牽牛星のよろず日記

自分の興味あることを思うがまま記述したいと思います。

さらば『未来』よ(ジェズスのトリセツ)

今回は、アーセナル移籍が決まったジェズスについて、シティに来てからのキャリアをずっと定点観測している自分の目から見た、シティでの各年の経過、選手としての特性、そこから導かれる最適運用法について付します。

 

第1章でシティでのジェズスの来歴、第2章で選手としての特徴を語り最適運用について提言を行っている次第です。

 

グーナーの方にとって有益になりましたら幸いです。

 

 

 

第1章 『未来』

 

①16-17 メシア到来

 

リーグ成績

651min 7G4A

全成績

741min 7G5A

 

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ジェズス(イエス)と名付けられ、当時バルサの大スターのロナウジーニョに憧れたブラジル生まれの少年は、キリストが十字架に磔にされた享年33にちなむ背番号33を付け2015年にパルメイラスでデビューした。

 

2016年シーズンは27試合出場12G5Aの活躍でパルメイラスブラジル全国選手権優勝に導く原動力に。シーズン途中、欧州夏市場が開き、憧れのバルサのレジェンドであるペップが就任したマンチェスターシティからオファーとペップの直接メッセージを受け、3000万ユーロで2016年冬からの加入が決定。

 

ペップが望むのはロークロスを得点へ変換する9番。理想の9番はスペースと言うペップにとってサイドに流れたり中盤に降りるといった多様性をアグエロが満たすかについての疑義からオーバ、サンチェスといった選手の獲得にも動いた。そんなアグエロのバックアップをこなしながら、アグエロにはない守備意識と多様性、伸び代をたっぷり残した若さ、そこにシティとペップは賭けた。

 

ジェズスがブラジルで栄光を味わっていた2016年、対照的にシティは苦しみに喘ぐ。偽SB戦術が機能せず、新加入選手は、凄惨なパフォーマンスのブラーボ、サネはフィット不全、ノリートは環境に苦しみ、ギュンも怪我がち、空転するポゼッションから反転攻勢を浴び続けチームはPL優勝はおろか、CL出場権獲得さえ暗雲が立ち込め、ペップは監督人生史上初めて無冠という危機を迎える。

 

ポゼッションサッカーとは、そもそもミスが少ないことを前提にしている。相手との一対一に勝て、最終生産過程までボールを運べば高確率でクリティカルな場面を作り出せる事が前提にないと、ミスを受けカウンターへの脆弱性から好成績は望めない

 

カウンターにペップチームは弱い、その弱さをミスの少ないプレー、メッシ、レバミュラという誰も止められないような絶対的な武器で遮蔽してきただけだ。

 

ビルドアップでのミス、ペップチームに常備されていたエトー、メッシ、ビジャ、レバ、ミュラーといった最終生産能力に優れた選手がおらず、ポゼッションの負の側面だけがチームを支配した。

 

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そして年が明け、2月、ジェズスはウエストハム戦でスカイブルーのユニフォームを纏って先発出場すると、いきなりの1G1A、その後も両翼のサネ、スターリングと共にSGSトリオはチームに活力を与え、ペップは彼ら3人を『チームの未来』と評した。

 

中央で動き回りながら積極的に中盤選手との連携でボールを運び、サイドでは同足クロスを供給し続ける自慢の両翼のチャンスメークを得点へと変換させていく、まさにペップがシティに求めていたロークロスの最終生産者こそジェズスだった。

 

しかし、ジェズスはボーンマス戦で負傷、シーズンアウトレベルの重傷を負い、それに呼応するようにCLモナコ戦逆転負けでのCL16強敗退、アグエロが9番に復帰しペップ政権不毛の初年度は無冠で幕を閉じた。

 

 

②17-18 2年目

 

リーグ成績

1672min 13G3A

全成績

2564min 17G3A

 

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雪辱を期すペップシティはSBを全取っ替え、システムは3412を導入。アグエロかジェズスか、という問いに対し共存の道を選んだアグエロとジェズスを2トップで起用した。

 

ジェズスのチャンスメークでアグエロをカバーし、レバミュラのバイエルン時代に並ぶ新たな最終生産コンビを結成しようとしていた。当初は良かった。ゴールも量産出来、良い船出となっていた。

 

しかし、メンディである。チームのプロパーLB不在という長期的課題の生みの親が怪我で離脱すると、LWGでサネがイキイキと活躍するのと対照的に、ジェズスはアグエロとのスタメン争いに巻き込まれ共存の道は断たれたアグエロは守備の献身性、ポジションチェンジの円滑さを身につけ、いつしかベンチに座ることが多くなっていった。

 

チームとしてもサネスタからのアグエロ目掛けてのロークロス爆撃というスタイルによる5レーンアタックは4バック主体の英国プレミアリーグで猛威を振るい、チームは国内で支配的な存在となった。

 

ジェズスに目を向けると、2トップ体制解体後、12月初頭から4月初頭にかけてゴールへの関与が激減してしまい、いつしかアグエロのバックアップ守備要員的な扱いへと緩やかに変わっていった。先天的にシュート自体が上手い訳では無く、聡明なポジショニングと走り込みでチャンスに関わる頻度が多いだけに、余計にストライカーとしての物足りなさが映ってしまった

 

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そしてアグエロの唯一にして絶対的な弱点でもあった耐久力の無さからCL8強リバプール戦でジェズスに出番が回ってくる。しかし、この2戦で1得点はしたもののパフォーマンスとしては不十分でチームにとってもCL8強の鬼門化を招くことになった。

 

膝の怪我での数ヶ月の離脱、シュートが苦手という覇権を競うチームのコアのストライカーになれるか疑問を残し、初めての欧州フルシーズンは、ほろ苦い一年であった。

 

 

③18-19 従者

 

リーグ成績

1019min 7G3A

全成績

2252min 21G7A

 

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国内で支配的なペップシティの第1サイクルの最終年。このサイクルの主人公はアグエロだった。彼に点を獲らせるのが全て、アグエロが決めれば勝つ、外せば負ける。それぐらい圧倒的な存在。そしてアグエロがシティで見せた最後の勇姿であった事もまた事実であった。

 

安定したポストプレー、中盤選手との協調、ビッグゲームでのスーパーゴール、エースに相応しい9番としてペップシティに輝きを与え続けたアグエロの影で、ジェズスはもはや存在価値さえ失いかけていた。アグエロとの差別化として守備能力しか残されておらず、救世主はベンチが定位置だった。

 

この頃のジェズスと言えば、アグエロにお疲れと言ってリード時のクローザーとして途中出場する事が仕事だった。このアグエロの途中交代により、アグエロの出場時間が限定化されるので、総得点数を出場時間で割った平均得点がリーグ歴代屈指レベルになったのは、ある意味ジェズスのお陰だろう。

 

激しいリバプールとのリーグ争いの中で、アグエロのスーパーゴールで直接対決を制しリーグを獲ったのと対照的に、CL8強ではアグエロがPKを外しアウェイゴールルールで敗退。アグエロが決めれば勝つ、外せば負ける、という象徴的なシーズンであった。

 

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エースアグエロの耐久力に泣いた前年度の反省から、リード時には積極的にジェズスと交代することでプロテクトしたものの、最後はPKを外しチームは8強で大耳には届かなかった。アグエロの肉体のプロテクトと優先度の低い試合でのイニングイート、この2点が仕事であったと言うのであれば、ジェズスは完璧にこなしたと評価は出来るはずである。

 

④19-20 NEW ERA

 

リーグ成績

2026min 14G7A

全成績

3275min 23G11A

 

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エースアグエロ時代の終わり、サイクル1終焉、それを感じさせるに十分なシーズン。思えばペップチームは最終生産者が主人公のチームで3年目にピークを迎える。試行錯誤の末に、誰に点を取らせるかを決め、その決めた誰かの得意線型から逆算しチームを設計する。

 

バルサではメッシがバイタルでボールを受けて前を向かせるために、狭いバイタルへのパス供給が可能なカンテラ産MFが重用され、WGにはメッシのためのスペースを作るべくサイドからの牽制が出来るビジャとペドロが選ばれていた。常にバイタルを目指すシステムだ。

 

バイエルンではレバミュラをボックスの中で解放するために、縦に強いWG、ロベリーではなく同足のコスタコマンを用いて、サイドでのアイソレーションを有効化するためにSBは中央に絞る偽SBをこなすことになった。

 

シティではアグエロにロークロスを同足のスターリング、サネから供給するシステムであったが、アグエロの肉体は、もう限界を迎えていた。このシーズンアグエロは1456分のリーグ出場となり、これは前年の2480分から劇的な減少だ。

 

ポストアグエロ時代、次の最終生産者は誰か、白羽の矢が立ったのはジェズスとスターリング。前者はベンゼマの如く従者からの王位継承が望まれ、後者は加入未遂に終わった有翼ストライカー、サンチェスやオーバメヤンのような活躍が望まれた。

 

しかし、結果としてはどちらも最終生産能力が良化することはなかった

 

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CBに怪我人が相次ぎ、カラバオカップ以外の国内タイトル防衛に失敗、CLではマドリー相手に16強はクリアしたものの、難敵リヨンの前にスターリングが決定機を外し、3バックの奇策に対し批判が集中、奇策ハゲ炎上祭り2020が開催された。

 

アグエロのバックアップだからこそ価値を見出せていた部分が消失し、皮肉にも競争相手の存在自体がジェズスの価値に一番の影響を与えていたと示す結果だった。

 

メッシの居ないペップバルサ、レバミュラの居ないペップバイエルン、そんな状況のペップシティは”終点という名の始点”を失い、チームの方向性も曖昧だった。

 

⑤20-21 シルバなき世界で

 

リーグ成績

2060min 9G4A

全成績

2836min 14G4A

 

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サイクル1の終焉に加え、チームの絶対的司令塔であったシルバが退団し、チームはかなり影響を受けると言われたが、その影響はスターリング以外にはネガティブに影響することはなかった。フォーデンの台頭、マフレズの覚醒、カンセロのブレイク、ルベンの加入、ストーンズの復活、ギュンの得点源化と、むしろ前年を上回る収穫に溢れたシーズンとなった。

 

チームは自律完結性を強く帯び、単独で複数の選択肢を提示し、独力での後出しジャンケン可能な個人能力とインテリジェンスを持った選手が中心の偽9番システムは前線5枚の流動性を押し出し、シーズン前半の不調が嘘かのように国内での支配力は復活を迎える。

 

5バックを相手が敷けば、シティ自慢の5トップにRBからカンセロが6番目の進撃者として加勢し数的優位性で相手を幻惑、ギュンが飛び出し得点をもたらすハメ技で4バック優位のプレミアを支配した4バック殺しの上位互換5バック殺しとしてのカンセロロールが炸裂した。

 

一方ジェズス。右翼でマフレズほどのプレゼンスはなく、左翼でフォーデンほど独力でシュートに持ち込むことも出来ない、9番ではチャンスメーカーの起用による好機喪失に見合ったリターンをもたらせるほどの得点力など持ち合わせていない。当然の如くベンチに座る日々が続いていった。

 

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一方チームはカンセロロールの賞味期限が切れ、5バックを崩すにも手を焼き、クラブ史上初のCL決勝ではチェルシーの堅牢の5バックを崩し切れず、デブ神が怪我で途中離脱、そして急所であった左サイドの防衛力の低さを突かれ、ウノゼロに沈み、負けた時のお馴染みの光景である、LWGスタ、4番ギュンという采配に対して、2年連続奇策ハゲ炎上祭りが開催された。

 

ジェズスも、この自律完結型5トップの中に居場所を見出せず、皮肉な事に、チャンスメーク力が異常に高く、最終生産者を固定しない流動的なモデルの完備性が強まりすぎて、それを犠牲に出来るだけの得点能力と圧倒的プレゼンスの要求が過去最高クラスに高まりを見せると、出番は限られてしまった。

 

この頃から残り契約の問題もあり、放出の噂もで始めることになった。

 

⑥21-22 新境地

 

リーグ成績

1878min 8G8A

全成績

2570min 13G11A

 

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前年度のCL決勝敗北を受け、ケイン獲得に動くも失敗、プロパーLB起用もメンディはピッチには帰れない身となった。結局前年度と何も変わらないメンツ。アグエロが退団し、グリーリッシュが加入したことくらいだった。

 

『我々はストライカーなしでシーズンを戦うことになる』

 

ペップのセリフはジェズスに対する評価を端的に表した。救世主として加入したセレソンのNo.9はシティを栄光に導くことはない、アグエロの後継者にはなり得ないだろうという風潮が強まる中で、ジェズス本人はWG起用を志願し、新境地で活路を見出すことにした。

 

自律性の強いチーム方針は、守備における組織的な連動性を奪っていて、その中でネガトラを強化する方向性の中でジェズスは少しずつ、しかし確実にRWGとしてチームの武器となっていった。

 

コア選手マフレズを休ませるための守備とチャンスメーク力に優れたRWGとして前半は大いに貢献し、難敵相手でマフレズの出番がやってくると、今度はコアCFとしてフォーデン、マフレズを両翼に構え後半戦はキーマンとなり、CL4強マドリー戦でゴールも挙げた。2年連続決勝進出が見え、2点のリードを逃げ切ろうとジェズスもマフレズも下がった。そして悲劇の大逆転が訪れた。

 

マフレズをベンチに置いてクオリティを下げない選手はベンチにいなかった。いや、正確に言えば、その男はマフレズの隣にいた、ジェズスだ。そしてジェズスも交代したシティは大きな波に飲まれてしまった。FWのコアを休めるジェズスの活躍とは対照的にDFのコアを休ませられる運用が出来なかった事、敗因の一つと自分は考える。

 

ベンチ要員を低く見積もる人もいるだろうが、コアを休ませられる選手が、どれだけ貴重か、それを思い知った1年であった。

 

契約延長の報が出ず、シーズン終盤には移籍が盛んに報じられた。シティでリーグ連覇を決めた彼は、アグエロのようなスター性はなかったかもしれない。しかしジェズスが見せた献身とイニングイートはチームを大いに助けてくれた。チェルシー戦でのゴールが無ければ優勝はなかったのだから、救世主、は言い過ぎだろうが、功労者である事は間違いないだろう。

 

 

 

そして、噂されていたアーセナルへの移籍が決まった。

 

 

第2章 特徴とトリセツ

 

今は、フットボールにおける統計数値や定量的データの分析は容易に出来るはずだ。ここでは、そうした客観的なデータも参考にはするが、この記事に期待されているのは定点観測し続けてきた者だからこそのテキストだと思うので、定性的な部分が多く含まれることを、ご理解いただきたい。

 

 

①強み

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ジェズス最大の強みは、オフザボールの質に代表されるインテリジェンスと守備能力の高さが挙げられる。

 

第1章でデマンドの変化は見てきたと思うが、ジェズスは具体的には

 

1年目 ロークロス爆撃のゴール変換

2年目 2トップの一角でチャンスメイク

3年目 クローザー9番

4年目 逆足LWG兼CF 

5年目 前線のUT選手

6年目 チャンスメークRWG

 

という役割を果たしてきた。

 

どの時代の評価が一番高かったかというと、6年目と2年目前半ではないだろうか、そこにジェズスの特性が表れている、得点能力の高いCFを活かす2トップの相方、チャンスメイクと守備能力でサイドに厚みをもたらすRWG、これが向いているのだろう。

 

ドリブル能力については、暴力的な突破が出来るわけではないが確度が高いと思える時のみトライしているので成功率は高く、そこにも聡明さが表れていると言える。

 

裏への走り込み、確度高いプレーセレクト、守備意識の高さと戦術的タスクの遂行能力において大変優れた選手である。

 

②弱み

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弱みは絶対軸を任された時に露呈してしまった得点能力の物足りなさであろう。シュートが苦手、とまでは言えないのだろうが、ストライカーと呼ぶには寂しい。またRWGとしても突破力が優れているというタイプではなく、あくまでも”いけそうなとき”だけトライしていく、というタイプなので、メガクラブ相手だと厳しくなるのも事実

 

足は早くなく、シュートが特別上手いわけではなく、空中戦もRWGでロングボールの逃し所としては一定の光明はあるだろうが9番で屈強なCB相手に競り勝てるほどのものではないだろう。また、シュートも多彩なパターンがあるわけではない事も事実で、それ外すか、というシーンもシティでは少なくなく見られた。

 

理不尽に得点を取る、というタイプでもなく、好機で確実な場面を押し込んだり、左から中へ入ってのシュートが多く見られた。もっとシュートシーンのパターンや得意戦型を増やすことが求められるだろう。

 

そして耐久力である。もちろん、シティでの6年間でコアを担うという経験自体がなかったためでもあるが、出場時間は多くはないし、怪我での離脱も少なくはない選手である。

 

そもそもチャンスメーク力に優れたWG転用可能な選手、というのは妥協の産物で、万能型9番としてアグエロを上回る最終生産者というのが彼の目指すべき未来であり、その意味では”副業”が評価され過ぎている感も否めず、その意味でシュートの正確性を含め理不尽レベルの9番として成長出来るプロセスを消化できる環境に身を置くべきなのかもしれない。

 

 

 

③最適運用

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強み、弱みを見てきて言えるのは、9番としては得点力に物足りなく、7番としては突破力に物足りなく、一番の武器はオフザボールの質の高さと守備能力という玄人好みの選手、というのがジェズスの評価となる。

 

耐久力に優れているわけではないので、複数選手とのローテーションで肉体をプロテクトし、調子が出てきたところでスポット的に集中的起用を敢行するのが良いのだろう。

 

最適ポジションとしては2トップのセカンド担当だろう。9番の周囲を衛星的に飛び回り相手を幻惑するインテリジェンスを武器に出来、得点を取らなければならないという義務感から解放することで、一層の輝きを見込めるはずだ。

 

3トップならRWGやLWGでチャンスメークさせる方が良いかも知れない。出来れば中央に9番がいる場合だとクロス選択の価値も上がる、そしてシティは周知の通り9番がいない時期を3年過ごしている。そんな偽9番でもチャンスメーク力は発揮されていたので、使い勝手は良いと思う。

 

個人的にはベンゼマのような着地が出来るように、失敗しても目を瞑ってもらえるような環境で根気強く9番で起用してもらえる環境下で理不尽万能型9番に成長して欲しいと望んでいるので、出来ればCLという大一番も経験出来、リーグでも一定の競争力を保持し、9番起用してもらえるチームでのキャリアを選べると良いのだが。

 

④ARSの印象

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自分はMCI定点観測しかしていないが、同リーグに所属するARSの試合も見ている。ペップヲタクの自分はバイエルンでの政権後はサンチェスという最終生産者がおりパスサッカーの文化があり、英国を代表する歴史を持ち、325というダブルペンタゴンシステムの利用者であるペップがWMシステムの生みの親であるチャップマンが率いていたアーセナルインビジブルズ2ndを建設して欲しいと自分は考えていた。

 

だからこそペップガナーズ、悪くないねぇ。と思っている自分は同リーグの敵軍としての敵意はなく、定点的とは言えないが好感を持って見ている。

 

07/08くらいから今に至るまで欧州サッカーを見ている自分のガナーズのイメージは、最終生産者が絶えず、攻撃的なタレントを多く擁し魅力的なフットボールをするも、ヘソから下のタレントの少なさ、特に4番を欠く傾向にあり、またCBにもコアレベルに乏しい傾向にあり、4番と3番にコアクラスの補強さえ出来れば覇権レベルに到達する可能性を秘めている。

 

といった感じだ。

 

アンリ、アデバヨールファンペルシー、サンチェス、オーバメヤンと次々に最終生産者が抜けても代わりが出現し、セスク、ロシツキーカソルラエジルといった魅力的な中盤を抱えている。しかしWGに強烈なタイプが少なく(ウォルコットもWGかCFか微妙な立ち位置だったし)、攻撃が中央に寄り過ぎて中央閉鎖に苦しく、ボランチ部門もフラミニ、Gシウバ、ソングとコアクラスの質が少し足りず、CBも10数年間でコシエルニー以外はコアとしては厳しかった印象だ。

 

人的資本で優位に立てる格下相手では攻撃面は中央閉鎖にはタレント力で切り崩せ、サイドもSBの上がりを含めた協調を武器に出来る、しかし守勢に回ると4番から下の防衛力の低さは勿論、SBの上がりなしに崩せるだけのサイドの破壊力のなさを突かれSB裏を中心にカウンターを食らうリスクもあり、一定の取りこぼしが起こってしまう弱みを抱える。

 

格上同格相手では中盤を抑えられると4番とCBからの質が低い事、またGKに足元が使えるタイプも少ないので、こうした覇権レベルとの乖離で、2010年代中期の世界最先端を行くチームには付いていけず、列強に置いて行かれている感のあったプレミアリーグにも10年代後半にシティ、リバプールが強靭化し、唯一の拠り所だったCL出場権さえ失った

 

レスターが奇跡を起こせた15/16プレミアリーグガナーズが最後にプレミアリーグで覇権を争えたシーズンだったのだろう。

 

そして長らく続く低迷の末に、セスクショックのパニックバイで選手としてガナーズを支えたアルテタが監督に就任し、チームは再建へと向かう。

 

⑤ジェズスの居場所

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彷徨っていた無冠時代、多くのタレントが外部に流出した。しかし国産タレントは残留傾向にあり、CL出場権を持たないガナーズにとって主な獲得可能選手はプロスペクト若手と国産タレントとなる。

 

アルテタは問題認識能力と中長期にわたるビジョンを持っており、試合での応手も的確で意図を持った采配も見て取れる指揮官である。そして21/22シーズンは多くの若手選手と共に浮き沈みの激しいシーズンを送った。

 

自力でCL権獲得可能まで行きながら、最後は力尽きたガナーズ弱みとしてはコアが薄く、そして耐久力と経験に不安がある点だ。そういう意味でも前線のUTであり、シティで栄光に浴してきた経験を持つジェズスは大いに期待できるだろう。

 

エンケティアの成長を促す”壁”としての9番、ぺぺがフィットせずサカが精一杯支えているRWGでコアプロテクターとして、丁度良い補強となるだろう。

 

スカッドがフルメンバーであればCL出場は十分可能なメンバーでも、ELとの二足の草鞋を履きこなすにはコアのプロテクトが必須で、プロテクターとしてのシティでの経験を持つジェズスは上手く順応するはずだ。アルテタもシティ在籍時代に旧知の仲ゆえ、そこも上手く寄与してくれると願いたい。

 

第3章 最後に

 

これはシティズンとして反省しているのだが、ジェズスに過剰な期待を向けすぎたのかも知れない。彼をアグエロの後継者ではなく、得点能力を多少備えたチャンスメーカーに追いやったのはアグエロという英雄の壁でもシティのコアレベルの高さでもなく、我々シティズンの過剰な期待の産物だったのかもしれない。

 

加入当初の数試合でのパフォーマンスを見て、一部を全部と勘違いしてしまい、アグエロ時代の次の主人公という期待は彼の評価を歪めてしまったのかも知れない。ジェズスというメシアの名前を持ち、チームの低迷時期に到来し少ない試合で圧倒的なインパクトを与えた、あの一部分の姿を全部と思い込んでしまった自分も含めたシティズンは少なくなかったと思う。

 

そのアグエロを上回る後継者という視線や期待、得点を取らなければならない、という義務感自体がジェズスを苦しめていかのかも知れない、CFからのコンバートをペップに志願しRWGで伸び伸びとプレーするようになった。

 

自分はペップバルサ新規の海外サッカーヲタクであり、本ブログではペップチームの定点観測者とし、関係する記事を執筆してきた。今回のような一人の選手に対しての記事を執筆するというのは初めてである。

 

というのも上記したようにジェズスがシティズンからのアグエロの後継者という初年度の期待を背負わせ過ぎた事がもたらしたかもしれない負の影響についての悔恨の念、そして同様の悲劇が繰り返されて欲しくないため、移籍先のサポーターに向け、ジェズスを5年半見続けた者としての文章を残す事とした。実像と乖離した期待の醸成を阻止することが主目的であった。

 

読まれた方にとって、役立ってもらえると幸いである。

3年目のゼロ(21/22MCIレビュー)

本記事は4部構成で

 

第1部で当該季の方向性と結果や考察を与えた。

 

第2部で当該季の各選手をS,A,Bの3評価で区分、コメントも付した。

 

第3部で各論を議論。

 

第4部で自分の総評を付した。

 

また付録として自分の持論を記した。

 

膨大な文字数のため全てを読もうとする異常な自分のブログファン(褒めてます笑)以外は摘み読みしてくれるだけで十分だ。

 

 

 

 

第1部 変遷

 

1、開幕前

 

①対CHE

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まず今季を語る上での視座になるのが、昨季CL決勝CHE戦での敗北。あの試合、スタリン起用、4番ギュンの奇策を何故ペップが実施したのか。

 

結局のところ、メンディ不在常態化、アグエロ耐久力低下、この2つからシティは質的優位性が担保されないケースにおける5トップの破壊力の低下、左サイドの守備力の低さを課題として抱えていた。カンセロロールは6トップ戦術を可能にするも守備的リスクは低くなく、ジンをLBで起用しても守備力改善に限界はあった。

 

トゥヘルはシティの弱点を何度も突いた。シティの5トップに5バックで対応、ストライカーもいないためクロス爆撃なしと見切り、シティの右サイドにジャブを打って左で仕留める形を丹念に繰り返した。その結果ウノゼロ勝利。

 

ペップはマフレズとスターリングでサイド攻撃を狙い、相手の堅牢を見越し4番に安定感を失っていたロドリに代わってギュンを起用。求めたのは守備より継続性のあるパス。耐えてフォーデンとデブ神になんとかしてもらう。2人が中央で使うスペースを作るためにサイドを張らせるスターリング起用。しかしデブ神は怪我で途中離脱、必然の敗北。

 

課題は

サイド攻撃の弱さ

最終生産者の欠落

本職LBの不在

 

この修正が今季のテーマ。

 

②応手

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独力突破可能なWGがマフレズしかいない現状を考え、複数選手でのコンビネーション攻撃が求められる中、ペップはシティの基礎布陣を235に変更。これまでの325と異なりダブル偽SBシステムで、RBもLBも中央に絞るV字陣形が形成された。

 

この布陣の狙いは3つ。

 

まずロドリ。ギュンを大一番で使わなければならなかったのはロドリの不振にあり、周囲に選手がいない時のプレー判断を間違え無理やり繋ごうとしてパスミス、というシーンが少なくなかった。だから側に偽SBの2人を置きプレーを安定化させる寄与に期待した。

 

次にサイド攻撃。カンセロロールによる6トップ化の一般化をするためにSBはサイドのヘルプに入りやすいようにボランチ化した後に機を見て前線に駆け上がることを求めた。SBに偽SBと純正SBの両面の役割を与えた。

 

そして守備。前線に向かって人員が多く配置されたフォーメーションはDFラインで受けるのではなく、ボランチを3枚とし前に圧力を上げ、高い位置でのボール奪還を可能にする。

 

次は人員の変更。

 

デブ神の体調を整えるために、神の代わりにIHでイニングを食い共存も可能な選手としてグリーリッシュが獲得。シルバ同様にWGとIH間を横断しながら、独力突破に苦しいスターリングの補助も期待された。

 

LBの守備力問題は、メンディ登用という原点回帰に賭け、左利きのウォーカーという難題に答え得る選手として念願のフィットが待たれた。

 

そして最終生産者。求めたのは英国の9番ケイン。スターリングをEUROで支えていたこともあり、プレミアへの順応も心配ない。クロス爆撃にも対応し下がってのゲームメイクも出来るなどフィット間違いなしの選手をマーケットで狙った。

 

 

③開幕

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チェルシーからの宿題に対するペップの提出。残念ながら満額回答とはならなかった。メンディは開幕早々に病院ではなく裁判所に向かう羽目になり、構想から外さざるを得ず、LBの守備保険に関しては棚上げされ、リスク覚悟でLBカンセロをビッグゲームでもぶつける方針を取らざるを得なかった。

 

デブ神のプロテクトとして一億ポンドでグリーリッシュが獲得され、アグエロの背負った背番号10番を背負うこととなった。アップダウン出来るSBとの協調が上手かっただけに、メンディの喪失は悔やまれるところである。

 

そして最大の優先事項であったケイン獲得はスパーズ会長レビーの徹底抗戦で失敗し最終生産者のいない3年目を迎えることになった。アグエロの事実上の離脱となった2年間と同じ状況が繰り広げられた。

 

235布陣は一定の機能性を有している事をプレシーズンから見せ、チームのゼロトップ体制も円熟味を帯びていた。ケイン獲得失敗以降、ロナウド、ブラホビッチといった獲得候補の名前が躍るもフロントは動かずゼロトップ体制3年目を迎えた。

 

 

2、シーズン前半

 

①暴走するSAC

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ダビシルバ、シティのレジェンドにしてアブダビ時代の功労者。そんな魔法使いが退団して以降、互助より自助というどこぞの国のような光景が広がった。各位の自己判断で複数の選択肢を単独で提示し、独力での後出しジャンケンで相手を出し抜く。明確な最終生産者の不在は、再現性を確かにそこに残しながらも即興性の強い多彩なアタックを可能にした。

 

前線5枚は柔軟にポジションチェンジし、横断を繰り返す。そこに後ろからカンセロが縦断し前線は6枚で相手を叩きのめした。そこで活躍したのはマフレズ、デブ神、フォーデンといった個人能力に優れた選手に加え、貴重な得点源のギュン、そして何より即興性が創り出す負の側面である守備リスクをベネフィット方向にリカバリー出来るベルナルドだった。

 

SAC=Stand Alone Complex

 

独立した個人の行動が総体としての集団の挙動になること

 

自分にはシティがこう見えた。

 

スターリングは存在感を失い、フェランは方向性が毎年変わり、ポケットを殴る、大外を起点に折り返して殴る、という再現性はあるが、そこへ至る道は多彩な様相を呈した。

 

グリは加入早々に即フィットし、CLのRB戦では水を得た魚の如く広がるカオスを楽しんでいた。しかし、シティのボスはサイドの選手を呼び寄せ憤怒していた。ペップの目指す秩序だった無秩序とは異なる集団での守備構造の減退を見て、チームは方向性を緩やかに変容する。

 

ネガトラ強化

 

これがシーズン通じてのテーマだった。

 

RWGでは守備能力の高いジェズスが重用され、前線からのボール奪取も向上し235システムのサイド攻撃の強化という側面よりも、前線での奪取力が強く目立っていた。

 

カオスな個人の自己判断の総体としての再現性のあるアタック、カオスな状況を抑制するための守備力強化の方針、ゼロトップ時代はこの2つの方向性の調和と協調に主軸が置かれた。

 

②死のアウェイ3連戦

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CSレスター戦を落とし、リーグ開幕戦スパーズ戦を落とし、ケインは取り逃がし、ロナウドは来ない、メンディは帰らない。チームに活力を与えたのは放出候補たちだった。

 

メンディの離脱、最終生産者の不在、3年目の苦境に対してベルナルドは絶妙なサポートでボールを前進させ、守備に転じればピッチを駆け巡りチームを助けた。

 

救世主イエス(ジーザス)の名前を与えられペップシティ1年目の苦境に現れ『未来』と呼ばれながらも近年は燻っていたジェズスは9番からWGへのコンバートを志願しRWGでチームの守備力向上とチャンスメークで貢献した。

 

ストーンズが代表で負った怪我を引きずり満足なプレーが出来ない中、ラポルテはルベンの相方として最終防衛ラインを支え、得意の左足のキックでも貢献、昨季3番手に落ち込んだところからの必死のアピールが続いた。

 

 

 

そして、『あの試合』がもう一度やってきた。宿願CLを奪い去ったライバルCHE

 

lilin18thangel.hatenablog.com

 

CHE戦に関してはレビュー記事を書いたが、23ビルドを放棄、41ビルドで相手WBが”届かない”配置を心がけ、右サイドは旋回大三角、左サイドはカンセロの攻撃参加、守備面では4231外圧縮マンツープレスでCHEから酸素を奪う。ベルナルドは必死に走り、ラポルテはルベンと共に怪獣ルカクを完封。そして貴重な決勝点をジェズスが挙げ、リベンジを果たした

 

 

 

続くパリ戦、大外とポケットを殴るシティがシュートの局面に苦しむ中でパリはシティの弱点である左サイドを狙い撃ちカンセロを引きずり出してムバッペを走らせて折り返してゴールを奪い、中央を固めてクロスを弾き返して前残りのメッシ、ネイマール、ムバッペが悪魔の如きカウンター攻撃を加え続けた。

 

左サイドの守備力の低さ、同格格上相手の際の決め手の欠如、これらが結果に如実に現れた結果であった。ベルナルドは決定機を外してしまい、守備でもカンセロリスクが顕在化してしまった残念な敗戦となってしまった。

 

 

 

3連戦最後の宿敵LIV戦、ゼロトップにグリーリッシュが使われ前線からのプレスでLIVを苦しめにかかった。対してジョタが降りて中盤の数的優位を確保してボールの出口を増やすことで散らすLIVの応手。シティは41ビルドでSBを浮かしたり、グリが降りて偽9番化したりして出口を増やしていた。

 

拮抗したプレス合戦と試行の数々の応酬は結局互いの生産者の殴り合いに発展した。LIVはサラーとマネが得点を奪い、シティはフォーデンとデブ神が同点弾を2回演出した。シティの守備力の低いエリアである左サイドから2度の先制点を奪われても、シティは何とか同点に持ち込めた。ロドリのスーパーブロックなど必死の決戦で勝ち点1を持ち帰れた。

 

こうしてアウェイ3連戦を1勝1敗1分。必死に耐えて愚直に用意してきたギミックを用いたながらCBとSB間を狙い撃ちサイドを抉って折り返し、フォーデンとデブ神の質的能力で得点を奪い去る、そんなシティの方向性が見えた3連戦だった。

 

この3連戦で出番のなかったフェランは冬に放出されることになるが、この移籍金が後のハーランド獲得資金と、ほぼ同額になることを、まだ誰も知らない。

 

地獄から生還したシティはパリとのリベンジマッチをジェズスの決勝点で勝利し、その勢いのままにリーグは独走、今季もシティのリーグマスターぶりが目立っていた。しかし、カラバオカップPK戦の末に敗北、CLもGL5節の時点で1位突破を決めるも最終試合のRB戦で主力のウォーカーを出場させ、まさかのレッドカードでCLノックアウトステージで3戦出場停止となってしまう。

 

必死の守備と愚直な攻撃、シティの今季のモメンタムに暗い影が落ちた瞬間だった。

 

13試合12勝1分という圧倒的な成績で駆け抜けて迎えたTOTとのリベンジマッチではケインのスーパーゴールの前に散る。CLでのウォーカーの代役を務めたのは本職CBのストーンズ。耐久力に不安を抱え非本職位置で使われ続けるも好パフォーマンスでチームを支えた。この連勝街道の最中、ルベンも数ヶ月離脱クラスの怪我、これが厳しい選択を迫ることになった。

 

 

3、シーズン後半

 

①死の4連戦

 

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シーズン後半の佳境

 

CL8強アトレティコ戦1stleg(HOME)

リーグのLIV戦(HOME)

CL8強アトレティコ戦2ndleg(AWAY)

FA杯4強LIV戦(ウェンブリー)

 

という4連戦を迎えた。

 

堅牢の550ブロックを構成したアトレティコには、また愚直に攻め続け最後はフォーデンの虎の子の一点を最後まで守り切り4強へ進出。アトレティコは今季は堅牢から攻撃寄りにデザインを変更していたので、それをぶつけられると厳しかったが、引いてくれていたのでシティに取ってはやりやすかったのかもしれない。しかしウォーカーが2ndlegで怪我、後半途中に退いた。

 

2つのLIV戦に関してはFA杯に関してはメンバーを落とさざるを得なかったシティに対してベストメンバーで挑んだLIVを止めれず、あと1点まで迫るも、GKステフェンの凡ミスによる失点が響きタイトルを失った。

 

そしてリーグ戦。4231の2ボラのロドリとベルナルドが中盤底で砲台となってLIVの裏のスペースやSBの裏に走り込んでいるウォーカーとカンセロに配球し続けた。LIVは中央を5レーン封鎖する45ブロックを形成するも、シティの強度は凄まじく、一旦非保持に転ずるとベルナルドを前に押し出して窒息に向かっていた。

 

これによってLIVはロングパスで散らさざるを得なかったものの、シティは徹底的に攻め続け先制してはLIVが返すという前回のバウトとは反対の展開だった、僅かにシティは優勢に進め決定機も少なくなかったがデブ神とジェズスの2点に留まってしまった。

 

この試合、素晴らしいバウトと第3者的には見えるかもしれないが、個人的には絶望感を得る試合だった。何度もLIVのゴールに迫っても決定機を数回外してしまっていて、覇権クラスのストライカーがいれば、もっと得点出来たのではないか、と頭を抱えてしまった。

 

そして、耐久力に不安のあったストーンズを2週間の間に4試合フル出場を課してしまったツケを払うように、怪我で離脱することになった。

 

②遮蔽されたもの

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残されたタイトルはペップシティ得意のリーグ戦、苦手なCL。前者ではLIVが勝ち点3差まで迫ってきて、後者では白い巨人と争う4強を迎えた。

 

宿願の大耳を巡る4強、怪我で欠場と伝えられていたウォーカー、ルベン、ストーンズだったがルベンは間に合わせ、ストーンズも強行出場した。ストーンズは前半中頃にジーニョに途中交代、体のキレも不十分で今季怪我での離脱が続いた自身の状態に申し訳なさがあったのだろう、明らかに無理のある出場だった。

 

シティは何度も何度も決定機を作り4得点を奪い去るも、スタメンクラス2人を欠き、ルベンも本調子でない中、マドリーはしたたかに3得点を奪いベルナベウに希望を残した。

 

そして2ndleg。ウォーカーが帰還し、ストーンズは欠場。ウォーカー、ルベン、ラポルテ、カンセロという今季お馴染みの4バックで挑んだ試合。シティは攻めかからずに時間を潰しながら試合を殺しにかかった。そして後半に得点を奪い合計スコアで2点のリードを守りながら逃げ切りを図った。

 

後半40分頃にウォーカーを下げ、カンセロをRBに回しジン投入。マフレズもジェズスも下げスリープモードに突入しようとした。しかし後半45分と46分に立て続けにロドリが得点し、試合は振り出しに戻る。

 

逃げ切るためにデブ神、マフレズ、ウォーカーを下ろしたシティ、対して勢いに乗るマドリー、もはやPKに持ち込むしか手の残されていないシティは相手の最終生産者ベンゼマのゴールで敗走。絶望と失望に支配されたベルナベウでシティの夢は散った

 

繰り返すが今季のシティはデブ神、フォーデン、マフレズの3人のゴールを祈り、それまではウォーカー、ルベン、ストーンズで耐え続けるしかなかった。それがDFコアの保全に失敗してしまったので敗北は必然だったのだろう。

 

これまでペップの奇策で負けたと評され続けたチームは、”正攻法”で挑んだ結果、1stlegで優勢状況をゴールに反映する能力の低さを露呈し、2試合通じてDFコアを守り抜く事、控え選手ではラポルテ以外は寄与を与えられなかった事が重くのしかかった。

 

奇策は、こうした現状を埋めるためのものだったのだろう。奇策で負けていたのか。様々な意見が別れるところだろうが、奇策が、こうしたシティの厳しい現実を遮蔽していたのは確かで、この現状を露呈させたという意味で収穫のある敗北だったのかもしれないが。

 

Life goes on. It always does until it doesn't

 

戦い続けるスカイブルーの戦士たちは最後のタイトルの防衛に向かった。ウエストハムに引き分け、LIVとの勝ち点差1で最終節を迎えた。

 

ルベン、ウォーカーを欠く試合、ビラに2点をリードされる苦しい展開、しかしリーグマスターは砕けない。後半終盤5分の間に3点をぶち込み大逆転。裏のリバプールは2点差をつけリードしていたものの、狂気の逆転劇でシティが戴冠。

 

プレミアリーグを制覇し、ゼロトップ時代が終焉した。

 

 

第2部 選手評

 

1、S評価

 

4番 ロドリ

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ブスケツ、ラーム、アロンソ、ペップチームには常に最高峰の4番がいた。ドリームチームの4番を務めたペップにとって4番への要求は凄まじいものがある。そこに応えるのに時間は要したがシティの絶対的な4番として大活躍した今季、個人的なMVPだ。

 

控えのジーニョがトップレベルでの限界を示していただけに怪我が許されない立場でシーズン通しての活躍を見せてくれたのは大変素晴らしい。来季はストライカーへのクロス爆撃も予想される。そのため中距離パスで左右に散らすコマンド力の向上に期待したい。

 

神の余命 デブ神

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やはり神は神だった。開幕当初は怪我を抱えながら何処か本調子からは程遠い様子であったがシーズン佳境に進むにつれて調子は上がり、特にビッグゲームでの得点関与は増え、より決定的な仕事をするようにシフトした。

 

しかし、限界はある。不毛な高橋由伸政権に全盛期を捧げてしまった菅野智之のように、いざストライカーが到来してチャンスメークの得点変換率が向上しているのに、怪我で不在とならないか心配でならない。神にバロンドールを与えられる日を待ち望む。

 

駆ける賢者 ベルナルド

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契約を延長するか否か、暗雲も立ち込める中で始まったシーズン。自慢の運動量とインテリジェンスでチームに多くをもたらした。あえて言えば得点が欲しいところだ。デブ神のように決定的な仕事をもう少し望みたい。

 

本人はシティを去るのかどうか釈然としないが、チームとしては放出ということも考えなければならない。シティにとっては痛い放出になるが出たいと考えている選手を残すデメリットもあるだろう。新たなMFの獲得もあるやもしれない。できれば残って欲しいが。

 

最高の逆足ラテラル カンセロ

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メンディの離脱で狂ったLBのプランを埋めてみせた。テクニックと持ち上がりからのチャンスメークはデブ神の不調時に大いに助かった。ビッグゲームでのスタメンも増えてきて課題も少なくないが来季に期待したい。

 

いないと崩しきれず、使うと左サイドの守備力は下がる、この難しさは相変わらず。本音を言うと第3SBとして控えに置いておいて、崩しきれない時の”代打”に使えたら最高なのだが。。

 

何者になるか フォーデン

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ケインを取り逃がした時、自分はフォーデンの到達点がシティの到達点になると述べた。今季は名実ともに次世代のエース候補として認知されたはずだ。シティのスタメンとして十分な成績は残したと言えるのではないだろうか。

 

ただ得点能力に関しては覇権クラスと比べると見劣りはした。適正としてはボールを運ぶ能力に優れ、シュートも下手ではない、という点を考えるとIHで育てたいところ。WGとIHを高次元にこなすシルバの後継者としてフランチャイズプレイヤーになってほしい。

 

狂気は死せず エデルソン

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感情は母の子宮に置いてきたのか、脳の恐怖を感じる部分が切り取られている、というよもやサッカー選手を形容しているとは思えない賛辞を受ける狂気のポルテーロ。リバプール戦でのコントロールミスを突かれそうになっても全く動じない。本当に人か?

 

今季はアーセナル戦でのCBの前に出てのプレーといったかなりリスキーなプレーもこなしながら相変わらずの狂気を見せてくれていた。この狂気の先に自分が予想するLBとしての出場があるのか楽しみにしている。

 

2、A評価

 

主将の矜持 ルベン

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昨季のパフォーマンスが凄すぎたせいか、今季は目立っての賞賛はなかったように感じるが、この男の存在はカンセロのリスクを最小限に留め、ラポとのコンビで卒なくチームの防衛ラインを支えた。

 

怪我で離脱したシーズン終盤、治りきっていない中であったが、ストーンズの不在、ウォーカーの体調不良を見て、立ち上がったのだろう。マドリー戦に間に合わせた。名手が選手寿命を生贄にチームに全てを捧げる姿は美しいし心を打つ。しかしルベンに、ここまで背負わせてしまったことに責任は感じざるを得ず、運用は再考すべきだろう。

 

王になれるか マフレズ

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シーズン序盤のネガトラ強化で序列を落とすも、ビッグゲームが続く佳境では、この男の左足は必要となった。個人能力の高さは勿論、独力で得点を取れるのは素晴らしい。昨季からチームに必要な選手と価値を示せた。

 

この男を語るとき、やはり引っかかるのがサラーの次元に到達するか。支配層に行けるか否かが問われ、個人的にはその次元にいく素養は持っていると感じる。ゼロトップ時代において得点力のあるWGの価値は高かったが、来季はハーランドが来る。果たしてどうなるか。

 

脱3番手 ラポルテ

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ストーンズの怪我でルベンの相方一番手となったラポルテ。今季は出場も多くアピールは出来たはずだ。大一番でのやらかし癖も減り大一番でシティの守衛としての存在感は増し、左利き同士のCBコンビをアケと形成したり選手としての幅も広がったか。

 

しかし大一番のCBとしては心許ない部分もありルベンの負担を軽減出来ているかは微妙で単体として見た時の能力が支配層レベルではないルベンにとっては相方に求めるのは無理のきくディフェンス能力だろう。言いづらい部分ではあるが、ストーンズは第4CBとしてカウントし、ラポはルベンの相方を別のCBを争うという3番手の方が合っているかもしれない。

 

コンバート ジェズス

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待望のアグエロの後継者、ペップシティ初年度の暗澹たる雰囲気に光を差した未来。このインパクトは見るもの全ての期待値を大きく上げてしまったのだろう。ベンゼマのようにエースの従者からの格上げはならず、チームの9番としては戦力外とされた。

 

しかし本人は腐らずWGに転身し、守備能力とチャンスメーク力でチームに貢献し、そしてクラッチ力をビッグゲームで見せ、シーズン終盤には輝きを増した。来季はどこでプレーするか分からないが、感謝とリスペクトを送りたいと思う。

 

柱だからこそ ウォーカー

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シティのDFの絶対的コアであり、だからこそCLのRB戦での不用意なレッドカードはチームに小さくない影響を与えたはずだ。ウォーカーがいなくなり、ストーンズを駆り出す機会が増えてしまった事、右サイドの守備力低下がルベンに与えた負荷もあったはずだ。

 

選手として見れば、どれほど素晴らしいかあえて書くまでもない。だからこそ自覚と責任のある行動とプレーを見せて欲しい。ウォーカーなしの大耳制覇は絶対あり得ない。あえて厳しく、この評価にしたのは期待も込めてだ。頼むぞ。英国の壁よ。

 

丁度良いIH ギュン

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中盤選手の控えとしてデブ神、ベルを休ませて非常時には4番にも対応、9番不在の状況においては飛び出してのゴールも演出するなど、貴重な中盤選手としてよくやってくれた。今季の前線中盤選手が健康体を保てたのは、この男の献身があったからだ。

 

退団も報じられ始めているが、おそらく遅くなく退団は数年以内にやってくるはずだ。半スタメンとしてチームを支える将来の監督候補を何年見れるか分からないが、銅像にならなくとも彼の貢献に見合った未来が訪れる事を祈りたい。

 

探し物 アケ

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DFのコアを守り切る、それがアケの役割だった。第4CB、第3SBとして控えながら今季は格上げがやってきた。メンディの離脱、ストーンズの怪我によるラポルテのスタメン化で序列は上がった。確かにLIV戦でのサラーへの対応やリーグ戦での随所の活躍など光るものも見せ来季以降の希望となるだろう。

 

ずっとチームは左利きのウォーカーを探していた。その答えはアケなのかもしれない。来季はDFに補強はされるだろうが、本当の勝負はここからだ。耐久力に不安もあるので無理なくLBとLCBの2ポジでイニングを食えるようになってほしい。

 

罵声の中で スターリン

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印象が悪すぎる。それに尽きるのだが、守備面での怠慢さを見せることもしばしばあり、大事な得点機会でのシュートミスに加えて自己評価が相当に高いので余計にヘイトを買ってしまう。

 

実態は第4FWで前線コアを守り抜くことにあって、耐久力の高さはチームに安定をもたらすのだが、やはりビッグゲームで使うには質と方向性に問題を感じる。契約を延長するのか退団か。チームとしても新たなハーランド時代における挙動を見てからの判断で良いはず。来季存在価値を賭けた戦いに挑むことになるだろう。

 

3、B評価

 

名手への道 ストーンズ

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耐久力、もうそれに尽きるシーズンだ。怪我さえなければルベンと共にコアを担える存在で無理のきくタイプなのでチームには欠かせないメンバーであるが、コンパニへの道を着々と歩んでしまっているのは気掛かりである。RBへの挑戦などUT性も見せ始めてるだけに肉体面でセーブをかけなければならないのは。。

 

残念だが来季構想では第4CBとしてカウントして新規CBの補強を敢行すべきかもしれない。耐久力を考慮した運用によってスタメンとしてコアとして輝いて欲しいのだが。

 

色男の苦悩 グリーリッシュ

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正直文句はないのだ。任務は果たしているのだから。そもそもデブ神の体調管理と前線コアのためのインングイートこそが本来の役割であり、1億ポンドは彼の移籍金というよりもデブ神を含めとする攻撃コア選手の体調管理への投資だと個人的には考えている。

 

しかし大一番で出来たらコアレベルでのプレーをして欲しかった。ジェズスが活躍してはいたものの、フォーデン、マフレズに並ぶ前線の主力として期待せずにはいられなかった。悪くはないのだ、ただ、しかし、、、

 

来季に期待しよう。

 

さらば英雄よ フェルナンジーニョ

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ヤヤを攻撃に全振りさせられる潰し屋の相棒、ペップの望む4番、常に仕えた指揮官の要望に応えてきた功労者は岐路に立つことになった。ロドリの一本立ちで立場を終われクローザーの役割を担うことになった。

 

CBでのプレーもこなすが、それでも強度が足りず体がついてこれないことでファールで止めねばならず衰えが顕著であった。彼が死に場所に選んだのはエティハドではなく母国ブラジルであった。銅像にはならないかもしれないが、功労者に違いない。本当にありがとう。その言葉以外何も思い浮かばない。

 

4、評価不能

 

騒乱の中で ジンチェンコ

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想像して欲しい。母国の人々が無慈悲に殺され、犯され、土地が蹂躙される様を。無実の同胞がネオナチと呼ばれ大量殺害されている。自分がかつて遊んだ場所、暮らした日々、培った幸せな思い出がつまった場所を汚されていく景色。あなたは正気でいられるだろうか?

 

だからこそ今季のジンを選手として評価するのは極めて厳しいのだ。この精神状態の中でチームに帯同し続けるのは、どれほど大変か。評価不能というのが正直なところだ。左利きのキミッヒとして来季の奮闘に期待する。

 

今でも長らくウクライナでは毎日のように死傷者が発生し世界中の人々が心配しているが、ウクライナの人々に平穏な日々が訪れることを心よりお祈り申し上げる

 

法律に縛られ武器供与も軍事的援助も出来ない極東の臆病な島国の国民として、素晴らしいウクライナ人選手が所属するチームを応援する立場として、あなた方の幸福を祈ることしか出来ない自分の無力さを痛感する次第である。

 

 

第3部 イシュー

 

1、クン時代VSゼロ時代

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アグエロ時代3年間とゼロトップ時代3年間の比較による検討と総括を行う。試行数が38と多いリーグ戦を対象に定量的指数を見ていこう。

 

16/17 アグエロ時代1年目

23勝9分6敗 勝ち点78(3位) 得点80 失点39

得点期待値2.11 HOME2.29 AWAY1.94

失点期待値1.08 HOME0.98 AWAY1.18

得点-(期待値×38)=-0.18

失点-(期待値×38)=-2.04

 

17/18 アグエロ時代2年目

32勝4分2敗 勝ち点100(1位) 得点106 失点27

得点期待値2.22 HOME2.44 AWAY2.00

失点期待値0.81 HOME0.75 AWAY0.88

得点-(期待値×38)=+21.64

失点-(期待値×38)=-3.78

 

18/19 アグエロ時代3年目

32勝2分4敗 勝ち点98(1位) 得点95 失点23

得点期待値2.12 HOME2.4 AWAY1.84

失点期待値0.73 HOME0.69 AWAY0.77

得点-(期待値×38)=+14.44

失点-(期待値×38)=-4.74

 

アグエロを最終生産者としていた3年間、ハーフスペースに立つデブ神とシルバにボールを渡して、そこからスターリングとサネが同足でサイドをぶち破りロークロスを供給。それをアグエロが決めるのがお馴染みの光景だった。

 

1年目こそ苦しんだものの、大幅に選手を入れ替えて臨んだ2年間は得点において圧倒的な理不尽さを発揮しており国内全てのタイトルを手中に収めるという支配チームとなっていた。

 

一方CLに目を向けると8強の壁に阻まれてしまった。というのもアグエロの成績を見てみると

 

17/18 8強 1stleg ベンチ外 2ndleg  24分出場

18/19 8強 1stleg 19分出場 2ndleg 90分1ゴール

 

となっていて勝負出来た2年目と3年目のうち前者では耐久力により出場出来ず、後者においてはジェズスと出場機会を分け合って負担を軽減するもPKを外し合計スコアで1点足らず敗北することになった。もちろん誤審まがいのものも18/19にはあったが。

 

シティが8強が鬼門になっているのは、アグエロが8強で思ったような活躍を出来なかった事に起因していて、DFコアのラポルテのやらかし癖、同じくコアを担うべきメンディの常時不在による左サイドの守備力の低さを抱えチームは国外での活躍が見込めなかった。

 

アグエロがプレミア史上最高のストライカーだ、と主張する際、エビデンスとしてリーグのひと試合あたりのゴール数と総得点数をエビデンスにされる方がいる。それに対しても自分なりの反駁を用意する。

 

アグエロと同時代同リーグの優れた生産者とのリーグ成績比較をしてみよう。

 

ケイン(TOT)

14/15 2581分出場 21G4A

15/16 3370分出場 25G1A

16/17 2536分出場 29G7A

17/18 3083分出場 30G2A

18/19 2427分出場 17G4A

19/20 2590分出場 18G2A

20/21 3087分出場 23G14A

年平均試合出場2811min 1試合あたり0.75G 0.16A

 

サラー(LIV)

17/18 2922分出場 32G10A

18/19 3262分出場 22G8A

19/20 2888分出場   19G10A

20/21 3082分出場 22G5A

年平均試合出場3039min 1試合あたり0.7G 0.24A

 

アグエロ(MCI)

11/12 2598分出場 23G9A

12/13 1947分出場 12G2A

13/14 1538分出場 17G6A

14/15 2540分出場 26G8A

15/16 2375分出場 24G2A

16/17 2405分出場 20G3A

17/18 1969分出場  21G6A

18/19 2480分出場 21G8A

19/20 1456分出場   16G3A

20/21 559分出場   4G1A

年平均試合出場1987min 1試合あたり0.83G 0.22A

 

ケインはスタメンとなってからを対象としていたりサラーは4年だけなのでサンプルとしての不公平感はあると思うが、言わんとする事は理解出来るはずだ、アグエロは同クラスの生産者と比べて出場時間に差が相当ある。というのも耐久力の低さから、そもそも出場試合も少なく、ゴールを奪えばジェズスと交代させる事が多いので結果としてゴール÷時間は高く評価されてしまうのではないかという指摘である。

 

アグエロは優れたストライカーである、という事に疑念を持っているのではなく、プレミア史上最高というのは言い過ぎでプレミアの歴代でもトップクラスと表現する方が適切に思える。最近アグエロを超えるストライカーは早々出てこないと言われているがサラーはアグエロを耐久力では大きく上回り絶対的最終生産者として傑出した才能であると思うのだが。

 

ペップはアグエロに満足する事はない、自分のペップシティ政権発足前に抱いた直観は正しかったか分からない、しかしペップはサンチェスの獲得に動いた。2TOPでアグエロと併用するなら3センターを捨てはしないだろうから532を使うつもりだったと仮説が立つが、だとするならペップが未来の3人と名指しした内の2人であるサネとスターリングは外される。343で縦2TOPだとしてもウォーカー、メンディーの両名獲得が理解出来ない。そこで成り立つ残酷な仮説は『ペップはアグエロを粛清しようとしたがサンチェスを取り損ねたためにアグエロで妥協した』というものだ。

 

アグエロとサンチェスの共存という仮説が打ち消される以上、当然の推測ではあるのだが、この妥協がチームに暗い影を落した、というのが自分の意見だ。結局ペップシティはペップが妥協したアグエロを最終生産者として組み上げた為に、最大値が想定を下回るものとなってしまい、ケガでCLの大事な試合で不在というのが常態化し、そこを埋めるために常に『策』を用意する必要に迫られ、その結果として負けた時にシティズンからの奇策ハゲの大合唱になる、というものだ。

 

だが根本原因はメンディーの不在常態化、アグエロの低耐久力により、守り切る力/攻め切る力の両面において欧州覇権レベルになり損ねている事と自分は考える。ただ少なくないシティズンはアグエロのケガを『事故』とみなし能力の欠如とは決して見なさず、アグエロへの批判が感情的に出来ないので、その怒りが全て奇策ハゲペップに向くのではないだろうか。

 

しかし実態としては9番の不在がもたらす必然の最大値不足と補うために苦闘する指揮官がいるわけで、だからこそ自分はアグエロに代わる最終生産者を獲得して絶対的最終生産過程を作るべきだ、と提言してきた。

 

このことはアグエロが在籍していたゼロトップ時代初年度2年目がモロに影響を受けてしまったと言える。19/20と20/21においてはアグエロはCLではほぼ使えなかった。

 

 

19/20 ゼロトップ時代1年目

26勝3分9敗 勝ち点81(2位) 得点102 失点35

得点期待値2.54 HOME2.66 AWAY2.42

失点期待値0.97 HOME0.86 AWAY1.08

得点-(期待値×38)=+5.48

失点-(期待値×38)=-1.82

 

20/21 ゼロトップ時代2年目

27勝5分6敗 勝ち点86(1位) 得点83 失点32

得点期待値2.12 HOME2.32 AWAY1.94

失点期待値0.93 HOME0.91 AWAY0.96

得点-(期待値×38)=+2.44

失点-(期待値×38)=-3.34

 

21/22 ゼロトップ時代3年目

29勝6分3敗 勝ち点93(1位) 得点99 失点26

得点期待値 2.53 HOME2.60 AWAY2.46

失点期待値 0.84 HOME0.77 AWAY0.90

得点-(期待値×38)=2.86

失点-(期待値×38)=-5.92

 

おそらくペップが好き好んでゼロトップを受け入れたわけではないと思う。しかしながらアグエロの不在は必然的にチームの構造を変えることになった。更に守備コアの不安定化も是正される事になった。

 

ルベンの獲得、カンセロの起用、ストーンズの復調でチームは守備に重きを置くようになっていく。理不尽な得点がない代わりに、守備でプラスを生み出していた。しかしCLにおける絶対的な武器の不足は明白であり、ゼロトップでは覇権クラスになることは難しかったと結論づけられる。

 

ペップはゼロトップを3年間も何故受け入れたのだろうか?

 

ペップはアグエロの耐久力が臨界点を超えだした19/20オフに動かずアグエロの契約満了まで9番獲得を見送り続けた。何故か。ここに良くも悪くもペップの良さが現れている。ペップはアグエロ最後の試合後インタビューで涙を流しながら『彼の代わりなんていない』と絶対的な存在であると主張していた、多くのシティズンも感動したのだろうが自分は苦々しく思っていたし、その気持ちをアグエロの父親が代弁していた。『あの涙はTV用だ、そんなにウチの息子が大事なら何故契約延長オファーを出さなかったのか』まさしくその通りなのだ。

 

ペップは明らかにアグエロに不満を持っていた、でないならサンチェス獲得未遂の道理が合わない、しかし取り逃し、ペップは優しさから神話を支持した。『アグエロは最高のストライカーである』というものだ。代替の9番を獲得しなかったのも神話のためである。

 

仮にサンチェスを獲得したとしよう、そしてアグエロが試合出場可能な状況なら、どちらかをスタメンとして選ばなければならない、その状況においてペップはサンチェスを選ぶだろう、だからこそ獲得したのだから。

 

そうすれば神話は崩れる、アグエロがベスト』という神話は対外的に否定されシティズンのアグエロへの信仰に対し水を差すことになる、だからこそアグエロが世界最高9番というスタンスを守りながら次のストライカーに移譲するために満了まで待つことにしたのだろう。個人的に、この姿勢は立派だとは思うが、この神話堅持のせいで最大値は低くなってしまったので、大耳戦争敗着の一手だったと個人的には考えている。

 

イブラ、マンジュとの不和はペップの有名なエピソードだが、その原因が見えてくる。

 

イブラはペップバルサ2年目の目玉補強だった。しかしメッシが覚醒しバルサの王ではなくなった。ペップはイブラへの敬意からメッシ中心の方がイブラ中心よりも優れたチームだから偽9番メッシと偽翼イブラを決意した、という腹の内を絶対に口外しなかったが、それは誰の目にも明らかだった。

 

ペップはイブラを『主役』として見切った。イブラはそれをハッキリ言わない事にイライラしていたのではないだろうか、明らかに自分を評価せずメッシ中心を決めていているのに、その事をイブラに言わない。インテル戦後の『臆病者め』という怒りはコレに起因するのではないだろうか。聞こえの悪い事は明言しないという相手への哀れみはイブラのプライドをかえって傷つけたのではないだろうか

 

 

マンジュキッチもそうだ。バイエルン就任時、ペップは生産者の獲得をオーダーしていたしレバンドフスキを『予約』していた。ドルトムントフロントが1年後のフリー移籍を決断したため、合流が遅れただけで、レバとマンジュは共存させる気はない。ペップにとってマンジュはレバの『代替品』でしかなかった

 

しかしペップは、その事を明言はしない。『誰か一人戦争に連れていけるならマンジュキッチを連れていく』と言って見せる。それはマンジュはレバの代役ではなく素晴らしい選手だと主張したかったのだろうが、それならレバを獲得する理由は何なのか?マンジュがそれだけ良いなら大耳『戦争』に連れていけば良いではないか

 

イブラはメッシに次ぐ2番手、マンジュはレバに次ぐ2番手、その事実がありながら行動にも移しながら、ペップは、さも彼らが最高であるかの如き発言を対外的に行う。このやさしさとプライドへの配慮の姿勢がかえって彼らの気持ちを傷つけたのではないか、と自分は考える。

 

アグエロにも同様の事をした。ペップにとってアグエロはNo.1ではなかった、サンチェスの獲得に動いた後で平気な顔で涙を流しながら世界最高のオンリーワン選手のように彼をほめそやす、アグエロとの間に不和は発生しなかったが、ペップの2番手のプライドの尊重というのは逆効果になりうるという好例で、本人は、これを優しさと捉えているから余計にタチが悪いのだ笑。

 

ペップは少なくないシティズンの信仰する神話『アグエロは世界最高』を支持し、それが崩れ去る決断を避けた。ある意味ではペップ政権5年間は神話と共に歩んだと結論できる。そして、その神話がペップシティの最大値の低さを招き、欧州覇権を阻んでしまった事も、また事実なのだ。

 

ペップは神話を守った。2番手を1番手と言い切り続けた。その姿勢が良かったのか、自分は大いに疑義を抱く。アグエロのピークアウト後、ケインは18年夏に長期契約で囲われており、サンチェスはUTDで完全にトップフォームを失っていた。ムバッペもマドリーがつばをつけていたし、ハーランドも未知数、オーバもピークは過ぎていたし、その意味では神話と心中するしかなかったのだろう。17/18でケインを狙えばよかったというのはあまりにも結果論によりすぎている

 

その意味では、仕方なかったのかもしれない。やはり最終生産者は獲得が難しい、だからこそメッシとエトーのいたバルサ、レバを囲えたバイエルンと異なりブランド力に乏しく、アグエロのいるシティを選んだ時点でペップチームの最大値の問題は避けられなかったのだろう。もしサンチェスを獲得出来ていたら、どんな未来があったのか、神話は崩れたが大耳戦争勝利の確度は変動したか

 

 

2、来季構想

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ここまで読んでお分かりの通り、自分の主張は実にシンプルである。支配層の生産者を連れてきて分かっていても止められない武器を生成し、コアレベルの選手の健康体を維持してビッグマッチにぶつける調整を実施すべきというものである。

 

GK部門

 

ここはエデルソン、ステフェン体制を維持するだろう。流石にエデルソンのLB起用はないとは思うので笑、来季も国内カップ戦をステフェンに担当させて、それ以外の試合は全てエデルソンに先発させるだろう。

 

DF部門

 

まず今季のCL敗北の原因はDF部門の運用にある。コアであるルベン、ストーンズ、ウォーカーはシーズン後半に揃って不在となる試合も少なくなく、明らかに運用に問題があったと言わざるを得ない。

 

コア3は絶対としてコアを休ませる役割を担うのがラポ、アケ、ジンのはずで、そこにカンセロ、メンディが異分子としていた。後者はなき者として扱うとして前者は確かに攻撃面での寄与はあるとはいえ守備は厳しくデブ神不在時のスポット起用に留めるべきではないだろうか?

 

ストーンズはコアから外し、CBのコア候補を一人連れてくる必要がある。出来ればパウトーレス。彼をラポルテと競わせる形がベスト。もしくはLBのコア候補を取って来てアケとラポルテでルベンの相方競争をさせるか。

 

いずれにせよCBかLBのどちらかは必要でプロパーな存在がいないという意味ではLBの補強となる可能性が高いだろう。ストーンズをルベンとウォーカーの控えとして扱い、代打としてカンセロをベンチに置く体制になるか。

 

RBウォーカー、ストーンズ、カンセロ

CBルベン、ストーンズ

CBラポルテ、アケ

LB(新加入)、カンセロ、アケ、ジン

 

RBウォーカー、ストーンズ、カンセロ

CBルベン、ストーンズ

CB(新加入)、ラポルテ、アケ

LBカンセロ、アケ、ジン

 

このような形が想定される。不安なのはストーンズの耐久力でありCBとLBの両獲りもあるか。そうなればジンを中盤選手として運用する可能性もある。

 

MF部門

 

正直、運用は完璧だった。デブ神、ベル、ロドリの3人がMVP級の活躍を見せてくれ、特に控えが事実上不在だったロドリはよくやってくれた。IHの控えもEDS組もおり、そこにグリーリッシュ、ギュンがいて充実の一途であった。

 

4番ジーニョの離脱は頭数減少以外さほどの穴にはならないだろう。ただロドリとの共存も可能な異なるタイプのピボーテは必要でフィリップスは完璧。もしくはジンをここへ転用するのもアリか。左利きのキミッヒのようなプレーを望みたいところである。

 

IHに関しては、デブ神とベルは絶対軸としてギュンが何年いるかである。早ければ今季にも放出と言われているが、パルマー、マカティがどこまでやれるかも重要で、やはり一枚欲しい。グリもIHでイニングを食ってもらう必要がある。

 

フォーデンもIHとして計算出来るので、そこも考えると頭数的にIH対応可能な4番を獲得するのみに終わりそうだ。

 

4番 ロドリ、(新加入1)、ジン

6番 デブ神、グリ、パルマ

8番 ベル神、フォーデン、(新加入1)、マカティ

 

ギュンが残れば安泰であるが、最悪のケースも想定してこのような形か。

 

FW部門

 

ここも今季は何とか運用出来た。グリがLWGで頑張ってくれ、フォーデンとマフレズはチームに欠かせないコアだ。ジェズスが前半はRWGとして守備で貢献し後半は9番としても一定の活躍を見せてくれた。

 

本当ならメンディがLWGとしてベイルのような凶悪ぶりを見せてくれたらと思っていたのだが妄想は、この辺にして。ハーランドとアルバレスの加入で前線は少し余裕は出来るだろう。まずフォーデン、ハーランド、マフレズの3人がコアだ。そこに誰を控えとして体調管理要員とするかである。

 

出来れば9番とRWGを兼任出来るジェズスに頼みたいが放出が濃厚なので、ここはアルバレスに任せるしかない。カイキー、エドジースカッド入りは時期尚早でパルマーは中盤で育てるべき。グリとフォーデンは中盤起用もありそうで、デラップはシーズン前半まで保有し起用機会が少なければ後期のレンタルもあるか。

 

RW マフレズ、アルバレス

CF  ハーランド、アルバレスデラップ

LW フォーデン、グリーリッシュ

 

こうして見ると、今季は選手獲得は多いシーズンになるだろう。DFと4番とFWに補強は必要で、既に半分は終えている。出来れば運用に苦心したDFには最低1名出来れば2名ほどを獲得したい。

 

この布陣で、やるべきは最終生産過程の構築である。まず初年度ハーランドの得意技を見つけていくことに尽きる。新加入選手がフィットするようにチーム全体での試行錯誤の多いシーズンとなるだろう。ペップの最後の戦いが始まる。次の3年でチームの新たなサイクルを作るはずで、魅力的なチームで宿願の大耳を掲げる日を待ちたい。

 

 

 

第4部 最後に

 

シティのゼロトップ時代は終焉した。ハーランドがやってくる。念願の9番だ。遂に時代は変わろうとしている。しかしハーランドを獲得することは手段であって目的ではない。何度も言うように重要なのは絶対的最終生産過程の創造である。

 

大耳、唯一シティが手にできていないタイトル。これまでの王者には圧倒的な誰も止められない必殺技があった。ハーランドを用いて、何が出来るか、シティは覇権チームになるスタートラインに立ったに過ぎない。

 

ルカクの落とし込みに失敗したCHE、ロナウドを3年間持て余したユーベ、最終生産者がいても、それすなわち最強とはならない失敗例もある。しかしシティは、その挑戦権さえ、ここ3年で得られなかった。ハーランド到来、これは9番獲得以上の意味がある。

 

ペップの得意技は最終生産過程の構築だ。バイタル無双メッシ、ハイクロス爆撃レバミュラ、ロークロス爆撃アグエロ、これらに続くハーランドを主軸とした必殺技を作り上げることが出来るのか、そして、それが完成した時、大耳を獲れても獲れなくてもペップはシティを去るだろう。バイエルン時代と同様に。

 

シティは完成が近づいている。同時にペップの別れも。これからペップシティは何を見せてくれるのか。欠落が生み出す狂気と騒乱のスカイブルー。ペップシティの最後の戦いが始まろうとしている。

 

今季は我慢のシーズンだったが、来季は試行錯誤のシーズンだろう。しかし今季の、どこかストライカーがいないことに引け目を感じながら覇権チーム相手に知恵を絞り尽くしてDFコアの離脱に怯える苦しみとは異なり、希望を抱えながらの戦いとなる。

 

『サピエンス全史』を著したハラリは”人類は疫病と戦争を克服した”と述べている。人為的な災害による疫病以外は発生せず、大国による古典的な戦争が起こり得ないと。しかし新型コロナの発生、そしてロシアのウクライナ侵略戦争である。昨季のCLを優勝したのは最終生産者のいないCHEで、シティズンの中には自分に対して『トゥヘルが出来たのだがらペップが出来ないのはおかしい、CL敗北の責任はペップである』と。

 

サッカーはネットを揺らし合い、その数を競う。その原始的風景は不変なのだろう。ネットを揺らす能力を持つ選手の最大活用、改めて、その原始的模型に立ち戻る時なのだろう。

 

来季こそ宿願を果たす事を祈っている。

 

付録

 

 

●FPとCL

 

牽牛星といえば最終生産者という言葉を思い浮かべる人はtwitterシティズン界隈でおられるかもしれないが、これは自分が作った言葉ではない。

 

書籍で読んで便利と感じ使っている。ゴール=最終生産、と和訳を与え、そのプロセスを最終生産過程と呼び、その過程における主役を最終生産者と定義する。これはポジションは問わない。ストライカーは9番にしか使われなくなってしまい(定義上は問題ないが)スコアラーは結果論としての得点者なので、最終生産者とは実に便利な言葉なのだ。

 

自分はペップバルサ新規で0809から欧州サッカーを定点観測しているのだが、今季も入れると14年欧州サッカーを見ている。その中で経験論的に得たのは最終生産過程の完成度が高いチームが勝ってるという事実。

 

0809メッシバルサ

0910インテル

1011メッシバルサ

1112ドログバチェルシー

1213ロベリのバイエルン

1314ロナウドのマドリー

1415 メッシのバルサ

1516ロナウドのマドリー

1617ロナウドのマドリー

1718ロナウドのマドリー

1819サラーのリバポ

1920レバのバイエルン

2021チェルシー

 

この13年で明確な最終生産過程が構築されていないチームの優勝は2年しかない。この歴史的結果から自分はCLというのは最終生産者のためにある大会であると結論づけるのだ。だからこそCL獲りたいならワールドクラスの最終生産者を中心に誰も止められない最終生産過程を構築することにあるというのが自分の論となる

 

もちろん例外は2度ある。では聞くが

 

6人に1人しか効かない薬と6人に5人は効く薬、どっちを買うか聞かれて前者選ばんでしょ、という話だ。

 

だからシティに対しても最終生産者の選定が必要だと。そのために外注するか内部選出しかないと主張を繰り返すのである。

 

ただ系を考えるときに、最も結果に影響を与えうる要素だけを残した理論模型として、このCL最終生産者至上主義論が正しいのかを合理的な立場では議論することは困難である。

 

サッカーとは22人の選手とボールの23体問題を解くことに等しい。もちろんパラメータとしてコンディション、交代もある。そして物理学の立場では3体以上の問題は解けないとされる。そうなると、我々は全ての要素を拾わず本質的なものだけを残した妥協としてのモデル理論を要求されるのである。

 

 

●クライフとペップ

 

ペップサッカーはクライフ描像の現代的な表現であると自分はよく話す、ここでクライフとペップという縦軸の話をしよう。

 

ペップのポゼッションフットボールを語る上で、クライフ時代は避けて通れない文脈。クライフのサッカー観は非常に有名でポゼッションフットボールの潮流そのものと言われ、サッカー監督は選手時代の経験が強く影響する。

 

クライフは歴代でも最高クラスの偽9番。凄まじいテクニックと戦術眼でチームを栄光に導きいた。その経験は監督時にかなり影響する。そしてそのことこそがペップとの最大の違いになってもいる。

 

クライフのサッカーはGKから攻撃が始まりCFから守備が始まると言われ、サッカーという競技における勝利の確度の高い戦略が体系的に定まっているのが特徴。相手の前線からのプレス枚数に+1をした枚数でバックスを形成。相手が2トップなら3バック、相手が1トップなら2バックといった感じで相手に合わせてDFラインは決まる。

 

ビルドは常に数的優位を確保して中盤にボールを渡し、中盤はトライアングルを形成しボールを前進させる。そして両翼の大きく開いたWGが相手のSB(WB)を引き付け、相手選手の間に位置取る味方にボールを供給する、そして、そこからは偽9番ならバイタルからのコンビネーション、純正9番ならWGからクロス爆撃を実施して相手を圧倒する。

 

コンパクトに位置することで多くのパスコースを作り、相手ボールになれば即座にコンパクトな布陣で囲い込む、DF裏の広大なエリアへのロングボールはGKが処理すれば良い。これがクライフのサッカーの概形。

 

しかしこのサッカーはカウンターへの脆弱性を持つ。

 

コンパクトな布陣によるポゼッションはカウンターへの脆さ、そしてGKの飛び出しに加え、リスクのある選択を実施しなければならない。これはポゼッションサッカー潜在的弱点だ。

 

ただ、クライフは、このリスクを承知で理想を追求した。それはなぜか、それは個人能力への絶対的な信頼があるから。

 

このポゼッションサッカーのリスクの軽減に必要なのは質的優位性と最終生産能力。なぜなら高度なプレーを完遂できなければ、その時点でカウンターが発生する。最終生産能力がなければシュートミスからカウンターが発生する。そもそもパスミスといった事案が頻発するとカウンターを受けるリスクが発生する。

 

つまり自軍選手が敵軍に対して圧倒的な質的優位性を持っていれば、これらのリスクはスクリーンされる。クライフは基本的に技術への信頼が強い。基本的に一対一では負けないし、ミスはそもそも発生しない。これが大前提になる。

 

クライフ政権8年間でリーガ四連覇があったもののCLは一回しか制せなかったというのはなぜか、ポゼッションのバルサが歴史的にリーグには強いがCLとなるとマドリーに分があるのはなぜか、これこそがクライフが無意識のうちに前提としていた質的優位性にある。

 

そもそも質的優位性が強ければミスしてもすぐに取り返せ、基本のどのプレーも完遂はされ、リスクが顕在化しない。GKのリベロ化に関しても飛び出すという展開自体が少なく相手FWの質が低ければ個人能力で何とか出来てしまう。

 

このクライフサッカーの隠された前提、これにメスを入れたのがペップだ。ペップがクライフのサッカーの思想を具現化しながらも、CLでも支配的になれたのは、この前提をペップが理解していたことが大きい

 

最終生産過程の精度が低いと攻撃失敗からカウンターを受ける、相手に対して質的優位性がないとプレーの失敗からカウンターを受ける。ポゼッションは格下との対決が多いリーグなら成功するが同格格上との一発勝負となると、どうしてもリスクの方が勝ちカウンターにさらされ続ける

 

だからこそペップはバルサにおいて最終生産過程の徹底、推定されるミスの発生確率を上げた上でのリスクヘッジをした。それがメッシを中心とする最終生産過程の構築、即時奪還のためのハイプレス戦術の徹底。

 

クライフがミスするわけないだろ、と見込んでいたものをペップは疑った。ミスをしても取り返せる布陣を作る必要がある。そこで数十本のパスを命じる。そのパスで最適配置をとって、そこから攻撃を始めなさい、と。そうすれば即時奪還に適しているからミスや攻撃失敗にもある程度対応できると。メッシという攻撃完遂能力の高い選手へと精度の高いパスを打ち込むシステムを構築し、世界を支配した

 

ペップはクライフほどの信頼はない。だからこそバルサっぽいけど初めてこんなサッカーを見たと言われた。ここまで奪還が激しいバルサはクライフ時代にはなかったのだろう。

 

だからポゼッションサッカーでリーグとCLの両方を獲るとなると最終生産者がいないとゴール未遂が増えカウンターの誘発を招いてしまい、リスクが勝ちCLでは勝てない、ただポゼッションを捨てるとリーグでの取りこぼしが増えてしまう。これが難しい。

 

ペップのサッカーの最大値は最終生産者で決まる。シュート未遂、プレーミス、といったものを極力減らさないと、格上や同格との一発勝負では厳しい結果を招いてしまう。

 

そんな事実を証明してるのがペップシティなのだろう。

 

 

●ペップのデザイン

 

ジョゼップ・グアルディオラ、希代の名将にして伝説的チームのエルドリームバルサの司令塔を勤めた生え抜き戦士。バルサ退団後の”放浪”の末に彼はバルサ監督へと至る。

 

バルサで4年、バイエルンで3年監督としてリーグは6度制覇、CLは毎年ベスト4に進出し、そのうち、2年は優勝を果たした。率いたチームが強かったことを差し引いても世界最高クラスの指揮官と言える。

 

ペップは前述のように最終生産過程を設定し、ミスによるボール回収との共存で支配構造を生み出してきた。そしてそれは支配層の最終生産者を主軸にデザインした。バルサではメッシの狭いスペースでもボールをコントロールしドリブルで突破しシュートも上手い、9番と10番の両方を高次元にこなせる特性を見つけた。

 

メッシにバイタルでボールを供給し前を向かせてドリブル突破、これが必殺技となった。メッシのポジションはバイタルで固定。そして両翼は相手SBを高く押し上げ、相手CBがメッシを追いかけようとした際の裏のスペースへの突撃が狙えるビジャとペドロが起用され、狭いバイタルへのコマンド力の高い選手としてチャビ、イニ、ブスケツが徴用された。

 

レバンドフスキはボックス内でボールを持たせれば頭でも足でも多彩なシュートパターンを持つ純正9番。囮として得点力を有し変幻自在のポジショニングでレバの周囲を衛星的に動き回るミュラーとのコンビで能力の最大化を狙った。レバミュラにクロスを供給し続ける同足のコマンとコスタが重用され、WGへの経路作りとして偽SBシステムも搭載されていた。

 

このように、メッシ、レバンドフスキといったバロンドール候補の常連クラスの支配層の適正に合わせた理想のフィニッシュパターンをデザインし、それをコンスタントに発生させる構造を形成することでチームの形成を図ってきたのがペップのチーム作りだ。

 

ポゼッションスタイルはカウンターへの脆弱性が付き纏う。その弱点は高品質な選手を集めてミスの絶対数を減らし、最終生産効率を限界まで上げ切ることで、カウンターを受ける総数を減らして、カウンターによる失点の実効性を減退させることでリーグ向きだったクライフの方法でもプレス構造の付加と合わせて、リーグ・CLどちらでも支配的な存在になることを可能にしたのである。

 

バルサでは2度のCL制覇を成したが、バイエルンでは3年連続4強に泣いた。初年度と2年目は明らかに怪我人の数が異常で、この耐久力の低さの中で、ペップバイエルンはUTの利用へと動いていくことになる。

 

ユーティリティ=UT、その名の通り、複数ポジションに対応出来る性能を利用すれば最小人数で最大の効果が見込め組織のスリム化と人件費の圧縮が可能になる。ペップはより進んだ応用を見せている。

 

複数ポジションをこなせる選手を複数運用することで互いにポジションを変更し合ったりしても本職から本職へ移動しているので相手に合わせた柔軟な変更、相手に与える影響の維持や強化を可能にする。最適配置理論に基づき、ポジション変換とUT選手の運用を主軸としたペップのサッカーを自分はコアUTポジショナルと名付けている。

 

詳しくは以下の記事にて書いている。

lilin18thangel.hatenablog.com

 

またシティにおける、このモデルの運用の経緯と直面する困難さに関しては以下の記事で書いているので参照されたし

lilin18thangel.hatenablog.com

献身に至る光の巨人の物語<シン・ウルトラマン批評>

本記事はシン・ウルトラマンの評論記事で、第1章で筋、第2章で引用、第3章で問題点を書き、第4章でシン・シリーズ次回作シン・仮面ライダーについての予想を与えた。

 

諸注意として本記事は派手にネタバレをしているので、内容を知りたくないという人は見ることを中止することを強く勧める。

 

 

第1章 筋

 

本作は4章からなり、区分は到来する地球外生命体によって。

 

今回の庵野ウルトラマンに関しては襲来種別4編から成り、1966年版ウルトラマン総集編のような形を取る。

 

 

(1)怪獣襲来

 

巨大不明生物が出現(後にゴメスと命名)し自衛隊の総力戦で駆除、再び巨大不明生物第2号マンモスフラワー出現するも炭酸ガスと火炎放射の両面攻撃により駆除、三度巨大不明生物第3号ペギラが出現し駆除成功、一連の巨大不明生物を禍威獣と呼称。第4号ラルゲユウスが出現、駆除捕獲に失敗しロスト。

 

これを受け政府は防災庁と合わせ禍威獣災害対策復興本部の設置、防災庁内に5名の専門家による対策室を発足、禍特対と呼称

 

禍特対の活躍で第5号カイゲル、第6号パゴス駆除成功、新たな巨大不明生物が出現。

 

現在

 

首都圏郊外に第7号透明怪獣ネロンガが出現。禍特対に出動命令下令

 

班長の田村、作戦立案担当官の神永、物理学者の滝、生物学者の船縁の4名で構成された禍特対が現場で奮闘しネロンガが捕食していた電力供給をシャットアウト、陸自の誘導弾攻撃を敢行するも全て迎撃され暴れ出す。その時、モニターに逃げ遅れた少年を見つけた神永は救出に向かう、暴れる巨大生物の前に混乱する一同、その刹那、上空から謎の生命体が飛来、銀色を帯びた巨人が腕で十字を形成し高エネルギービームを照射、ネロンガを駆除し、上空へ飛翔し消え去った。

 

銀色の巨人はウルトラマンと呼称、禍特対に公安調査庁から浅見が出向した。

 

第8号ガボラ襲来、第6号パゴス同様に放射性物質を有していることを受け、非常事態宣言B発令、地下核廃棄物処理場を目指すガボラを止めるため、地中貫通型爆弾投下、地中から姿を現したところにウルトラマン出現。肉弾戦闘の末、ガボラ放射線ビームを受け止め、駆除に成功、ガボラの亡骸を抱え上空へ飛翔。

 

ウルトラマン放射性物質の拡散に配慮して光線使用の抑制、放射性物質処理の請負、放射線流受け止めと除去に徹し、飛翔する際に禍特対の方を一瞥していたことを受け

 

人類の味方となる巨大不明生物なのでは、という期待が現場に生まれていた。

 

 

(2)偽物襲来

 

ある日、外星人ザラブによる大規模停電を禍特対が受ける。自身の能力を見せつけた後に日本国政府に友好条約を持ちかけ日本国政府としても未知の最先端能力を手中に収める目的で快諾、しかしザラブの目的は人類同士を争わせる形で人類を滅亡に導く事であった。

 

ザラブの陰謀を知った神永(ウルトラマン)は元同僚の加賀美から情報を入手し、ザラブを追い詰める、しかし反撃を受け拘束。その夜に横須賀にウルトラマンと思しき巨大不明生物が出現、破壊行為の後に消失。

 

これまでのウルトラマンの行動原理と異なるという見解も出る中で政府は対策本部を設置し事態の収束に向かう。そしてネット上に神永がウルトラマンに変身する様子が収められた動画が大量にup。乗り捨てられた神永の自家用車が発見、禍特対のメンバーは公安出身の神永らしくないと訝しむも、ザラブは日本国政府ウルトラマン抹殺計画を提案した。

 

廃ビルに監禁された神永(ウルトラマン)に対し変身装置ベーターカプセルのありかを問い詰めるザラブは浅見にベーターカプセルを託していた事を告白することなく沈黙し続ける神永(ウルトラマン)の姿に諦念を感じていた。

 

再び首都を蹂躙すべく暴れ回るウルトラマン、そして加賀美を通じ神永(ウルトラマン)の居場所を突き止め救出する浅見、あなたは外星人なのか人間なのか?と問う。

 

ベーターカプセルを浅見から受け取った神永(ウルトラマン)は変身し、ザラブ扮する偽ウルトラマンと激闘、八つ裂き光輪で駆除。ウルトラマンは人類の敵という疑義は消えると共に、同僚がウルトラマンであった事実の前に複雑な感慨を得る禍特対の面々であった。

 

 

(3)懐柔襲来

 

ザラブ撃退後失踪した神永(ウルトラマン)と浅見、突如として東京都丸の内に巨大化した浅見が出現、現場混乱の中、『これは私のデモンストレーションだ』という声が響く、その刹那に巨大浅見は倒れ込んだ。

 

禍特対の面々の前に出現したスーツを着た男性の容姿をした外星人はメフィラスと名乗った後にベーターボックスを用いた人間の巨人化を可能にする先進技術を紹介、浅見を元の体に戻す。その足で日本国政府にベーターボックスを用いた巨人化技術による異星人からの自衛計画の提案をする。

 

そして行方不明となっていた神永(ウルトラマン)と接触し会食。その場で巨大不明生物の発生は元々地球に眠っていた生物兵器を目覚めさせただけで、真の狙いはベーターシステムによって兵器転用可能な素材である人類が住む地球を征服するために、人類に無力感を与えることで懐柔し自身が独占することにあることを告白し、共闘関係を提案。

 

神永(ウルトラマン)の答えはNO、ベーターシステム受領式会場を急襲し禍特対のメンバーと協力しベーターシステムを奪還。メフィラスは静かに怒り、ベーターシステムを利用し自身も巨大化し、ウルトラマンと激闘。相見える2人の巨人の戦いは互角の様相を呈する中、メフィラスは、何かを見つけ突然対決を拒否、ベーターシステムを持って消失。

 

メフィラスが見つめたウルトラマンの向こう側には第3の巨人が立っていた。

 

 

(4)審判襲来

 

神永の亡骸の前で神永(ウルトラマン)は新たな襲来者ゾーフィからの詰問を受ける。何故禁じられている人間との融合を果たしたのかと。

 

少年を守るために身を挺して守った神永を理解したかったからだと述べる。ゾーフィはマルチバースの全ての生命体は破壊兵器転用可能な地球人のポテンシャルを知ってしまったとして、脅威となる前に天体制圧用最終兵器ゼットンを用いて殺処分すべきと判断し、地球を終末に導く計画を告げる。

 

神永(ウルトラマン)は単身ゼットンに挑むもあえなく敗北、ウルトラマンの敗北を受け民間人には終末の時が近づいていることを伏せ、穏やかに”審判の日”を待つ人類

 

しかし神永は禍特対に自身が知りうるベーターシステムの基本原理や関連する高次元領域における理論体系を記述したファイルの入ったUSBを船縁に託していた。滝を中心に全世界の知能を結集しゼットン攻略法を見つけ出す。

 

ウルトラマンは万能の神ではない。君たちと同じ、命を持つ生命体だ。僕は君たち人類のすべてに期待する』

 

ベーターカプセルを用いて6次元を通し余剰エネルギーを発生、ゼットンの高熱球を別次元のプランクブレーンに飛ばす方法を立案。ゼットンとの初戦の瀕死状態から回復した神永(ウルトラマン)に伝達。しかし、その計画で神永(ウルトラマン)本人も異次元に飛ばされ帰らぬ人になる可能性も伝えるも、当の本人は覚悟の上で計画の実行に着手する。

 

見事、作戦は成功しゼットンは駆除、ウルトラマンも異次元へ。そしてゾーフィとのプランクブレーンでの対話が始まる。

 

ゼットンに立ち向かい撃退したウルトラマンへの賛辞を述べるゾーフィ、そして光の国への帰還を提案。しかしウルトラマンは拒否、自身の命を捨ててでも神永に命を授けることを嘆願する。そしてゾーフィは

 

ウルトラマン、そんなに人間が好きになったのか』と問いかける。

 

人間の未熟さ故に見守り続けたいという意志を述べるウルトラマン

 

ゾーフィは願いを聞き入れ神永を地球に返還。

 

目を覚ます神永(ウルトラマン?)の眼前に帰還を喜ぶ禍特対の4人

 

果たして神永なのか、ウルトラマンなのか、そんな疑問を観客に投げかけて、米津玄師の『M八七』が終幕を告げる。

 

 

 

第2章 引用

 

作監督樋口、総監修庵野にとってウルトラマンは大いに影響を受けた作品だ。故に旧作ヲタにとっては興奮しっぱなしの引用とオマージュのオンパレード。主だったものだけ抜き出し本作の良かった部分として以下に付す。

 

(1)ゴジラ

 

まずOP映像からウルトラマンを意識していた。かつてウルトラQと表示されてからウルトラマンと出た事をオマージュして、本作ではシン・ゴジラと表示してからシン・ウルトラマンという題字が出現。

 

テロップベースでこれまでの禍威獣襲来と顛末が紹介され、既出禍威獣は全てウルトラQ時代の怪獣でゴメスはゴジラからの流用というエピソードをオマージュし本作ではシン・ゴジラそっくりであり、登場禍威獣であるネロンガガボラがパゴスと同様の指向性を持っているというのも、当時、この3怪獣の着ぐるみが同種のものが使用されていたからだろう。

 

各禍威獣の倒し方にも旧作オマージュが込められ音楽も遵守されている。偽ウルトラマンとの戦いにおけるウルトラマンが手を痛がる仕草も、かつてのウルトラマンスーツアクターを務めた古谷敏の挙動のコピーがなされていたり、電話の音なども当時を再現している。

 

最初に現れたウルトラマンの口元が人間のようにグシャっとなっているのも、かつてのウルトラマンにおいて対話する事を前提に設計されていたというエピソードに基づいていて、シンエヴァ同様に過剰に美化された画作りではなく、当時の質感や黎明期の苦労ゆえの事象も丁寧に再現してある。

 

カットの構図も旧作の影響を強く感じ、細かなエピソードも取り入れ、正直事前に”予習”していた自分でも全て見つけるのが困難なほど、隠れミッキーの様な趣がなされていた。特に後に判明した事だが、当時の児童誌が発刊を急ぐあまりにゾフィをゾーフィと誤植してしまったエピソードを引用するとは思わなかった。

 

最後にかかる米津玄師のEDもM78ではなくM87となっているのも当時の台本の誤植を引用してのことらしく、旧作にあった様々なエピソードの引用と再構築を、ここまで無理なく一本の映画に落とし込んだのは素晴らしいの一言だろう。

 

(2)野生の思考

 

自分は庵野作品を語る際、その作品の下敷きとして選ばれている引用作品の中で最も主となるものを軸に論評することが多い。

 

大人の罪を子供たちが背負うことになる『犬神家の一族』の構造を採用した旧劇エヴァ玉音放送という神の声(福音=エヴァ)を巡って繰り広げられる『日本のいちばん長い日』の構造を採用したエヴァQ、そしてそのQを再構成したシン・ゴジラ

 

今回は予告編で岡本喜八の『独立愚連隊』という言葉が使われていたために、個人的には、この作品をベースに調査にやってきた主人公を中心に科特隊の中に裏切り者との戦いを描くのでは、と予想していたが本作では意外な作品を下敷きの中心に置いていた。

 

レヴィストロースの『野生の思考』である。予告編に登場してはいたが、あれは異星人の思考を理解するために主人公が読んでいるものと思っていたため、ここまでガッツリ引用されるとは思わなかった。

 

『野生の思考』は”未開人の行動原理には合理主義的な指導原理があるのではないか”とする構造主義的な書籍で、西洋諸国の思想の広範囲への拡散は文化や思想を前進させたというよりは多様な価値体系や思想を消失させてしまったのではないかと述べている。

 

ウルトラマンが神永の献身の理由を求め人類を研究する中で進んだ文明である光の国の住人である自分には想像し難い様な多様な価値観があることを見たのだろう。

 

『あなたは外星人なの、それとも人間なの?』

 

浅見の問いに対してのウルトラマンの回答は

 

『両方だ。間にいるからこそ見えてくるものがある。』

 

これはレヴィストロースの立場を表している。そして、その間の存在から人類を見つめることでウルトラマンは地球人を守り抜く事を決意する。

 

だからこそ、人間が好きになったから人類を防衛しているわけではなく、進んだ文明の浸透によって失われゆく野生の思考を保全することを重要視したからこその決断だったのだ。

 

ただ、そうなってくると旧作にあった、ウルトラマンと人類が手を合わせ防衛し続けた日々がウルトラマンの地球人への愛着に繋がり身を挺してでも地球を守るために戦う、というカタルシスが失われてしまったように感じて、少し残念な引用ではあった。

 

そんなにレヴィストロースが好きになったのか、ウルトラマン

 

の方が適切なキャッチコピーなのではないだろうか?

 

第3章 諸問題

 

 

本作は初代ウルトラマンのパロディや引用が満載で楽しめるのは事実。しかし展開や演出に関してはクエスチョンマークを感じざるを得なかった。

 

①神永救出問題

 

まず物語の起点となる神永とウルトラマンの出会い。神永は禍特対のメンバーで各省庁や学術組織から選ばれた貴重な人材だ。そんな人間が避難し損ねた少年を見つけたからといって直接救出に向かうだろうか

 

例え見つけたとしても救助は現場の避難誘導をおこなっている人間の仕事だ、それを許可し、今回のように事故に巻き込まれたら取り返しの付かない事態になりかねないということは容易に想像出来たのではないだろうか?

 

いっそ神永を現場の避難誘導を行なっていた人間と設定して、少年救出の際にウルトラマン事故に巻き込まれ、早期にウルトラマンであることが露呈し彼を監視下に置く名目で禍特対に、というので良かったのでは?

 

②滝君に至急問題

 

終末が迫る地球においてウルトラマン神永が残したUSBメモリー、とても重大なベーターシステムに関する学術体系が書かれている。それを船縁に託した。彼女は生物学者USBメモリーの中にTeXで書かれた物理学体系の概形は理解出来るはずで、ならば一刻も早く物理学を専門とする滝に見せるべき

 

しかし、滝が自身の限界を超えた先進技術の前に無力感を感じ、ストロングゼロを飲みながらやさぐれてる時に、スッと船縁がUSBの存在を伝える。この時、劇場で

 

『もっと早く見せろよ!!!』と心の中で僕はツッコんだ。

 

一分一秒を争う中で、何故そのような重要なデータの存在を早期に伝えないのか?

 

③好きになるかな問題

 

本作のキャッチコピーにも使われているゾーフィのセリフ

 

『そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン

 

本作、ウルトラマンが人間を好きになるに値するだけの積み重ねがあったとは言い難い。より本質的な問題だが、初代ゴジラという映画をシン・ゴジラという映画にリビルド出来ても、ウルトラマンTVシリーズであるために、尺の問題で急速な展開にせざるを得なかったという構造的な弱点を感じる

 

ウルトラマンが人間を好きになる理由、それは結局のところ愛ではないか、より正確に言うなら愛着か。自分の責任で絶命させた隊員の意志である地球を襲来者から防衛するという任務を人間と共に相当数クリアしていく過程そのものが、このセリフには必要で2時間弱の映画の尺の中で愛着にまで至らせるのは無理があったのではないだろうか。

 

このTVシリーズを2時間の映画一本でやり切るの、そもそも無理なんじゃないか問題は今作がシン・ゴジラに比べて旧作ヲタへの目配せが前面に出ながらも、それ以上に積み上げが難しかった最大の要因なのかもしれない。

 

④独力で倒せなかった問題

 

本作のクライマックスの構造は旧作からの引用であろうが、最大の敵ゼットンを旧作では人間が開発した無重力弾で勝利し、ウルトラマンがいなくてもやっていけるという希望を残して終幕するわけであるが、今作は異なる。

 

確かに作戦の立案は人類がしてはいるものの、大きなヒントはウルトラマンからの資料提供によるものであるし、実行もウルトラマンによるものである。これでは人類は破壊兵器への転用性を全宇宙の生命体に告知し襲来を誘致してしまう危惧がある中、ウルトラマンは去ってしまった可能性があるわけで、これから先に希望を見出しづらい

 

そして、ここでも作戦立案のスピード感が異常に早く、やはり積み上げるには、あまりにも2時間は短すぎたと結論出来る。

 

そもそも本作を含め2018年の企画立案段階において、

 

2020年 シン・ウルトラマン

2022年 続・シン・ウルトラマン

2023年 シン・ウルトラセブン

 

という3部作が構想されていて2作目に関しては庵野脚本監督で、そもそもが連続体の一つとして見た方が良いのかもしれない。

 

しかし樋口はパンフレットの中で次作があるなら若い人で、と述べ、庵野本人もデザインワークスの中で次作は本作の売上次第とも言っており、バルタン星人を出せなかった悔恨や、次作は怪獣攻撃隊も登場させたいので戦闘機や基地の撮影などで製作費は膨大になり、制作環境も考えると本作の売り上げを参考にはするが映像の質の担保は出来への疑義を呈していた。

 

だからこそ本作単独で、詰め込み過ぎの旧作ヲタへの目配せ映画と評するのは適切なのかも考えてしまうところで、評論が大変難しい作品である。

 

長澤まさみ問題

 

多分炎上するだろうなぁ、と思っていたら案の定だった。そして、その理由はエンドロールを見ると明らかになった。

 

総監修 庵野秀明

 

おそらく本作は庵野の関与はシン・ゴジラほどではない、むしろ役者への演技指導や演出は樋口の影響が強いのでは

 

これは自分だけではないと思うが、樋口は特技監督としては最高峰であり、人柄や調整能力も抜群の人材であるが、公的発言の不味さに加え純粋な映像作家としては厳しいレベルにあるのは間違いないのだ。

 

それはシン・ゴジラの座組みから庵野色を抜いただけに近い進撃の巨人の実写版を見てもらえれば分かる。そもそも人の演技の付け方が不味すぎる時がある。

 

原作ではエレンは母親を目の前で巨人に食われたことで巨人と戦う決意をします。しかし、彼を中心にした一本の映画で考えると、それでは単なる報復物語であって、動機としては弱いんじゃないか、

 

普通に考えて目の前で母親を食われたことが弱いという発言は言わなくても。

 

そして本作、長澤まさみの巨人化に際し、リクルートスーツであるため下はスカートである。巨人化したことで下から女性用下着が見えるかもしれない、といった絶妙なアングルでの撮影に加え、謎の尻叩き決意シーンの連発、一体これは何なのだろうか?

 

ちなみに尻叩きに関しては脚本段階で存在したらしいので庵野の演出なのだろうが、やはり庵野はクールに人間を並べる方が良いのかもしれない。

 

そもそも人間のウェットな部分を徹底排除が得意なのに、グループの熱い友情やチームワークを描かせるべきではないのだろう。

 

更に、この巨人化した自身の動画が数々投稿されてしまい、メフィラスへの恨み節を語るところで、メフィウスが動画を全て自身の能力で消去し、大喜びする浅見。

 

しかし冷静に考えてほしい。今upされてる動画を消したところで、巨大な人間が都内を暴れ回る映像がupされているものなはずはない。日を置いてから何本もupされていくはずで、消したところで記憶にはあるわけであるから、手遅れなのではないだろうか。なのに喜ぶ、というのは禍特対に派遣される優秀な人間とは思えない

 

樋口に操縦を任せすぎたことの弊害なのかもしれない。本作は庵野作品というよりも庵野風味のある樋口作品なのだろう。神永と浅見のキスシーンが撮影されていたらしいが、庵野がカットしたらしく、こういう所を見ても、どういうウルトラマンを目指すのか、という部分でコンセンサスが取れてなかったのではないだろうか?

 

⑥新規性欠如問題

 

シン・ゴジラは多層的な作品だった。

 

空転してしまったエヴァQの別解

ソフトはエヴァ、ハードはゴジラという構造

3.11を落とし込んだ作品

プリヴィズを利用した肉人形劇

 

これに比べるとシン・ウルトラマンは背負えたものが少なく、4編の異星よりの襲来者との戦いを並べたオムニバススタイルとなっており、何度も言うが、2時間にまとめ上げるにはしんどかったのかもしれない。

 

演出に関しても、そもそも庵野作品自体が脱構築コピー系なので、どこかで見たものの再現でしかなく、シン・ゴジラで既に庵野秀明が特撮実写映画を撮ったら、という仮想実験の最高の結果を見てしまっているのでフレッシュさにも欠けていたように思える。

 

旧作にあった感動を、旧作にあった質感のまま伝えたい、という制作者の意志は感じるのだが、尺の問題で、新規性をあまり感じなかった。

 

使徒のようなゼットンには惹かれるものはあったものの、期待が大きかった分、少し残念な部分もあったのは事実だ。ゴジラの時とは比べ物にならない思い入れから来るオマージュを短い尺でやり倒してしまった弊害の方が目立った印象である。

 

シン・ウルトラマンをまとめると

 

旧作ヲタへは目配せとおびただしいオマージュと引用で喜ばせられるだろうが、TVシリーズの強烈な圧縮が物語の進行に支障をきたしており、旧作にあったウルトラマンの面白さを現代に伝える作品ではあるがシン・ゴジラの完成度には及ばない

 

と自分は結論づける。

 

 

 

第4章 最後に

 

 

 

庵野秀明、稀代の脱構築技術を活かし、シン・ユニバースを形成。前作のシン・ゴジラに続き、今作シン・ウルトラマン、そしてシン・仮面ライダーの公開も予定されている。その後、どうするのだろうか?

 

シン・仮面ライダーを公開してからは、映像作品を撮れるだけの体力が整うまでは、カラーの社長業や他作品の手伝いといったところに留めるらしく、年齢面や体力面を考えても、庵野作品の新作を我々が鑑賞できるのも、あと数本かもしれない。

 

 

ここで最後に、シン・仮面ライダーの予想を付しておきたい。ちなみに本作の予想もシンエヴァ評論の際に行っていたが、結構外してしまったので、あまり自信はないが笑。

 

lilin18thangel.hatenablog.com

 

まず、TVシリーズの映画への落とし込みによる本作でも発生した問題と同様の状況が繰り広げられてしまうという危惧である。仮面ライダーでは主人公が改造実験を受けるも、命からがら緑川博士の助力で逃げ出すも、緑川博士は殺害され、その娘であるルリ子からは父の敵と勘違いされるも、共にショッカーと戦う中で仮面ライダーの本郷に惹かれる。

 

この部分を基軸に制作が進むと思われるが、前述の詰め込みすぎる問題に加え、本作の長澤まさみ炎上劇が浜辺美波にも襲いかかる可能性もある。庵野シンシリーズの新たな炎上の被害者にならないか心配でならない。

 

ストーリーとしては緑川の推薦により本郷の拉致、改造実験、脳改造の途中で緑川博士が良心の呵責に耐えられず共に逃亡、追ってきた蜘蛛男に殺され、ルリ子に恨まれる本郷、そして共にショッカーと戦う中で芽生える恋、そこに現れるライダー2号、といった形か。ショッカーはゼーレの様な立ち位置を取るだろう。

 

心配なのは、そんなに好きになったのかウルトラマン不発問題の再発生。ルリ子が本郷に恋に落ちている様を本当に2時間という尺で描き切れるだろうか

 

おそらく、ウルトラマン仮面ライダーも映画ではなく、TVシリーズで作る方が良いのだろうが予算や制作費の問題から難しいのだろう。

 

本作、正直期待値から比べると少々ガッカリ感を感じ、改めてシンゴジラがいかに素晴らしい作品だったのかを再認識した。そして、あのレベルの映画に出会う事は当分ないかもしれない諦念も胸に去来している。しかし来年3月公開予定のシン・仮面ライダーの上映初日に自分は駆けつけるはずだ。

 

監督 庵野秀明

 

それが僕の好きな言葉なのだから。

アウトドアブランド超入門

皆さんはアウトドアブランドに興味ありますか?

 

僕は非降雪地域の生まれですが北陸地方の大学に入学し学士課程を過ごしました。地元と異なる寒さと不安定な気候の中で防寒着を求めたのは自然の流れか。

 

大学1年の2017年、周囲でアウトドアブランドが流行し始めました。後に分かったことですがヒップホップ系アーティストがPVや衣装で使い出した事に起因するみたいで、ブームに乗り僕もアウトドアブランドにハマりました。

 

アウトドアブランド興味あるんだけど、沢山ブランドあって、どれを買うのが良いの?と悩まれてる初心者の方に向け自分が得た経験や知見を付します。

 

 

 

第1章 知識

 

 

①防水と撥水

 

まずアウトドアブランドは大きく2つの派閥に分かれ、ファッション系とスペック系。前者はファッションとしてのスタイリッシュさを求め、後者は防寒着やアウトドアにおける機能性を求める。ちなみに僕は後者ですね。機能性を第一に考えます。

 

スペック主義者にとってアウターを考える上で大事なのが水対策。

 

ファッションとしてカッコ良いなら良いじゃんという方は別として、アウター特にダウンですと水を含んでしまうと台無しになってしまいますし、僕が大学生活を過ごした北陸地方だと急な雨に降られることもあるので重要な要素になります。

 

大切なのは防水と撥水の知識になります。

 

まず防水と撥水だと、素材として強固なのは防水機能になります。

 

撥水は経年劣化を招きやすく、防水ならば一生とは言いませんが相当の期間続きます。ただ注意が必要なのは防水加工は経年劣化でダメになってしまいます。

 

防水素材で最強なのはゴアテックスです。これはゴア社が作った素材でゴアテックスは防水素材であり経年劣化を最小限に留めます。ゴアテックスゴアテックスインフィニウムと呼ばれるものは防風であって防水ではないので要確認です。

 

 

②ダウンの知識

 

ダウン、それは羽毛です。皆さんは羽毛布団を持っていますか?

 

冬になると掛け布団として羽毛布団を使ってる人は少なくないでしょう。

 

羽毛布団を洗濯しますか?

 

しませんよね。大体干すだけでしょう。それはダウンが濡れると台無しになり保温性と機能性が失われてしまうからです。なのでダウンジャケットは防水機能や撥水機能が搭載されているかを確認しましょう。

 

高級ダウンは何をもって呼ぶのか?

 

ダウンを評価する定量的指数、FP(フィルパワー)と呼ばれるものがあります。これは少ないダウンでもふっくらと膨らむ度合いを示します。ですのでFPが高いと、より少ない量のダウンでふっくらとしたジャケットを作れるので軽いジャケットの形成を可能にします。

 

そしてダウンの洗濯は面倒ではあります。洗濯機で洗えず、殆どが手洗いなので、出来れば少ないに越したことはないでしょう。洗濯方法に関しては第3章で詳説していますので、そちらをご覧ください。

 

③素材の話

服の繊維に用いられるものは大きく分けて

動物系繊維

植物系繊維

化学系繊維

の3つに分かれます。この節では、3番目の化学系繊維について話すことにします。

 

まず有名なのがナイロンですね。絹に近く弾力性に富み、とても強固な素材ではありますが熱に弱く変色しやすい弱点があります。

 

次にポリエステル、これはフリースに使われることの多い素材であり、丈夫な素材でありながら速乾性に優れ衣類に用いられるポピュラーな素材で、吸湿性の低さを弱点として持ちます。

 

そしてポリウレタン、これはめちゃ伸びる素材でありながら、有名な事実ですが2、3年の寿命を持つ弱点を持っています。この素材が含まれているかはチェックするようにしてください。

 

タグの所に、何がどれくらい使われてるか、といった事をチェックして見るのを是非お勧めします。分からない素材があれば調べて見るのも良いでしょう。

 

第2章 各社紹介

 

日本には多くの焼肉屋があります。今、この文章を書いている時、宮迫さんの焼肉屋である牛宮城が話題を呼んでいます。皆さんも好きな焼肉屋は複数あると思います。

 

それは、例えば、

ここはハラミが美味しいとか

ここはキムチとかナムルが美味しいとか

ここはオリジナルメニューが美味しいとか

 

それぞれの、お店のストロングポイントが異なっていて、それぞれの良さが発揮されている部門の商品を積極的に注文されますよね。

 

アウトドアブランドでも同様。各ブランドは”強み”が異なっていて特徴が強く現れます。ここでは超入門ゆえ、主要各社の特徴と強みが端的に現れた各社のオススメを紹介します。

 

 

①THE NORTH FACE

<スマート+機能性>

 

アウトドアブランドと言えばノース、そんな地位を確立し、街中を歩けばノース、ノース、ノースの連続、今ではGUCCIとのコラボや有名アーティストの服装としても用いられ、人気ウェアは一時高値で取引されたり直売店で行列が出来る大人気ブランド。

 

ノースの良さは、ファッションとしても優れたデザイン性と機能性の融合にあると思います。それが端的に現れている商品がオススメになります。

 

●マウンテンライトジャケット(39600円)

 

ノース定番商品のマウンテンパーカ系ウェア。ジャケットと言えばノースと言っても過言ではないくらい様々なものが販売されています。マウンテンジャケットからスノーカフやベンチレーション機能を落としたものが、当該商品です。

 

ゴアテックスで外部は防水・防風止水ジップ、いかなる天候でも中は絶対に濡れません。インナーダウンとの合成可能なジップインジップ機能搭載、デメリットは、ポケットの位置が腰回りを結ぶことを想定し少し高いところに作ってしまっている点。

 

このデザインは町を歩いているとそこかしこで見れますしカラーバリエーションも複数あり、デザイン性と機能性の融合というノースの代表格のような看板商品です。インナーダウンを用いれば一年中着ることができますし超オススメです。

 

●サンダージャケット(28600円)

 

インナーダウンとしてもアウターとしても使える便利商品。ただノースの良さでもあるスタイリッシュさがあり、着膨れすることもなくシュッとしていてスマートな様相を呈しており、細く見えるため、ファッションとしてもおすすめ。

 

中綿は人工のダウンなので濡れても一気にダメになることはないです。ただダウンではあるので洗濯は面倒です笑。これも夏の暑い時期以外では着れ、この上にマウンテンライトジャケットを着ると良いですね。まぁどんだけノース好きやねん、って言われそうですが笑。

 

●ヌプシジャケット(35200円)

 

ノースで人気なのがダウンジャケット。冬にも活躍でき雪国でも十分に機能が見込め、その中でも特に人気なのがバルトロ、マウンテンダウン、そしてヌプシ。

 

2017年くらいから一気に入手困難になり始めたダウン系なのですが、バルトロはモコモコ系のシルエット、マウンテンダウンはゴツいシルエット、ヌプシは少しモコっとしてる感じです。一番防寒性と耐久性に優れているのはマウンテンダウン、次いでバルトロでしょうか。ではヌプシはよくないのでは?と思われるでしょう。

 

今回のオススメとしては各種ブランドの良さ、ノースで言えばスタイリッシュで機能性を備えている、という点に合致する商品、さらに初心者様向けという事を考えて高価なものは薦めづらいのでヌプシをチョイスしました。

 

撥水加工(なので経年劣化する)を始め最低限のスペックのみで構成されながらスタイリッシュにスマートに着れて防寒性もある人気ダウンとしてヌプシはオススメです。

 

アルパインライトパンツ(16500円)

 

ノースのパンツなのですが、これは僕も大変重宝しています。まずノースらしいスマートに見えるサイズ感。ジップ付きのポケットが3つあり持ち物も落とさず済む安心設計。毛玉が結構つくかなぁってとこが難点か。

 

ただ、様々なパンツがある中でアルパインライトは超オススメです。中綿の入ったインサレーテッドパンツもおすすめです。冬の時期には重宝していますし、中はニット素材で温かく、中綿が人工ダウンなので水分への耐久力もそこそこあるのも良いですし、ノースらしいスマートに見える作りなのも更に良し。

 

 

ARC’TERYX

<上品で高品質>

 

アークはフォーマル好みの人にもマッチしそうな品のある見た目が売りで、機能性もあるものがありますが、ノースと双璧を成すほどの流行具合を感じます。僕自身はフォーマルを好むタイプなのでめちゃ重宝してます。

 

●アトムシリーズ

 

オールラウンドなシーンで使えるAR、超軽量のSL、軽量のLTの3種類あり、フードあり、なし、袖なしetc...があります。、値段はAR(35200円、38500円)、SL(27500円)、LT(31900円、35200円)。アトムシリーズはアークの目玉商品で、ARは4シーズンで可能、LTは万能でインナーとしてもアウターとしても優秀で一番人気かな、LTに関してはランニングする方に向いているかと。

 

そして、このアトムの一番の凄さは化学繊維の綿で中綿が構成されていること、基本的にダウンは洗濯が面倒なのですが、アトムの場合は洗濯機に放り込んで洗うことが可能になります。一様ネットには入れておくのをオススメします。

 

●アロー22(29700円)

 

アークリュックは(ブランド名+容量)といった命名方法でブランド名としてはブレード、アロー、グランヴィル、マンティス。(ガチ登山用は割愛)。

 

それぞれ様々な特徴があるのですが総じて言えるのはおしゃれでビジネスシーンでも違和感なく使える事。後はペットボトルを入れられる外のサイドネットが付いているか、容量をどうするか、PCは何インチまで入るか、防水かどうか、といった違いでしょうか。

 

自分はペットボトルをさせるネットが欲しかったので、その時点でブレードとグランヴィルが弾かれて、PCを入れるので防水機能は欲しくて、よってマンティスは弾かれ、残ったアローを買いました。容量は1日分の持ち物で20Lくらい、普段使いなら20Lから30Lぐらいがちょうどいい感じ。なので自分はアロー22を買って使ってます。人気のリュックですね。

 

 

③mont bell

<コスパの王>

 

モンベルは国産の企業で、コスパの良い高品質のウェアで知られます。普通のブランドならもっとするよなぁと思うようなものを安く提供してくれるので、何か買いたいけど値段が高いし失敗したく無いなぁという方には是非オススメのブランドになっています。

 

●スペリオダウンラウンドネックジャケット(11880円)

 

インナーとしてもアウターとしても使えて収納も便利、800FPで、この値段は正直驚きしかないです。下にインナーダウンとして採用し、その上にゴアのアウターを着れば冬でも乗り越えられるという方は少なくないと思います。

 

コスパと機能性というモンベルらしさの象徴のような商品。お値段も1万円程度と驚きの価格なので、何か一つインナーダウンを、と思ってらっしゃる方がいたら是非。また高品質ダウンだからこそ小さくまとめて収納袋に入れて持てるという意味でも超オススメ。

 

パーマロフロストライトダウンパーカ(26180円)ゴアテックスの防水防風で800FPというバルトロよりも、こっちのが良いのでは、と思ってしまいます笑。だからこそノースの時にバルトロよりもヌプシを薦めたんですよね笑。

 

 

イグニスダウンパーカ(36300円)

 

1000FPという最高品質のダウンを用いていて、恐ろしい代物となっているわけですが笑、どうやってこんな値段で売ってるんだろう、と不思議になるほどのスペック。収納にも役立つ3つのポケットがあり、表面はゴアテックスインフィニウムで防風性もある。

 

高品質のものを安く、というモンベルらしさが前面に出た商品でありダウンジャケットとしては破格のコスパ。1000FPだからこそ出来る驚きの軽さを実現しています。これで防水がついていれば最高なんですが、それは望みすぎか。。

 

 

④patagonia

<フリースの名門>

 

フリースと言えばパタゴニアパタゴニアと言えばフリース、それぐらいフリース専門店と言っても過言ではないと思います。勿論他のウェアがダメと言いたいのでは無いですが、フリースの印象が僕自身もかなり強いです。

 

かくいう僕はフリースを全然着ないので、1着も持っておらず登山部の大学同期の友人(かなりのアウトドアブランドマニア)からの情報が中心の記述になることをご了承ください。

 

レトロX(29700円)

 

フリースの元祖として防風機能が搭載されデザインもカッコよく撥水加工と抗菌防臭加工もされています。ユニクロでそっくりな防風フリースが発売されていますが耐久力はだいぶ差があります。ただ、値段が7倍くらい違うので、いっそ数年で着潰す事覚悟でユニクロの防風フリースを買う方が、お得かもしれません。

 

●フーディニ(14850円)

 

とても軽く行動着として使え人気で、使い勝手の良いウェアとして重宝されるはずです。自転車に乗る人は寒い時期に強風を受けると思うので役立つと思いますし、登山でも軽量なので良きですね、ミニマムなジャケットとしてオススメ。

 

アウトドアブランド好きになればなるほど、こういう薄くて柔らかいシェルを好きな人が多いという印象で、やはり調整がしやすく持ち運びやすいものは不安定な自然相手だと小さくない寄与をするのかも知れません

 

●テルボンヌジョガーズ(12100円)

 

薄くて軽く、リップストップナイロンなので丈夫さもある、通気性もよく夏の暑い季節になると活躍するパンツです。自分は半ズボンが好きでないので薄い長ズボンを夏に履く僕にピッタリの商品でした。

 

おい、そのブランドの強みのある商品紹介するんちゃうんかい、というツッコミが聞こえてきますが、フリースに興味のない僕にとってはパタゴニアのおすすめポイントがここになっちゃうんですよね笑。

 

 

⑤NANGA

<着る羽毛布団>

 

ナンガ、おそらくアウトドアブランドに詳しい人は、どちらかというと寝袋のイメージでしょうかね。そんな寝袋のナンガが作るのが国産高品質ダウンを使った素晴らしいダウンジャケットです。これ、現物は見た事なくて、いつか直売店で着てみたいなぁと夢見ています笑。

 

オーロラダウンジャケット(44000円)

 

700FP超えの高品質ダウン、外側はオーロラテックスの防水加工、700gに満たない重さで軽い”着る羽毛布団”。ただ防水加工なのでゴアテックスには劣り経年劣化を招きやすいのが数少ない残念ポイント。

 

オーロラの上位モデルとなるのがオーロラライトダウンジャケット(74800円)。まぁ高い笑。800FPのグースダウンが使用、ダウンの量は上がっているのにオーロラよりも少し軽量化させ、首元にベンチレーション機能を搭載したハイスペックモデル。これは未だに触った事ないので、いつか、、笑。

 

 

⑥WORKMAN

<狂気の価格破壊>

 

庶民の味方、あり得ないような安さでアウトドアグッズを販売する狂気のブランド、それがワークマン。洗えるダウンジャケットを初め、衝撃的な安さの商品が多く、絶対失敗したくない、という方は正直ワークマン一択になると思いますし、自分でも見てて怖くなるくらいの安さです笑。

 

そんな狂気の安さを感じる商品の数々から厳選したものを紹介します。

 

●イージスダウンジャケット(5800円)

 

これは一言で言うと、偽マウンテンダウンジャケットです笑。というかそれくらいめちゃくちゃデザインが似ています。なのに値段は1/10という狂気。確かに防水は加工に過ぎず、経年劣化で防水性は失われる可能性はあると思います、ダウンの質は”本物”には劣ります。ただMDJ所有者としては、これなら十分アリです。

 

MDJのスペアとして所有するにはピッタリですし、ワークマンの商品は安いので気兼ねなく荒々しい使い方も出来るでしょうし笑、狂気のワークマンを代表する商品です。

 

●防寒ブーツケベック(1900円)

 

これは一言で言うと偽ヌプシブーティです笑。ノースに似せたのか、最適化するとノースになってしまうのか、それは置いておいて価格だけ比べると1/10程度という安定の狂気。この商品は自分も大変お世話になっており、雪が積もった道路などを歩く際に役立ちました。

 

300g以下の軽さと4cmくらい接地面からの冷気を防ぐ機能を有しています。確かにスペックは、そりゃノースに負けますが、この値段で、このパフォーマンスに文句言う人は末代まで呪われるんじゃないかなと思います笑。

 

 

第3章 助言

 

①購入

 

そして購入に関してですが、これは直接お店に行って購入することをお勧めします。ネットでも買えますが、やはり生地の質感やサイズ感は直接見てみるに勝るものはないです。ここまで紹介したウェアは金額も安くなく失敗すれば、それだけで落ち込んでしまったり嫌になる物です(もちろんサイズ交換はやっていますが)、ですので直接確認を勧めます。

 

そして購入場所ですが、直営店もしくはセレクトショップで買いましょう。ネットで安く売られているものは偽物である可能性が高く、自立するはずのないリュックが自立した画像で紹介され売られていたり危険なので絶対にネット安売りは手を出さないでください。

 

そして購入時期ですが、基本はワンシーズン前に動きましょう。この記事をアウトドアブランド大流行の秋冬でなく3月に公開しているのも、今のうちから計画的に購入するように気をつけてほしいからです。大体欲しくなった時には無くなっているので早め早めに動きましょう。

 

冬物は秋口に動かないと気づいた頃にはダウンジャケット何もないやんけになっているのでご注意ください。一時期のバルトロ巡って大行列みたいなのはないと思いますが依然として人気は高いウェアも多数あるので、重複しますが早め早めです。

 

 

②ダウンの洗濯方法

 

ダウン衣類の洗い方について説明します。

 

まず、皮脂が溜まりやすそうな場所を洗い流します

 

次に、浴槽にぬるま湯を張り、ダウン用洗剤を入れます

 

そしてよく揉み洗いをして汚れを取っていきます

 

次にシャワーなどでダウン衣類について洗剤を洗い流します。

 

そして水気をしっかりとタオルを使ったり、絞って落とし

 

次に干します。

 

仮にナイロンが使われているなら日陰で干してください。覚えていますか、第1章の素材のところでも語ったようにナイロンは日光で変色してしまうからです。ここで知識が活きてきますね笑。

 

最後に乾燥機で乾燥して終わりです。5分以上乾燥させておけば大丈夫かと思います。乾燥が終わったらダウンが均等になるようにパンパン叩いて整形して完了です。

 

ね、面倒でしょ?笑

 

だからこそダウン系は最小にする方が良いかと思います。

 

MDJ所有者の僕は、こういう事を数年間やってます。だからこそ洗濯機で洗えるアトムは神のような輝きを放っています笑。

 

 

③最適所有バランス

 

日本には四季があると言われます。春夏秋冬、しかし状態としての4状態を自分は想定して考えています。

 

つまり

寒い時のファッション

涼しい時のファッション

暖かい時のファッション

暑い時のファッション

の4種類を想定しておくと良いと思います。

 

●寒い時

 

ロンTの上にダウンジャケットを着ます。僕は基本的にロンTの上にMDJを着込んでいて、下はノースの中綿パンツ、とても寒い時などは靴もケベックを履きます。ケベックは雪が積もった時に使うイメージです。MDJは不安定な気候に対応するために急な雨に降られることがあって、それに対応するためにゴアは必須でした。

 

寒いと言っても、雪国は室内に入ると暖房ガンガンで暑すぎるので、着脱の簡便さなどを考えて、インナーダウンとジャケットの方が良いなと感じる事も少なくなかったです。

 

●涼しい時

 

基本はロンTにインナーダウン、そしてゴアのジャケットを着る感じです。下はノースのアルパインを履いていました。靴は普通にスニーカーですね。

 

●暖かい時

 

暖かい時は、ロンTにアトム着る感じですね。下はノースのアルパイン。結構暑いかなと感じる時はアークのテルボンヌを履いています。

 

●暑い時

 

暑い時は一番楽です。着る物が少なくて考える余地も少ないので助かります。テルボンヌを履くくらいですかね、アウトドアブランドは基本的に夏にはあまり活躍しないかもですね。サンダルとかは、靴メーカーの方が良いと思います。

 

●スターターキット

 

最後になりますが、長々と書いてきましたが、超入門と題した本記事において結局何を買えばええねんという質問への回答として、自分が行き着いた最適な組み合わせを付してお別れとします。

 

①ゴアジャケット

マウンテンライト(ノース)

 

②インナーダウン

サンダージャケット(ノース)orスペリオダウン(モンベル)orアトムLT(アーク)

 

③アウターダウン

MDJ(ノース)orイージスダウン(ワークマン)

 

④パンツ

涼 アルパイン(ノース)

暑 テルボンヌ(パタゴニア)

寒 インサレーテッド(ノース)

 

⑤リュック

アロー(アーク)orマンティス(アーク)

 

⑥シューズ

寒 ケベック(ワークマン)

 

といった感じでしょうか。

 

総価格としては9万から19万という、おそらくMDJを買うか否かで6万円違ってくるので、これが大きそうですね笑。

 

ただ19万でもモンクレールのダウンジャケット買えるかどうかみたいな世界もあるのがアウトドアブランドなのでピンからキリまであります。

 

これは自分の一例に過ぎないですし、僕自身も知らないブランドや詳しくないブランドが沢山あるあります。もっとコスパの良い商品もあるかもなので、教えてもらえると嬉しいです。

 

必要は発明の母と言いますが、実際に外に出てみて身の回りの気候や環境を考えて”必要”を見つけると、ショップにいた時に良い商品に出会えると思いますので、皆さんが素敵なアウトドアブランドの商品に出会える事をお祈りし、記事を結ぶことにします。

 

 

 

 

付録 リンク集

 

各商品の写真を貼ろうかと、自分が持っているものの色以外も見せた方が良いのかな、と思いブランドの商品画像を貼ろうと思ったのですが、各社のポリシーに反するみたいで、断念。その代わり、上で付したブランドのリンク、セレクトショップのURLを貼っておきます。

 

ノース

www.goldwin.co.jp

 

アーク

arcteryx.jp

 

モンベル

www.montbell.jp

 

パタゴニア

www.patagonia.jp

 

ナンガ

nanga.jp

 

ワークマン

www.workman.co.jp

 

 

好日山荘

gsmall.jp

 

Orange

shop-orange.jp

 

石井スポーツ

www.ici-sports.com

坂道グループとペップを巡るメタゲーム

ペップチームを12年間定点観測をしている自分が、ふと思いついた、メタネタなのだが、ドルヲタ兼フットボールヲタの方に刺さって面白がってくれたらと思う。

 

 

 

①乃木坂とペップバイエルン

 

(1)乃木坂生誕の理由

 

AKB48は所属メンバーの質にとらわれない安定的な集金方法の開発と様々なイベントによってアイドル界ひいては日本芸能史に大きな影響を与えたメガグループで、CD販売を巡る衝突や方針の相違からゼロ年代後半にソニー傘下のデフスターレコードから契約解除を言い渡される。このことについて『逃した魚は大きかった』といったキャッチコピーを後に作品群で付したことは有名。この後に歴史的なアイドルグループになったので、ソニーの判断は経営面では大きな間違いだった。

 

秋元康avex吉本興業、ワーナーと提携し、SKE48NMB48HKT48を結成しアイドル界を完全制圧した。この趨勢からソニーが頭を下げて秋元康と手を組んで作ったグループこそ乃木坂46だった。

 

当時のAKBグループは無双状態。秋元康という芸能界の酸いも甘いも知り尽くし豊富な人脈と経験に裏打ちされた話題を呼ぶアイデア、圧倒的な歌詞創作能力、世界観の構築も含めたプロデュース能力、そして実利的集金スキームの構築、この男が生み出した最高傑作AKB48は順調に見えるが、10年代前半にピークアウトの兆候が見えていた。

 

肥大化するグループは統率も取れず、何よりグループが増えすぎて歌詞のレベルも低下気味。そんな中で自身の望む理想の具現化は自身の影響力の低下に伴い遠ざかっていることは感じていたはずだ。

 

AKBが消化されつつあった中でソニーという自分に負い目を感じている組織ならばAKBグループを前例として、より強固な集団を形成できると考えたのではないだろうか。無理筋でもソニー秋元康にはNOとは言えないだろう。

 

AKB48の公式ライバル』というキャッチコピーで集められた顔面偏差値の高い美少女たちは徐々に知られていく。AKB48のリクアワでの表題曲の披露やスカートを大きく捲り上げるパフォーマンスを見ると秋元康にとってもソニーがどれほどの無理筋に耐えられるかのテストも踏まえての初期計画の実施だったのだろう。

 

スタートは順風満帆ではなく、どういった楽曲イメージをどういった主軸を中心に推し進めるかが不明瞭で初期の表題3作品はテーマもバラバラ。センターに固定された生駒里奈へのバッシングも大きくなりつつある中で秋元康は頑としてセンターは生駒で固定した。

 

そして遂に最適解を見つけた。4thシングル『制服のマネキン』。フロントは年少の生田絵梨花生駒里奈星野みなみという生生星を形成、その後ろに松村沙友理白石麻衣橋本奈々未という御三家、後世語り継がれる座組が完成、生駒体制で一つの到達点を獲得、また楽曲としてもこれまでの統一性のない世界観から一変した。

 

この布陣を継続して迎えた5th『君の名は希望』は乃木坂の代表曲となった。前作に続き自我との相剋というテーマでキミとボクの物語という世界観を打ち出すことに成功し”楽曲の乃木坂”との定評を獲得し始め、この時期の乃木坂は方向性も定まり黄金期間近の様相を呈していたが生生星+御三家の布陣は、このシングルを最後に永遠に見られなくなる。

 

2013年春シングル『君の名は希望』で一つの到達点を迎えた乃木坂は、ここで大きな決断を下す。結成以来固定されてきた聖域センター生駒を交代し、白石麻衣をセンターとし御三家フロントの夏シングル『ガールズルール』が表題曲としてリリース。生駒に対するバッシングは当時すごく、本人の心理面を考えても交代は妥当で御三家をベースにしたガルル自体がライブの定番曲として支持されている現状を見ても、この判断は正しかった

 

(2)捨てられた最適解

 

7thシングル『バレッタ』でセンターに指名されたのは、その年の5月に加入したての2期生堀未央奈。この決断により、乃木坂に大きな衝撃と動揺が走る。おそらくAKBにおける『大声ダイヤモンド』の松井珠理奈センター抜擢の乃木坂亜流版をやりたかったのだろう。しかしこの判断は後に3つのしこりを残す

 

まず一つ目はファンからの信頼の減退、実績のない堀抜擢は現行メンバーの努力の否定であり、過度な世代交代を実現する必要は前3作の成功を見ても不要で『大声ダイヤモンド』での松井抜擢は、現行メンバーへの刺激策としての起爆剤的起用であり、曲の完成度もあって成功を収めたが、当時小学生の珠理奈に対する強烈なアンチを生み、諸刃の剣的起用としてリスクが大きいのにも関わらず、なぜ乃木坂でもやったのか、ヲタの乃木坂全体への不信感を抱くきっかけになってしまったのではないだろうか

 

2つ目としては新規生初参加シングルでのセンターは新規生が務めるという前例ができてしまったこと。これは現在まで伝わる半ば伝統と化し、これをやってしまうとセンターを中心に歌唱、ダンスを行うために当然の如くスキル不足に伴う制約を楽曲が受けてしまい表題曲の到達点は低いものとなってしまう

 

3つ目は2期生に対する警戒感をファン、メンバーそれぞれに抱かせてしまったことだ。一期生にとっては自分達のポジションを奪う因子、ファンの民意を無視した世代交代の見方は少なくない負の影響をもたらした。これが2期冷遇に繋がり研究生制度という準メンバー扱いを長い間強いられるという愚策を招き、むしろ世代交代を遅らせることになってしまった

 

13年夏までの黄金期間近の雰囲気から1年間でセンター堀という愚策に加えて、年が明けても生駒里奈松井玲奈の交換留学制度が発表された。

 

交換留学制度とはAKB(と言ってもバリバリのSKEの生え抜き中核)の松井玲奈生駒里奈のトレードではなく事実上の二重在籍であり、乃木坂にとっても毎回選抜で松井席を設置する効果は薄く、センター以外の適性の低い生駒も一度外に出す意味での企画だったのだろうが、やるならいっそ移籍させたほうがよかった。

 

このことでもAKBとの積極的介在を嫌がるヲタの不興を招き、たった一年で『希望』は失望に変わった。また忘れてはいけないのが非選抜メンバーで構成された通称アンダーメンバーも固定化されてきたこと、歌唱力、ダンス力に優れているメンバーがアンダーで塩漬けにされていることは少なくない反感を買った

 

迎えた14年春シングル、乃木坂運営はヲタの怒りを鎮めるためにわかりやすくセンターと選抜を決めた。それはAKBのような総選挙系イベントを持たない乃木坂にとって人気を測るバロメータの一つであった握手会成績の順に前線から並べた。

 

ドルヲタなら、よくおわかりだろうが現代アイドルにとって握手会は切っても切れないものである。素人同然のメンバーを下積みなしで舞台あげて集金を達成しようと思えば接触系イベントを積極的に駆使することは必須。AKBは接触イベントの参加券をCDシングルに封入させ総選挙の投票権を付加させるといったいわゆる『付属商法』でオリコンシングルチャートで毎回ランクインさせミリオン達成の成功を収めた。

 

総選挙のような直接民主主義政策はヲタの支持を得やすくAKBの成功に大きく寄与し、乃木坂運営は低下した支持率回復のため握手会売上を重視するようになった

 

そして選ばれたのが西野七瀬握手会成績に優れて熱心な固定ヲタが多く一期生でもあるので失った信頼を回復する意味でも有用だった。

 

(3)握手+ビジュアル

 

西野七瀬は膨れ上がった負の民意を鎮めることのできる握手人気があったが、彼女が一番優れていたのは、秋元康の創造意欲を強く刺激することで楽曲の質を著しく向上させる能力だ。

 

秋元康が手がけるグループは膨大な数で、その数は今でも肥大化の一途を辿っており、その中でどうしても歌詞の質に差異は出てしまう。秋元康から良質のアイデアを出しうる存在はグループの楽曲の質を向上させるだけでなく注力にも関わるので重要な要素になる(指原、前田が持っていた才能)。8th、9thで連続センターとなった西野、9thでは乃木坂史上初のシングル売り上げ前作割れを起こし2013年秋の堀抜擢から発生した緩やかな減退曲線が表層化していた。

 

この危機に運営がとった手が原点回帰、生生星時代の世界観の楽曲を打ち出すべく生田絵梨花をセンターに中興の名曲『何度目の青空か』が生まれる。内省的なボクの物語を綴り、握手選抜によりパフォ力を度外視した選抜を産み続けた嬉しい弊害として最強の2軍アンダーも切なく扇情的な『僕は咄嗟に嘘をついた』が生まれ、楽曲の乃木坂の復権がなされるはずが、運命は残酷にも刹那的な復権を打ち砕く

 

乃木坂最大のスキャンダル、松村文春事件、を受け前述した復権は崩れる。思想の回帰の議論は減退し松村の処分についての議論、そしてグループの悲願、紅白出場が泡と消え、その責任はスキャンダルにあるという言説が延々と議論された。仮想恋愛相手としての職業倫理をめぐる議論が展開されてしまったことで『何空』の評価が正しくなされず、その後のシングルでは運営の序列主義と握手売り上げ至上主義の日本橋らに基づく選考が機械的になされた

 

2015年は紅白出場を目標に、白石+西野の体制で乃木坂はビジュアルに優れた白石のようなメンバーが西野のような儚げな表情が映えるような世界観の楽曲を生み出す、という世間のイメージを作り上げ、無事に紅白出場、2016年は深川、橋本の卒業、齋藤飛鳥のセンター運用こそあれど、白石西野をどう活かすか、という方向でピークを迎えた

 

この音楽性を高めることがプライオリティの上位から除かれてしまった結果、確かにブランディングには成功はしたものの音楽アイドルとしての地位は初期のピークには及ばないものになってしまった。

 

連動性を売りにしたインフルエンサーは高速パラパラダンスと化し、『いつかできるなら今日できる』では、フロントメンバー、飛鳥、西野、白石、堀は生歌で歌い出す曲なのだが、これはYouTubeなどでも映像が落ちてると思うので是非見てほしい。四人全員が音を外し、声量も絶望的に足りていない。国民的アイドルと言われていたものの、良質な音楽を届けるという点では物足りなかったと言わざるを得ない

 

(4)巨人を求めた理由

 

ペップがバイエルンに見た未来、それはバルサで成し遂げることの出来なかった事にある。メッシを活かすために多様性を捨てざるを得なかった。チェルシーに中央圧縮されてから応手に困った、だからこそバルサではなし得なかった多様性の確保、そのためにUT性の高いSBと強烈なサイドアタックが可能な両翼のいたバイエルンを選んだ

 

中央にはマンジュキッチがいたが、ペップの理想としてはゲッツェという10番をドイツのメッシとして偽9番化し、強烈なサイドアタック、クロス爆撃、偽9番、SBのUT性を利用した多様なビルドとポゼを可能にすることにあった。

 

バイエルンではバルサでの最適配置理論の言語化を進め、多様な攻撃を具現化しドイツ国内で”赤いバルサ”を具現化した。CLシティ戦では偽SB、偽9番、クロス爆撃とペップの目指す未来が見てとれた。クロップ率いるドルトムントの苛烈なカウンタースタイルにも対応した。リーグのドルトムント戦はペップバイエルンの最高の名刺となった。

 

ラーム、アラバ、ハビというUT選手が状況に応じて4つのポジションを変換し、ゲーゲンプレスをハビとマンジュキッチめがけて投げることで回避、相手のプレスが止むとゲッツェを投入し偽9番発動、先制点を奪う。ドルトムントが反撃の意思を見せるや否や、受け止めてから、ロッベンにパスしカウンター発動。そして最後は細かいパス交換から最後はミュラーがゴール。

 

中攻め特化のバルサ時代から多様性のバイエルン。その意思がはっきりと見て取れる。しかし、この理想的な多様性は打ち砕かれることになる。

 

(5)捨てられた理想

 

CLではBBCの前に惨敗、翌季もMSNの前に惨敗。確かにバイエルンは世界的に強いチームだった。しかし最大値は覇権レベルになかった。課題はフィニッシュ。国内、そしてCL8強までなら問題はない。しかし一発勝負においてメッシ、ロナウドクラスの戦力のいないバイエルンは、どうしても厳しかった。

 

CLにおいて、最大値、ピーク値が大きく関わってくる。その際、スコアラー、必殺技を持っていないチームはどうしても苦しいのだ。これはシティでも大いに苦しむのだが、スコアラーがいないとどうしても格上同格相手の試合では苦しい展開を招いてしまう。

 

そして怪我。異常なほどに怪我人が出る。UTで乗り越えられるがCLでは限界だ。そしてペップは理想を投げる。偽9番ゲッツェを中心としたバルサのような中攻めとバイエルンの持つロッベリーという強烈なサイドアタックの共存という青写真は捨て去られた

 

それは、まるで最適解に見えた乃木坂の生駒という周囲を活かしうる非純正センターを放棄し白石、西野という2トップに傾倒していったように、ペップばゲッツェではなく、レバンドフスキミュラーという2トップの生産能力の最大化から逆算したチームを設計し、逆足ウイングであったロッベン、リベリの起用も当人の耐久力の低さも相まって減少する。

 

(6)レバ+ミュラー

 

レバンドフスキの最大の特徴はボックス内での決定力。レバをフリーに出来る神出鬼没のポジショニング可能なミュラーは良き相方となった。レバミュラにいかに点を取らせるか、そこから全ては作られた

 

ハイクロス爆撃が主武器となり、ロベリよりも同足でサイドを破ってクロスを供給できるコスタとコマンがスタメンとなった。サイドで一対一を形成するための偽SBは継続されラームとアラバは機軸であり続けた。

 

ラームとアラバが内側に絞りビルドを形成、サイドへの道筋を作り、WGへパス、そして一対一から突破しハイクロスをレバミュラへ供給しゴールを奪う。これがペップバイエルンの出した最大値で殴り合うCLを制圧するための現実的ソリューションだった。

 

ペップが持ち込もうとしたバルサ要素である偽9番ゲッツェ、ティキタカの具現者アルカンタラはベンチが増え、中攻めの能力が減退した外攻めクロス爆撃集団となった。確かにこの攻撃は苛烈でユベントスに2点リードされて迎えた場面でもクロスからレバミュラが決め死闘を制したことからも明らかだった。

 

しかし、中攻めを捨て去ったことで、5バックでサイドで一対一を作らせないようにするトゥヘルドルトムントには苦しみリーグでもかなり際どかった。そしてCL4強アトレティコ戦ではミュラーがPKを外し、バルサ時代の栄光が訪れる事はなかった。

 

バルサ時代の知見を活かした多様性を持つチームという理想は具現化されず、世界的に注目度の高い強いチームではあったが最強にはなれなかった。この物足りなさからバイエルンサポーターの間でもペップ政権は失敗だったと評価する向きもあった。

 

②欅坂とペップバルサ

 

(1)制服のマネキン2.0

 

鳥居坂、誰も今や覚えていないだろう。そんな名前で乃木坂の妹分グループはオーディションを開始した。AKBの支店はどこも本店を越えられなかった。いや、正確には越えそうになったら人材を奪い去った。それにより地域性は破壊され秋葉原への人材供給機関になった。鳥居もそうなる、そんな思いを破壊するアイドル史に残るグループは静かに誕生した。

 

2015年、集められた少女たちは欅坂と改名され始動した。目指すのはAKBという前例を活かした乃木坂と同様に乃木坂という前例を活かしたグループ。乃木坂の問題点と課題、それらを活かすのが欅坂の当初の方向性だった。

 

乃木坂の良かった部分は集金装置としての完備性、悪かった部分は二期冷遇、握手選抜による選抜方針の優先順位の変更、実力差のアンダー塩漬け、そしてそれらを招いた元凶である仮想恋愛ビジネスへの依存。

 

最終選考を辞退した長濱ねるの処遇に早速反省が見られる。二期を研究生として宙ぶらりんにした反省から、ひらがなけやきという別働隊との兼任との形に据え置き、またアンダー塩漬けを防ぐために、独立して動かす方向性も見せた。

 

2016年、『サイレントマジョリティ』でデビューを果たす。その中で示されたのはオトナへの反抗、そして制服のマネキンで描かれた自我の芽生えにも重なるテーマを提出し、笑わないアイドルというイメージも打ち出した

 

勿論、職業仮想恋愛のスタンダードな集金イベントである握手会は開催するが、仮想恋愛に依存せず作品の良さで勝負する、という姿勢はそこかしこに見てとれた。乃木坂の成せなかった作品性に殉ずる姿勢を見せた。全員選抜による握手売上競争の廃止、乃木坂が陥った失敗を活かしたスタンスを見せ続けた。

 

サイマジョはアイドル曲の枠を超え多くの人々に愛され、あらゆる音楽指標において乃木坂が成し遂げる事の出来なかったことをたった一曲で成し遂げた。YouTubeにupされたMVは最終的に一億回再生を記録、金字塔を”初登板”で成し遂げた2016年、過言でなく日本音楽界の中心に欅坂はいた。絶対的センター平手を中心に振付師TAKAHIROと作詞家秋元康、そしてソニー資本力によって作り上げる世界観は、乃木坂を”作品性”において抜き去っていた

 

(2)天才のために

 

確かに生歌は少ない、どうせ口パクなら激しく踊るなり動けば良い考えたのか、欅坂は楽曲というよりも魅せる音楽に近しかった。

 

乃木坂が深川、橋本の卒業シングルで仮想恋愛スキームでせっせと集金していた一年とは対照的に仮想恋愛に抵抗を示しながら欅坂は圧倒的な存在に向かっていた。アイドルが好きでない人もファンを公言していて、アイドルらしくなくて好き、という印象的な感想が並んでいたのを記憶している。正確に言うと、恋愛禁止を軸とし、仮想恋愛を主集金スキームとする方針とは明らかに異なる方向性が好かれていたと言えよう。

 

2016年が欅坂のピークだった。完備性を高め続ける世界観とは対照的に集権化が招く漆黒な様相を欅坂は纏うようになっていく。脱仮想恋愛の欅坂が奏でていた流麗なメロディに突然”不協和音”が生じ始めていた。

 

春シングル『不協和音』から狂いが生じる。描かれる世界観に変化が生じ始めた。オトナへの反抗ではない、個性を巡る軋轢の物語へと変わり始めていた。異なった意見を述べることへの逡巡だけでなく、周囲と自分のズレ、それはオトナへの革命軍の内紛のように見える。そして明らかに平手の顔つきと振る舞いに異常な変化が見られ始めていた。笑わないと通り越して病んでいるような挙動を示し、乃木坂でのガルル時代手前の生駒のように表現上の演出を超えた苦しみが見てとれた。

 

そして握手会襲撃事件が発生する。幕張メッセでの握手会で発煙筒が放り込まれた。以前にAKBも襲撃を受け、その際にメンバーが負傷し、その精神的ショックが拭えず川栄李奈は卒業した。なのにも関わらず握手会は継続された。メンバーとヲタの絆といったことも挙げられると思うが、早い話が集金装置としての握手会を捨てる判断が出来なかっただけだ接触イベントを辞めると食い扶持が減るから数ヶ月の自粛しか出来なかったのではないだろうか?

 

過剰な仮想恋愛ビジネスへの抵抗となる欅坂は握手会を続行した。襲撃翌日も握手会を開催しようとしていた。結局”普通の”アイドルと何も変わらないのか、そんな疑念を抱いた時から緩やかに欅坂は揺らぎ始める。

 

ひらがなは独立したグループではなく完全なバーター扱いで、乃木坂二期やアンダー同様の塩漬け状態にあった。活かし方のなくなった長濱は兼任を解除。平手中心のスキームのシャドーキャビネットは失敗し、平手に代わるセンター候補の長濱は宙ぶらりんになり、今泉も夏の全国ツアーまで活動を停止し欅坂は壊れ始める。

 

平手中心のスキームはやめられない。ひらがなの活かし方もわからない。かつての乃木坂のように低迷の匂いが漂い始めるが乃木坂とは異なる作品性の高さ、表題4曲全てで印象が異なり、秋シングル『風に吹かれても』もまた、これまでと異なる様相を呈し、年明け春シングル『ガラスを割れ』はロック風と、楽曲の乃木坂の弔い合戦としう意味では最高の戦績を上げていたのは事実だった。

 

2017年末の紅白において『不協和音』のパフォーマンス中に平手、鈴本、志田が倒れ平手は右腕筋肉の損傷で休養、2018年に入ってからも体調はすぐれずライブに上がってしばらくするとケガで退場を繰り返し、稼働不可の状況にあることは誰の目にも明らかだった。しかし運営はセンター平手を辞めなかった。乃木坂が表題4曲で生駒を降ろしたようには出来なかった。それほど圧倒的な存在だった欅坂46絶対的エース平手の表現力を最大限に出力する器、平手なくして欅なし、世間では平手坂と揶揄されたが、その通りである

 

(3)デカダンス

 

平手は限界だった。事実上の控えなしの平手依存、ただこの苦しみながら病んだ表情を浮かべながらのパフォーマンスが一種のエンターテイメントとして成立してしまう皮肉があった。そして運営は、この病んだエンタメ路線を継続させる。平手依存が深まれば深まるほど皮肉にも『不協和音』以降のダークな世界観とマッチし常人ならざる絵面が見るものを強く惹きつけてしまうのだ。職業仮想恋愛に抵抗し乃木坂が果たせなかった高品質の楽曲をリリースし続けるというスキームは平手の犠牲の上に果たされていた。

 

夏、志田が文春砲によって交際相手と思しき相手の存在が報じられる。運営はとりあえず休養させ、うやむやの内に11月卒業が決まった。そして今泉も卒業、この2件は21画の欅という漢字とかけた21人のメンバーの終焉であり、平手一強体制の中で指揮系統に混乱が生じているのではと思わされた。

 

欅坂運営を見て思うのは判断する事自体を辞めていたのではないかという疑念だ。平手を中心に表題を生み出す。その過程で何が起ころうと、その過程自体が物語となる、だからこそ最低限の設営という”側だけ作る”に留め、何が起きても取り敢えず静観する以外の選択肢を持っていなかった。しかしそれが娯楽としては最高の形として消化されてしまうという皮肉なサイクルが指揮系統の否定、判断の否定につながったのではないだろうか?

 

誰かに問題が起きると取り敢えず休養させる。そして解決不能なら本人の好きな選択をさせる、運営は何も足さないし何も引かない。志田は運営への文句を一切卒業後に言わず、むしろ感謝を伝えていた事からも、それが読み取れる。良く言えば自主性の尊重、悪く言えば運営機能の放棄であり、この頃から欅坂運営の顔が全く見えなくなってしまっていた

 

欅坂がサイマジョで示したオトナへの抵抗運動は完全に欅坂の勝利に終わった。オトナは完全に彼女たちの周囲から消えていた。そこにいたのは、ただの傍観者であり、何か問題が起きても何も有効な手を打たないオトナなき世界だった

 

そして2018年紅白を平手は欠席する。普通の人なら思うはずだ。何故ここまでセンター平手を引っ張るのか、誰も対案もなければ変えようという判断ができなかったのだろう。2019年春シングル『黒い羊』が発表。そしてこれが平手在籍時代最後の表題となる。製作体制が臨界点を迎えていた。

 

黒い羊は邪魔者を意味する、周囲と違うことに苦しみながら自我を表明する大切さを歌った曲で、孤高のカリスマ平手の孤立、という副題をチラつかせた欅お得意の演出。平手が苦しめば苦しむほど最高のシンクロを生む世界観の設定。ただこれも続かなかった。平手は限界だった。そして平手の欅坂も限界を迎えていた。

 

3月には長濱が突然卒業発表、今泉、長濱というポスト平手を失い一強体制は更に進むと思われていた。年末、春シングル以来の表題の制作の延期、紅白での何度目かの平手の失神。臨界点を超え、制御不能となった無法地帯。しかし運営は選抜制を導入する。そして選抜メンバーの発表がなされて数週間、鈴本、織田の卒業、そして

 

平手友梨奈脱退が発表。

 

欅坂は完全に壊れてしまった。

 

 

(4)戦果

 

今、欅坂46というグループは存在しない。正確にいうと櫻坂46と名前を変えて活動している。平手との”離婚”で”苗字”を変えるように。欅坂は多くの人々の心を打つようなグループだった。間違いなく作品の質という意味では乃木坂を超えた。しかしアイドル文化の変容にまで至ることはなかった

 

楽曲の乃木坂を殺した仮想恋愛を壊すには至らなかった。志田、織田はクビに近い卒業を迎えたし、楽曲がいくら優れていようと、アイドルは所詮は職業仮想恋愛相手である、というスキームを壊すことはできなかった。

 

おそらく、平手は2018年の時点で限界に近かった。だからこそ仮想恋愛への傾斜を高めたのだろう。仮想恋愛にNOを突きつけるタイミングは2度あった。握手会襲撃の際、欅坂はアイドルではなくアーティストであり握手券付きシングル発売を再考する、と言えばよかった。2度目は志田の恋愛を報じられた時、ウチは職業仮想恋愛はしないと言えばよかった。しかし出来なかった。それほど仮想恋愛という食い扶持は旨味がありすぎるのか

 

平手友梨奈という数十年に一人の逸材が楽曲の乃木坂が果たせなかった”希望”の先の物語を紡いだことは大きな成果であり、アイドルの価値体系が変わるかもしれないと思わせた事が欅坂の最大の功績だと自分は思う。

 

解散するのがよかったのかもしれない。平手の能力の最大化の器が平手を失って機能するはずなどないのだから。しかしそれは出来ない。欅坂のプロジェクトで飯を食っている人間の生活がある。こういう事情で秋元康系グループは肥大化し続けたのだろう。仮想恋愛が強固なのではなく資本主義こそが元凶なのかもしれない

 

 

(5)クライフバルサ2.0

 

ペップがバルサに帰ってきた。エルドリームの4番、クライフバルサの象徴グアルディオラバルサに就任して最初にしたこと、それは戦力外通告だった。エトー、ロニー、デコのいないチームを作ろうと考えているという衝撃的な言葉、そして規律の徹底とハードワークの要求、目指すのはクライフバルサの理想を具現化することだった。

 

クライフの唱えるトータル思想、GKから攻撃が始まり、CFから守備が始まるという理想をペップが具現化していく。再現性の高いビルドアップ、そして流麗な中盤が織りなす夢のようなパスワーク、そしてアンリ、エトー、メッシという三人による強烈なフィニッシュ、バルサはたった1年で世界を制圧した。

 

クライフ時代のようにWGを張らせていなかったり、最適配置のポゼッションを実施し、ボールを奪われれば苛烈なプレスを仕掛け、一方的にバルサがボールを握り、支配率は70%を超えることも珍しくなかった。クライフ時代を超過し、クライフの理想を現代風に表現してみせた。一部の識者はペップバルサはクライフバルサとは異なる。ここまで苛烈なプレッシングをするバルサは初めて見た。誰も見たことのないバルサだった、と表現していた

 

クライフが成し遂げられなかった支配理論の完全実践、ペップバルサは初年度に7冠を成し遂げ世界中の模範となった。そしてエトーとイブラのトレードによって、更なる強さを手に入れようとしていた。しかし問題児の代わりに問題児を入れたリスクは顕在化し、2年目は思うようなアップデートが出来なかった。

 

そしてペップは歴史に残る最終生産者をチームの中から見出すリオネル・メッシである。彼の最大の武器はコアUTであること。ヘソから前ならどこでもプレー出来て、ドリブルで複数人を抜いてみせ、そして得点力に優れている

 

イブラの9番固定計画はイブラという壁が歴史的スコアラーの覚醒を促す。

 

(6)天才のために

 

ペップバルサ2年目が終わり、バルサはメッシを活かすためのチームになる。メッシにバイタルエリアで如何に前を向いた状態でボールを渡すか、これが全てであった。それはまるで平手の表現力の最大化に一極集中していった欅坂のように

 

メッシのUT性を活かすため、9番に置きながら、10番に降りる時には相手CBが飛び出せないように、CB裏を狙えるタイプが両翼にはセットされた。ビジャはメッシと縦関係を築いて偽翼として左翼で躍動し、右翼では裏抜けが得意なペドロが使われた。

 

中盤ではチャビ、イニエスタブスケツというメッシと親和性の高いカンテラ出身者が用いられ、狭く相手選手の妨害も厳しいバイタルへ正確にボールを供給できる中盤が求められた。

 

460とも言われたシステムはメッシのためのシステムだった。

 

バイタルでメッシに有効な体勢でボールを供給するためのシステムだ。ブスケツかチャビが降りてダウンスリーでビルドアップし、黄金の中盤でボールを掌握、両翼の牽制でメッシも中盤に参加、相手は数的優位、配置的優位、質的優位を常にぶつけ続けられた。そしてアウベスは右翼を大きく迫り上がる。そしてビジャが9番に入り、両翼にはペドロ、アウベス、中盤ではチャビ、イニエスタ、メッシが黄金の三角形で相手を蹂躙し続けた

 

モウマドリーの抵抗にあいコパデルレイは失ったが、リーグとCLの2冠を達成、特に決勝戦は近代最高峰のファーガソン率いるマンチェスターユナイテッドルーニーの1点こそあれ、試合は圧倒的にバルサが支配。もはや絶望的な支配。クライフが描いた夢は可変された343に見てとれた。

 

メッシのためのバルサフットボール界の支配層最終生産者メッシの得点能力の最大化から逆算した支配理論の実践。クライフバルサが目指した夢は確実に成し遂げられた。しかしメッシのためのシステムは歪みを生じ始めていた。

 

(7)戦果

 

ペップバルサ黄金の3年目を終え、ペップは更なる進化を目指す。セスクを入れ、可変343ではなく初期配置から343を具現化しようとした。そしてメッシの能力の最大化として2人目の偽9番セスクとの縦偽9番ダブル、そしてサイドを崩すギミックの導入だ。それはまさしくクライフが言うような”本物のサイドアタッカー”を入れた更なる強さを手中に収めることだった。

 

バルサはメッシへの依存度を低くした多様なチームではなく、更にメッシの能力の最大化路線の強化へと向かった。CWC決勝でネイマール率いるサントス相手に見せた370により、その野望は達成されたかに見えた。

 

しかし370はペップの理想ではない、目指したのはクライフ時代の幅を取るWGを用いたバイタルエリアのこじ開け要員を備え、セスクを囮とし、メッシを活かすプランだった。これは実現しなかった。苦しい時、サイドはぶちぬけず、結果として狭いバイタル目掛けてパスを通し、その狭い領域でメッシは必死の個人プレーでチームを救い続けた。

 

しかし、チェルシーの堅牢の前にCL連覇の夢は散り、モウマドリーとのリーグ戦でも343で敗れ去った。原因はメッシを活かすことに特化し続けたために、外攻めの駒や高さのある9番は捨て去られたことにある。特化が生んだ必然の詰みだった。

 

欅坂は平手に全てを託し限界に達し、平手自身の離脱によって欅坂は終焉した。しかしバルサでは去ったのはメッシではなく、ペップだった。そしてペップはバイエルンでメッシ依存の反省からか、より多様性のある攻め筋を持ったチームの建築に挑戦することになるのである。

 

平手依存が終局まで続いた欅と違い、バルサではペップの最後の仕事をエンリケが受け継ぎメッシを活かすための外攻め、裏攻め要員をネイマールスアレスと用意してMSNユニットで欧州の覇権を握った。

 

平手を活かすための長濱、今泉を切ってしまった欅も同様にして外部から補強すればよかったのだろうが、残念ながら平手を活かしうる人材がいなかった。2期生に仮に、そのような人材がいたらどうなったのか、それを見せてくれたのがエンリケのMSNなのかもしれない。

 

 

③日向坂とペップシティ

 

(1)遅れてきたヒロイン

 

篠田麻里子(AKB)、秋元真夏(乃木坂)、秋元康系列グループにはイレギュラーな一期生というものが存在する。二期よりも早く一期よりも遅く入ったメンバー。その系譜に連なるのが長濱ねる。最終審査を放棄したものの、その才覚から運営が熱心に保護者を説得し加入させた。腫れ物扱いを避けるため”ひらがなけやき”という別グループを発足させる事が発表された。

 

乃木坂二期冷遇は堀の抜擢という運営のスタンドプレー、そして何より一つのグループの最適運用人数から漏れ出てしまう限界があった。AKBは一期生、二期生、三期生をそれぞれA,K,Bという各グループに分配し、グループの『物語化』を実現した

 

Aには前田、髙橋、板野、小嶋がおりKには大島、宮澤、河西がいてBには渡辺がいた。AKB総選挙とは前田VS大島で盛り上がったが、これは運営が作り上げたプロパーな一期生VSヲタの反逆の民意を背負う二期生の構図であり、その激突の後に王位継承として三期生渡辺麻友への継承ではなく、指原莉乃が選挙で勝ってしまい、その頃から緩やかに時代は坂道へと傾いた。

 

AKBとは文字通りA(一期生)とK(二期生)とB(三期生)の物語である。それがAでもKでもBでもない人間が天下を獲った状態でサイクルを終えたのは必然だったのだろう。

 

しかし逆に言えば、一期二期三期をチーム別に配置し”三世代”分の経路を設定した。これこそが48が46に対して圧倒的な黄金期を作り上げた理由でもある。坂道がAKBの黄金時代に比べてピーク値が低いのは連動性がないからだ。二期生が抜け落ちた乃木坂、一期生どころか平手依存体制の欅坂は世代の連動する物語が完全に消失している。ドラマであっても大河ドラマになり得ない弱みがある

 

この連動性を欅坂は有する可能性があった。漢字の平手、ひらがなの長濱という構図だ。おそらく、このスキームは想定されていた。ポスト平手として、ポスト欅坂のシャドーキャビネットとして長濱を中心としたグループを形成する計画が立ち上がった。欅坂版チームK形成計画とも言える。

 

 

(2)空転する反逆構造

 

結果を言うと、これは失敗した。ご存じの通り欅坂は平手一強へと向かい破滅的終焉を迎えた。ではなぜ失敗したのか。ひらがなは欅坂のチームK、つまり運営が作り上げたチームAに対する反逆がテーマであり観衆の運営への怒り”俺たちが作るチーム”という精神性を体育会系のノリという思想はひらがなには根付くことはなかった

 

理由は簡単だ。そもそも平手中心の欅坂にヲタの不満がないのだ。むしろ最終審査を受けていない”裏口入学”の長濱を活かすグループに対する違和感の方が強かったはずだ。更に独立したチームとして動かすはずが表題曲がない。欅坂の表題に収録されてしまっていて対立構造もなければ独自の世界観も浮かばない。更に言えば長濱のキャラ的にチームKの反逆し戦う少女の世界観は背負えない。というより反逆の世界観は欅坂が具現化しておりテーマが”空いて”いないのだ。

 

そこに来て、長濱がひらがなのセンターのみでやるなら良いのだが欅坂のメンバーとしても活動してしまっているので立ち位置がよく分からず、どうしたいのかよく分からない。長濱のためのグループが空転し欅坂のバーター扱いでメディア出演も少なくなくファンも付きづらい。ヲタからするとVS欅坂なのか、欅の別働隊なのかスタンスが曖昧で存在意義が曖昧なものとなってしまった。

 

そしてひらがな二期生が募集され2016年に発足したひらがなは 2017年秋に長濱の兼任解除とひらがなからの事実上の切り離しが発表され宙に浮いた。長濱がセンターである前提での組織のため、主軸クラスを獲得出来ておらずゼロトップの陣容となってしまった

 

主軸なし、独自世界観なし、表題なし、乃木坂二期以上の惨状であった。

 

(3)自演による自我獲得

 

乃木坂は握手選抜と化し、その副産物として乃木坂アンダーメンバーは優れた組織となりアンダー推しが現れ、楽曲の質、表現力は選抜を凌駕するとも言われた。しかし日の目を浴びることは少なかった。それは勿論世間体もある。

 

乃木坂運営にとって乃木坂のシングル選抜はパフォーマンス能力ではなく握手会売上成績で選ばれている、という音楽的素養への軽視が共通認識となってしまうのは体裁上まずい。アンダーに塩漬けされる才能への憐れみもあり、アンダーは乃木坂なのか?そんな議題も提出されるほど深刻な様相を呈しながらも、運営にとっても勿論忸怩たる思いはあったはずだ。その願いを欅坂の”アンダー”が成就させる。

 

佐々木久美をキャプテンにし、ひらがな単独の冠番組を作り、ひらがな単独のアルバムもリリースされ、そして『イマ二ミテイロ』といった不遇の状況を世界観に落とし込んだマッチポンプによってヲタ人気を獲得し始める。皮肉にも長濱ねるを切り離したことでチームK化することになったのだ。

 

運営の不作為が生んだ自演の反逆性の発芽、これによりひらがなは明らかに潮目が変わった。そして2018年『ひらがな推し』でのMCオードリーとのアイドルを超越した芸人的挙動、これにより親しみやすさと不遇さゆえの応援したくなるスタンスの設定。条件は整った。そしてついに独自性を獲得する事になった。

 

しかし欅坂の写鏡ゆえに絶対的エース不在、これが乃木坂、欅坂が迎えた全盛期を享受出来ない可能性がある。いずれ、このゼロトップ体制を巡る議論は再燃するだろう。

 

この構造に近しいのが現在6年目を迎えたペップシティである。

 

(4)ペップという才能

 

集団競技において、よく聞く言説として『1+1=2にも3にもなりうる』といったものがある。しかし自分の持論として、集団は最も優れた構成員を上回るパフォーマンスを出すことは出来ないと考えている。1+1=1以下である。

 

それはサッカーでも変わらない。集団のエース、ここではスコアラーだが、その”器”を超える最大値は得られないのである。

 

ペップバルサが歴史的チームになったのはメッシが歴史的選手であったからであり、ペップバイエルンが3年連続支配的なチームでありながら、メッシのMSNやロナウドBBCにCLを獲られてしまったのは、レバとメッシ(ロナウド)の差にあると考えている。

 

サッカーとはネットを揺らした数で競う競技だ。だからこそいかに相手ネットを揺らす構造を作れるか、自分達のネットを揺らさせない構造を作るかが問われる。前者が最終生産過程であり、後者が支配構造である。

 

ペップは世界最高の指揮官と言われる、では、彼のどんな能力が最高峰なのか。シティにペップがやってきた時、CLを獲れると心を躍らせたシティズンは少なくなかった。ペップはバルサバイエルン在籍時の7年間で全てベスト4以上、2度の優勝とCLでは圧倒的な戦績を誇っていたので、致し方ないのだろう。

 

しかしペップを定点観測している人間からすると、彼の才能は最終生産者の選定と選ばれた生産者を最大限活かす構造の構築にあると考えている。ゆえに、スコアラー以上の組織を作ることができるかは未知数であり、メッシやレバといった支配層クラスのスコアラーなしにはCLは厳しい戦いになるのだ。

 

そして、この才覚と同種のものを持っているのが秋元康のように思えてならない。彼も、またセンターを担わせる人間の選定が抜群にうまい前田敦子をAKBのセンターに据えて、見事に国民的グループになり、欅坂での平手のセンター抜擢など、主役を決め、その主役を最大限活かす構造の構築によって日本アイドル界に残る仕事を行ってきた

 

ペップは最終生産者を見つけ、その生産パターンから逆算してチームを設計するように秋元康もセンターを見つけ、その適性から逆算してグループを設計してきた

 

ではスコアラーなしのペップはどうなるか?

 

その答えは日向坂に見てとれると思うのだ。

 

日向坂は秋元康の匂いが一番しないグループと言われる。それは彼の最大の特徴がそこにないからだ、それはペップと同種の才能である、センターから逆算した構造、それもそのはずで日向坂は絶対的エースがいないのである。だからこそ彼特有のメソッドの運用が不完全であるが故に秋元康感がないのである

 

(5)背反する生産構造

 

シティにおいて得点能力に優れたプレイヤーはアグエロであった。メッシをバイタルで輝かせたように、レバミュラをボックスで輝かせたように、アグエロを輝かせるためにどうすればいいか、その答えはロークロスにあった。

 

ハーフスペースにいるシルバとデブライネにパスを入れ、相手が中央をマークし始めるとサイドに展開し、同足で突破力に優れたサネとスターリングに渡す、そこからペップバイエルンの如く、サイドを破り折り返し、ロークロスを放り込む、目指すはアグエロだ。そしてワンタッチでゴールを狙う、といった具合だ。

 

しかし相手も馬鹿ではない、ペップ対策の5レーン埋めの5バック運用が増える。そして、そこでペップシティはレーンを交換するために、前線5枚は自由自在のレーン移動の動き”横断”を始める。するとUT性のないサネは浮いてしまい、チームは多彩な攻め手というバイエルン時代に果たせなかった多様性を獲得し始めた

 

ペップシティは紆余曲折こそあれ、リーグは支配した。国内では圧倒的な支配力を発揮し見事にイングランドでもポジショナルプレーで圧倒した。しかし問題はCLである。これまでのバルサバイエルン時代はベスト4を一度も逃したことがなかったのにも関わらずシティでは5年で一度しかベスト4へは行けなかった。

 

理由は単純で、スコアラーとしたアグエロがCLベスト8以降では活躍出来なかったからである。ペップシティは5年でCLベスト8以降の試合を10試合経験している。アグエロの戦績を簡易に以下に付すと

 

17/18 8強 1stleg ベンチ外 2ndleg  24分出場

18/19 8強 1stleg 19分出場 2ndleg 90分1ゴール

19/20   8強 ベンチ外

20/21   8強 1stleg 出場なし 2ndleg ベンチ外

20/21   4強 1stleg 出場なし 2ndleg 5分出場

20/21   決勝  13分出場

 

唯一コミットメント出来た18/19ではPKを外し、その一点があればベスト4へ行けたので、厳しい評価となってしまう。確かにアグエロがいなければリーグは獲れなかったろうし彼がシティの栄光の歴史の功労者であることに否定的な見解は述べない。ただ、メッシ、レバと比べると物足りなさと耐久力の低さは看過できないものがあることは事実である。

 

ペップシティはアグエロが常時出場できなくなった19/20くらいからゼロトップでのプレーを要求されてしまった。しかしシルバの退団による各位の自律性の集積としての集団プレーであったり、多様性は増していった。しかし、それと引き換えに絶対的な攻め筋、必殺技を欠いた状態で戦わざるを得なくなってしまった。多様性が増せば平均値は上がりリーグでは優位性を確保できる、しかし、多様性が増せば最大値は必殺技の欠如から下がってしまう背反構造を抱えるようになってしまった。

 

(6)ゼロトップの是非

 

アグエロに点を獲らせる設計のチームが、最終的にアグエロの不在が常態化しゼロトップスタイルがベーシックになってしまったため、特定の得点者はいないが、みんなが得点者になる共産主義的なチームになった。

 

ここに、長濱ねるを活かすチームにするはずが、最終的にねるという明確なセンターが抜け落ちてしまい、事実上のエース不在の状況での運営を強いられている日向坂を重ねて見てしまうのである。

 

ゼロトップでリーグは獲れる。しかしCLでは厳しい。というより平均的に出力できる数値は低くはないのだ。しかし最大値ということに関して言うと足りなくなる。これはサッカーにおいては格上同格との対決における決定力に表れ、アイドルで言うと全盛期のピーク値に相当すると考えられる。

 

日向坂は10年代中盤の乃木坂、10年代後半の欅坂が到達したピークに、どこまで近づけるかそれは絶対的エースの存在が欠かせないという議論が起こるはずだ。白石、西野、平手に並ぶメンバーを作る必要があるとの議論が。そしてシティも同様だ。今のゼロトップ体制でもCLを優勝できる可能性は低くはない、しかし確度の問題を考えると、明確なスコアラーを置く必要性が議論されるだろうし、実際ケイン獲得に向かっている。

 

日向もシティも共産的で誰もがエースになれて誰もが主役になれる、しかし絶対的エースはおらず、最大値が要求される場面においては厳しさを露呈してしまう。果たして、この2つの集団は栄光を勝ち取るのか、気になるところである。

 

歴史を見ると、CL王者には明確な絶対的スコアラーがいて、覇権アイドルには絶対的なセンターがいた。この例外が昨季前者においてチェルシーが出現した。これは確度の問題だ。スコアラー・センターがいなくても天下を獲る可能性はある。今季、ペップシティはゼロストライカーでリーグ首位を走り、CLでもノックアウトラウンドに進んでいる。歴史的に見れば優勝候補とは言い難いが、”例外”になれる可能性は否定できない。

 

ペップシティと日向坂46は”例外”となれるのか。

 

これからも2つのシンクロする世界の観測者として見つめ続けたいと思う。

 

 

 

④終わりに

 

僕が好きなもの、これまでハマったもの、それはエヴァ、ペップ、アイドル、これは一見して異なる分野に見える。しかし、自分は明確にこれらの中に存在する共通項を見出している。

 

それは、彼らが選び取らなかったはずの選択肢の先の未来を別空間に作り出し、その軌跡の建築として過去アーカイブから要素を取り出し再構築するという手法を用いていることである。

 

エヴァ庵野秀明が影響を受けた市川崑岡本喜八実相寺昭雄に代表される要素を組み込み旧劇エヴァを作り上げた、そして、サードインパクトで破滅的終局を迎え、仮に、このような苛烈なまでの不条理に遭遇せずサードの先でゲンドウと対峙していたかもしれない選択肢がβ世界線として新劇が劇場4部作として公開された。

 

ペップに関しても

 

バルサ4年目において、守備意識が減退しクライフの理想が具現化出来なくなった時、メッシを放出して全員攻撃全員守備を徹底していたかもしれないペップバルサ5年目をバイエルンで築いているように見え

 

バイエルン3年間でクロス爆撃に特化せず、初年度の多様な攻撃スタイルを装備したチームをシティで築いているように見える。

 

秋元康に関しても

 

AKBのように肥大化路線や各グループをシャッフルし続けて独自性を奪ってしまわなかったらどうなったのか、を乃木坂で具現化し

 

乃木坂のように、途中で仮想恋愛への傾斜を強めてしまい、パフォーマンス力といった職業音楽としての完成度を犠牲にしなかった未来を欅坂で具現化した。

 

彼ら3人は、上記のようにして同様の枠組みが見てとれる。自分は、この枠組みに興味があって定点観測しているのだろうと自己分析するところである。

 

あくまでも枠組みとして、映像作品、音楽作品、職業蹴球を見ているため、マジョリティとは異なるアングルゆえの異なった感想を抱く。各キャラクター・メンバー・選手への個人的思い入れは希薄だ。

 

またドルヲタであっても自分は職業仮想恋愛という食い扶持を否定はしないものの、職業音楽の完成度を阻害する因子として積極的な立場は取らない、だからこそメンバーの恋愛には寛容だし、むしろ恋愛禁止なんて人権弾圧なんじゃないかくらいに思っているのでドルヲタと話すと低くない確率で事故になってしまう。

 

ミッキーマウスの着ぐるみを剥いで、『ここに人間がいるぞ、俺たちは騙されてるんだ!』と騒いでいるのが恋愛暴露系文春砲に思え、あぁ、そんなん知ってるよ、だから何?と虚構として恋愛禁止を受容する方が応援する側される側双方にとって良いと思うのである。

 

ただ、このユニークでマイノリティな見方だからこそ、珍しさを楽しんでもらえる人も少なくないのも事実で、シティを語る上でのスコアラーの質への疑義やアイドルを語る上での職業仮想恋愛を否定しての展開、といったものはあまり語られないように感じる。

 

 

以上、異能の建築者を巡るメタゲームにお付き合いいただき感謝申し上げます。

USJで遊ぼう!

ユニバにせっかく行くならと自分が色々と調べたことを自分自身の備忘録として付しておくと同時に、ユニバに遊びに行きたい方の助けになれば幸いと考え、以下に書きます。

 

 

 

①いつ行く?

 

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当然ですが、様々な方が仕事・学校がお休みになっている時、移動しやすい晴れの日が混むことが予想されます。また炎天下の中、アトラクションの待ち列に並んだりパーク内を歩くのは地獄ですので、暑い時期は避けるべき。特に、コロナ禍でマスクを着けていて息苦しいので、秋冬が狙い目。

 

ハロウィン、クリスマスといった大型イベント期は人混みも増えてきて、ただ、このような時期は新しいグッズやフードも販売され始めるので、混みすぎないけど大型イベントやってる時期に狙いをつけて行くのがベター

 

ハロウィンは9月初旬から11月初旬
クリスマスは11月下旬から1月初旬

に開催され、間の移行期は空いています。

 

ただ前述したように、ハロウィン限定、クリスマス限定のグッズはお土産にも喜ばれるし、パーク内も特にクリスマス期は雰囲気も明るく、そういう時期にこそ遊園地に行った方が楽しめるので、学生長期休暇を外し12月初旬ごろの平日に行くのが最も楽しめると思います。

 

クリスマス終わりの1月中旬から春休みが始まるまでの閑散期も狙い目です。またGWや夏休みといった長期休暇を外していけば比較的スムーズに過ごすことが出来ると思います。

 

次に時間帯。

 

パーク開園30分前に到着するイメージで行くと良いと思います。繁忙期に入ると9時開園、閑散期は10時開園(詳しくは公式HPの開園スケジュールをチェック)になります。

 

ただパーク開園時間はあくまでも”基準”で、混雑を避けるため早くに開園します。

 

繁忙期だと

平日8時15分過ぎ、休日8時前

 

閑散期だと

平日9時半前後、休日8時半過ぎ

 

が目安。あくまでも目安であって、7時台の開園も繁忙期にはあるので、その都度、情報を仕入れながら行く日に合わせた行動を立案してください。

 

閑散期は30分前に行かなくても、成人式や特段の事情がないかぎり、乗り物に乗れない、エリアに入れない、という事はないと思うので厳格に守る必要はないかと思います。

 

まとめると

閑散期平日だと9時到着予定

閑散期休日だと8時到着予定

繁忙期平日だと7時45分到着予定

繁忙期休日だと7時30分到着予定

 

で予定を立てると良いと思います。繰り返しになりますが閑散期であれば、少し遅らせても十分予定はこなせるはず。勿論、早く行くに越したことはないです。熱心な方だと、暗い早朝時から並んでいらっしゃるので。

 

 

 

②手荷物検査

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開園時には手荷物検査があり、手荷物の中を見せるように言われます。持ち込めるものには制限があり、具体的に持ち込めないものは

 

キャリーケース、スーツケース、トランク

大型バッグ、物品を運ぶカート

 

ハサミ、カッター、火薬類

武器や凶器(銃、刀、ライフル、手錠、水鉄砲、噴霧器)

※製作物、模倣品、おもちゃ、手作り品を含む

 

ヘルメット

 

食べ物(お弁当を含む)
※ベビーフードや乳幼児用おやつは持込み可
飲み物(ビンや缶入りのドリンクやアルコール類等)
※水筒、ペットボトル(一人につき500ml以下を1本のみ)は持込み可

 

カメラ用一脚、三脚、自分撮りスティック 
※手のひらに収まるハンドサイズは可

 

無線機、無人機、ドローン 

 

ペットや動物

 

といったものが列挙されます。

 

ただ、この手荷物検査が厳しいものかというと疑わしく、パーク内で混雑していて食事にありつけない時に小腹を満たす用のカロリーメイトのような小型の食料ならポケットに入れておいてもバレずに入園出来ると思います、あまり大きな声では言えないですが笑。

 

また、水分は季節問わず、こまめに摂取した方が良いので、水は持っていってください、自販機もありますが、余計な出費や時間のロスは避けるべきなので。パーク側もペットボトルの水を許容しているのは熱中症で倒れられてしまうとパーク側の責任として訴訟になるのが怖いためだと思います。

 

ですので、水分補給のために持っていってください。パーク内で売られている自販機は当然の如く客の足元を見て高く売られています。繁忙期には行列が出来る事も考えられますので、是非ご持参ください。

 

 

③パス(チケット)

 

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次にチケットについてですが、まず当日入場券は事前に入手しておきましょう。パークに行ってから購入するとなると時間も食ってしまうので、事前準備が必須になります。

 

パスには数種類あり、

 

その日に入園出来る1デイパス

15時からしか入園出来ないトワイライトパス

1日目が15時から2日目は一日入園可能な1.5デイパス

2日間入園出来る2デイパス

 

といったものが列挙されます。この他にも団体や障害者の方向け、または誕生日の方向けの割引なども存在します。ただほとんどの人は1デイパスがほとんどでしょうし、遠方から来られる方とかでない限りは1デイパスとなるでしょう。

 

ワンデイパスの値段は時価。大体

 

3才以下       無料

4才から11才まで      6000円前後

12才から64才まで   9000円前後

65才以上        8000円前後

 

となっています。

 

購入可能な場所は

 

公式サイト(アプリ)

ローソンチケット

パーク内のチケット販売所

JTB

みどりの窓口

 

その他にも探せばあるかもですが、これらが主かと。各自好きな場所で購入されたし。一番ベターなのは公式サイトからの購入。特にアプリは事前にインストールしておいた方が便利なので、アプリ経由での購入でも良いと思います。

 

JTBでは、アーリーパークインという権利も販売されており、JTBを通じてホテルに泊まるとして、その際に追加料金(時価)を支払うことで一般客の入園に先んじて入園することができます。どうしてもこのアトラクションだけは乗りたい、このグッズは欲しい、でも並ぶのは嫌だなぁ、とかだと使ってみるのもアリかもしれません。まぁ、その分早起きしなければならないんでしょうけどね笑。

 

ここでアプリについてですが、パーク内に入ってから、アトラクションの待ち時間をリアルタイムで知れ、新しく増設された人気のエリアは人数制限で整理券制となったりします、その際、整理券の発行のためにパーク内を移動しなくてもアプリから発券出来るので、是非入園前にユニバ公式アプリをインストールしておいてください。

 

次は年間パス

 

年間パスは3種類存在していて

 

年間パスライト

年間パス

年間VIPパス

 

と、それぞれ呼称されます。年間パスといっても当日券なしに常に入園出来るわけではなく除外日というのがあり、年間パスでは入れない日が存在します。その除外日の数が3つの年間パスの違いになります。

 

ライト 除外日70日 12才以上19800円   11才以下13800円

年パ  除外日20日 12才以上26800円  11才以下17800円

VIP   除外日なし  12才以上37800円  11才以下25800円

 

(値段は税込み、3才以下は除外)ユニバ公式サイトから購入可能。

 

ライト、年パは3回、VIPは5回程度入園すれば、お得になります。年間どの程度の入園をするかは人によって異なると思うので、よく考えて、ご決断を。ライトは休日が除外日になっているので、ご注意ください。除外日に関してはユニバ公式HPに記載があると思いますのでご確認ください。

 

年パスは様々な特典がついてきます、その中でも最大の特典は再入場権です。

 

ユニバは基本的に、一度入場してしまうと退場してから再入場することは出来ません。どうしても止むを得ない事情がなければ。しかし年パスがあれば何度でも入場出来るので、その点では便利。

 

パーク内で割高な食べ物を食べずに、ユニバーサル駅周辺のシティウォークには、有名チェーン店を含め様々なお店が乱立しており、そこで食事するというのもアリだと思います。休日はそれでも混雑していることもありますが、食事のために、一度外へ出るという選択肢を持てるという点において年パスは大きな役割を果たすと言えます。

 

再入場を禁じているのは、パーク内の食べ物の価格高騰を嫌って、シティウォーク内で飲食されてしまうと売れなくなってしまうことにあります。いや、それでも遊園地ってそういうもんでしょ、と思われる方もいるかと思います。ただディズニーに比べても高いというのは有名な事実なので、そこは留意下さい。

 

シティウォークに関しては、公式HPがありますので、リンクの方、以下に付します。レストランやお土産、薬屋、など多様なラインナップですので、ユニバへ行かれる方は、是非チェックしてみてください。

 

ucw.jp

 

さらにエクスプレスパスと呼ばれるものもあります。

 

これは、いくつかのアトラクションの待ち時間を短縮してくれるパスのことで、人気エリアの抽選券や整理券がなくとも、入場確約があるものもあります。

 

プレミアム

エクスプレス7

エクスプレス4

 

と列挙され、それぞれ、優先搭乗可能なアトラクションの数を表しています。プレミアムは全て、7は7つ、4は4つ、という意味になります。これ以外にも様々なエクスプレスパスが発売されており、詳しくは公式サイトをご覧ください。価格は時価です。また、これは入場券ではないので、入場券を購入し、その上でエクスプレスパスを購入する、ということになります。

 

www.usj.co.jp

 

 

 

 

④準備するもの

 

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まず、服装です。ご存じの通り、ユニバは海沿いにあり、冬は特に寒くなります。なので防寒対策は必須。カイロ、手袋、帽子、マフラーといった防寒具を各自で準備する必要があると思われます。

 

よくユニバ内で販売されてるグッズを身に纏った方を見かけますが、このような商品は防寒用ではなく、きちんとしたものを着ていく方が良いと思います。待ち列に並ぶ際にトイレに行くことが出来ないので途中で気分が悪くなると台無しになります。ですので、健康維持を第一とした服装を心がけるべきです。

 

まぁ遊園地なんで、マリオの帽子かぶって散策する方が気分が出て良いという意見も理解はできますが笑。

 

登山グッズをおいてあるお店、有名どころだと好日山荘のようなショップで売られてるガチ防寒グッズがおすすめです。低予算で済ませたいならオススメはワークマンです。安くて効果のある防寒具がたくさん売られているので、ご自身の体質に合わせた防寒を。

 

弊ブログでは秋冬の入園をおすすめしていますが、当然夏に行きたいという人もおられるかと思います。夏のユニバは当然暑く、待ち列に並んでる時にも扇風機のないところもあるので、うちわや小型扇風機があると便利。また、地面も熱いのでレジャーシートのようなものがあると良いかと、ただ、それでも暑いのは変わりないですが笑。

 

USJは夏は暑く、冬は寒い、というコンディションとしてはお世辞にも過ごしやすいとは言えない立地ですので、お気をつけてください。春でも朝は冷えますので、くれぐれも体調管理を徹底してください。

 

そして履き物ですが、これは夏の暑い時期はサンダルを履かれる方も少なくないと思います、しかしサンダルは乗り物の際、激しい上下動によって脱げてしまう恐れがあるので運動靴を履いていってください。サンダルと足を縛るゴムも貸してもらえるケースもありますが、忘れたりしてサンダルが紛失すると、そっちの方が面倒なので、運動靴にしておくのが良いかと。

 

そして前述したように、スマホで公式アプリを見ながら、どのアトラクションに乗るかなどを決めたり、待ち列でスマホでネットサーフィンして時間を潰すことが多いと思います、また待ち列の際もそうですが、ユニバ内をスマホで撮影したりすることもあるので、必然的にスマホの利用が増えます、ですのでモバイルバッテリーは準備しておいてください。

 

そして100円玉も準備しておいてください。これは一部のアトラクションに乗る際にロッカーに荷物を入れる際に100円玉を使ってロックをかけます(もちろん解錠する時に100円は返ってきます)。またロッカーの容積の関係で、複数のロッカーを使用することもあろうかと思いますので、100円玉は複数すぐに出せるように心がけておいてください。

 

また、金銭ですが、もちろん、交通費やチケット代の違いはそれぞれありますが、それらを差し引くと3万円弱あれば大丈夫と思います。パーク内のフードに関しては、正直コスパは悪いとは思います笑、パーク内でミニオンをモチーフにした食べ物もありますが、ユニバーサルシティウォークのローソンにバナナクリームまん(ミニオン)がユニバの価格の約1/3で販売されてたりするので笑、個人的にはフードはそこそこにして、金銭はお土産に集中的に使うことをおすすめします。

 

何を買うべきかでお悩みの方もいるかと思います。実際パークで売られているものと”外の世界”で同種で売られているものの価格比較をすると、パーク内では割高な価格設定が行われていますが、そこまで差がないものもあり、それはアパレル系

 

というのもアパレルはブランディングの名の下に数万円するシャツはザラにありますし、原価率が恐ろしく低い商品も溢れていて”ボッタくる”ことが業界として普通であるので比較すると差があまりない、というのがあるのかなと思います。

 

そして購入品に関してですが、僕が一番おすすめするのは普段使い出来るアパレルです。カチューシャやら被り物は普段使いなんて出来ません。保管も面倒ですしパーク内以外での有用性は皆無に近いと思います。ですので、これ普段使い出来るかな?といった視点でお土産コーナーを覗いてみてください。

 

普段使いできるアパレルとお土産用のバラマキお菓子、これがコスパも良くベストな組み合わせだと思います。パークにいると物価も価値観も揺らぐものですし、そういった現実を忘れられるところも魅力なんでしょう。しかし、現実的に資本は流出するわけですから慎重に考えてください。パーク内でしか着れなそうなアパレルを着て歩いているとスタッフさんが、『お似合いですね』と声をかけてくるのも、そういった商品自体はコスパの良いものではないから、というのもあるのだろうと思います。

 

ユニバでしか売っていないものって意外と少なくて、鬼滅の羽織がめちゃ人気だったりしますけど、似たようなの、もっとお安くお買い求めできますので、ユニバでしか入手できなそうなグッズに関しては、事前に調べておいて、ある程度、買うものを決めてから行かれた方が良いと思います。

 

夢の国とはいえ、一番モノを言うのは金銭という血も涙もない資本社会に生きていますので、お金の運用は計画的に慎重に行いましょう。レストランとかも馬鹿みたいに高いですからね笑。手頃に歩き喰い出来る商品を買うのがグルメは良いかもしれません。

 

 

⑤エリア紹介

 

 

ここで各エリアの簡単な紹介をしたいと思います。

 

(1)ニンテンドーエリア

 

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2021年春に出来た新エリアであり、現在(2022年初頭)最も人気のエリアとなっています。任天堂とユニバのコラボエリアであり、2024年にはドンキーコングを主軸とした増設エリアも作られるそうです。

 

ここは人気エリアゆえに整理券、あまりにも混んでくると抽選券が配布されます。なので入園したら整理券配布になっているなら即時入手してください。抽選券配布になると最悪入場することが出来なくなります。この際に活躍するのがアプリです。アプリなら遠隔で整理券を取得出来るので、是非活用してください。

 

このエリアにはパワーバンドを使ったアクティビティやAR技術を用いたマリオカートのアトラクションとヨッシーアドベンチャーという乗り物もあります。グッズ売り場も複数あり、キノピオカフェという人気レストランもあります。

 

パワーアップバンドという3200円するものを購入するとアクティビティを楽しめたり、乗り物でも運用出来ますが、購入しないとダメというものでもないので、ここは好きにされたらと思います。

 

ユニバお得意の(映像+乗り物)のライドとコースターという組み合わせで、これはハリポタエリアと全く同じです。なので正直世界観は魅力的でも実質的な構造自体はさほど変わりないというのは、ある種のUSJの弱点でもあると自分は見ています。

 

(2)ハリポタエリア

 

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ユニバV字回復の切り札となったハリポタエリア。ここはマリオエリア建設前は一番人気のエリアでした。お土産屋さんが複数あり、杖も売られていて、それを用いたアクティビティもあったりショーが開催されていたりします。

 

ご飯屋さんとしては三本の箒があり、そこでハリポタ世界の食事が味わえます。バタービールなどは結構人気があるみたいです。バタービールはマグカップ付きのもの(1150円)が購入出来、マグカップは持ち帰ることが可能です。ただし拭いたりするのも面倒で持ち運ぶのもまぁまぁ重いので、計画的にお考えください。

 

乗り物は2つ、ジャーニーとヒッポグリフです。前者はとても迫力があり、かなり揺れたりするため乗る前にロッカーに荷物を入れて乗るので前述した100円玉が活躍します(今はコインなしで出来てるぽいです)。ハリポタエリアに来たら是非乗ってもらいたいです。

 

マリオエリアで前述したように映像コースターと現実コースターの二段構えですね。

 

(3)ミニオンパーク

 

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2017年に出来た比較的新しいエリアとなります。ショップも7つあり黄色の目立つカラーリングをしているのでグッズ化しやすいのかもしれません。スウィートサレンダーが一番グッズが充実しているかと思います。ミニオングッズをお買い求めなら是非。

 

レストランも2つ、乗り物も2つあります。乗り物でオススメはミニオンハチャメチャライドです。映画の世界観を味わえるユニバらしい乗り物となっています。

 

そして、ここの乗り物も映像コースターと現実コースター、前者の映像に関しても、虚構世界に迷い込んだ我々観客を主要キャラ総出で救出する、というスキームとして全く同様のものなので、連続して乗ると、これ同じじゃね?という気分になるなぁと自分は感じました。

 

(4)ワンダーランド

 

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かつてのユニバは映画世界の再現という哲学を全うすることに必死で、その弊害がコンテンツの限定化と何より子供、それも小さい子供が乗れるアトラクションが皆無であることを招いてしまった。その反省から生まれたのがこのエリアです。

 

エルモ、キティ、スヌーピーというトリデンテを中心に、小さいお子さんも楽しめるエリアとなっており、アトラクションの予約をすることができます。エリアの性質上、あまり混雑が発生しないので、のんびりしたい方はここでゆっくりするのがおすすめです。

 

ワンダーランドはUSJ改革の一丁目一番地になった場所でもあり、USJがいかにして回復していったかを学ぶには最適の場所となっています。

 

(5)ハリウッドエリア

 

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パークを入ってすぐのエリアで、最大のグッズショップであるユニバーサルスタジオストアがあり、ここでお土産を買うのがベストです。またアトラクションでは、ハリウッドザドリームライド(通称ハリドリ)があり、これも大変人気のアトラクション

 

そして、XRライドです。期間限定でエヴァ、FF、ルパン、進撃の巨人とのコラボのアトラクションが人気で、今現在は鬼滅の刃XRライドがあり、その周辺には鬼滅エリアが構成されており、途轍もない人気を誇っています。

 

ただ、このXRライドは映像の種類が異なるだけで、何度も言うように構造は不変です。というか映像の違い以外の部分をハリポタ、ミニオンと感じることが出来ないです。乗り物としての新鮮味自体には欠けるところがあり、USJは世界観の具現化はうまいですが、細やかな差異をエリアごとに打ち出すのは苦手なのかなと思います。

 

パーク有数の屈指のアトラクション2つと最大のグッズショップを構える、まさにユニバの顔のようなエリアとなっています。

 

(6)ニューヨークエリア

 

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1930年代アメリカの街並みを再現していて、レストランが5つ、そしてアトラクションはターミネータースパイダーマン。後者は特に人気でグッズも印象的なのが多いです。

 

スパイディはビジュアルイメージで使われているマーベルスパイディというよりも漫画版の色合いが濃く、カートゥーンネットワークで放送されているスパイダーマンに近い感じで個人的には一番好きなアトラクションです。待ち列で色々と鑑賞できるので、それもまた良き。

 

ただ何度も前述するようにUSJの映像コースターなので、映像が異なるだけでストーリー設定やコースターとしての物理的挙動に違いはありません。この部分は個人的残念ポイントです。

 

(7)サンフランシスコエリア

 

 

近くにエリア整理券が発券される場所があります。ここに行かなくてもアプリで発券することが出来るので、繰り返しになりますがアプリのインストールは必須になりますね。

 

アトラクションとしてはバックドラフトというファイアーアトラクションがあり、食事処も3つほどあります、バックドラフトが運休中になると、閑散としていて、落ち着いて過ごせるエリアとなっています。

 

(8)ジュラシックパーク

 

 

ジュラシックパークの世界を再現したエリアで、ショップが3つ、レストランが2つ、アトラクションはフライングダイナソーとザライドの2つあります。

 

ここもグッズは特徴的なのでお土産に最適です。注意が必要なのがザライドです。これは単純にメチャ濡れます笑。お気をつけてください。

 

(9)アミティビレッジ

 

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映画ジョーズの舞台となったアミティ村を再現したエリア。レストランが3つ、ショップが4つ、アトラクションはジョーズ一本という強気のエリア。

 

サメの肉を使ったナゲットとポテトのセット(600円)が有名で、グッズもサメ関連のものを多数取り揃えております。ジョーズのアトラクションは多分、ユニバの中で一番体験してると思うのですが、いつも同じテンションでちゃんとサメに驚くクルーのテンションにプロフェッショナルを感じます。

 

グルメは高いと申し上げましたが、唯一手頃と感じるのはポテトとチキンの組み合わせで、そういったものを買い求めるとコスパ的に良いと思います。

 

 

(10)ウォーターワールド

 

 

ここはショーのみで、エリアというよりウォーターワールドがあるだけです。近くにマリオエリアがあります。ショー自体は結構有名なものでアクションも激しいので見応えはあるかと思います。

 

詳しい立地などに関しては以下にガイドがあるので付しておきます。

 

www.usj.co.jp

 

この画面の下に

スタジオガイドをダウンロードする>

という部分があるので、そこで詳しいことはご覧ください。

 

最後に、XRライド付近のポップコーンバケツについてです。近年、非常に作り込まれたフィギュアのようなポップコーンバケツが販売されていて、悲しいことに高額転売が相次いでいたり転売ヤーが買い占めてしまうといったことが起こっています。

 

特に鬼滅のポップコーンバケツは某メルカリで高額転売され、社会問題化し、USJとメルカリが提携し、取締に乗り出しました。一部では転売ヤー撃退のカタルシスとして盛り上がっていましたが、現実は厳しいものがあります。

 

そもそも転売という行為自体は違法ではありません。例え、原価を異常に上回る価格で販売されていても購買者が納得して購入していれば法的には何の問題もありません。仮に原価と売値の法的ラインを定めると困る業者はたくさんいるでしょう。その典型はUSJではないでしょうか?

 

ブランディングという名目で明らかなボッタクリ価格で販売しているハイブランドやパーク内という事を理由に一般的な値段よりも高く売値をつけているもの(もちろん加工費用はあるはずなので純粋な転売ではないにせよ、それを差し引いたとしてもこれら)は法的に引っかかってしまう可能性が転売対策の法整備で生じる。

 

だからこそ、現在は個人情報に紐づいたチケットにつき1個しか売却しないという方針でバケツを売るのが精一杯で、注意喚起を特定の商品に対して行う、というのに留まってしまうのは致し方ないのでしょう。

 

確かに転売目的で複数購入し、開演数十分で完売してしまうといった異常現象によって本当に欲しい人が定価で購入出来ないのは腹立たしいです。しかし、現状打つ手なし、というのが現実で、法的にどこまで取り締まれるか、と言った議論も答えが出ていません

 

ディズニーでもUSJでも深刻な転売問題、これからどうなっていくか、社会的議論の提起が求められるところです。

 

目の前に食い扶持が存在する限り、倫理は無力である。では、その食い扶持を殺せばどうなるか、他に苦しむものが現れ、その食い扶持欲しさに改革は見送られてしまう。難しいところですね。高額転売を殺すのは実は簡単です。原価率の定めを法的に決めれば良いのです。しかしそれを不都合と考える側もいる。その側が高額転売の被害に遭っているという部分で非常に面白い現象だなと自分は考える訳です。

 

 

 

 

⑥最適挙動

 

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標準開園時間の30分前にユニバに到着、そして入園が開始され、検温の後に手荷物検査へ、そして入場券のQRコードをゲートに通してパークへと入園することになります。

 

その後にするのは公式アプリを開いて、人数制限が行われているエリア、2022年初頭の現在だとマリオエリア、ハリポタエリアは整理券配布がされている場合があります。閑散期ですと基本的に全日フリー入場可能なので心配はないですが、繁忙期だと整理券配布になっている場合があるので、その場合はアプリで整理券を取ります

 

何に乗るか?

 

まず人気のあるアトラクション、XRライド、ハリドリ、マリオの3つを優先的に消化することが重要だと思います。ですので、朝イチはXRライドへ行く方が良いと思います。もちろんXRライドの人気によりますし、現在の鬼滅は人気が凄まじいので、しかも期間限定なので弊ブログでは最初にのるアトラクションとしてオススメします。

 

あとは、好きなものに各自行くべきだと思います。その時にアプリで混雑状況の確認をすることが大切で、それを眺めながら計画的に進めていくのがベストです。

 

エクスプレスパスがなくても、シングルライダーというお一人様向けのサービスもあり、通常の待ち列よりも短い時間で乗れますので、ご検討ください。

 

また、レストランは12時になると、そこから2時間ほどはお客さんが殺到するので、それを避けての利用を心がけてください。フードカートでサクッと食べるのも良いですが、ちょくちょく摘んでいくとめちゃくちゃ浪費してしまうので難しいところです。

 

僕の場合、一番苦手なのが朝早く起きることなので笑、本当だったら閑散期に行きたいものなんですけども、グッズは繁忙期の方が充実するので難しいところです。繁忙期と閑散期の二度の入園をするのがベストなのかもしれませんね。

 

 

 

 

⑦備考

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ユニバを楽しむために、各エリアの映画作品や関連作品を見ておくと、さらに楽しめると思います。特にミニオンは映画を見ておいた方が良いかなと。そして個人的に推したいのが森岡毅さんの書籍です。

 

ユニバはグランドオープン当初こそ来場者1000万人を超え”西のディズニーランド”となるべく狼煙をあげたわけですが、その後は低迷が続き、閉園の危機を迎えていました。そこで招聘されたのが森岡毅氏であり、彼の数々の改革がユニバを劇的なV字回復へと導くことになります。自分は、こういった戦略やマーケティングが大好きなので大変興味深く、ユニバを見る目が変わったことを思い出します。

 

森岡本は数冊出版されていますが、一番のおすすめは

 

『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門』

(角川書店単行本)

 

この書籍から学ぶことは少なくなかったですし、決して遊園地事業というローカル性の強いテーマではなく、まさにユニバーサルに様々な方にとって生きるヒントが詰まった書籍だと思います。これを読むとユニバへの見方が変わると思うので、ぜひ、おすすめです。

 

USJはディズニーを超えた、ということを聞いたことがある人は少なくないと思います。2001年に完成したUSJは”西のディズニー”と華々しいスタートを切るも、そこから入場者数は激減していき、森岡氏は様々なアイデアで2016年10月期においてディズニーランドの売上を上回るという快挙を達成しました。

 

そもそもUSJは”狭い”のです。勿論、敷地面積で見ればディズニーランドと同程度ですがディズニーシーを含めると合計敷地面積、売上共にUSJは大きく水を分けられています。そこで森岡さんが取ったのは”なんでもあり”戦術でした。

 

映画世界の具現化というスキームを、国民がエンタメに求めるもののうち映画は1割程度だからと、捨て去り、アニメやゲームに力を入れました。そして森岡さんは三段ロケット戦略を打ち出します。

 

1、ワンダーランド創設

2、ハリポタエリア創設

3、沖縄にUSJ第2号店を出す

 

USJは狭い、それは変わりません。だからこそ出せる集金装置の数に限界があるために、チケット単価や駐車料金を上げざるを得ず、中央にシンデレラ城のあるTDLと違いUSJでは池を設置することで迂回させ、狭さを感じさせないようにしている。

 

この狭さを逆手にとって武器に変える戦略のためには映画へのこだわりは障害でしかなかったのです。そして、450億にも及ぶ資金を投下しハリポタエリアを作り、そして2016年の歓喜を迎えました。しかし、この狭い、という部分は解決された訳ではないのです。

 

 

結局のところ、狭いからこそ、フードの値段、チケットの値段は上げざるを得ず、設置アトラクションが少ないため映像で多様性を確保して乗り物の動き方は殆ど同じにせざるを得ないといった事情を武器に変えようとしても限界がある。

 

だからこその3段目のロケットで”狭い”を打ち砕こうとした。しかし親会社の都合で頓挫し森岡さんはUSJを去ります。森岡さん自身は十分理解していたのです。『弱みは強みにならない』という悲しい現実を。だからこその沖縄進出計画、USJを負け戦に変えていた狭さは解消されず今に至ります。

 

この狭さという欠点を、いかに武器に変えるか、持たざる者がどうやって巨大企業ディズニーに立ち向かうか、その工夫・やりくりを見るのが僕は好きです。その姿に僕が愛してやまないマンチェスターシティのストライカーがいない中での工夫に重なって、より惹かれるのかもしれません。

 

ちなみに、森岡さんは、沖縄に2025年テーマパークを作るべく奔走しています。そこでは幻に終わったUSJ沖縄という3段目の面影が見られるかもしれません。自分は一度行ってみたいと思う次第です。

 

ユニバへ遊びにいく際に、現地の感じや、主なアトラクションの待ち時間といった基本情報の収集に役立つのが、ユニバ系YouTuberの方が投稿される動画です。混雑具合などを教えてくれたり、様々な役立つ情報を動画にしてくれていて、ユニバに遊びにいく際は参考になろうかと思います。

 

僕が、よく見させてもらうYouTuberさんは

 

www.youtube.com

 

です。淡々とフリー音源をBGMにして入場時間や主な変更点、そしてアトラクションの待ち時間、新しいフードやグッズといった様々な情報をテロップベースで紹介してくれます。

 

ユニバに行こうと考えて、出発日の約二週間前から、このような動画で予習して、現在のユニバの状況の確認やアトラクションの運休状況もチェックできます。あとはユニバガチ勢の友達に色々と教えてもらう(自分はこのパターンで色々と教えてもらいました)、とかですね。

シン・マトリックス(『マトリックス・レザレクションズ』評論)

 

 

第1章 回顧

 

マトリックス、言わずと知れた名作であり、カンフー、ワイヤーアクション、バレットタイムを駆使した映像革命、世紀末に作られた第1作は今も色あせず輝き続けている。キリスト教的神話ベースの作劇、中二心をくすぐる演出、前述の圧倒的な映像、多くの人々に影響を与えたクラシックの10数年を経て作られた続編となる今作『マトリックス・レザレクションズ』について語る前に、マトリックス3部作を振り返る。

 

各作をM1,M2,M3,M4と略記す。

 

(1)M1の筋

 

プログラマーとして名もなき永劫回帰の中で、どこか違和感を感じながら暮らしていた主人公トーマス・アンダーソン。そんな日常の傍ら、裏社会では彼は"ネオ"と呼ばれる最強ハッカーとして暗躍していた。

 

ある日、ターミナル画面に『起きろネオ、マトリックスが見ている、白ウサギを追え』というメッセージが表示される。その刹那、取引相手がやってきて、気晴らしにパーティに行こうと誘われ断ろうとするも、その相手のツレの女の腕に白ウサギのタトゥーを見つけ、興味本位で付いていくと、国税局のコンピュータに侵入した大物ハッカーのトリニティに声をかけられ、『彼らがあなたを狙っている』と告げ、目を覚ますとベッドの上で目覚まし時計が鳴っていた。

 

会社へ向かうと届け物が。そこには電話があり、取り出すとモーフィアスと名乗る人物から発信を受ける、会社では自身を追ってくるサングラスをかけたスーツ姿の男たちから追われ捕まりヘソの穴に小さな器具を挿入されるという尋問を受ける。そして目を覚ますとまたベッドの上にいて、電話を受け、モーフィアスに呼び出される。トリニティによって器具は排除され、そして『選択』を迫られる

 

そして、青の薬を飲めば無事に帰す、赤の薬を飲めば真実を教えると言われ、ネオは後者を選び『本当の肉体』を取り戻す

 

人工知能を持つ機械が反乱を起こし人類に現実と区別のつかない幻想を見せ洗脳し、人間を動力源とするサイクルシステムを作り上げ人類を『栽培』している、マトリックスによって人類は支配されるようになった。そして人から生まれた人、機会が作り体の節々にプラグ穴を持ち『解放』された人類の連合軍と機械軍の戦争を終わらせる『救世主』こそがネオである、という予言を告げられる。

 

しかし、ネオは『ネオ』ではない事が徐々に明らかになり救世主ではないと預言者に告げられた帰りに襲われ自身を庇う為にエージェントに囚われてしまったモーフィアスを助けるために、命からがら逃げだしたネオは再びマトリックスに入り最強の敵であるエージェントスミスとの決戦に向かう。

 

スミスの前にあえなく敗北し、心停止するも、ネオは覚醒しスミスの攻撃を余裕でかわせるようになりスミスを圧倒し撃破する。ネオは救世主としてマトリックスで人類解放のための英雄への道を歩み出したのであった。

 

 

(2)M1の考察

 

マトリックスの監督はウジャウスキー兄弟と当時は呼ばれていて、現在ではウジャウスキー姉妹となっている。元も子もない事を言えばマトリックスとはこの事をテーマにしている。いわばジェンダーマイノリティの苦悩の物語なのである。

 

自身の心の性と肉体の性の不一致への違和感を感じている中でホルモン治療のために薬(カプセル)を飲み、本当の肉体(女性の肉体)を取り戻す、というシークエンスが採用されている。

 

しかし、この局所的なテーマをキリスト教神話的な『救世主』『終末』『信仰』といったユニバーサルなテーマで"味付け"し、先進的な映像技術もあいまって、多くの人に影響を与えた

 

アンダーソンがネオ=救世主となる事が『予定』される、とは救世主に自動的になるわけではなく、救世主であるのかという疑念と向き合う『信仰』の日々の積み重ねが救世主へと努力する日々を生み出し、そのプロセスそのものが救世主へと変容させるのだとの主張なのだろう。

 

キリストのように、一度死んでから『復活』したメシアであるネオは豊かな暮らしを求めるために機械を発展させ様々なものを犠牲にし続けた人々の原罪を贖うための冒険へと向かう、というのもユニバーサルに多くの人々に受容されたはずだ。

 

そして支配と虚構の等価性にも言及している。機械は人間を駆逐するのではなくプログラムで作った幻想を見せ続ける事で永遠の牢獄に幽閉し、彼らの生命維持活動により生じる資源を利用して世界をサスティナブルなものに変えてしまう。

 

美しい虚構に身を置くか

残酷な現実で戦うか

という2択は

 

ヘテロという仮面を被って生きるか

カミングアウトして差別社会で戦うか

 

にリンクしているのだろう。

 

 

(2)M2の筋

 

トリニティが死ぬ悪夢を見るネオ、25万もの侵略ロボットがザイオンに向かっている事が告げられる船長会議の最中、船員のいる部屋にスミスがやってきて、ネオは単独でスミスの相手を引き受ける。M1で倒したはずのスミスは増殖する能力を得ていた

 

そしてネブガドネザル号はザイオンに帰還、しばしの平穏に浸る一行。そして預言者ボディガードのセラフに力を認めさせ、預言者と歓談、そしてキーメーカーを連れてマトリックスのソースへと向かえと言われる。その後、大量に増殖したスミスとの激闘の幕が上がる。一向にケリがつかないため、空中飛行でネオは戦場を後にした。

 

キーメーカーを隠しているメロビンジャンに会いに行く一向。キーメーカーの引き渡しを拒否されるも、メロビンジャンの妻であるパーセフォニーの手引きでキーメーカーをピックアップした一向を激怒したメロビンジャンの手下が追跡し、高速道路で激闘を繰り広げる。

 

追手を撃退し、ソースへ向かう為にセキュリティシステムの破壊をナイオビがなすも、予備システムを潰す為、トリニティがマトリックスに入る、そこにはスミスが待ち構えていた。

 

トリニティの尽力とキーメーカーの形見の鍵を持って扉を開けると、そこにはマトリックスの創造主であるアーキテクトがいた。そこでネオは6番目の救世主でありアノマリーであること、アノマリーを何度も取り込み、より高精度のマトリックスを構成するアップデートのループが存在している事を告げられる。

 

救世主もこのループの一端であり、ザイオンとは幻想に対し覚醒したバグの集積として作られた集落であり、エクスマキナというサイクル支配者が望む安定的なサイクルの形成のために、より良い幻想を生むためののプログラムが預言者であり、ザイオンと救世主を何度も生み出しては破壊する円環によって構成されるのがマトリックスである、という事実を告げられる。

 

そして左右のドアを見せられ、片方はトリニティを救う世界、もう片方はマトリックスのアップデートのため全人類を犠牲にする世界、に通ずると言われる。

 

ネオはトリニティを救う世界を選び、瀕死のトリニティを蘇生しマトリックスを無事に抜ける。しかし追手をまくためのスーパーパワーの連発で疲弊し意識を失う。その隣にはスミスと同化してからマトリックスを抜ける形で現実世界に『進出』したベインの姿もあった。。

 

 

(3)M2の考察

 

極めて難解な世界観の提示と先進的なアクションシーンの連続、マトリックストリロジーの最高傑作にしてレボリューションを伏線回収に束縛させてしまった。

 

描かれているのは円環の理とセカイ系である。

 

救世主とザイオンは何度も生まれては何度も消失し、その無限連鎖によりバグを減らし、よりよい幻想世界を生み出すという虚構製作プログラムこそがマトリックスでありネオは人類を救うことなど出来ない事が明かされる。

 

そしてセカイ系の永遠の命題、『セカイか世界のどちらを選ぶか』が与えられる。綾波を選び世界が破滅寸前に追いやられたエヴァの如く、ユニバーサルな世界と大切なキミというセカイのどちらを選ぶかという命題に対しネオはセカイを選んだ。そして、その選択が与えるエフェクトが次作で大きな成果をもたらすことになる。

 

それは機械が提示する理想的な仮想現実という虚構ではなく、愛という原始的な性欲のメタファーとしての虚構こそが解決策になりうるという預言者の計画であったことをネオは知らない。

 

それはネオとスミスは絶対値が等しい正負互換版の存在であるがゆえの決着の困難さから来る帰結であり、様々な能力をスミスが備え初めた時点で、正攻法を上回る帰結は避けられなかったのかもしれない。

 

 

(4)M3の筋

 

駅のホームで寝そべった姿で目を覚ますネオ、預言者と最後の面会を果たすモーフィアスとトリニティ、閉じ込められたネオを救うためメロビンジャンに会いに行き、トリニティの決死の奮闘によりネオは幽閉されたホームから脱出する。

 

預言者とオラフはスミスに急襲され同化させられる。そのころネオは自身の真の肉体があった始まりの場所マシーンシティこそが最後の決戦の地と直観を得て厳しい旅へ向かう、またザイオンには機械軍の接近が迫り最終戦争へ向け準備が進んでいた。

 

マシーンシティへと向かうネオとトリニティ

ザイオンへの帰還を目指すモーフィアス一向

機械軍の襲来に備えるザイオンの残留人類軍

 

の3者の最後の戦いが始まる。

 

マシーンシティへ向かうネオトリの乗る船内ではベインの反逆にあいネオは目を焼き切られ視界を奪われるも驚異の能力で撃退、モーフィアス一向は機械軍の猛攻を交わし戦闘の始まったザイオンへ帰還を目指す、ザイオンでは機械軍の猛攻撃に徹底抗戦する残留人類軍は第1次攻撃を耐え抜き、犠牲を払いながらゲートを破壊しモーフィアスとナイオビの操縦するハンマー号を引き入れる、そしてEMP爆撃によって第1次攻撃隊を殲滅するも、その代償として最終防衛ラインの防衛力を喪失する。

 

マシーンシティに特攻し機械軍の攻撃を振り払いながら最深部に到達する。しかしトリニティは特攻の中で体を機材が打ち抜く、M2で本来は死ぬはずだった未来を変更してくれた事への感謝を告げ、ネオに最後のお別れの後に絶命する。そしてザイオン救済を託されたネオは最終決戦へと向かう。

 

ネオはエクスマキナとの交渉でスミスを唯一阻止できる自分が倒す代わりに平和をもたらす事を約束させる。そしてマトリックスにてスミスと激闘の末にネオは敗北し同化されるも、その刹那、スミスは発光し始め、全てのスミスが崩壊、ザイオンに迫る機械軍は去っていった。遂に人類と機械軍の戦争が終わり、歓喜に包まれるザイオン、ネオとスミスの決戦の跡地には預言者が横たわっていた。

 

太陽が暗闇を照らす中で預言者とアーキテクトが会話する。

 

『危ないゲームをしたな』

『この平和はどこまで続くと思っているのか』

 

預言者によるスミス殺しを示唆し、マトリックスからの人類の解放を宣言しアーキテクトは去っていく。

 

全てを知っていたのか?とオラクルに問われ

 

『信じていた、信じていた』と繰り返し

 

日光が強く照らす中で三部作は終幕する。

 

 

(5)M3の考察

 

モーフィアスの示した2択に対し真実を知る事を選択した第1作、アーキテクトの示した2択に対しトリニティへの愛を選択した第2作、そして第3作では機械か人間か、という2択に対しネオの選んだ道は自身を犠牲にして機械からの侵略を防ぎ人類の原罪を贖い、自身の命をもって戦争を終結することだった。

 

預言者を取り込んだスミスがネオに勝利した末に崩壊に至ったのは様々な予想合戦になったろうし、正確な解答は分からない。ただ最後のセリフから読み取れるのは預言者の何かしらの試みが打ち砕いたと考えられる。

 

個人的にマトリックスというのはターミネーターへの補完作品だと感じている。

 

ロボットやAIの発達により機械軍は人間を駆逐/支配するというディストピア作品は数多く、その代表格がターミネーターであろう。機械軍によって人類は破滅寸前に追いやられ、その残存人類のリーダーであるジョン・コナーの殺害を目指す機械軍と、彼を守る機械であるシュワちゃんの戦いが描かれる。

 

ターミネーターは『審判の日』を巡る戦闘は散々描かれるが、結局人類代表のジョンはいかにしてロボット軍に勝利したのか、という部分は丁寧に描かれない、その機械軍の支配へのカウンターを丁寧に描いたのがマトリックスと言える

 

例え機械が支配構造によって人類を支配者から引きずりおろしても、支配=虚構を生み出す能力において人類は最高峰であり、もう一度支配者に返り咲く事が出来るはずと説いているように思える。

 

人類は機械に支配される未来が来るかもしれない、しかし魅力的な虚構を用いた支配構造の前に人類は敗走するとしても、愛という人類古来の虚構が人類を救う『救世主』となり、信じる事こそが闇を照らす光となる、と言っているのかもしれない

 

 

第2章 M4の筋

 

(1)彼らのその後

 

マトリックス』という歴史的に有名なゲームを作り出した業界屈指のゲーム作家であるトーマス・アンダーソンは時に幻覚に襲われたり精神に疾患をきたしていて、精神科医で服用される青いカプセルを飲みながら違和感を抱えて毎日を生きていた。

 

ある日、社長(スミス)から呼び出され、親会社のワーナーブラザーズからの勅令で名作マトリックスの続編を作って欲しいと言われる。制作会議では、マトリックスシリーズの偉大さを語りながら次作をどう作るかで熱中するなかトーマスは気乗りしない。そんな中、カフェに魅力的な女性(トリニティ)を見つけ、同僚にそそのかされる形で声をかける。その女性はティファニーと名乗り、家族との忙しない日常に追われていた。

 

ゲーム会社に脅迫文が送られ避難命令が課された自社、メールで謎の人物にトイレに呼び出され、そこには自分が作り上げたキャラクターのモーフィアスが立っていて、赤い薬を飲み真実を知れ、という自身の作り上げたシークエンスが現実化した事に戸惑いを隠せない中、モーフィアスを探して突撃してきた警察との銃撃戦に巻き込まれ、社長スミスまでもが自身に牙をむき攻撃し始め、『これは現実じゃない、幻覚だ』と強く念じると、かかりつけの精神科医とのセラピーの場にトーマスはいた。

 

幻覚に苛まれる中、ビルの屋上から身投げしようとする刹那に謎の女性バックスに『現実をあなたは教えてくれた、真実を知ろう』と言われ、扉の向こうに連れていかれると、そこにはモーフィアスがいた。

 

 

(2)赤か青か

 

そして、トーマスは、これまで精神科医が服用していた青いピルではなくモーフィアスが差し出した赤いピルを飲み、真実を思い出す。自身がネオであったこと、救世主として人類を機械の駆逐から救った事、そして本当の肉体を取り戻した際に横のポットに愛するトリニティがいた事を

 

そして、死んだネオとトリニティを蘇生し、2人を動力源として新たなサイクルを作り上げたのが、あの精神科医であり、アナリストと呼ばれる彼こそが新たなる黒幕である事を告げられる。

 

自身の貢献が無駄だったのか、機会からの侵略を自分は救えたわけではなかったのかと苛まれるネオは新たなる人類の村アイオへ向かい、そこで年老いたナイオビに出会う。60年の時を経て蘇った伝説の救世主ネオは驚くべき光景を目にする。

 

そこでは機械と人間が協調し、命を育み、植物を育てていた。そして新たな脅威アナリストによって囚われたトリニティを取り戻すために60年の時を超えた戦いに挑む

 

 

(3)第2の救世主

 

ティファニーに話しかけようとするネオ、しかしアナリストが現れ『バレットタイム』を仕掛けられる。自身はゆっくりとしか動けないのに、アナリストは普通に動ける。絶望の中、ネオは救世主としての自身の能力の減退を感じる。

 

トリニティを取り戻す為、現実世界でティファニーとして生きるトリニティに『真実』を告げるべく向かうネオ、そしてポッドからトリニティの肉体を剥奪する計画を立てるバックス率いる船団と同時進行のトリニティ奪還作戦が始動する。

 

そしてネオはアナリストと仲間が占拠するカフェへ向かい、トリニティの洗脳を解こうとし、仮に解けなければ自分は戻り、トリニティが抜ける事を選べば自分達を解放する事をアナリストに要求する。

 

初めはトリニティは逡巡するも最終的にネオを選ぶ、そして二人が触れるとスパークで周囲を吹き飛ばし、スミスも加勢し、なんとネオ側につく(一時的にだが)。そしてトリニティとネオは追跡してくるアナリストの軍勢をまきながらビルの屋上へ上がる。

 

空中飛行能力の欠如したネオだが、トリニティと共に屋上から飛び降りる。落下すると思われた二人だが、トリニティが能力を覚醒し空中を飛行し、上空へと舞い上がり消えていく。

 

そしてマトリックスを抜けた二人は60年の時を経ての復活を喜び合う。

 

アナリストに会いに行く2人、アナリストの侮蔑に対しトリニティが数回暴行を加えて最後に復活のキッカケをくれたことへの感謝を告げ物語は閉じる。

 

 

 

第3章 M4の考察

 

(1)メタ構造

 

本作はマトリックストリロジーを製作したスタッフの心情が作品に落とし込まれている。作りたくもない続編をワーナーから要求される苦悩や数十年経過しているので朧気にしか思い出せない各シーン。そしてバレットタイムが過去の物となってしまっている現状と、周囲が高速で動いていく中で自分達はマトリックスという過去から動けずにいる事実。

 

そして物語はマトリックスの原義である、『性的マイノリティの解放』へと帰着する監督は性転換して『次の世界』へ向かいたいのに、世界は未だに少数者への無意識の迫害を辞めない世界への違和感を抱きながら生きる苦悩が投影される。

 

M4はトリロジー以上に監督ラナの極めて私的なものが投影されている。アナリストは最後にトリニティに何度も痛罵を放つ。

 

『おい、女をコントロールしろよ』

『空をレインボーカラーにでもすれば?』

 

アナリストは女性嫌悪の言葉を放ち、何度も罵倒する。そしてトリニティはアナリストに何度も暴行を加える。

 

(2)トリニティの物語

 

マトリックスの主人公はネオだった。しかし本作は違う。トリニティの物語なのだ。ティファニーという名前を与えられ、性的抑圧を強いられる世界に向けて中指を立てる物語がM4である。

 

主婦として家の様々な事象に追われ、女性はこうあらねばならない、といったステレオタイプへの抵抗の象徴が描かれる。

 

LGBT運動の象徴であるレインボーはまさしくラナの言うようにマトリックスは性的マイノリティを主題とした映画である、という原義に戻すためのプロジェクトこそがM4なのだという主張を強化するものだ。

 

マトリックスは多くの人に影響を与えた。それは性的マイノリティの救済、本当の自分を取り戻し、人々を抑圧から解放する救世主の物語としてではなく、アクション映画として、そしてそれは逆の立場であるクラシカルな性差を固定する論者の理論武装の事例としても使われるようになってしまった

 

多様性という生きづらさ、それを新たな抑圧とメタり、そして、その抑圧の事例としてマトリックスが捉えられ、陰謀論を唱える論者の『真実を知る』という行為のメタとして赤いピルが用いられてしまっている

 

解放を唱えたマトリックスの本当の原義を取り戻す戦い、それがワーナーから理不尽に要求され続けたマトリックスの新作のテーマと皮肉にもなった。だからこそトリニティは最後に、こう語る。

 

『ありがとう、もう一度生きるチャンスを与えてくれて』

 

 

(3)作品は誰のものか

 

マトリックス4は4なのか、4と言って良いのか。おそらく賛否両論の本作、確かに言いたい事は分かるのだが、それをマトリックスでやる必要があるのか。

 

これは弊ブログにも書いたシンエヴァと非常に似た構造に見える。

lilin18thangel.hatenablog.com

 

エヴァもそうだった。本来はアニヲタの虚構への執着を砕きセカイ系において現実の世界で強く生きて欲しいというメッセージを発するはずが、かえってエヴァがアニメという虚構への執着を生み育て、エヴァフォローとしてのセカイ系作品群を生み出す皮肉を招いた

 

だからこそ、庵野は新劇場版で執着を殺す物語を書き始めた。しかし3作目で作劇に失敗し、自身の現実の物語である、モヨコ夫人による救済を真希波マリに描きエヴァへの執着を殺す物語としてシンエヴァを書き上げた。

 

M4も、これと酷似する。マトリックスの原義が歪められた事を受けて、原義の再提示としてM4を仕上げた。エヴァ庵野私小説であるように、マトリックスはラナの私小説と化した

 

ラナに言わせれば、これがマトリックスなんだ、という事だろう。しかしながらシンエヴァが実写とアニメの中間世界観の具現化といった新たな挑戦をしたり、ルーティン化しつつあるアニメ制作における新たな試みに加え細田/新海の描く過剰に美化された『キラキラ映画』への警鐘といったカウンターを放ったのに比べると今回のM4はそのような志を感じない。

 

ワーナーからの続編制作要求に丁度良いコンテクストが見つかったというだけだ。シンエヴァは視聴者が待っていた。エヴァ世界(β世界線)の完結を皆が望んでいたし終わらない円環にケリをつけて欲しいと切望されていた。

 

M4はどうだろう。望まれていたか、それはラナ自身が自覚している。終始トーマスは続編に気乗りしていない。そしてスタッフがマトリックスの素晴らしさはどこにあったのか、という再定義を行う中で続編を作るに値する理由などない事が暗に提示される。

 

映画は監督のものとよく言われる。駄作なら監督の責任となり、傑作なら監督の手柄として自分も含めた有象無象に評価され、多くの人々にとって固有名詞から一般名詞として使われるようになっていく。

 

本作を蛇足とは思わない。示された主張は理解出来るものだし、作った価値は十分にある。ただ少なくない人々にとって『コレジャナイ』感は拭えないだろう。作品を監督が無理やり引き戻した感もある。

 

映画は一体誰のものなのだろう?

 

 

 

第4章 最後に

 

こう言ってはなんだが、まぁこうなるだろうなぁという予感はあった。道は限られていて、ネオとスミスの後継者による新たな虚構を巡る物語というSWシークエル路線か、本作のような私的でローカルな路線しかないと思っていたから。

 

前者の路線だとSWが提示したように再生産の域を出ないし後者だと今作のように賛否両論となる。考察でも述べたが、結局のところ、作るいいキッカケが出来た、というコンテクスト以上のものはなかった

 

むしろ、攻殻を始めとた日本アニメや漫画に影響を受けているのだから、日本作家による新たなマトリックスのれん分け的な落としどころがベストだったと思われる。それこそガンダムのような展開もあり得たはずだ。

 

ラナはマトリックス性的少数者の抑圧の解放という原義の徹底へと戻したが、そういった原義的なローカル性がキリスト教的神話やアクションシーンといった味付けでユニバーサルに受容されたからこそ傑作クラシックとして現在も様々な人の記憶に残っているのではないだろうか

 

例えるならワニの肉のステーキで、香草や調理法で臭みを徹底的に消して人気商品になったのに、本来のワニ肉を味わってくれ、と臭い肉片を食べさせられたような嫌な思いを本作に感じたのも事実で、それがまた性的少数者に関する事なので、余計に批判を飛ばしづらいという苦しさなのだ笑。

 

動くかつての面々に再会できた喜び、それと本作の剥き出しのメタと原義的イデオロギーの主張、どちらに不等号の口が向くかで本作への評価は変わるのだろう。