牽牛星のよろず日記

自分の興味あることを思うがまま記述したいと思います。

ヴォルデモートは何故負けるのか(魔法戦争感想戦を巡る原作再考察)

皆さんはハリーポッターという物語をご存知だろうか?

 

全世界で約6億ドルを売り上げたメガベストセラー長編物語である。額に傷のある少年ハリーポッターを主人公とした魔法世界での冒険と戦争を描いた7部作を知らない人はいないだろう。

 

そんな本作のファンの1人もある自分は以前からヴィランであるヴォルデモートがもっと利口なら余裕でハリーポッター軍団に勝てたという主張を繰り返している。今回はその主張のまとめ、及び原作についてもいささかの持論を持ってもいるので、そのことと2編構成でお届けしよう。

 

あらかじめ言っておくが、自分はヴォルデモートの唱える人種差別的言動には一切支持するものではなく、人間は出自、瞳の色、肌の色、セクシャリティにおいて差別されることはあってはならないと考えている。

 

あくまでもヴォルデモートの戦争時の組織ガバナンスのミスへの指摘、どうすれば勝てたのかといったところから論を広げ、原作にも問題があったのではないかという議論へと移るつもりである。

 

では、ハリポタガチ勢の長文の暴力を召し上がれ。

 

 

課題編1 魔法戦争回顧録

 

1-1 闇の帝王へ至る道

 

まずヴォルデモートの第1次魔法戦争までの歩みを見よう。

 

父はマグル(非魔法使い)のトムリドルシニア、母は伝説の魔法使いであるサラザール・スリザリンの末裔メローピー・ゴーントの間に生まれた。

 

家族から虐待を受けて育ったメローピーは、ある日マグルの端正な顔立ちの青年トムに恋をする。彼には婚約者がいたものの、メローピーは魔法薬を使用して自身に恋心を抱かせるように誘導し、子供をもうける。それが後のヴォルデモートである。

 

しかし魔法薬の効能が消え去り、トムは突如として妊婦メローピーを捨てて出ていくというクズ男ムーブを発動(まぁ本人も被害者ではあるが)、メローピーは臨月の状態で孤児院に駆け込み出産後に衰弱し死亡。

 

トム・マールヴォロ・リドルと名付けられた男児こそ後の闇の帝王である。

 

孤児院での事務的な手続き、何より卓越したトムの知性には不釣り合いなほどの貧性な教育の中で、彼は孤独を胸に抱きながらスリザリンの血筋を覚醒させていく。

 

周囲の人間に魔法をかけていたぶったり、動物に虐待を加えたり、選民思想は肥大化しそして魔法魔術学校ホグワーツ教員(当時)ダンブルドアが入学許可証を持ってやってくるとホグワーツで才覚を磨くこととなる。

 

在学中も優秀な生徒として教師陣の信頼を集め、同窓の学生を中心に新規魔法の研究に没頭する。その中で見つけたスリザリンの秘密の部屋に住む大蛇のバジリスク服従させることに成功し、マグル生まれの学生を襲う。このトム5年生の時の所業はホグワーツを震撼させ、閉校も議論され始めた時、それは不味いと感じたトムは(理屈よりも感情で後先関係なく生きていることがよく分かる)その罪を学生ハグリッドに着せて幕引きを図ることに成功する。

 

しかし、この事件の主犯格をトムリドルと見抜いていたダンブルドアはトムのホグワーツ教師職への志願を何度も拒絶する。そしてトムリドル青年はマグルの父親からもらった自身の名前を忌み嫌うようにもなり、別の名前を名乗る。

 

Tom Marvolo Riddle という自身の名前を入れ替えて(アナグラム)

 

I am Lord Voldemort (俺様はヴォルデモート卿である)

 

と自称するようになる(若干の厨二病感)。

 

そして在学中に学んだ魂の器であるホークラックスの運用に着手する。霊魂を他者を殺害することによって分割しホークラックスに入れておくことで肉体が無くなっても魂は現存するために死なない(マリオの残機みたいなもの)。

 

在学時代に学んだ自身の思想に共鳴した仲間とデスイーター(死喰い人)を結成、ホグワーツ卒業後に十数年かけて学んだ闇の生物や闇の魔法についての知識は十分。

 

時は満ちた。

 

ヴォルデモートは自身の宿願を実行に移す。

 

マグルの抹殺。魔法使いのみが君臨する世界への再構築

 

ホグワーツ乗っ取りをダンブルドアに妨害され、反マグル教育による魔法界の変革という手段が無くなったことで、実力行使に打って出た。

 

マグル撲滅に反対するものは誰であろうと抹殺。

 

かくしてヴォルデモート率いるデスイーターとダンブルドア率いる不死鳥の騎士団は激突、ここに第1次魔法戦争が勃発する。

 

 

1-2 第1次魔法戦争

 

闇の魔法使いを集い、魔法界変革のための戦争を仕掛けたヴォルデモート

 

形勢は圧倒的にヴォル有利でゲームが進む。相手の心を読む術に優れたヴォルは相手が最も嫌うもの恐れるものを知り、脅迫し仲間に率いれ、また魔法界では虐げられ忌み嫌われてきた闇の生物も支配下に加え圧倒的な物量で不死鳥の騎士団の多くを死傷に追いやる。

 

この頃からヴォルデモートという名前を口に出すことさえ恐れられ、闇の帝王、例のあの人、名前を言ってはいけない人、などと呼ばれ始めた。

 

しかし、ヴォル勝利目前にして、とある予言が全てを変える

 

預言者トレローニーによって”ヴォルデモートを死に追いやるものが7月に生まれる”なる予言がダンブルドアに告げられ、これをスパイであったセブルス・スネイプから聞いたヴォルデモートは7月生まれの不死鳥の騎士団団員の子供としてジェームズ・ポッターとリリー・ポッターの息子を殺害することを計画する。

 

ジェームズと旧知の仲であったピーター・ペテグリューから一家の居所を聞き出すことに成功し、急襲するもリリーの自身の命を犠牲にした守りの魔法により、子供だけは取り逃すばかりか額に稲妻型の傷を付けるに留まり、ヴォルデモートは肉体を消失する。

 

ヴォルデモートを死に追いやった伝説の子供、ハリーポッターの名前は魔法界に轟き渡ることとなり、最大戦力の喪失によりデスイーター側は士気を大きく喪失。その機を逃さなかったのがダンブルドアである。

 

デスイーター側の兵力を切り崩し、次々に自軍側に引き込むように説得。その結果多くの幹部でさえ逃げ出すか裏切るという有様で、ヴォルデモートの死が本当なのかを疑うものもいるなど混迷を極めている中で不死鳥の騎士団は事態を速やかに収束。

 

結果としてヴォルデモート軍団は敗北することとなった。

 

1-3 第2次魔法戦争

 

ヴォルデモートは先述の通り、分霊箱によって”残機”はある。ハリーがホグワーツに入学してから毎年のように復活を目指して苦闘するわけである。

 

ここでハリーポッター7部作についての大まかな分別を以下に書くと

 

前期3部作(賢者の石、秘密の部屋、アズカバンの囚人)

ブリッジ(炎のゴブレット)

後期3部作(不死鳥の騎士団、混血のプリンス、死の秘宝)

 

となっている。前期3部作においてはヴォルデモートは肉体を持っておらず、炎のゴブレットで肉体を取り戻し、後期三部作において第2次魔法戦争へと移行する。

 

前期においては

賢者の石を用いた肉体の蘇生を試みるも失敗

分霊箱リドルの日記を用いてハリーを誘き寄せるも失敗

 

炎のゴブレットにおいてヴォル配下のバーティクラウチJr.をホグワーツに潜入させて魔法学校対抗戦にかこつけてハリーを誘拐し、ハリーの血を用いて肉体を奪還。無事にヴォルデモートは復活する。

 

後期においては

予言を手に入れるためにハリーを利用し誘き出すも予言は破壊

スネイプを用いてダンブルドアを殺害

ハリーを殺すためにホグワーツを襲う

 

といったことがあったものの、最終的には分霊箱は全て破壊され、結果的に分霊箱になっていたハリーもヴォル自らの手で殺したために残機はゼロに。そしてハリーが死に損なっていたことに気づかず(分霊箱の破壊のみでハリー自身の殺害にまでは至っていなかった)反転攻勢を受け、ニワトコの杖の所有権がハリーに渡っていたことに気づかず、杖は主人に対して有効な攻撃を発揮しない原則に従って無事敗北。

 

不死鳥の騎士団の勝利で幕を閉じた。

 

 

解決編1 闇の帝王のリトライ

 

以上においてヴォルデモートの生涯を軽くおさらいしてきたが、どうだろうか。実に間抜けとしか言いようがない。いずれの戦争でも圧倒的な人的資本の優位性を持ちながら2度の大敗を喫したのは闇の帝王を名乗る資格などないと言える。

 

そこで、僕が闇の帝王ならこうする!ということを考えていこうと思うわけである。

 

1-4 主な敗因の整理

 

まずヴォルデモートの敗因は2つある。

 

①ガバナンスミス

 

まず、最大の敗因は分霊箱の存在をデスイーター側で共有されていなかったことであり、第1次戦争の際にも、分霊箱があるので万が一ヴォルデモートが死んだとしても完全には死なないという残機の存在を告げていなかったこと。これは最大のミスと言える。

 

武田信玄が死去を3年隠せと言ったにも関わらず、即時に情報が漏洩し織田徳川部隊の士気向上に繋がったことの反省が全く活かされていないのである。

 

ヴォルデモートが死んだ。それも赤子に敗北したというナラティブの前に騎士団は勢い付き、デスイーターは慌てふためいて混乱した。この事こそが敗着の一手と言える。

 

そして分霊箱の存在をルシウスに告げていれば、秘密の部屋でみすみす破壊されることはなかったはずだ。本来分霊箱は残機であるため、慎重な運用が必要なのではないだろうか。

 

ルシウスが何度も間違いを犯しているのに、幹部に居座り続けていたりと純潔の家系であるとはいえ、これでは手下はついてこないだろう。教育面また人事においても組織として大きなミスを犯していたと言えよう。

 

デスイーター側で最も優秀で忠誠を尽くしていたヴェラトリックスに対してもハリーに杖を向けられた状態で殺してく殺せと見捨てるような態度をヴォルデモートは”不死鳥の騎士団”でとっていたが、あれはよろしくない。

 

そんな姿を見て、新入デスイーターはどう思うだろうか。あんな無能のルシウスのおっさんがのうのうと出世していて、ヴェラトリックスさんは扱いが酷い。こんなとこいても自分やってけるかな。闇の帝王とか言ってるけど、あいつも半純血だし、ただの鼻の潰れた禿げたおっさんじゃね、と陰で笑われてるのではないだろうか。

 

忘れてはならないことがある。それは純血のみの世界を作ることが目的であって、純血の家系であればルシウスのように優遇する訳ではない。ヴォルデモートは指導者として組織の長としての能力に欠けていた

 

ヴェラトリックスは本当に素晴らしい人材なのに、自分は歯がゆい思いを何度もしてきた。もし僕がヴォルデモートなら、こんな扱いは絶対にしないと誓える。

 

②確認ミス

 

これは特にハリーポッターについてであるが、第1次戦争の時に、リリーの魔法に気づいていなかったことはミスであったと言える。またいくら占いでハリーがヴォルデモートを破滅に追いやるとしても、まず部下を行かせるべきであり、自身の存在が組織にとってどれだけ大きいか、何もわかっていないと言える。

 

菅直人福島第一原発の視察にいって現場を混乱させたように、大将は動くべきではないのだ。なぜなら大将が不在となれば組織は指揮系統が混乱するからだ。

 

そもそも数十年、あらゆる呪いや魔法について勉強したはずなのに、守りの魔法のようなものを何故見過ごしていたのか。注意散漫であったと言える。

 

そして第2次でもそうだ。杖の所有権をガタガタ抜かしているが、杖の強さなど圧倒的な物量差で押している状況で考えるべきテーマだろうか。スネイプを殺してまで必要のあることなのだろうか。意味不明である。

 

そして最大の敵であるハリーポッターの絶命の可否を自ら確認していないという愚かさである。もう呆れてものもいえない。そして何よりもである。これは言っちゃおしまいなのかもしれないが、

 

ハリーポッターなんて大した人間ではないのだ。

 

魔法知識ではハーマイオニーに及ばないし、守護霊を作り出すことが出来るくらいで当人の言葉を借りると『そう言えば凄いことに聞こえるが運が良かっただけなんだ』というのは事実である。

 

むしろハリーは自身の弱さを冷静に見れていたからこそ英雄視する民衆に踊らされることなく判断を下せたのだろう。

 

ヴォルデモートがハリーにこだわればこだわるほどに、ハリーは英雄視され、希望の象徴となり騎士団の士気向上に寄与したのだから。ハリーが分霊箱であるということはヴォルからするとハリーは放置しておいて、むしろハリーを殺さず生かしておけば騎士団側にヴォルを殺すためにはハリーを殺さなければならないという究極の2択を迫れたのだから。その好機を自ら潰したのは滑稽としか言えない。

 

知識も髪の毛も慎重さもない。

 

ただの蛇ヅラハゲ茶瓶クソ野郎は引っ込んでおいてほしいものだ。

 

1-5 デスイーター再建計画

 

お待たせした。ここから僕が闇の帝王ならどうするか。について述べる。

 

 

とにもかくにもである。まずヴォルデモートの分霊箱活用計画について説明しておくべきである。まず自身は最悪死んでも肉体が消えるだけで残機はあること。そして何よりも自身が万が一殺された時、ヴェラトリックスを中心とした組織への一時的な移行を取り決めるべきである。

 

そして死はなるべく外部に漏洩しないようにする。これが出来ていないあたりに、情報の共有と情報の取り扱いに対するマニュアルが存在していないのと考えられるので、ここで何をして良くて何をしてはいけないのか、を徹底させる必要がある。

 

そして分霊箱をヴォルデモートだけでなく、幹部生、ヴェラトリックス夫婦、クラウチジュニアといったコアメンバーにも作るように要請。こうすればである。仮にアズカバンに収監されても自死を図っても残機の影響で生き延びることができ、事実上の”脱獄”にも成功する可能性がある。

 

こうすることで無限に残機を増やした死を恐れないより強固な集団へと生まれ変わることが出来るのである。

 

そして、純血か否かではなく、組織への還元を持って人事評価をする方針へと変更すべきである。ルシウスに関しては解雇相当でいい。使い物にならないしここまでのミスを犯した人間を出世させることのほうがおかしい。

 

そしてヴォルデモートという存在を残すことを第1義的にするのではなく、あくまでも純血思想の徹底された世界の具現化を第1として行動を取るようにすべきである。だからこそ思想と将来性を考えた中長期的なビジョンやミッションをデスイーター内で共有することを大事にすべきである。

 

そうでないとヴォルデモートが今回のように敗走した際に次々にメンバーが逃げ出すということはないからだ。物量で勝ってはいても、それはビッグスカッドを抱えていることを意味し、モチベートやガバナンスを徹底させることはとても重要だ。

 

ここまでしておけば、第1次も第2次も時間をかけていくだけで相手は勝手に負けただろう。何もしなくても戦力差で圧倒的なアドバンテージがあるのだから、注意深く最新の情勢を確認しながら進めていけば余裕で魔法世界を制圧できるはずだ。

 

こうしたガバナンスは地味だがとても大事だ。戦争もあくまでも手段でしかない。ここから魔法界において行政も担当していくとなると組織がヴォル不在でガタガタになっているようでは先がない。騎士団に対して魔力で負けたのではない。むしろ絶対的指導者(ヴォル/ダンブルドア)を失った時にシャドーキャビネットの存在の可否、ここが分岐点だったのではと自分は見ている。

 

デスイーターには優秀な人員がいる。ヴェラトリックスは本当に素晴らしい人材だ。リーダーに忠誠を払い、ヴォル死去後も姿を探し回り、多くの人員が寝返る中で彼女はアズカバンに収監されてもなお自身の忠誠を捨てることはなかった。

 

組織の最大の財産は人である。

 

今一度この言葉をヴォルデモートには思い出して欲しいと切に願っている。

 

 

 

課題編2 原作分析

 

ここまではあくまでも原作の中でヴォルデモートの挙動についての反省と改革案を打ち出したが、そもそもの話が、ハリーポッターという原作の構造や設定にも不満と問題点があるので、そちらにも言及をする。

 

2-1 差別VS多様性の不発

 

本質的に見て、ハリーポッターとは何か?

 

それは差別主義との戦いではないか。と自分は考えるわけである。そして結論から言うとハリーポッターとはチャーチル英国とヒトラーナチスの戦いを下敷きにしていると推定される。

 

ホグワーツが4つの寮に別れているのはイギリスがイングランドウェールズスコットランド北アイルランドという4つからなる連合国だからではないだろうか。

 

人種差別と民族浄化を推し進めたヒトラー率いるナチスドイツという差別集団を打ち破ったチャーチルの英国、このカタルシスをリフレインさせるからこそハリーポッターは愛されベストセラーになったのではと自分は分析している。

 

そもそもホグワーツこそ分断と結集の象徴であり、純血魔法族のみに魔法教育を行うべきと主張したサラザールスリザリンが意見の相違の末にホグワーツを去ってもなお、彼の残したスリザリン寮を含めた4つの寮で多様性の尊重と教育の充実を基礎とした学風であることからも明らかである。

 

この互いの意見の違いを乗り越えてもなお、差別主義に対しては明確に反対の意を示し結集しヴォルデモートという”ヒトラー”を打ち破る。ここにこそ最大のカタルシスはあるべきだと思うのである。

 

しかしだ、最後までスリザリン寮はヴォルデモートへの反逆の意思は示さなかった。ただそれが可能な男は確かに存在した。

 

ドラコ・マルフォイである。

 

マルフォイ家という純血の家系でありながらもデスイーターとしてヴォルデモートの命令に従うことに逡巡を見せたり、1年生の時に見下していたウィーズリーの方を皆の前で友人として選ぶといったハリーの行為からハリーに異常に執着するようになるだけで心底恨んでいるわけではなかったりと、どっちかと言うと騎士団寄りの人間なのだ。

 

彼こそが後期3部作の主人公となるべきであり、マルフォイ家の人間ではなく、1人の人間ドラコとして純血思想やヴォルデモートの民族浄化に対して反旗を翻してハリーと共闘する流れが良かったと思うのだが。。

 

結局のところ、スリザリン寮は蚊帳の外で3寮の学生を中心にデスイーターと戦い、不注意で”ヒトラー”は死んじゃいました

 

これではカタルシスが最大限達成されたとは言い難いであろう。

 

そしてこの一家の歴史的流れに争い騎士団に味方した男がいるではないか。

 

シリウス・ブラックである。ブラック家も純血の家系であり、デスイーターを多数輩出した一族だ。それでもブラックは自身の家を嫌い、ジェームズポッターの家で同居するなど騎士団への忠誠を誓ってもいた。

 

シリウスがドラコの良いメンターとしてマルフォイ家からの離反を促すという伏線を引くべきであったと自分は考えている。

 

2-2 騎士団が弱すぎる

 

これは特にダンブルドアの退場に象徴されているのだが不死鳥の騎士団があまりにも弱すぎてベラトリックス・レストレンジがあまりにも強すぎるのだ。

 

この理由は至極シンプルだ。

 

ハリーを守る魔法使いがいる限り、いつまで経ってもヴォルデモートとハリーの直接対決にならないからである。だからこそハリーポッターは7部作は実はほとんど同じ構造をしている。

 

”ハリーが数名の同期生と共にヴォルデモートの元へ近づいていく。もしくはどこかにさらわれてしまい結果として数的不利の状況でヴォルデモート軍団と対峙する”

 

こればっかである。

 

クィレルの待つ賢者の石のある部屋へハリー1人向かう(『賢者の石』)

リドルのいる秘密の部屋へハリー1人向かう(『秘密の部屋』)

ヴォルのいるリドルの墓へハリーとディゴリーがワープ(『炎のゴブレット』)

死喰い人の待つ神秘部へハリー軍団6人で向かう(『不死鳥の騎士団』)

死喰い人の待つ時計台へハリー1人向かう(『半純血のプリンス』)

 

やたら異世界に飛ばされる劇場版クレヨンしんちゃん並みである。

 

こうしないと、結局のところヴォルがダンブルドアに勝てない上にハリーの出る幕がない。そもそもこのような大戦争になってハリーのような学徒出陣が要求されてる時点でおかしな話なのだ。

 

なのでダンブルドアには退場してもらったのだろう。これも実に不自然な話ではありスネイプとの狂言となっているものの、分霊箱の呪いで寿命が短いからスネイプに殺してもらおうというのも無理がありすぎる。ならその寿命内で戦争を終結させれば良いであろう。ダンブルドアというヴォルの天敵を失うことが騎士団にとってどれだけの損失かを考えれば分かると思うのだが。

 

そして、この騎士団というハリーの”壁”を取り除くためにヴェラトリックスがやたらめったら強く騎士団幹部を殺害していくのである。そしてそんなヴェラトリックスはロンの母親であるモリーに殺される。娘であるジニーを殺されかけたことへの怒りと言っているが、その程度で殺せるなら苦労しない。あまりにも杜撰な脚本と考える。

 

 

2-3 ヴォルの死に方が無惨

 

JKローリングの一貫していることは一つあって、愛は最大効力の魔法である、ということである。しかし、これこそが作品の質を歪めてしまっている。

 

そもそもである。守りの魔法って何やねん。。。

 

ヴォルデモートがハリーを倒せなかったのは母の愛情に基づいた防御魔法によってであるという説明。あまりにも理論武装としてガタガタすぎるだろうと。

 

そんなので守れるなら全国の親子は全てヴォルデモートから守られなくてはおかしいのではないだろうか。襲撃されることを想定してダンブルドアがハリーに何かしらの細工をしていた、とかなら分かるが、母の愛情はヴォルデモートに勝ちます、というのは無理がありすぎるし意味がわからない。

 

そして2次戦争の時もである、杖の所有権の結果死んだとあるが呪文の強度が違いすぎるのにそんなことがあり得るのだろうか。そもそもハリーは武装解除であり、ヴォルは殺害の呪文、こんなのが当たれば余裕で前者は吹き飛ぶと思うのだが。

 

というよりもハリーポッターに欠けている概念が、魔法とは一体どこから生まれマグルと魔法使いはなぜ別れているのか、という説明である。

 

魔法使いとマグルの二項対立が主軸の物語であるならば、既存の二項対立物語と同様に二項の同一化というフェーズを迎えたいところだが、この魔法の概念や魔力の概念が至ってスピリチュアルな説明に終始しているので展開のさせようがないのだ。

 

デビルマンのように違いなど何もなかった、というも面白いし、何よりも差別主義を描くならば両者の本質的違いの有無が示されないと意味が分からない。これでは純血を叫ぶハゲ茶瓶蛇ヅラクソ野郎が凡ミスで2度死んだというケアレスミスしか見どころがないのではないだろうか。

 

呪術廻戦での夏油傑が非術師を猿と下げずむようになる過程となるエピソードで丁寧に闇堕ちを描いたようにヴォルデモートがなぜ純血思想へと至り民族浄化を目的とするようになったかといった部分の描写が決定的に欠落しているように見える。

 

それこそ”魔女狩り”のようなエピソードを挿入することで迫害の歴史からくる因縁の物語にしても良かったと思うのだが。。

 

解決編2 KGローリングのリライト

 

2-4 原作再編計画

 

さて、ここまで散々文句を言ってきたので、そろそろ対案を出そうと思う。

 

まずヴォルのポッター家襲撃についてだがこれについては自分はダンブルドアのポッター家を囮とした罠を仕掛けるという設定で良いのではないかと考える。

 

物量で圧倒的に劣る騎士団としては、ヴォルだけを闇討ちにする方法としてトレローニーの予言と称してスネイプを利用してヴォルを破滅に追いやる子供の誕生を吹き込むことで将来の危険因子の排除へと直接向かわせる”ターミネーター”作戦で誘き出し、そこで叩く手筈を整え、ハリー自身に死亡の呪文を掛ければ跳ね返るように強力な呪いをダンブルドアが設置していたという設定で、ジェームズとリリーが囮として志願した、という設定ならどうだろうか?

 

母の守り云々よりもマシと思うのだが、またアバダケタブラ(死の呪文)についても、何かしらの防護出来る呪いが存在しても良いはずだ。でないならいくら魔力が相当量必要と言ってもアバ連発で無双出来るのはあまりにもパワーバランス上面白くないので、ダンブルドアがアバ対策の呪いを開発していた、というのでいいと思う。

 

また寮の数についても3つでいいと思う。いっそスリザリンを無くして、スリザリンをホグワーツに並ぶ魔法学校であるという設定にしても面白い。またレイブンクローとハッフルパフについてはキャラも聡明と勤勉で若干被っているので一つにまとめてもいい。社民党とれいわ新選組みたいで、もうそこ一つでいいよねと。

 

スリザリン魔法学校が純血を唱えて、そしてホグワーツに攻め込みサラザールスリザリンは負けた。その意思を継いだのがホグワーツのヴォルだったという設定で良いと思うのだ。そもそもあれだけテロリスト予備軍を輩出してるスリザリン寮の存在自体があまりにもおかしいだろうし。もう別の魔法学校でいい。

 

そして分霊箱であるが、7つもいらない。3つくらいでいい。そして分霊箱に関しては壊すためには自分の命を犠牲にしなくてはならないという縛りルールを与えるべきであると考える。分霊箱を壊すためにダンブルドアが最後の一つの分霊箱を破壊し、残機をゼロにした段階で後は騎士団に託すよ、という設定でよかったのではにだろうか。

 

そして謎の数百歳まで魔法使い生きれちゃうルールもいらない。またゴーストとして残る設定もいらない。あれでは意思が残るのだからダンブルドアは死んでも指令を出せるだろうし、死ぬという重みがなくなるので本当にいらない。

 

後さきのなくなった90代のダンブルドアが自身の命を犠牲に分霊箱を壊すという流れで残機のなくなったヴォルVS騎士団で最終決戦の流れを望む。

 

また作品数も7つもいらない。特にアズカバンの囚人に関してはヴォルも関与はほぼなく無駄な1年である。”囚人”を除いて前期3部作でヴォル復活、後期3部作で分霊箱壊し、この流れが一番綺麗に思える。

 

そして大団円としてスリザリン校の人間も一緒になって戦い、ヴォルデモートを打ち破ったという流れで終幕させればいい。そうすれば多様性による差別主義の打破の形となるだろうし。

 

後の流れはそこまでいじる必要はない。あくまでも諸設定の修正と後期三部作の組み替えのみで完璧な作品群へと昇華されるはずだ。

 

2-5 リブートへの期待

 

さて、ここまで色々と述べてきたが、こんなヲタクの妄言が実現されるとは考えてはいない。しかし、炎のゴブレットだけは原作のままで是非映像化を再度実施してほしいと考えている。

 

マルフォイの使い方に起因する後期三部作は誰が実写化してもあまり面白くはならないと思うが、炎のゴブレットは本当に名作なので、是非読者の方には読んでもらいたいと考えている。

 

あれは親子の物語なのだ。

 

ハリーとシリウスという名付け親としての親子

ディゴリー親子

バーティクラウチ親子

ヴォルデモートと子分というヤクザ的親子(ゴブレット=杯=盃なのも面白い)

 

こうした複数の親子関係が闇の帝王の復活と悲劇へと向かっていく様は本当に素晴らしい。劇場版では原作の構成が相当に大きくいじられてしまい、作品の本当の素晴らしさが伝わっていない。この頃から原作のボリュームが肥大化していたため大幅な圧縮がなされているのだが、本作はその負の影響を大きく受けた作品である。

 

ネットフリックスあたりにリブート作品としてハリーポッターが描かれることを願っている。炎のゴブレットだけは本当に素晴らしい作品なので。

 

それこそ庵野秀明に、シン・ハリーポッターを作ってもらおう笑、思い入れもないのに大丈夫かと思われる方もいるかもしれないが、彼は思い入れのない作品の方が仕事として徹してくれるのでそちらの方がいい(シン・ゴジラがまさにそれ)。

 

実写でやろうとすると作中役者の成長の問題もあるので、アニメでドラマシリーズで描かれることに期待している。まぁそこでもヴォルデモートの凡ミスでの死に僕はブーブー言いながら見るのだろうが。笑

 

 

終わりに

 

今、世の中は8月初頭 学生は夏休みを迎えている。コロナ禍が落ち着き外へ出かけるのも良いが日中は運動を制限するように地方自治体が指示を出すほど日本の夏は殺人的な暑さを迎えている。

 

そんな中で外に出かけたくない時、膨大に広がるお手隙の時間に、是非、ハリーポッターを手に取って読んでみてほしい。劇場版しか見たことのない人にこそ読んでもらいたい。そこには映画では削除されたさまざまなシークエンスや文脈が存在している。

 

しもべ妖精の権利向上運動にハーマイオニーが力を入れていたり、ネビルの両親が入院している精神病院にお見舞いに行ったり、さまざまな”サブストーリー”が充実しているので夏の暇を埋めるには十分楽しめると思う。

 

今、8作目『呪いの子』が舞台公演されていたり、PS4,PS5で『ホグワーツレガシー』というオープンワールドのゲームが販売されていたり、そして、日本のとしまえん跡にはハリーポッターをテーマにした観覧施設が完成し反響を呼んでいる。

 

今、密かに盛り上がりつつあるハリポタ世界を覗いて見て欲しい。物価高に戦争と魔法でもなきゃやってられない今を生きる僕らにとっても面白い作品群だと思う。

 

『呪いの子』についても色々と言いたいことはあるが、もう1万2000字を超えてきて読者も限界だろう笑、この話はまたどこかで。

 

それでは、良い夏休みを(社会人にはそんなものはないが笑)。