作り上げる。万葉集を背景にしながらもPV化した映像、圧倒的な作画で描かれる自然の風景と都会のビル群、そして環境と関係の相関。全てを詰め込み最適化された作品は上々の興行成績と評価を受け、そして新海は次作で歴史的偉業を成し遂げる。

 

巨大資本である東宝のバックアップ

川村元気による新海誠のパーフェクト集金装置への変容

10年代前半の細田による地ならし

 

条件は全て整った。そして新海誠は時代の勝者へ羽ばたく。

 

大作画時代の勝者、新時代の宮崎駿は産声をあげるのであった。

 

第2章 セカイと世界

本章では『君の名は。』('16)についての批評を与える。

2-1 筋

 

朝、目が覚めると何故か泣いている、そういう事が時々ある
見ていた夢はいつも思い出せない。
ただ、ただ、何かが消えてしまったという感覚が目覚めてからも長く残る
ずっと 何かを 誰かを探している
そういう気持ちに取り憑かれたのは 多分あの日から
あの日、星が降った日、それはまるで
夢の景色のようで、ただひたすらに美しい景色だった。

 

そんな男女の独白から始まり、RADWIMPSの音楽が開幕を告げる。

 

岐阜県飛騨の糸守町に住む宮水三葉は町長の娘ということで周囲から冷やかしの目線を受けることへの不満を同級生の勅使河原と名取にぼやく毎日を過ごしていた。そして大学進学後は東京に住みたいと強く願い、来世は東京のイケメン高校生になりたいと冗談半分で嘆き散らしていた。一方東京の四ツ谷で官僚の息子としてレストランIL GIARDINO DELLE PAROLE(邦訳すると言の葉の庭)でバイトをしながら高校生活を送っていた立花瀧は、ある日目覚めると、女子高生に変わっていて、周囲の景色も東京のそれとは程遠く、また同様に三葉も目を覚ますと東京在住の高校生に変わっていた。

 

三葉と瀧は、体が入れ替わっていた

 

体の入れ替わりに最初は戸惑うも、携帯に互いに起きたことをメモしあい、入れ替わりをポジティブに楽しむようになった。しかし、その日々は突然終わりを告げる。瀧は瀧に戻ったっきりで三葉になれなくなった。連絡も途絶えたことに不審を抱いた瀧は悶々とした日々の中で、三葉に会うために岐阜への小旅行を計画する。しかし、そこで待ち受けていたのは残酷極まりない現実だった。

 

糸守町はなかった。いや、正確に言えば存在していた、3年前までは。ティアマト彗星の破片落下事故によって町は大半を消失、町民の1/3が死去するという大災害にあい、犠牲者の中に、三葉の名前が記されていた。

 

同時代の入れ替わりではなく3年のラグの存在

遠く離れた距離感

大災害によって失われた三葉を始めとした尊い命の数々

 

悲しみと衝撃に遭いながらも、糸守町を救うために、もう一度入れ替わりを決意する瀧。三葉が奉納していた口噛み酒を飲み、無事入れ替わり三葉に変わった瀧は変電所の爆破による大停電によって住民の大規模避難計画を考案し、友人の勅使河原と名取の協力を取り付ける。しかし町長の説得には失敗する。

 

三葉に入れ替わった瀧と瀧に入れ替わった三葉は黄昏の中にお互いを見つけ、入れ替わりは元に戻る。そして互いを忘れないようにメッセージと名前を腕にサインペンで書こうとした矢先に、互いの名前を書き入れる前に黄昏は終わり、二人は意識を失う。

 

三葉は、糸守町を救うための瀧の計画を実行する。そして父である町長の説得のために必死に走り抜ける。そしてふと見た、自身の腕にはサインペンで瀧の字が書かれていた

 

すきだ

 

その言葉に励まされ、町長を説得(radのBGMで説得で何を言ったのかは不明)し町を救うことに成功する。そしてバタフライエフェクトととして瀧と三葉は互いの名前を忘れ、心のどこかで何かを探しているという漠然な、流星のカケラの一部のような残片だけが残された

 

5年の月日が流れた、東京、瀧は就職、三葉は上京。二人は奇跡的に桜が咲き誇る春の朝に神社の階段の上で再会する、そして感動に打ち震えながら、互いに尋ねる

 

君の名前は?

 

そしてRADの音楽が終幕を告げる。

 

 

2-2 ポスト3.11

 

人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見ると喜劇だ

 

喜劇王チャップリンの言葉である。これは本映画にも通ずるテーマだ。大災害にあっている糸守町から見れば流星群は恐ろしい破壊兵器だが、瀧の住む東京からマクロに見ると美しい流星群に見える

 

そして、この安全な遠くから見た立場と危険な近くから見た立場を逆転させることによって災害に対するメッセージを発出している。

 

新海自身が3.11を作品に落とし込んだ初めての作品である今作は、災害回避という新たなフェーズを入れながらも、ここまで新海が取り組んできた赤い糸ファンタジーや環境と関係や作画と音楽の高出力化、そしてジブリ由来のファンタジーとSF、そして土着的な文化の挿入、が余すことなく構成されている。

 

しかしながら最大のテーマは3.11であろう。2016年のシン・ゴジラと奇遇にも同種のテーマが採用された。シン・ゴジラではゴジラが暴走する福島第一原発のメタファーであり、本作ではティアマト流星群がそれに相当する。

 

シン・ゴジラが徹底してウェットな部分を除去し、役者の属人性の破壊としての演技の余白を徹底的に消し切り日本映画へのカウンターを放ち、死亡という不都合なこともまっすぐ描写したのとは対極的に、清々しいほどの集金理論に殉じ、これまでの新海誠成分で集金に優位な部分だけを残したという意味で綺麗なコントラストを見せている。

 

シン・ゴジラにおける役者への演技の付け方はプリヴィズが用いられ極めてアニメ的であり、2016年はアニメの立ち位置を大きく引き上げたと言える。そして、シン・ゴジラ君の名は。どちらを国民が選ぶのか、個人的には非常に興味深いイシューだったのだが、ご存じ、選ばれたのは君の名は。であった。ヲタク相手のローカルスタイルの庵野、大衆相手のユニバーサルスタイルの新海。二人は2016年を境にエヴァ脱構築、3.11の落とし込みというそれぞれのテーマのもとで3部作を双方ともに作ることになるのである。

 

それが良かったのか、その議論は10年後に譲ることにしよう。

 

2-3 覚醒の理由

 

2-1で筋の大まかな流れを見てもらったが、脚本はいささか不味いように感じる。そもそも3年間のタイムラグに気づかないということがあるのだろうかという部分や、ディアマト彗星による事故という大きな事件、それも数年の間、瀧が物心ついた時に起きた事故を覚えていないといったことがあり得るのか三葉の父親説得も音楽で誤魔化したのも、作劇上の説得として適切な帰着を思い付けなかったことに起因するものなのでないだろうか?

 

このように本作は圧倒的な作画と音楽によって脚本の不味さをカバーする、まさに細田の作り出した高出力で押し切ってしまう大作画時代の名作と言えよう。

 

筋を切らして、音と画で断つといったところか。

 

川村元気新海誠のベスト盤を作ったと表現した。まさに、これまで新海が作り上げて積み上げてきた要素のいいとこどりをして、その抽出要素を最大化したのが本作である。そして、そのことが様々な脚本上の不備を生んでしまってもいる。

 

そもそも新海誠は長編向きの作家ではない

 

長編の2時間弱の映像作品を作るには脚本やストーリーテリングが苦手であるのだ。それは彼自身の創作の始まりが元々、人件費やマンパワーの関係上どうしても短編にせざるを得ず、長編の脚本を書き切る訓練と経験が足りていないことに起因しているように思える。そこに自覚があったからこそ、中東へ向かった際にイギリス留学で脚本の勉強をしていたのだろう。

 

そして細田が”おおかみこども”で誤った自信を有したように、新海も”雲のむこう”で誤った自信を手に入れてしまったのかもしれない。

 

売れるということはバカに見つかるという事。

 

これは有吉弘行の言葉であるが、売れたプロダクトは全て、この言葉に集約されている川村元気により新海誠を”バカでも分かるように”翻訳した物語。それが君の名は。であり、ただそれは新海のこれまでの作風の良いところも悪いところも拡大してしまったのかもしれない。

 

個人的には過去改変によって三葉は救われたかもしれないが数人の犠牲は出ているので、そういった救えなかった人々といった不都合な部分は綺麗な絵柄のノイズになるからなのか隠蔽されていたのも疑義を呈したいところだ。

 

こうした、不都合なものを排除した美しい都合の良い物語と多少の脚本のアラを吹き飛ばせるほどの高出力画像とRADの美しい独白的音楽でカバーし、歴史的な売上を達成したことは偉業であることは間違いない。しかし、新海を好きな人々の間で、変わってしまったと嘆きの声が聞こえていたり、その声は確実に新海の耳に届いていたのだろう。

 

そして、新海は、そうした美しい世界にとって不都合なノイズ、”半地下の住人”をテーマにした社会のあぶれ者の物語を描くことを決めるのであった。

 

第3章 半地下と人柱の物語

本章では『天気の子』('19)についての批評を与える。

3-1 筋

 

これは僕と彼女だけが知っている世界についての秘密の物語だ。それは、まるで光の水たまりのようで、気づけば彼女は病院から駆け出していた。思わず強く願いながら彼女は鳥居をくぐった。あの景色、あの日見たことは全部夢だったんじゃないかと今では思う。でも夢じゃないんだ。あの夏の日、あの空の上で、僕たちは、世界の形を変えてしまったんだ

 

そんな少年の独白で物語は始まる。

 

東京都の神津島での閉塞感のある暮らしから逃れるため家出を敢行した高校一年生の穂高は東京都内の都会へ向かうフェリーの中でオカルトライターの須賀と出会う。東京都に来てからバイトや定職に就こうにも身分証明が出来ず、ろくな集金も出来ず貯金の減りを傍観する日々を過ごし、マクドナルドで働くアルバイター陽菜に商品を恵んでもらう始末だった。穂高はテーブルの下に拳銃を見つける。周囲に見られるとまずいと思い、咄嗟にしまい所持してしまう。

 

苦境に耐えきれず、藁にも縋る思いで穂高は都内で唯一の知り合いである須賀に助けを乞い、IT技術を駆使する労働力として食事付きの住み込みバイトとして働き始める。須賀もかつては家出少年であり、亡き妻との間に生まれた娘である喘息持ちで雨の日は体調を崩しやすい脆弱体質の萌花に愛情を注いでいるが、義母に引き取られてしまいストレスを抱えながら、オカルト記事を寄稿しながら姪の夏美と共に小さな会社を経営していた。

 

そこで忙しなくも、どこか充実感のある日々が流れていた。

 

そんな中で、かつて東京に流れ着いた自分に食料を恵んでくれた陽菜が怪しげな男性2人組に強引にホテルへ連れ込もうとしているところに立ちはだかる穂高、難なく取り押さえられるものの、彼には”武器”があった。拳銃を相手の頭部近傍に発砲、命中はされなかったが、物語と彼の人生の引き金は確実に弾かれるのであった。

 

そこで出会った陽菜の正体と母親を失い困窮しながらも弟の凪と暮らす窮状を穂高は知ることになる。祈りを捧げると雨雲は消え去り、都内の雨は降り止み陽光が差し込んだ。より正確には雨雲と雨量を別座標に転送させる技術だ。この超能力を使ってビジネスを行うことを考える穂高。こうして、家出少年と晴れ女の世界を変革する物語が幕を開ける。

 

100%の晴れ女の噂とビジネスは徐々に話題を呼び、雨雲を消し去り、人々と天空に晴れやかな景色を描き続けるのであった。TVで姿を撮られてしまったことを受け休業、しかし休業理由は、それだけではなかった。陽菜は緩やかに衰弱していた。

 

穂高は未成年誘拐事件として警察の捜索を受け、須賀は娘の引き取りのために裁判所の心象悪化を恐れ退職金を渡し事務所を追い出す。そして陽菜の住居にも警察の手は広がるも、穂高と陽菜と凪の3人は、家を飛び出し逃避を開始する。一方その頃、陽菜の雨量転移の弊害として東京都内に大災害クラスの大雨で都市機能は麻痺しつつあった。

 

行政の追っ手を掻い潜るも、陽菜の体は限界を迎えていた。肉体が消失しつつあり陽菜本人が自身の終幕を覚悟していた。”3人の架空家族”の終焉、陽菜がいなくなれば、東京に降り注ぐ雨は降り止み災害は止まる。残酷な二者択一が迫り、人柱の宿命が飲み込もうとしていた。

 

朝を迎え、陽菜は消え、警察が穂高と凪を捕まえる。警察署を穂高は逃げ出すことに成功し、夏美の助力を受けながら陽菜が能力を得た廃ビル屋上の神社を目指す。同じく警察署を逃げ出した凪、かつての自分を重ね合わせながら駆けつけた須賀の助けを得て、たどり着いた先では陽菜がいた。

 

青空よりも、俺は陽菜がいい

 

天気なんて狂ったままでいい

 

穂高は決意と覚悟を叫び、陽菜は無事に救出される。そして東京は水没し、3年経った今でも雨は降り止まない。

 

保護観察処分を受け島に戻された穂高は3年の時を経て、大学進学を機に東京へ向かう。そして坂道の上で祈りを捧げる少女を見つける。陽奈だった。

 

抱きしめ合いながら、彼は言う。

 

『僕たちは大丈夫だ。』

 

そして雨が降り止まない東京を背景に物語は閉じる。

 

3-2 君の名は。の別ルート

 

新海の作る作品は、どこかゲーム的な気がする。複数の選択肢が提示され、それを選び取った先に待つ未来を主人公たちは享受する。今回は君の名は。とは反転した構造をしている。瀧と三葉は都会と田舎という地理的相違はあれど、食うには困っていない社会の構成員であり、その二人の恋愛を軸として入れ替わりという特殊能力による喜び、その代償となる喪失を経験し、喪失を打ち消す選択肢を探し、最終的に君を忘れて世界を救う物語だ。ただ君の名は。誠実ではないのは、最後に君もとってしまっている部分であり、この部分に新海は変わってしまったと言われたのかもしれない。

 

この批判を受けて、今作では、社会のあぶれ者たちを軸に、ある種の棄民が自分たちの人生の主人公として自己決定を行なっても良い、社会規範に縛られることなく自分自身の幸福追求のための選択肢をとっても良いと主張している。

 

そして君の名は。とは逆に君を忘れずに消さないために世界を犠牲にすることを選び東京は水没することになる。きちんと捨てた代償を見せている。ただ、ここでも不誠実に感じるのは水没した東京での死傷者や苦しむ人は全く介在してこないことだ。

 

捨て去ったものの被害は徹底的に描くべきだし、それでも陽菜を救って良かったのかという真剣な迷いや逡巡は描いて欲しかった。

 

これでは

 

『抑圧されている若者の皆さん、自分の信じる道を進んで、その結果として社会に迷惑がかかっても、なんだかんだで苦しみながらでもしぶとく大人の皆さんは生きていくんで大丈夫でーす、だからあなたの人生の主人公はあなたなんで、お好きにどうぞ』

 

と言っているように見えてしまう。

 

ハッピーエンドに出来ないからこその配慮なのかもしれないが、配慮するなら、そもそも大災害セカイ系に手を出さなければ良いのでは、と感じる次第だ。

 

3-3 人柱となる人々

 

この作品では、前回の”とりかへばや物語”という古典引用と同じく、今回は”人柱伝説”を下敷きに構成されている。災害を防ぐために人の命を犠牲にして回避する。ある意味では前作から続く、個人の命か国土か、というローカルとユニバーサルの対立が描かれてきているので自然な挿入と言える。

 

そして、この構造は新海自身にも言える。自身の主張というローカル性と大衆対象というユニバーサル性の対立の中で、自身の主張を犠牲にしながら大衆向けにチューニングされた作品を放ち2016年、アニメの世界を変えてしまった

 

2019年ごろ、『万引き家族』、『パラサイト』、『JOKER』と描かれたものが同時多発的に似ていることが指摘出来、これらの物語群に流れているのは、コミュニティ全体の発展のために見て見ぬふりされてきた社会から分断され取り残されてしまった民の格差に対する絶望の物語が描かれている。

 

本作では、血のつながらない仮想家族、虐げられてきた社会に対する叛逆、といった共通するものを感じる。帰結こそ違えど、言っていることは同じで、誰かが犠牲になることで成り立つ社会は本当に正しいのか?という問いだ。

 

虐げられた人々に目を向けることもなく、自身の人生の主人公として自己中心的に生きている人間は、利他的な人間の犠牲の上に成り立っているだけで、正義を追い求めるよりも、善意を今一度思い出すべきではないか、という事も同時に問われている。

 

社会が便利なもの、コスパの良いもの、合理主義的を推し進めた結果、捨て去られてしまったものの叫びを聞くべきなのだろう。しかし、人は変わらない。

 

特に、この国、日本においては構造上の不備があっても、その不備を修正するためには強制力を必要とし、強制力を介入させるためには負の前例を生み出す必要があるのだ。3.11原発事故が当時の泊原発上越地震の影響で停止していたための経済状況から堤防設置を渋り事故を起こしたことが問題視されたように、前例がなければ組織は動けないのだ。

 

その意味で、それならば虐げられた人々の社会への反抗は世界を変えるだろうし、それはミクロに見れば悲劇だろうが歴史というマクロに見れば良いきっかけに見えるという君の名は。の構造にも似たものが見て取れると言える。

 

低賃金で働かされる労働者や若者、社会的弱者、彼らが社会に牙を向いた時、その時何が起こるのか、それは2022年安倍晋三暗殺という形で実現された。被疑者は新興宗教2世の立場で、母親の過剰献金によって家庭が崩壊し、その恨みから穂高のように銃弾を放った。その銃弾は日本社会を変え、投票率の低さから組織票を持つ新興宗教団体との癒着を軸として選挙に勝ってきた政権与党のあり方が連日議論されている。

 

しかし、このテロリズム讃美的な理論は危険すぎる。

 

だからこそ、そうなる前に、前例がなくとも強制力を介入させ、事態の収拾に動く必要があるのではないだろうか、悲劇をトリガーにしなくても世界が変わる、そんな未来は訪れるのか。晴れ渡る空のような笑顔には、都会を水没させかねんとする大雨のごとき苦しむ民の涙の犠牲を要する社会の変容、それを新海は訴えたかったのかもしれない。

 

第4章 扉と鍵

 

本章では『すずめの戸締り』('22)についての批評を与える。

 

4-1 筋

 

震災で母を失い叔母の環によって育てられた九州の田舎に住む女子高生の岩戸鈴芽は、いつも変な夢を見ていた。

 

不思議な世界を彷徨い歩く中で母親に似た人物を見つけ、近寄ろうとするところで、いつも夢から覚めてしまう。

 

そしてある登校日、廃墟がどこかにあるか?と聞いてくる不審な青年の宗像草太に声をかけられ、廃村の温泉街を教える。草太を心配した鈴芽は後をつけると、そこに大きな扉を見つける。そして扉の近くにおもむもに置かれた石を土台から引き抜いてしまった。

 

石は姿を変えて、消えてしまう。そんな異常な経験の後、鈴芽は学校へ向かう。

 

平和な学校での休憩時間を緊急地震速報がかき消し地震が襲いくる。鈴芽には温泉街から巨大な物体が這い出ているように遠くから見えるも、周囲の面々にはそれが見えないことに疑問を覚えながら温泉街へ向かうと、そこには草太がおり、協力して命からがら祝詞を唱えて鍵をかけて扉を閉める。怪我を負ったソウタの治療のために鈴芽は自宅に招き入れる。

 

そこで、草太の口から、あの扉は”後ろ戸”であり、その後ろ戸から這い出たミミズが地上に降り立つと大地震を引き起こし、それを阻止する生業、閉じ師が自身の正体と説明される。そして鈴芽が引き抜いた石は要石であると説明していた刹那に要石は猫の姿で出現し、草太を片足の壊れた鈴芽の椅子に姿を変えられてしまう。

 

猫の姿をした要石を追う椅子となった草太を追って愛媛県へ向かうフェリーに飛び乗ってしまう鈴芽。民宿を家族で経営する少女の千果の助けもあって、何とかノープラン旅行を成立させていく最中、猫の姿で周囲の目を引きSNSで”ダイジン”の名前で話題になる要石を追跡する二人は廃校の中に後ろ戸を見つけ無事に閉め、災害を回避する。

 

そして要石を追うように、次は神戸へ向かう閉じ師コンビ。スナックを経営する二児の母であるルミの助けを受けて、ノープラン旅行神戸編がスタートする。そして今度は遊園地の後ろ戸を閉じることになるも、後ろ戸の向こう側は”常世”であり、現在を生きる人間は侵入できないことが発覚する。

 

そして次は、東京へ向かい、閉じ師としての草太の家にある資料から事態解決の糸口を得ようと考える。そこで要石は2つあり、猫じゃない方は東京にあることが判明する。二人の逃避行も限界の様相を呈し、草太の友人で草太の欠席具合を気にした友人の芹澤が自宅を訪れたり、鈴芽の保護者である環からのヒステリックな状況報告を求めるメールが殺到する。

 

そしてミミズが発生、止めようと奔走するも、そこで草太は自身の宿命を悟る。自分自身が要石になってしまった事を自覚し、ダイジンから要石である草太を用いてミミズに刺さないと数十万人規模の犠牲者が出るよ、どうするの?と個人か多数の二者択一を迫る。そして泣く泣く鈴芽は草太を用いてミミズを鎮め危機を脱する。

 

草太の祖父であり、閉じ師であった羊郎は犠牲になった草太は誇りに思っているだろうと述べると同時に常世に行くためには唯一の後ろ戸を通れば行けると伝え鈴芽は過去に通った記憶のある後ろ戸を探して、生まれ故郷の宮城へと向かっていく。その道中に、遂に環に見つかり、草太の友人の芹澤も絡み、複雑なスリーマンセルによる宮城ツアーが始まる。まぁダイジンもいるので3人と一匹のツアー。

 

道中に、鈴芽は環の自身の思いを重すぎると表現し、環は鈴芽を引き取ることはしたくなかったと互いに強くぶつかってしまう。その時に環にサダイジンが取り憑いてることが判明するなどてんやわんやの中、自宅に一人向かっていく鈴芽

 

かつての自宅を捜索すると"3.11"以降が黒塗りになった自身の日記を見つけ、かつて通った後ろ戸のありかを日記から見つけ常世へ入る。そこで巨大ミミズと格闘しながら、自身を犠牲にしてでも草太を取り戻す決心を受け、2人のダイジンは要石に戻り人間の姿になった草太を取り戻し、要石を用いてミミズを退治することに成功し平穏が到来する。

 

全ての時間軸が交わり合う世界において、幼少期の自分を見つける。幼い頃に彷徨っていた際に見た姿を母と思っていたが、それは今の自分であり、過去の自分を助けていたのは”今”の自分だったのだと鈴芽は気づき、幼い過去の自分に椅子を渡し、見送る。

 

宮崎に帰還し、時が流れ、母親の職業であった看護師を目指す中で、あの日と同じ場所で草太を見つける鈴芽。そして彼に向かって声をかける

 

『おかえり』

 

長い3部作は幕を閉じる。

 

4-2 集大成?

 

本作品、新海誠の集大成と宣伝されており、確かに筋を見ても明らかである。物語の構造を見ても、男女の出会い、喪失、復活、帰結の流れも同じ。そして作画は圧倒的。音楽もお馴染みのRadであり、独白要素は消えていたりMV風演出は控えていたが、この作品、分かりやすく表現するなら、君の名は。と天気の子を足して2で割ったものとなっている。

 

ローカルとユニバーサルの2者択一、前者を取った天気の子、後者を取った君の名は。この2つの物語を組み合わせた構造を今回は採用しており、途中までの物語は君の名は。のように全体の幸福のために人柱になる男、そして人柱を解放する物語が後に続く。最後のシークエンスは『TENET』のように時間軸の異なる自分が自分を助けるという展開となっている。

 

前作における若者の犠牲は奇しくも前作公開の翌年に2020年コロナ禍によって実現し、苦しい境遇に対して暴力的な解決を図ろうと安倍晋三暗殺事件が2021年に発生。新海の前作が予言書のように数々の事象と符合している。

 

さらに、本作は、これまで通り、日本の神話的な、地震の発生と要石による災害回避が描かれており、メタを脱ぎ捨て3.11を正面から描こうという気概が見て取れる。しかし個人的には3.11を描ききれたのか、は疑問を残すところである。

 

そもそも3.11とは地震”だけ”のものなのだろうか。3.11とは地震津波原子力災害の3点が複合的に重なったからこその災害だ。

 

君の名は。で土地が壊れる”地震”を描き

天気の子で水害という”津波”を描き

 

残された原発事故”を何故、描こうとしなかったのか。一部では3.11を真正面から描きすぎていたというが、むしろ、自分は描ききれていないのではないかと思うのだが。

 

やたら気を遣っているように見えるが、それなら3.11をテーマにしなければいいし、やるなら原子力事故のメタ物語を3部作最終作ではやって欲しかったので、この志の中途半端さには正直苦しむところである。

 

また、道中に出会う人が、あまりにも性善説に則りすぎており、風景の一部でしかなく、最後のシーンに向けた伏線にさえなれていないのは、お馴染みの長編における大作画作品の筋の犠牲なのかもしれないが、もう少し何か出来たのではないだろうか?

 

本編から愛媛と神戸を抜いても作品は成立するのではないだろうか?

 

これなら東京に向かって、祖父と草太と鈴芽の3人で会話させ、そこで要石を巡る設定の落とし込みと草太が犠牲にならないといけなくなった問題の議論、そして草太の人柱としての覚悟と鈴芽の制止、誰かが涙を流さないと誰かが笑えない世界の残酷な構造への批判、を行った後に、それでも取り戻せる方法があるよ、と祖父が伝え、草太の消滅後に復活を鈴芽は目指すと決意させれば良かったのではないだろうか?

 

また、君と世界の二者択一に関しても、これは君の名は。でもそうだが結局のところ、何も選んでもいないし、両得してしまってる問題も今回発生していた。せっかく天気の子で失ったというのを描いたのに、また振り出しか、いったところだ。草太か地震のどちらか捨てたものをきちんと描かないのは、残酷すぎるかもしれないが”逃げ”にしか思えない。

 

大衆に迎合するために二者択一の両得に落ち着いてしまうというのも、そういう意味では”集大成”なのかもしれないが。

 

原子力災害をメタ構造に取り込んだ、それこそシン・ゴジラのような設定で、君の名は。が君も世界も取る物語、天気の子が君を取って世界を捨てる物語だったのなら、残された最後の構造である、世界を守るために君を捨てる物語、これをやるべきだったのではないだろうか。ここに真っ直ぐ取り組んで欲しいと思っていたので非常に残念な設計だった。

 

 

4-3 シン・海誠

 

本作、一言で言ってしまうと、新海誠のベスト盤のベスト盤になっている。前2作という新海誠の良い部分の抽出成分をさらに濾過して濃度の濃い新海作品となっている。そしてだからこそ構造は全く同じだ。

 

男女の出会いと関係の構築

愛する男or女の喪失

喪失を取り消す試行の模索

結論の享受

 

しかし濃度が濃いため、今までのメタファーのオブラートが破けて露呈するようなテーマ性が見える。3.11である。これは明確に描かれてしまっている。そしてこれは良くも悪くも観客の知性を相当に低く見積もっている出来であり、ある意味では大衆向けに特化し続けた必然の帰結と言える。

 

作品とは言わばメタ構造の発明に等しい。もちろんドキュメンタリーもあるが、作為が挿入されたならば、そこに主張が発生し、その主張を直接的表現を用いずに観客に訴えかけるメタ構造を発表するのが作品であろう。

 

夏目漱石がI LOVE YOU を”月が綺麗”と表現したように、暴走するF1原発ゴジラとしたように物語とは間接性の追求が最大の論点になる。しかし今作はメタがほぼない。RADの音楽に独白を譲らずMV的な編集もミニマムになってしまっているので、説明的な映像が多く、どうしても映像視聴ハードルの異常な低さが引っかかる。

 

ただ新海本人としてもハードル下げは本意ではないのか、今作は”赤い糸”の存在が薄い。それは新海としては3.11を風化させずに悲劇の結末を受け入れる物語を描きたかったのだろう。ただ大衆向けという後ろ髪を引く引力が作品を中途半端なものにしてしまってもいるが。

 

言わば新海は君の名は。を何度も作り直しているだけなのだ。3.11をテーマに大災害の回避というユニバーサルな悲劇回避ゲームとキミとボクの物語をリンクさせるセカイ系作品として赤い糸災害回避系を3作作り上げている。ここに試行錯誤は見えるが、ある意味では作品のメタ構造を破壊し続けてきたと言えよう。

 

血も涙もない表現を使うと、バカの涙を誘うために作品のハードルを下げ続け集金に徹しながらも、それでも”作家”としてのささやかな抵抗を込めてきた3部作の終点が本作なのだろう。

 

終わりに

 

新海誠の大災害回避赤い糸ファンタジー3部作、全ての鑑賞後の自分の感想は

 

次の作品で新海誠の真価が問われる

 

であった。

 

なぜなら同じことをし続けてるだけだから。同じ構造物をひたすらに作っているだけで、そのブラッシュアップもアップデートというよりはファインチューニングに近く、そこに構造変容を見出すまでには至らないからだ。

 

自分はとても心配している。

 

ガンダムを作らされ続けおかしくなった富野由悠季

エヴァを作らされ続けおかしくなった庵野秀明

 

と同様の道を辿って欲しくないのだ。

 

一旦はユニバーサルな大衆向けから離脱し、ネットフリックスでオムニバススタイルの短編集となる映像作品を作った方が作家寿命を考えても良いと考える。

 

大衆に迎合せず、視聴者の”予習”を前提に一番得意な脱構築に徹することで庵野秀明エヴァの人からの脱却を見せた。

 

新海は3.11三部作の後に、どこへ向かうのだろうか?

 

大作画時代が支配する今、庵野と新海のブレイクとなった2016年を契機にアニメ映画の興行成績はインフレ化し、作画の出力は上がり続け、音楽と作画の高出力を軸とした作品の支配力は上がり続け、その帰結が2020年の鬼滅による歴史的快挙だ。

 

実は、次の覇権の概形は皆、理解しているはずだ。

 

高出力の作画と音楽に完備性のある脚本を付加したもの。これが次の覇権を担うことは誰もが分かっている。だからこそ細田は苦手な脚本制作に挑み続けているのだろう。新海もこの両取り路線に乗るはずだ。

 

さらに、庵野細田も新海も共通していることとして、演技の属人性の破壊がある。肉人形劇を見せたシン・ゴジラもそうだが、演技力は所詮個人の感想に過ぎず、最小限のセリフであれば違いもミニマムに出来る。細田と新海はディレクションでカバーする形で経験不足の若手タレントを声優に使うこともある。おそらくだが、ここで浮いた金銭を作画と音楽に注ぎ込むためなのではないだろうか。

 

作画と音楽は結局金がかかる。そうなるとかつての新海のような辺境からの革命家の出現を封殺してしまうのは皮肉なのだが。

 

果たして次回はどう打って出るのだろうか、3.11大災害回避ゲームは満腹なので次こそは新規性の提出に期待したい。

#ブルーアイズの頭髪を救いたい

 

始めに

 

秋ってあったけ?

 

近年よく聞かれる言葉ですが、そんな寒々しい冬が顔を出してきた今日この頃、某有名人に買収された某SNSのTLを眺めていると

 

最近、スペースでUTDを救いたい、弊ブログでもLIVを救いたい、チャビを救いたい、と救いたいシリーズが好評らしく、少なくない方々に閲覧してもらえているようでありがたいですねぇというお気持ちなのですが、質問箱の方に

 

牽牛星さん、ユベントスを救ってください

牽牛星さん、イタリア経済を救ってください

牽牛星さん、スターリングを救ってください

 

ありがたいですねぇ。

 

そんな救世主たるメシア牽牛星に対して、頭髪を救って欲しいと。

 

賢明な読者の方々は(ヘスススアレス風)困惑されているでしょう。

 

え、ブルーアイズって誰?

 

ブルーアイズさんはツイッタラーの方で元GKコーチという肩書きで戦術的な観点や指導者の観点からマンチェスターシティについて丁寧に解析されているタクティカリスタの方。

 

ということで今回はブルーアイズさんの頭髪を救うべくブログ記事を執筆しようと考えている次第です。

 

僕自身は薄毛で悩んだことはないのですが、近年悩まれている方も少なくないですし様々な情報や治療法が飛び交っていますね。薄毛で嬉しい人っていないに等しいでしょうし、ご自身でネタにされていても本当は傷ついているということも。ブルーアイズさん当人は明るい方ですが、本当は気に病まれている可能性もあるでしょう。

 

以前からブルーアイズさんが薄毛自虐を聞いて、AGAという分野を自分なりに学習し、今回は救っていくことにしよう。

 

①課題編

 

AGA(男性型脱毛症)は近年では注目されています。残念ながら我が国では横文字に飛び付き本質を曖昧にする習慣があり、SDGsが食い扶持にされているようにAGAも同様にアフィリエイトブログによって薄毛に悩む方を食い物にする畜生がいるのも事実。

 

 

まず、そもそも多くの人間は栄養失調です。

 

何を突然言い出すのか?と言われそうですが、実際に国が発表している一日に必要な栄養素を満たした生活をしている人はほとんどいません。どうしても栄養に偏りが出てしまい必要な栄養素がいくつかは必ず欠落しているはずです。

 

そもそも毛髪はなくても生命維持には一切の支障はありません。ですので肉体は摂取された栄養素をプライオリティの高い順に分配し、生存活動に不可欠な器官への分配が終わった後で肌や爪や毛髪といった先端、表面部分への分配へとフェーズがシフトします。

 

ゆえに、AGAというのはいくつかの要因が考えられますが、治療云々の前に栄養素の十分な摂取が出来ているかを見つめ直す必要があると思います。足りていない部分はサプリの摂取も考慮すべきでしょう。

 

特に油物やアルコールは血流にとってはあまり良くなく毛髪の育成を阻害し、その結果十分に育たず短く細い毛髪が抜け落ちていくことも考えられます。

 

例えばこういう食事とかは非常に良くないでしょう。ラーメンは美味しいですが、やはりバランスを考慮する必要はあるでしょう。

 

 

遺伝的影響もありますが、食事による栄養状況と心理的な精神的問題など複数の要因が重なっているとしても、医療にかからずに出来る事としては食事のバランスを整える事が重要に思えます。

 

乱れた食生活

不十分な睡眠

喫煙

飲酒

 

こういった乱れの蓄積が結果としてAGAを進行させている可能性があるので生活の抜本的な見直しが求められるでしょう。

 

そもそもメカニズムとしてのAGAの話をすると

 

男性ホルモンであるテストステロン、これが頭皮に存在する5αリダクターゼと結びつくとジヒドロテストステロンという悪性の男性ホルモンを生み出します。そして、これがアンドロゲン受容体と結びつくことで毛髪はダメージを受け、結果として毛髪は細くなり抜けやすくなります。その結果としてAGAを発症するというのが一般的なメカニズムです。

 

5αリダクターゼは遺伝的な要素が強いのではないか、とも言われており、ここの部分をもって親戚にハゲがいると自分もいずれハゲになると言われるのでしょう。また男性ホルモンが強そうな男性性の強い方がハゲになりやすい理由もメカニズムを考えると納得です。

 

ブルーアイズさんのツイートを見ると、ラーメンの写真が複数枚確認され、当人の油っこい商品を好んでいることが推察されます。さらに欧州サッカーをリアルタイムで積極的に見ているにも関わらず定職に就いているので、睡眠時間は不安定かつ熟睡できているかも否定的な予想が成り立ちます。

 

またストレスも抱えているらしき言動も散見され、現代社会で生きていく上でストレスは避けて通れないとは言え、ストレスの軽減は考えたほうが良いでしょう。

 

 

②解決編

 

上で挙げたように食生活は見直す必要があるでしょう。

 

5αリダクターゼの発生を抑制出来るイソフラボンは有用で、またミネラルとタンパク質を積極的に摂取していくことで毛髪の育毛を促進する素地を作ることが求められます。

 

そして、ここまでの非投薬による療法とは別に医療の話をしていきます。

 

脱毛症の治療に関しては複数の治療を実施していくことが要求されます。

 

それは、

 

毛を残す、増やす、育てる

 

この3つになります。

 

ゼロからイチを作る”増やす”

ゼロを作らない"残す"

イチを増やしていく”育てる”

 

これらの3つをフル稼働することが求められます。

 

ミノキシジル、ロゲインは血行を促進することで育毛と同時に毛髪を抜けにくい太い毛に変えることが出来るそうです。

 

プロペシアやザガーロは5αリダクターゼの発生を抑制し毛髪の抜けを防ぎ、頭皮の残存毛髪を守り抜くことを可能にするそうです。

 

副作用に関してはまちまちで、全く出ない人がいたり、頭がクラクラしたり急激な眠気に襲われただとかブログベースの収集ですが人それぞれなのでしょう。

 

ただ、読むと、どこどこクリニックは最高だ的な宣伝ものが多く情報がどの程度正しいかは、きちんとした医療機関に行くのが望ましいと言える。

 

クリニックに関しては、日本皮膚学会の治療方針ガイダンスに従って戦略が練られるそうなので、そこまで治療方針に差はないと思います。ただ上記のように副作用が出た際のことを考慮すると、きちんと患者にこまめに向き合い信頼関係を築けるお医者さんを探すことが重要と言えます。金儲けに走る人も少なくないので、ご注意あれ。

 

 

③提言編

 

ここまで長々とAGAについて書いてきましたが、では、どうすれば良いのか。こうしている間にもブルーアイズさんの毛髪は抜け落ちているというのに。

 

安心してください。僕は常に、文句を言う時は同時に対策と提言を実施してきました。UTDが苦しかった時はアムステルダムユナイテッドを目指せ、そしてコアチームをアヤックスとしてチームの再編と方向性を定めよ、と言い、エリクセンアントニー、リサンドロマルティネスを補強し監督テンハーグの元で、栄光へ歩み出しています。

 

LIVが苦しかった時には、めちゃくちゃな配置を整えれば大丈夫だ。選手の質は担保されているしネガトラ時の中盤空洞を防ぐために無秩序な配置を辞めれば十二分にタイトルレースに関われると提言し、LIVはシティをウノゼロで勝ち切り光を灯した。

 

バルサが苦しかった時には、レヴァの最終生産能力を限界まで引き出すためにレバミュラのバルサver.を作り、後ろの方にもインテンシティを足してドイツ化を目指し動的な構造も盛り込むべきと提言した。どう帰着するかは不明だがリーグではフレンキーを用いた新たなモデルに挑戦しているし、未来は明るいはずだ。

 

UTDを救いたい

LIVを救いたい

チャビを救いたい

 

救いたい3部作は、常に問題点の整理と解決策の提案で成り立ってきた。

 

今回もブルーアイズさんの頭髪を救うために、AGAの基本知識を軽くまとめ、主な問題点もまとめてきた。そして解決に向けた話もさきに述べた。

 

ここからは具体的に3つの提言を行う。

 

1、通院する

 

これは当然ですが、プロのお医者さんに症状を説明し助言を仰ぐことが大切だと思います。素人がぐだぐだ語っていても何も解決しないでしょうし、プロの意見を聞きながら具体的な治療方針を作成することが大事。

 

ただ前述したように、集金に特化して患者に向き合ってくれない人も少なくないらしいので、複数のクリニックに出向き、話を伺い信頼出来るドクターを見つけることが大切。

 

こまめに相談に乗ってくれるのか

治療方針の説明が画一的でなく丁寧に質問にも応じてくれるのか

治療費用が相場と著しく離れていないか

 

こういった部分に着目することが大事。

 

AGDの治療は、体験ブログなどを漁ってる限りにおいては相当数が満足いく結果を得ているらしいので、空振りに終わる心配はそこまでないのかなと。

 

2、大豆を食いながらバイエルンを応援する

 

とある調査機関によると英国人男性のストレスの原因のトップが、贔屓のサッカーチームの挙動によるストレスであったことが報告されました。

 

ブルーアイズさんはマンチェスターシティのサポーターで知られ、巷ではシティズンはあやてんとブルーアイズの2大巨頭だと、よく聞きます。

 

マンチェスターシティは世界のリーグの中でも競争力がありひと試合の動向いかんで趨勢が決まってしまう目が離せないリーグでハラハラドキドキする魅力があり、監督のグアルディオラは奇策ハゲの異名で知られる通り、誰も予想だにしないことを平然とやってのけます。

 

これではブルーアイズさんの抜け毛は止まりません。ただでさえ欧州サッカーは日本時間深夜という定職もちの方には厳しいにも関わらず、この緊張感とストレスはブルーアイズさんの毛根にダメージを与え続ける。

 

そこで提言したいのは、いっそ贔屓チームを変えてしまう。競争力があまりなく、大抵の試合に勝利し、かつブルーアイズさんの好きなサッカーに関すること。となると思いつくのはブンデスリーガバイエルンミュンヘンです。

 

CLくらいしか主だった頓挫もなく国内では10年規模で支配力を有しているチームならストレスなく見ることが出来るはずです。

 

薄毛治療のために、ぜひバイエルンミュンヘンを応援してほしいですね。

 

さらに観戦スタイルです。深夜サッカーを見ているとお腹が空いてきますよね。そんな時、間食をしてしまいがち。これは食生活が乱れてしまう。

 

しかしピンチはチャンス。

 

イソフラボン、ミネラル、タンパク質を摂取しながら見れば良いのです。

 

例えば大豆を食べながらバイエルンを見たり、ワカメを食べながらバイエルンを見たりすることでストレスの少ない環境で5αリダクターゼを抑制するという最高の治療法を実施することが出来るのです。

 

ぜひ、ブルーアイズさん、バイヤンを応援しましょう。大豆を食いながら。

 

おかしいと笑われた時には、言ってやりましょう。

 

Mia san Mia(俺は俺なんだ)

 

ってね。

 

 

3、テンハーグ男の娘風俗縛りの解放

 

そしてストレスを軽減するために重要なのがストレスの発散です。大豆バイヤン戦法に加えて更なる発散方法を提言します。

 

忘れるんだ、人間には考えない能力が備わっている。

酒、ギャンブル、女、そういうものを使って忘れようとする。

 

 

僕の好きなアニメ”Devilman Cry baby”のセリフです。

 

酒とギャンブルはあまりよろしくないです、そうなると女です。

 

ブルーアイズさんは以前、テンハーグのユナイテッドがプレミアリーグを優勝すれば男の娘風俗に行く、と宣言をしていました。

 

しかし、これは罰ゲームとして挑発的なツイートをしたというより、本当は行きたいけど、良いキッカケがなくって、仕方なく言ったのではないかと思うのです。

 

しかし、この発言はユナイテッドのサポーターの方には辛い発言に思えるはずです。お前らの応援してるチームは優勝する確率は低いと遠回しに言われているように感じ腹を立てる人もいるかもしれません。そして男の娘風俗に従事されている方も罰ゲームの対象にされたようで悲しい気持ちをしているかもしれない。

 

こうしてブルーアイズさんの敵対因子を作ってしまい、攻撃的な言動でブルーアイズさんを苦しめてストレスを与えるかもしれない。バイエルンと大豆の効果が無に帰してしまうかもしれない。これはいけない。

 

そこで、テンハーグ云々の縛りを解放し、いっそ息抜きに男の娘風俗に行くのはどうだろうか?UTDが勝つ度に貯金して、一定金額に達すれば行くかどうかを考慮するという内容なら

 

ブルーアイズさん→ストレス発散でジヒドロテストステロンが進む

ユナサポ→勝つたびにブルーアイズさんの貯金も貯まり一緒に喜べる

男の娘風俗従事者→いつか来てくれるし見ていて面白い

 

こんなことがあって良いのかという3者が喜ぶ形、まさに

ですねー。

 

是非とも検討してほしい。

 

 

最後に

 

世の中で薄毛やAGAで苦しんでいる人は少なくないと思う。過重労働、崩れる睡眠バランスと栄養バランス、名もなき苦しい毎日が残すストレスという副産物。その結果として生じる様々な問題。

 

現代における重要な疾患の一つであるAGAや精神疾患に関しては、積極的に病院やクリニックに行って、お医者さんの意見を伺うことは大事に思える。上記の事柄が、同様の症状に苦しむ方の一助を担えていたら至上の喜びである。

 

さて、ここまでUTDを救い、LIVを救い、チャビを救い、第4弾としてブルーアイズの頭髪を救った今回、まぁ坂道で言うところの、乃木坂、欅坂、日向坂を作った後の吉本坂のようなものと受け止めてもらえれば。

 

次は果たして誰を救うのか、

 

おいおい、アッレグリは救わないのかー。

おいおい、W杯も始まるし森保JAPANを救ってくれよー。

 

そんな声のこだまする中、次回も、この凡人の駄文にお付き合い願えれば幸いだ。

 

多分、次は救いたいシリーズではなく、いつもの脱構築ヲタクによるアニメ評論記事になると思いますが笑。

#チャビを救いたい

チャビ・エルナンデス。言わずとしれたFCバルセロナのレジェンドにして、バルサ下部組織が輩出した最高品質のIH。無数のルックアップ、そこから最適な場所に最適な強度で極上のパスを届ける天才パサーはバルサに多くのタイトルをもたらしバルセロニスタのみならずフットボール愛好家から尊敬を集めたサッカー界の至宝。

 

そんな男がカタール”留学”を終え、指揮官としてバルサに帰ってきた。昨季途中就任し救世主として迎えられたレジェンドの率いるチームは昨季の暗黒時代の入口に飲まれることなく希望を残し今季、勝負をかけた。

 

未来を切り売りしチャビバルサで何度目かの黄金時代を建築する大博打に打って出た。

 

そして、現在、チャビバルサはCLGL敗退の危機に瀕している。

 

なぜ、苦しむのか、どうすれば救われるのだろうか。

 

今回はチャビバルサの考察と課題、そして解決策の提案を実施することにした。第1章ではチャビを形成したと思われる要素を並べ、第2章では監督としての挙動を雑多にまとめ、第3章では課題の指摘と解決策を提案した。

 

 

 

第1章 選手チャビ

 

1-1 ペップ時代

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ファン・ハール時代に抜擢されたチャビはライカールト時代の栄光(と言ってもCL制覇時は大怪我を負っており彼にとっては苦い印象が多いかもしれないが)を経験し、緩やかにサイクルが終わろうとしていた2008年、チームはレジェンド監督の就任を発表する。

 

ペップ・グアルディオラバルサ監督就任

 

チャビは周囲に、バルサが変わること、うかうかしていると振り落とされるほどの厳しい集団になることを示唆していた。

 

そして、その言葉通り、ペップバルサは時代を作りバルサを再定義した

 

チャビは放出間近でバイエルン行きも進んでいたが、ペップが『チャビなしのバルサを想像は出来ない』と言って引き留め、文字通りの大黒柱にチャビは任される。

 

ペップバルサ4年間、4年それぞれにテーマと新基軸は存在したが、一言で言えば”メッシの得点能力の最大化から逆算されたチーム”だった。バイタルエリアでボールを受けて前を向けば一点、この必殺技をコンスタントに連発してハメ技で殴り殺す事に特化したチーム

 

メッシはバイタルでレシーブするため積極的に中盤に参加する10番と9番の混合種としての偽9番が採用され、両翼はメッシへの突撃を牽制するためCB飛び出し跡への突撃が可能でバイタルを解放するために両SBを押し込むことを目的とした裏抜けが得意な非純正WGのペドロとビジャが起用された。

 

狭いバイタルへのボール供給が可能な選手が中盤では積極的に起用され、チャビ、イニエスタブスケツ黄金の中盤を形成し、カンテラ上がりの脊髄反射の最適配置理解力を活かしたボール保持による支配がもたらされた。

 

4年間で獲得可能な19のタイトルのうち、14ものタイトルを獲得した21世紀のエルドリームチームが終焉を迎えたのは、メッシの得点能力の最大化を果たすための必要なパーツを獲得できなかった、より正確に言うとメッシシフトを破れなかったことにある。

 

中と裏を殺して圧縮するメッシシフトを破るには外攻めor高さが求められる。しかし、メッシの得点能力を活かすために特化し続けたスカッドには多様性がなかった。外攻めはテージョとクエンカという経験不足のカンテラーノに任せるほかなく、裏攻めもビジャは大怪我でサンチェスも常時怪我を繰り返す始末。メッシは酸素の薄いバイタルでは生きていけなかった。

 

メッシシフトを破るためには強烈なサイドアタッカーと裏抜けで脅威を与える中央の選手が必要である。このペップが残したメッシシフト破りの”遺言”が具現化される、それは後にMSNと呼ばれることになる。

 

しかし皮肉にも外へのパス配球を遠慮し中攻めに特化せざるを得なくなる苦しみを一番感じていただろうチャビを、この遺産が退団に追いやることになることを、この時の誰も知るよしもなかったのである。

 

1-2 ポストペップ時代

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ペップの退陣、続投路線のビラノバ政権は当人の指揮困難状況に伴いレームダックと化し、そしてビエルサ流と噂されたマルティーノ政権で久々の無冠を経験。チャビ自身もサイクルの終焉を認め、バルサは混迷に至ると思われていた。

 

そしてバルサBでペップバルサを”2軍監督”として見て、ローマ、セルタで経験を積んだバルサとマドリーでプレーした混血の名誉バルセロニスタの到来でチームはペップ時代以来の栄光を手にすることになる。

 

ポストペップの2年間、バルサネイマールが加入していた。エンリケは混血なりのクライフ描像の現代的表現を試みる。そしてペップの遺産をきちんと理解していた

 

リーガ経験のある選手であるラキティッチ、マテュー、ブラーボと堅実な補強に加えて、シュテーゲン、フェルメーレン、そしてルイス・スアレスを獲得した。W杯での噛みつきで半シーズンの出場停止を受けた選手を大金を出して獲得した。この獲得は疑問の声も上がっていたものの、エンリケは理解していたのだ。ペップのバルサがなぜ強かったのか。そしてなぜ五年目を迎えられなかったのか、を

 

メッシというバイタルの支配者に酸素を供給するための抑止力を外と裏に置くエンリケスアレスの謹慎明けにWGで使う準備運動を終えてから、満を辞してエンリケの真の狙いが具現化される。

 

LWGネイマール、CFスアレス、RWGメッシ

 

歴史的なトリデンテ、MSNの誕生である。

 

偽RWGメッシはバイタルに移動し、右サイドはアウベスがカバーするペップバルサ初年度の形が具現化され、ペップが望んだメッシの得点能力最大化模型が実現した。しかし、前線の破壊力を最大化するために、聖域なきハイプレス参加は辞めた。それにより中盤に求められるのは狭いバイタルへの供給よりも3トップの尻拭い力が求められた。

 

この事がペップが絶対的司令塔として寵愛したチャビの地位を揺るがす。求められたIHはラキティッチとチャビより若いイニエスタだった。そしてチャビはリードを守るためのクローザーとして試合終盤にイニエスタと交代しティキナチオを具現化する選手へと落ち着いた

 

自分の居場所はない、そう自覚したのだろう。チャビはバルサ退団を決意する。そしてエンリケのMSN、ペップの見た理想は世界を制圧した。チャビにとって2度目の3冠の栄光が包むカタルーニャを後にする男は中東へと向かっていった。

 

1-3 原体験からの学び

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チャビはバルサで多くの経験を積んできた。LVGの若手の抜擢、ライカールトのタレントとの調整能力とクライフのWG描像への積極的な変更、ペップ時代のカンテラを中心としたメンバーによる栄光と特化する強みと弱み、エンリケ時代の質的優位性を押し出した栄光。そして代表のコアチームとしてバルサが輝き、代表でメジャータイトル3連覇を成し遂げた事

 

これらの成功体験と失敗が現在のチャビバルサに活かされている。外攻めの質的優位を重要視し、ビルドアップからの緻密に組み上げるバルサ流を軸にしながらも最適配置に固執するよりも独力で突破できるWGがいないとボールが回らずに苦しむストレスをスペイン代表でもバルサでも経験していたことは後にチャビバルサを見ると活かされていると感じる。

 

また、ペップ時代の絶対的スタメンとして、エトーやイブラと対立したペップを見ていて、ライカールトの融和政策を取るべきではないかと考えていたのかもしれない。問題児を切り捨てるよりも有効活用する重要性を学んだのかもしれない。

 

ペップがメッシの有効活用に固執していった結果として本当に必要な選手がアンリのような外攻めの駒と裏攻めのエトーだったという皮肉はチャビの目には手駒の多様性を確保しながら特化しきらないバランス感覚の重要性を身に染みて実感していたのかもしれない。

 

オンリーワンのプロセスでナンバーワンを目指すクライフから脈々と続く路線をリスペクトしながらも師事してきた数々の監督から様々な要素を抽出し、カタールで自身の思う実験を施した後に、選手時代の経験を混ぜた合い挽きミンチはチャビバルサというハンバーグに焼きあがるわけだが、その合い挽きの要素は確実に選手時代にあったと結論づけられる。

 

 

 

第2章 監督チャビ

 

2-1 中東にて

 

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カタールに選手時代の晩年を過ごしチャビはすぐさま監督へと転身。そこで実験ラボとしてカタールで様々なアプローチをしていたそうだ。そこで彼が志したフットボールと行動原理についてチャビ自身が語っていたので、分析してみよう。

 

まずボールを支配しゲームを支配する。これが原則だと強調している。そして相手が442で来たと想定した上で話を進めており、チャビは3241システムで説明していた。まず驚きなのがバルサというピボーテである4番を軸にするフットーボールに身を投じた選手でありながら、ダブルボランチを基準としている点である。これは代表でのアロンソとチャビが並んでいた時の成功体験によるものなのか?

 

IHには相手の間に位置することを求めており、両翼は大きく広がり幅を取り相手のDFラインをピン留めすることを求める。ビルド時はDMFを一人おろして4枚のDFラインを形成する。全体では433に変容する。攻め筋としては相手のトップの人数+1をDFラインとして、残りの駒で攻めることを求める。ここは非常にオランダ的。

 

5バック崩しにはポケット侵入をシティのように狙い、プレスに関してはマンツー気味に抑えに行くことを目指す。仮に交わされるのならDFの選手は対人能力で封殺することを求める。

 

自分は大変驚いた。というのもチャビの理想は2ボラSBレスシステムであるということである。より正確に言うとUT性をSBには求めており柔軟な可変に対応出来、またプレスの苛烈さを考えると対人能力も相当に求められるのでチャビのチームでプレー出来るDFは世界最高峰のレベルにあることが求められる

 

この3241システムは本当に恐ろしいビジョンである。と言うより実現するのが大変困難なものと言える。そもそもDFに求めているものが常人のそれではない。CBはSB化可能で、2ボラもアジリティとUT性、SBもCB変換やボランチ変換も求められる。前線の5トップへの要請とは不釣り合いなほどに後方の5名への要求は重すぎると言える。

 

この現実離れしたビジョンの厳しさがアルサッドという人的資本に優れたチームであるが故に暴かれずにスクリーンされてしまったことが、小さくない負の影響を及ぼした。

 

2-2 地獄からの生還

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メッシ退団。いずれ訪れると思われていた歴史的最終生産者の喪失は思ったよりも早くやってきてしまった。ネイマールを失って外攻めの抑止力を失い442へと舵を切ったバルサはローマとリバプールに2年連続の悲劇を経験した。結局のところ中攻めと裏攻めに特化したためペップバルサと同じようにバイタル圧縮による最終生産過程の空転を誘因されるとハイラインの裏を取られるカウンターに弱く一発勝負でのエラーを除けなかった

 

外攻めを失ったチームにとって求められる狭い領域への配球が出来る選手は減っており、大型補強選手、デンベレは耐久力が低すぎて、コウチーニョは偽翼のためバイタルの密度を上げるだけで望んだ外の抑止力になれず、グリーズマンもST系なので外では突破出来ず中に置いてもイマイチであった。

 

かつての覇権は漸次的に失われ、バルベルデが退陣し、セティエン政権では原点回帰が望まれるも、待っていたのはバイエルンによる8-2の虐殺。プライドもズタズタにされコロナ禍で金銭的に苦境に立たされたチームは困った時のオランダ回帰を決意する。

 

ミケルスの撒いた種はクライフが開花させ

LVGとの撒いた種はペップが開花させた

 

種まきのためのオランダ人監督、それがクーマンだった。

 

クーマンは再建を開始する。かつてのオランダ人監督のように若手を使った。アラウホ、アンス、トリンカオ、プッチ、ペドリ、そしてメッシが退団し疲弊したチームは契約切れの選手という古い血を輸血し、チームの柱に年俸削減を迫り、血を流しながらボロボロのかつてのメガクラブはクレの信頼を失いかけていた。

 

そして会長に返り咲いたラポルタは、かつてのレジェンドをカタールから呼び戻す。契約解除金の一部を自ら肩代わりしチームの危機にやってきたのがチャビ。

 

チームの規律の徹底、そして陣容の整理を敢行し、デンベレの再生を促した。アウベスを復帰させ、オーバ、トラオレ、フェランを加入させ、チームは競争力を取り戻す。ペップシティのように5レーンを選手が取りリーガで最終的に2位、しかしながらELでは5レーンを封鎖してきたフランクフルトの前に沈黙しEL敗退となった。

 

緊急事態を無事に防ぎ切ったチャビにバルサは全てを賭ける。レバーと呼ばれた数々の未来に享受するはずの資産を切り売りし資本化し、チームは22/23に全てを賭けることにした。

 

2-3 レバの運用への疑義

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メッシ無きペップがシティで経験したゼロトップでは限界があるという現実に学んだチャビが手を出したストライカーはペップがバルサ退団後にエースに据えたレバンドフスキだった。更にケシエ、アロンソラフィーニャ、クリステンセン、クンデ、ベジェリンを獲得し、チームはチャビを神輿に担ぎ大勝負に打って出る。

 

前年の途中就任時から、チャビは選手時代の経験をかなり活かし近年のトップクラブの選択した戦略と帰結を理解しているように見える。しかしながらチャビはペップとエンリケの仕事の本質を理解していないのでは、と思える部分がある。それは最終生産過程の設定である。

 

ペップは一番得意としたメッシのバイタル解放、レバミュラハイクロス爆撃、そういった必殺技をハメ技のように何度も連発し続けて相手を殴り続ける永久機関を目指す、例えばレバミュラの場合だと、レバの得意技から逆算している。レバはハイクロス、ロークロス、裏抜け、これらを得意としている。ここから全てをデザインしたのがペップバイエルンである。

 

レバにマークが集中しないように補助としてミュラーを衛星STに指定、両翼は突破とクロスを供給出来る同足のコスタとコマン、両翼へのパスコースを作るためにSBは偽SBとしてボランチ変換するように寄せる。CBは裏に蹴れるようにボアテンが中心、GKもノイアーも積極的に裏に蹴る。このようにレバの得意技から逆算し支配構造を作り出した

 

ペップの後任監督で成功したハインケスとフリック、失敗したカルロとコバチの違いは実に単純でミュラーをSTで使ったか否かであることは面白い。そしてバルサにはレバは居てもミュラーが居ないと思えてならない。チャビはペドリにミュラーになってほしいからこそクリティカルな仕事を要請しているのかもしれないが。

 

エンリケはお子様ランチを作ったわけではない。ハンバーグにエビフライにチキンライスと質的優位性のあるものを雑多に並べたのがMSNではない。メッシの得点能力の最大化から考えて作った模型である。なぜチャビはレヴァミュラという既存の最適解に手を出さないのか理解に苦しむところである。

 

ミュラー役を務められるグリーズマンが恋しいところである。両翼にデンベレとフェラン、2ボラにペドリとガビ、SBが中に入る偽SB化などを見てみたい。ところがチャビバルサデンベレの個人能力に依拠した突破に頼っておりSBも偽化してはいない。レバンドフスキという世界最高峰の支配層FWはもっと出来るはずなのだが。

 

ペップとエンリケには出来なかった問題児の扱いはライカールト譲りの融和政策でデンベレを復活させ、手腕を発揮したと言えるが、折角の大補強で獲得したレバンドフスキを中心としたフィニッシュのデザインは改善の余地があると言えるだろう。

 

2-4 質への過剰要求

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2-1でも書いた通り、チャビは基本的に後方5人に対してはUT性と対人能力を求めている。このことにより純正SB的な選手を好まない傾向にあるように思える。デストやアルバをあまり好んでいなそうに見えるのは、CB変換性や万能性の面で物足りないと考えているからなのかもしれない。RBにアラウホを使うのもカタール時代の彼の発言を聞くと納得出来るところがあってSBにSB以外のCBの仕事を求めたり、対人能力を考えるとなるほどなと。

 

というよりもチャビのチームは基本的にSBを有さないことを求めているように見える。ここはペップと似ていてペップも2332のバイエルン、3223,2323のシティといったようにSBは右はCB的な対人タイプ、左はMF的なボランチタイプを使ってきたように、チャビはSBに対しては対人タイプを置きたいのだろう。出来たら両方に。

 

更に4番についても考えがあるように見える。それはピボーテを経由するバルサ流とは違い2ボラによる運用を考えているということである。よりハッキリ言えばブスケツはチャビの求めるボランチではないのではないだろうか?

 

マドリーに惨敗した3-1もそうだが、クロースを止めきれずパスを出されての失点や、そのカバーに誰も帰ってこれておらずボコボコにされたのを見ても対人能力とアジリティといった部分を多く求めるチャビ流に合ってないように思える。チャビバルサは基本的にDFラインとボランチの5人に求める理想が高く、人的資本の質が下がると極端にパフォーマンスが落ちると思われる。だからこそCLのビッグマッチとクラシコを守備陣が怪我で抜けた状態で当たり散々な結果になったのは妥当と言えば妥当なのだろう。

 

更に後ろは圧倒的な個人能力を要求されるが、前方もそうで基本的にはWGの突破力ありきで個人能力を全面に打ち出し、配置を修正して対応することはあまりない。選手のアドリブでの対応に任せており、クライフに似たバルサの選手なら基本的には1VS1勝てるやろ、という謎の期待感が軸になっているように見える。

 

チャビのバルサが今季、格下との対決が続くリーガでは安定した出力を出せているのにも関わらず、CLやクラシコで苦しむのは、この質的優位性が揺らいだ時の対応策が基本的に存在していないのでは、と思えるのだ。

 

第3章 これからのバルサ

 

3-1 課題編

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ここまでサクッとチャビについてのあれこれを書いてきたが、実際ここまでのチャビバルサの主だった問題点を考えよう。

 

①5バックが崩せない

 

これは前述したがチャビ自身が3241の中盤スクエア型の343のようなシステムを用いて442殺しについて語っていたように基本的にチャビシステムは442,4411,4231のようなシステムには極めて有用に機能する反面5バックを敷かれると途端に手詰まりになりデンベレが突破しない限りは、何も起きないという有様である。

 

というのも基本的にチャビは一気呵成に完結することを望んでいる。後ろからのビルドから延々とポゼッションしていても崩しきれない事、チャビの言葉を借りれば”アンチフットボール”に対する人間の群れの前でU字パスをしても埒があかなかった経験からなのか、縦に早く攻めることを求めている。

 

中盤には強度、DFにはUT性と対人能力、この前提があれば良いのだがガビくらいしか中盤に強さを与えられておらず、相手からすると数的優位のところに突撃してくるデンベレは格好の餌食で、デンベレさえ凍結すればレバも怖く無くなる

 

格下でも5バックには手を焼いており、ペップシティではカンセロロールで6トップを作ったり現在ではデブ神とハーランドの個人能力による解決を目指しているが、ペドリがもう少し決定的な仕事が出来るようになると良いのだが、現状ではDFライン含めビルド面においてチャビが満足出来るレベルにないからなのかペドリが援助に顔を出す事も少なくなく低い位置での仕事が続く事もよく見る

 

5バックは極めて強固な壁である。しかし元も子もないことを言えば2人がかりでしか止められない個人能力を持ったアタッカーを抱えていれば事実上相手は4バックなのである。デンベレが右で2人を引きつけて後ろに渡し開いたゲート目がけてパスを差してレバを解放する、といったプレーがあまり見られないのは不可思議である。

 

②格下にしか勝てない

 

正直これはしょうがないと思う。ペップシティも格下虐殺機関であったし、そもそもが同格や格上との対決は大抵がうまくはいかない。ただ、あえて理由を挙げると、絶対的な理不尽な武器が少ないように感じる。

 

皮肉ではあるのだが質的優位性を優先しているチームにしては、相手からするとマークしなければならない武器は少ないデンベレの突破のみだからだ。レヴァは怖いが注意深くマークしデンベレを凍結させれば一定の問題はない。

 

リーガの格下相手だと質で誤魔化せても、一定のレベルを超えると途端に手詰まりになってしまうのは質が足りてないからである。それこそペップバイエルンやハンジバイエルンのようにレバを活かすためにミュラーという影、そのミュラーの影となりながら中盤に強度を与えたゴレツカ、そして強烈な両翼。その両翼を活かすためのSBの柔軟な配置と選択。レバを3トップの中央においておけば、得点は取れるが、強豪相手になると、更なる強靭化が求められるのではないだろうか?

 

そして守備においてはかなり強度の高いプレスをかけている。デザインが希薄な格下チームならボコボコに出来るチャビバルサの1番の武器だ。しかし、これをロングボールで回避されたり、独力でプレス耐性の強さで乗り越えられると、どうなるか?

 

DFはチャビがカタール時代に述べていたように、数的同数での対応が求められるが残念ながらバルサの後方の質は足りておらず対応できない。バイエルンに一向に勝てないのは、ここが一番大きいのだ。

 

マドリーはクラシコバルサに徹底したプランを叩きつけた。バルベルデをRWB化し仮想5バックを設定、この偽WGバルベルデは、もう一つの狙いがあった。ペドリにあえて余裕を与えバルベルデの位置をペドリに引き渡すことである。これでペドリは低い位置、デンベレの突破は5バックで封殺。ヴィニシウスを前残りに出来た、ロベルトは対人能力には限界がある。プレスが交わされカウンターから何度もチャンスを作っていた。

 

あの3-1は必然の勝利であり、バルサの弱点をきちんと理解しチームに落とし込んだカルロマドリーの実力をまざまざと見せつけたといえる。

 

3-2 解決編

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まず、解決には2つのタームスケールで考える必要がある。

 

短期的、長期的

 

まず長期的にはDFラインのテコ入れと最終生産過程のブラッシュアップが求められるミュラー役を務める選手が必要だ。それがペドリというのは心許ない。やはり彼は崩しやアシストの面で閃きを期待する選手でありSTとして得点を稼ぐ選手ではない。

 

出来たらST系の選手、グリーズマンが最適なのだが、ラウタロ・マルティネスのような選手を獲得すべきだろう。システムも4231でブスケツ退団後の混乱も2ボラで回避出来たら理想的と言える。アンスをトップ下、まさしく10番として作るというのも面白いが。

 

そしてDFに関しては3人程度は補強が必要である。可変しての3241を実行するにしても前線からのハイプレスをかけるにしても後ろのインテンシティは明らかに不足している。数的同数でも守りきれるような守備職人は欲しいところだ。それこそUT性もあるグヴァルデヴォルのような選手は抜群にフィットするだろう。

 

前はレバの得点能力最大化の模型作り、後ろはUT完備の強化と質的能力の増強

 

これが求められるだろう。

 

しかし補強はいきなりは出来ない。現状では調子の良い選手を中心に漸次的に理想型に近づけていくしかないだろう。その意味でジェネリックミュラーとしてメンフィスをIHで用いてみるのは面白い。前述したアンスももっと多くの出場時間で見てみたいところだ。

 

そしてチャビバルサの最大の課題として配置に工夫がなさすぎることが挙げられる。各選手が持ち場所を守るだけでは、相手は慣れてしまい対応されてしまう。パスは相手を動かすため、配置は相手を狂わせるため、より積極的にポジションを交換したりしてマークする相手側を幻惑することが求められる

 

それこそアナーキーなフレンキーを3バックの中央に使って、フリーマンのリベロとして使ってみたり、前線ではアンスやペドリ、ガビらが積極的にぐるぐるとポジションを交換する挙動に期待したい。

 

 

3-3 オンリーワン

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ジミーホーガンという始祖がオランダ、オーストリアハンガリーに撒いたタネはヴンダーチーム、マジックマジャール、そしてアヤックスのCL3連覇を産んだ。トータルフットボールの具現を目指したミケルスは1917年にバルサ指揮官に就任し、その流れをクライフが受け継ぎバルサアヤックスからインポートされたフットボールを独自解釈しオンリーワンのクラブへと変容し、そしてライカールト、ペップ、エンリケによってオンリーワンのプロセスでナンバーワンを掴み取るという究極の理想を実現し、世界有数のブランド力を有している。

 

しかし、このオンリーワンの十字架の重みにバルサは耐えられなくなってきている。独自の文化は世界各国に受け継がれ優位性を失い、ソシオ制は衆愚政治を生み、カンテラも供給が滞るようになっている。

 

この現状を見て、チャビはトータルフットボールの新たな形、クライフ主義の王位継承者としてのフットボールではなく妥協されたリベラルな立ち位置をとっているように見える。バルサの保守的建築物を期待したクレにとっては意外に見えるかもしれない。

 

モウがマドリディズモを実利主義と翻訳しマドリーの騎士道的精神を変容したように、チャビはバルセロニズムを書き換えようとしているのかもしれない。オンリーワンのバルサという幻想を捨てようとしているのか。

 

本当にオンリーワンは不可能なのだろうか?

 

オンリーワン、独自性はどうやって生まれたのか?それは歴史に答えがある。

 

1917年のミケルス上陸によるアヤックスインポートである。そしてバルサは100年に渡り、このアヤックスサッカーをカタルーニャ風に書き換えることにより、美しく勝つという美的感覚と様式美を追求し続けてきた。今、バルサを見て、アヤックスのパクリとは誰も言わないだろう。アヤックス側から見ても、これがオンリーワンのバルサのサッカーである。

 

では、新たなオンリーワンのために、他文化からの”輸血”が求められるのではないだろうか?

 

それこそクライフのオランダに土をつけた、ドイツとか。。

 

語弊を恐れずに言えば、今のバルサに求められるのはバルサのドイツ化、バイエルン化なのではないか、と考える。

 

インテンシティで競り負けず、縦に早い攻撃を志向し、ハイクロスも辞さない強度の高いフットボールを導入する。実はチャビはこれに近しいアプローチでバルサを作り直しているように思える。だからこそ、仮にチャビの改革が上手くいかなかったとするなら、トゥヘルやナーゲルスマン、フリックの招聘が叶うなら挑戦して欲しい。

 

クライフイズムとは歴史をなぞることにはない。過去の成功模型を解体し現代風に再現しながら形相的に古典描像に反しても内実を継承することに価値があるはずだ。チャビが、たとえEL送りになったとしても最低でも、もう2年は与えて欲しい。彼がバルサを救う、その日を楽しみに待ち続けたい。

 

 

 

終わりに

 

今、苦境に立たされているチャビを救うべく今回の記事を執筆した。

 

僕は0708シーズンCWCで横浜にやってきたバルサを生で観戦した。そして、そのチームが一人の生え抜きのレジェンドによって革命的覇権集団へと昇華していく姿に心を奪われサッカーを見始めた。そのチームの中心軸がチャビだった。

 

僕がサッカーを評論する時に、ペップバルサを引き合いに出すように、経験してきた原風景や原体験は後の人生に良くも悪くも影響を与える。だからこそチャビが過去の経験に良くも悪くも影響されている様に見えるのは思うところが少なくない。

 

今でもバルサとマドリーの2つの集団の激突をリアルタイムで見続けられたことは僕の人生の数少ない誇りである。

 

カタルーニャ独立主義を唱える唯一無二のクラブを超えたクラブ、アヤックスから伝わった伝統と文化を常に更新し続けるオンリーワンのプロセスでナンバーワンを目指すバルサがいつまでも強くいて欲しいと願っている。願わくば、その中心にチャビがいて欲しい。

 

チャビバルサに栄光が訪れることを祈り、記事を結ぶことにする。

サッカーユニが高すぎる

改めて言うことではないと思うが、僕はサッカーファンだ。多分、、笑

 

というのも、このブログの読者なら、お気づきだと思うが僕は脱構築マニアである。既存の古典アーカイブからの引用により現実的な課題を解決するアプローチを溺愛している。

 

サッカー界ではグアルディオラ、映像界では庵野秀明、アイドル界では秋元康

 

このような人間のアプローチを見ることを何より幸福と捉えている。

 

そんなわけで、僕はペップヲタク、サッカーファンというのは、いささか絶妙なアングルからのフットボール界隈への参入だったため、純正サッカーヲタとは言えないのである。

 

そこに来て、自分は理系大学院生であり素材とテクノロジーに関する研究に日々を費やしている。そして衣類やウェアに対しても少しばかり興味を持っている。

 

そんな複雑すぎる要因によって構成される自分が行き着く問題が、今回のタイトルである。自分は物の値段に対して、ある種の合理性的な原理を信奉している。

 

素材とテクノロジーが相応のものが用いられていないような過剰な価格設定に関しては、一律で”ぼったくり”と断じるコスパ過激派モンスターに吾輩は墜ちてしまった訳です。

 

そんな僕にとってサッカーのユニフォームは、異常な価格に感じてしまい。ククレジャへのオーバーペイを恐れてチキってしまう某水色球団幹部のようにボッタクリに感じて、一枚も購入したことはない。

 

ただ自分はサッカーユニフォームを一枚持っている。大学の先輩からもらったフィーゴのサイン入りインテルユニである。

 

というわけで実際に購入したユニは皆無である。

 

そもそも、ポリエステルのペラペラの生地にどこぞの営利団体のスポンサー名がシールでベタベタ貼ってあるだけの代物が数万円するのはどういうことなのだろうか?

 

 

である。

 

おそらくユニフォームは、お布施なのだ。商品というより、集金装置をオブラートに包んだものなのだろう。ハイブランド商品もそうだろうし、この類の食い扶持にケチをつける事はない。自分は金を出さないだけである。

 

ハイブランドの素材とテクノロジーを考えると異常な価格の商品、サッカーのユニ、統一教会の教祖の異常に高い書籍、これらは自分の中で同列のものと認識している。

 

サッカーのユニというと、日本のJリーグのものはなかなかに高いらしく、ヴィッセル神戸のユニフォームはレプリカが2万円、オーセンが3万5000円だそうだ。

 

そこで今回は、、、

 

 

 

ヴィッセルのオーセン3.5万あれば買えるもの紹介のコーナーーーーー

 

 

 

ということで今回はですね。3万5000円で買える、技術とテクノロジーが詰まった僕がオススメする商品を紹介します。

 

①LW製のスウェット系製品

 

1960年代まで、スウェット製品の製作には吊り編機が用いられていました。職人が付きっきりで稼働させ1時間に1メートルしか編めない技術で、技術革新に伴い、シンカー編機の登場で生産性の悪さから敬遠されていきます。20倍を超える生産効率をもつシンカー編みを多くの会社が優先したのは当然と言えば当然なのでしょう。

 

しかし、吊り編みは編み針がドイツのグロッツベッケルト社(以外に製作していない絶滅危惧技術)が製作している髭針が用いられ空気を含みながらゆっくりと柔らかに編んでいきます。シンカーだと常に一定の引力で引っ張りながら高速で編み上げます。

 

シンカーだと高速で強制的に巻き上がった生地を巻き取り続けるので、糸、編み針、生地にそれぞれテンションがかかってしまうため、出来上がりの柔らかさには大きく影響を及ぼします。

 

生産効率は悪いが、柔らかで耐久力のあるスウェットを編み上げる吊り編み技術は多くの服ヲタクを唸らせ評価を集めてきました。しかし、この生産効率の悪さは価格の高騰を招き、また出来上がりも遅いので大規模販売が難しく圧倒的な安価で売り出されるファスト系に押し負け残念ながら大衆の耳目を集めるには至っておらず、生産拠点も少なく技術も職人の継承問題を考えると将来的には消失する可能性を否定出来ないのが吊り編み技術と言えます。

 

そんな吊り編み技術が用いられたループウィラーの商品は厚くても柔らかく、希少性も高いため、2万円ほどしても、その技術の保全に寄与できるので個人的には高いと感じません。フードの立ちもいいですしフーディもおすすめ。

 

LWは01,05,09のクラシックスタイルや250,264,290の現代的なスタイルや313,322,323のゆったりスタイルの3シリーズが主に展開されています。個人的には重ね着可能で温度調節もしやすいジップフーディの290(22000円)をオススメします。

 

ヴィッセル神戸のオーセンよりも安くて、おそらく耐久性で考えてもLWは高いかと。

 

www.loopwheeler.co.jp

 

 

②防寒具

 

いやー惜しいんですよねぇ3万5千円って、何故かと言うと、ノースの大人気ダウンジャケットであるヌプシが値上げしちゃって3万7千円になっちゃったので笑。まぁそれでも神戸のユニに2000円足すだけで、高機能ダウンジャケット買えるので、普通にオススメなんですけどね。

 

それでもサンダージャケットは2万8600円ですし、重ね着にもいいんですよねぇ。意外と隠れた人気アイテムだと思います。

 

防寒着で言うと、ワークマンのEUROアルティメットデュアルフーディ4900円はめちゃくちゃおすすめです。撥水加工もされ、袖とフーディも取り外し可能で3シーズンに対応し、完全防寒着として極寒にも対応します。それが、この安さ、まさかの五千円切り、ヴィッセルにも見習ってほしいですねぇ。

 

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ダウンは手間もかかってコスパも悪いとは以前ブログで言いましたが、サッカーのユニに比べれば、めちゃくちゃコスパ良いですね笑。

 

モンベルの800FP超えのスペリオダウンなんて1万円ちょいですよ。というかヴィッセルのオーセン1枚買うならワークマン行った方がいいですよ笑。冬越せますよオーセン1枚の金銭で。

 

www.montbell.jp

 

www.workman.co.jp

 

 

一番のオススメはアークテリクスのアトムLTフーディ31900円です。何度も言いますがダウンは水に弱く着れる状況が限定されます。しかし化学繊維のインサーレーションなら問題ありません。洗濯もダウンより容易ですし、特にアークのアトムシリーズは本当に素晴らしいと感じます。素材もテクノロジーも搭載されてますし、35000の範囲だとARまで綿を入れると予算オーバーですが、いくつかのアトムは買えますので、御一考あれ。

 

arcteryx.jp

 

③スニーカー

 

スニーカーのオススメブランドとしては自分はニューバランスを薦めてきました。履き心地も良く機能性にも優れており最高のアイテムを提供してくれています。

 

shop.newbalance.jp

 

特に僕は880Gというゴアテックス搭載のスニーカーを愛用しています。この価格も1万6千円程度ですからね。ヴィッセルのオーセンで2足程度いける訳です。880は幅広サイズも出ているので日本人の甲高幅広でも安心して履きやすいんですよねぇ。ラグジュアリーシリーズのもので確かに3万円を超えるものはありますが多くの商品は神戸オーセン予算で収まります。

 

そして、履き心地の良さを求める僕がオススメするブランドがHOKAです。

 

www.hoka.com

 

軽くて歩きやすく柔らかな履き心地に包まれるクリフトンは1万6000円、柔らかな履き心地でふわふわとした天国に飛ばされそうな履き心地のボンダイは2万3100円、ゴアのついたスニーカーも販売されており、カハGTXはミッドでなければ神戸オーセン予算に収まる3万2000円ですし、HOKAは本当に素晴らしい履き心地を実現するテクノロジーが搭載されているので、是非とも試し履きでも良いので履いてほしいですね。神戸オーセンより安いので笑

 

まぁ、これ以上書いてくと、もう数え切れない3万5000円以内のオススメ商品が凄まじい個数羅列することになるので。この辺で。

 

 

最後に

 

ここまで長々とコスパの観点からサッカーのユニフォームを槍玉に上げてきました。ただ購入してる人は強制的に購入しているわけではないでしょうし、価値基準は人それぞれですし、そこにケチは付けません。ただ、ポリエステルペラペラシャツを数万円で購入してスタジアムに足繁く通う人々は本当に素晴らしいと思います。これは皮肉ではなく。

 

本当に、そのクラブの財政に貢献したいという気持ちがなければ出来ないと思います。まさに僕のような人間からすればオーバーペイにしか思えないので。

 

神戸のオーセンの価格でどれくらいのものが買えるのか、それが伝わればと思い色々書いてきましたが、購入されてる人は重々承知なのでしょう。ただ、自分は乗れないなぁと思いました。Jリーグの定点観測には参加出来そうにないなぁと。

 

最近、fcfaというサッカーアパレル系販売業者による杜撰な対応を非難するツイートを見つけつくづく色々と乗れないなぁと感じる次第で、自分はサッカーのユニフォームを購入することは生涯ないでしょうし、ま、そういう人間なんでしょうね、僕は。

 

物の値段に対しての考えが浅いと痛罵してくる人間もいるのでしょうし、ま、人それぞれなんでしょうかね?

 

SDGsだとか言って、”これは環境に配慮した商品なんです、まぁそれで少しお値段は高くなるんですけどね”とか言う人間が売値を釣り上げたくて、自身の商売に都合の良いテーマをブームにしようとする醜い悍ましい集金の悪魔にしか見えない僕にとっては、サッカーのユニフォーム購入のムーブには口を挟まない方が良いのかもしれません。

 

以上、神戸のオーセン買うならヌプシ買うわ勢のコスパの悪魔牽牛星でした。

#LIVを救いたい

今、クロップ率いるリバプールに異常事態が発生している。

 

15/16シーズン、ポストスアレス時代に新機軸を生み出せなかったロジャース政権が終焉し、途中就任という形でドルトムントで嵐を起こしたクロップを招聘しLIVは黄金時代を迎えた。

 

就任7年半で、CL1回、リーグ1回、カラバオ1回、FA杯1回、取りえる主要タイトルは全て獲得しており、ストーミングの権化として熱狂的なKOPから支持されてきた。

 

基本フォーメーションは433、前線には運動量抜群でスピードもあるマネ、支配層の最終生産者サラー、偽9番として中央でゲームメイクするフィルミーノが3トップを形成。

 

最大の武器は前線からの激しいプレスからの奪取してのカウンターだ。破壊力あるカウンターの恐怖を与えるために、なるべく前線3人は固定しておきたい。そこで前線は外切りプレスで相手ボールを中央ルートへ誘導する。

 

そこで中盤には屈強でボール奪取に優れる選手が望ましく、ジャン、ワイナルダム、ミルナーファビーニョが用いられ、ゲームメイク力を犠牲にした部分の補填のため偽9番フィルミーノ、さらにSBとしては異次元の技術とクロス精度を誇るアーノルドを起用した。

 

SBは前述のアーノルドやLBのロバートソンも高い攻撃貢献を見せるため、カバーリング能力に優れたヘンダーソンはチームに安定をもたらす存在として中軸を担った。

 

そして最深部には屈強な支配層CBのファンダイクとゲームメイクに優れたマティプがコンビを形成し、GKはワールドクラスのアリソンが起用された。

 

しかしLIV対策は進む。カウンターを殺すため裏のスペースを消し退却セットディフェンスが常備されたチームは増える。そこを切り崩すためにIHにチアゴを加入させ創造性を注入。競争力のある支配力で欧州随一の覇権集団を作り上げた。

 

21/22シーズン。リーグ2位、CL準優勝、カラバオ制覇、FA制覇、という輝かしい成績で競争力は維持され続け、クロップ政権の強さは続くと見られていた。

 

しかしながら22/23シーズン、8試合消化段階で勝ち点10、CL権獲得さえ早くも危ぶまれ始めている。まだ30試合残っているとはいえ、クロップ解任論まで浮上し始めている。一体何が起こっているのだろうか?

 

 

前編 課題編

 

今季のリバプールの問題は、たった一つに見える。

 

配置が狂いすぎている

 

①具体事例

 

ex1)リーグ第3節 UTD戦

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ナショナルダービーと評されるビッグゲーム。近年は不振の続くUTDと新時代を生きるLIVのコントラストが激しい一戦。この試合でLIVの破茶滅茶配置は炸裂する。

 

中盤はミルナーヘンダーソン、エリオットの3センターは早々に崩壊する。ミルナーは前線に攻撃参加、エリオットはサイドに流れる。中盤に人がいなくなるので気をきかせフィルミーノが降りてくる。アーノルドはRWGよりも前、ミルナーはLWGより前にいる。

 

433で始まったLIVの陣形は無秩序の極みを示し、2CB+ヘンダーソンの仮想3バックと集結した前線の間に広大な中盤のスペースが生まれる。

 

これが今季のLIVの再現性の高い風景、空洞中盤である。

 

LIVは307を基本としていた。これは皮肉ではない。仮想3バックと空洞中盤、前線には3トップに加えSBの加勢、特にアーノルドはやたら内側をとり、エリオットはやたら外側に向かう。前線では3トップ+両SB+IH2名で構成される7トップが形成されていた。

 

こうなると空洞中盤によって短いパスは打てない。なので後方から長いパスを打ち込む。しかし高さのない7トップはマイボールに出来ずボールを失う。そして空洞中盤を相手に使われてボールを運ばれてしまいカウンターを打たれる。

 

この繰り返しである。ファビーニョ一人ではカバーできない広大な中盤。当然のようにIHは7トップを構成するので戻れるはずもなく、DFはなす術なく殴られ続ける。

 

ex2)リーグ第6節 EVE戦

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マージーサイドダービー。紛れもなく勝ちたいゲーム。この試合でもLIVの配置は我々の想像のはるか上をいく。

 

433で始まった陣形は後方に可変5バックの形成をもたらす。ツィミカスLWB、サラーRWBという恐ろしい両翼がピッチ上に出現する。そして可変532は更なる可変を見せる。ここでも内側に移動するアーノルド、外側に移動するエリオットである。

 

エリオットは外にサラーがいるので気を利かせるつもりなのか前線に上がる。こうして発生するお馴染みの中盤空洞化、実家のような安心感。

 

ファビーニョは広大なスペースを任されるも厳しく、DFラインが殴られ続ける。無理のきかなくなったダイクはディレイで下がり続けるだけで相手にはテンションレスでボールの運搬を許してしまう。

 

②問題点

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先の具体例で挙げた2試合はあえてビッグゲームや注目度の高い試合を選んだ。その理由は結果が求められる舞台におけるLIVの挙動こそが現状の最適解とLIV上層部が考えるものだと言えるからで、この2試合で、この具合ということは相当深刻と言える。

 

まず問題点を列挙すると

 

1、選手間距離が遠い

2、IHの無秩序な移動

3、個人強度が低い

4、適材適所を無視している

 

こういった積み上げがもたらすのが空洞中盤と無限被カウンター地獄である。

 

まず配置に関しては、選手の得意仕事に合わせた位置で使うべきである。

 

サラーは前線ハーフスペースのゴール前で最終生産過程に関与させるべき

TAAはサイド大外でクロスなどの仕事を行うべきだ。

フィルミーノは前線で中盤のリンクマンとして接続とチャンスメークに向いていて

ファビーニョは中盤の決まったエリアへの出力を求めるべき

ダイクもプロテクトするために側に選手を配置し守備負担を軽減すべきだ。

 

各選手の能力はリーグ随一で、チアゴが故障がちでマネが移籍したことはさほど大きく影響していない。代替パーツは存在しているし、このような順位にいるのは、この破茶滅茶配置の是正で改善するはずだ。それも即時的に。

 

配置がプレスを空転させ、混乱の中で不得意な仕事を押し付けられ、その結果空洞化した中盤を相手に狙い撃ちされ殴られ続ける。カオスから始まる負のスパイラルが現状と言える。

 

 

後編 解決編

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こうした問題の根源は何度も言うように配置に原因がある。細かい配置ミスを誤魔化せるほどの質的な能力が各選手衰えてしまい、結果として配置優位に求められるラインが上がってしまったように感じる。

 

ダイクは無理出来なくなり、最近ではダイクがボールを持つと相手は放置するようにさえなってきており、ヘンダーソンカバーリング能力は減退しており、サラーも今季は巨額年俸を勝ち取った達成感からか調子も上がってこない。

 

前項でも述べたように、今、求められるのは調子の良い選手を得意ポジションに設置し”本職”での活躍を促進することである。

 

TAAを使いたいというなら3421の導入が良いだろう。ダイクを3バックの中央に使えればプロテクトも出来、TAAもRWBとしてなら守備的リスクは顕在化しないはずだ。そしてサラーをトップ脇に使うことでゴールとの距離も近く脅威となるはずだ。3トップとしてはフィルミーノ、ジョタ、ディアス、ヌニェス、カルヴァ、サラーの中から3人選ぶイメージが理想だ。

 

2ボラにすることでファビーニョの負担も軽減されるだろう。そういう意味では4231の導入も面白い。ヌニェスとサラーの縦関係の2トップも面白いし、サラーにはゴールの近くでプレーして欲しい。彼はレヴァやベンゼマと並べるレベルの選手なのだから

 

50M£とも言われるクロップの解任に伴う金銭的打撃は痛すぎる。しかし問題はクロップというよりも無秩序配置を是正出来るようになることで、その修正にクロップ解任が必要なら迷わず切るべきであり、後任にトゥヘルを招くメドが立つならすぐ動くべきだ。

 

トゥヘルが来れば3421導入でチェルシーのような復活劇も見られるだろう。まぁ彼だと長期政権は厳しいだろうが笑。

 

 

終わりに

 

僕はペップチームの定点観測者として、ライバルのリバプールを敬意を持って見てきた。シティにはいない支配層の最終生産者であるサラー、絶対的なCBであるファンダイクといった選手を抱え、FAやカラバオも現実的に見切りコアプロテクトをし大一番に出力を調整する覇権チームに、追いつけ追い越せという気持ちでシティを見てきた。

 

ルベンを手に入れ、ハーランドを手に入れ、ついにシティもリバプールのような覇権チームになれる感触を得つつある。自分はずっとシティはリバプールに劣っていると主張し続けてきた。それはCLを制する上で重要な最終生産過程における実力者の不在が続いていたからであってリバプールは、その意味で最高の模範になりうると。その中で一部の人に反感を買ったのか『そんなにクロップが好きならリバプールを応援すればいい』とも言われた事もあるほどで、その意味で今季からは追えるだけだがリバプールを定点観測している。

 

自分は大変歯痒く感じている。

 

このチームはもっと出来るはずだ。確かに何人かの選手はトップフォームを崩してはいるものの、このようなふざけた配置さえ辞めれば、勝てた試合はいくつもあったはずだ。

 

次の試合、シティとリバプールはぶつかる。覇権を極め大耳を掲げたチームに引導を渡し、シティが世界最強のチームになるために絶対に勝たなければならないとシティズンとして見ている。しかし、弱ったリバプールを叩くのではなく、むしろ完全無欠の覇権チームであるリバプールを倒したい、と強く願っている

 

ライバルチームのサポーターとしてはリバプールの弱体化を願うべきなのかもしれないが、ペップとクロップの関係の様に、高め合う好敵手としてのリバプールを望みたい。ペップシティ2年目に完膚なきまでに破壊された日をいまだに忘れていない。いつか、このチームをギャフンと言わせる試合をシティに望んでいたので、今の破茶滅茶配置のリバプールに勝ったとしても、それは真の意味でシティが覇権を握ることにはならないと思うのだ。

 

次節、最高のLIVとの最高の試合に期待する。