牽牛星のよろず日記

自分の興味あることを思うがまま記述したいと思います。

ペップシティは大耳の夢を見るか

ジョゼップ・グアルディオラ(以下ペップと呼称)。言わずと知れた欧州サッカー界の名将の1人であり、トップチーム監督デビュー以降、華々しいタイトルの数と様々な手筋で見るものを魅了し、多くのフォロワーと多くのアンチを生み出す男。

 

バルサで伝説を残し栄光の4年間に獲得可能な19のタイトルのうち14を獲得。事実上の世界タイトルであるチャンピオンズリーグ(CL)のタイトルは2度も獲った。それもただの戴冠ではない。バルサの歴史上最もバルサらしく勝ち取り、そのプレースタイルは多くの観客を惹きつけ、多くのコピーを生み出した

 

CLのタイトルトロフィーは持ち手の部分が大きな耳が二つ付いているように見えることからビッグイヤーと呼ばれる。邦訳すれば”大耳”。このタイトルを取るために数多の名将は頭を悩ませるわけであり、ペップも例外ではない。

 

バルサでの2度の大耳制覇、3年で2度獲ってから彼は11年もの間、大耳から遠ざかることになる。それは一体なぜなのか?

 

以前にも一度弊ブログでは”ペップの大耳10年戦争”というタイトルの記事を執筆した。

lilin18thangel.hatenablog.com

 

ここでペップという男についてずっと見続けた自分による本質的なペップという男の特徴と、大耳というタイトルを取る上で欠かせないであろうことを述べあげ、ペップの10年間の歩みに加えて大耳制覇のための3ヶ条を最後に付して記事を閉じてある。

 

そして22/23シーズンである。ペップシティはかつてないほどに大耳制覇の可能性が高くなっている。果たして大耳戦争を終結させることが出来るのか。GWでお暇な方の時間潰しにでもなればと牽牛星ブログ恒例の長文の暴力を味わってもらおうと考えている次第である笑。

 

ペップシティ7年目の現在の状況の説明に加えてペップのこれまでの挑戦と自分なりの評価や総評を付して、シティってどんなチームなのか、ペップってどういう監督なのか、知りたいと思われる方に向けてペップを14年間定点観測し続けた男の文章が役に立ってくれると幸いである。

 

弊ブログの読者様であれば、第5章から読んでいただければと思う。そこまでは初めてこのブログを読む方向けの復習パートである。

 

 

 

第1章 バルサでの殉教

 

1-1 バルサとは何か

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FCバルセロナはよく”クラブ以上の存在”と言われることが多い。チームのスローガンなのだが、自分の解釈ではこうなる。

 

オンリーワンのプロセスでナンバーワンを掴み取るクラブ

 

世界最高のクラブとはどこであろうか。定性的な議論では埒があかないだろうが分かりやすく考えると世界で一番価値のあるタイトルを獲得した数で見ようとすると当然ながらレアルマドリーとなるわけである。

 

このナンバーワンのマドリーに正面から戦っては分が悪い。なので独自の戦略と戦術を用いてゲームをハックしてしまえばいいというのがそもそもの発想となっている。そこでアヤックスのサッカーをインポートし独自解釈と発展を促し続けたのがミケルスとクライフであり、後者のサッカーは多くの人々を魅了しドリームチームと呼称された。

 

クライフバルサで4番(ピボーテ=ワンボランチ)を務めたペップが監督として君臨するとペップはクライフの思想の現代的な表現を与え、ゲームを完全にハックしてしまった。そして初年度7冠という大偉業を達成した。

 

ワンタッチで小気味よく交わされるショートパスの連続はティキタカ(チクタクという時計の針の音にちなむ名称)と呼ばれバルサの代名詞とされた。

 

しかし、それは本質的なバルサの特徴ではないと自分は考えている

 

クライフサッカーの特徴と似てはいるもののペップのそれは異形であり、その突然変異的な挙動そのものがクライフ正道の保守的表現とされてしまったことが後のバルサにおける様式美を巡る議論を喚起してしまうのである。

 

ペップがバルサでやったことはとてもシンプルである。

 

絶対的最終生産者の生産効率の最大化模型の設置

模型の無限発動を目的とする支配構造の確立

 

この2点である。

 

ペップはパスサッカーをしたのではない。メッシという歴代最高選手の得点能力の最大化から逆算されたサッカーを展開し続けただけである。

 

そしてこのアプローチそのものがオンリーワンであり、実にバルサらしいサッカーであったがゆえに様々な歪みを生じさせたのも、また事実なのである。誰も見たことのないサッカーで誰もが欲しがるタイトルを掻っ攫う、バルサの哲学でもありペップの哲学でもあるように思えてならない。

 

1-2 伝説

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ペップが就任して取り掛かった最初の仕事は綱紀粛正であった。ライカールト前政権での取り組みを見て不要と思える選手を放出し続けてチームを再編した。初年度のアンリ、エトー、メッシの3トップは猛威をふるい、中盤ではチャビ、イニエスタ、トゥレが安定感を見せ、チームはあれよあれよという間に全てのタイトルを取ってしまった。ボールを回し続けて右WGメッシが絞ってバイタルでボールをレシーブ、そこから外のアンリと裏のエトーの3点アタックが炸裂し続けたのである。

 

しかしながらCHE戦では怪しいところが複数あり、そこの修正として高さを求めよりメッシを中央で輝かせようと4231にトライした。エトー+4000万ユーロと引き換えにイブラヒモビッチを獲得し新たな次元へと向かおうとしたものの、イブラが後半戦に入るとブレーキとなり古巣インテル戦では全く役に立たずピケを前線に上げてのパワープレーで得点出来たことから高さの優位性というイブラ獲得の大義も消え失せ1年での退団となった。

 

そして迎えた10-11シーズン。このシーズンからハッキリとペップの色が明確になる。得点能力に秀でたメッシの特徴であるUT(ユーティリティ)性と狭い領域でのボールプレーの正確さとドリブル能力を見込んで偽9番というポジションを与えた。そしてメッシがいかにバイタルでボールをレシーブ出来るかの一点に全ての労力と資本を投下する仕様となった。

 

バイタルエリアを空けるために相手DFの裏を常に狙うビジャとペドロで相手を牽制し、また狭いバイタルでもボールを供給可能な中盤としてチャビ、イニエスタブスケツが選ばれた。中盤にマークが集中してもGKバルデスやCBピケが組立に参加したり、さらに本職がDMFのマスチェラーノをCBとして使った。目的はただ一つメッシの待つバイタルへ向けてボールを進めることのみだ。

 

この至極単純明快なシステムはこのシーズンに集大成を迎えリーグとCLの2冠に輝き今でも歴代最強のチームとして多くの人々の心に残り続けている。

 

1サイクル3年論者のペップは4年目に更なる高みを目指す。クライフ時代の343を復権させようとした。しかし目的は同じ、メッシのバイタルを更に開くこと。セスクを入れて裏攻めを強化、更に両翼には純正WGを入れて更に攻撃的に振る舞おうとした。しかしビジャはCWC(クラブW杯)で大怪我を負い、サンチェスも怪我で度々離脱。これにより両翼にはカンテラーノのテージョとクエンカが起用された。

 

相手からすればバイタルを極端に圧縮しそれ以外のスペースは全て捨てる。この戦略を思い切ったCHEによって実現され4年目のシーズンは終わりを迎えた。4年目のペップバルサにとって必要だったのは1年目のアンリやエトーだったというのはあまりにも皮肉かもしれない。

 

バイタルにメッシを置き、外、裏に抑止力を設置しなければならないというペップが残した”遺言”は後に外のネイマール、裏のスアレスを用いたエンリケのMSNとして具現化され、それが現在のバルサ最後のCL制覇となっている。

 

1-3 ペップバルサとは

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1-1でも述べた通りペップとは最終生産者の最大化模型を作り、そこから逆算された構造で無限ハメ技地獄を作りだす監督である。ポゼッションサッカーやティキタカというのはあくまでも表層的なものに過ぎずバルサはその好例である。

 

メッシはバイタルでボールを受けさえすれば得点が入る。バイタルにとにかくボールを入れるために延々とボールを持ち続けた。その結果、バルサはティキタカのパスサッカーと表現されてしまい、ポゼッション率で相手を下回ろうものなら教義に反するとしてスキャンダルものの騒動に発展することもペップ退任後あったこともあったが、それはひとえにペップサッカーそのものを保守本流とみなしたことのツケだろう。

 

その精算をしているのがチャビなのもなかなかに興味深い。モウリーニョがマドリーに流れていた騎士道精神を壊し実利主義的に書き換えたようにチャビがやろうとしているのはバルサらしさ=ペップバルサ、という方程式を書き換えようとしているのだと個人的には見ている。それほどまでにペップバルサとは圧倒的だったのだ。無理もない。

 

しかし、ペップバルサはクライフバルサとは挙動が微妙に異なるが、オンリーワンの方法でゲームをハックしナンバーワンのマドリーに打ち勝つという意味では精神性は間違いなく”バルサ”的であったと言えるが、実態としてはメッシにいかにゴールを取らせるかという一点に特化し続けた集団であり、クライフ時代のような強烈なWGによる突破はなかった。むしろあれば良かったのだろうが。

 

ペップバルサの偽9番とUT集合体は数多くの信者を生み出した。そしてメッシの得点能力最大化装置という本質を理解しないままに純正FWなしの成功という誘惑的な虚像に囚われた結果多くの屍が積み重なり、そうした失敗例がペップバルサという奇跡を更に輝かせるのであった。

 

しかし最大の皮肉は後のペップがシティにおいての第2サイクルにおいて偽9番というペップバルサ信者の屍の後を追ってしまったことだろう。

 

美しき共産主義的な虚像を見せたペップバルサにてメッシにバイタルエリアでボールを持たせ続けるシステムという異形のオンリーワンでナンバーワンを掴み取る、そんなクライフの精神性を支持し現代的な表現を与えて殉教へと至ったペップの遺産はいまだに輝き続けるのである。

 

第2章 バイエルンでの巡教

 

2-1 鉄の三角形

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『ここ(バイエルン)で仕事するのが容易に想像出来る』

 

そう呟いたのはペップである。バルサ4年目のアウディカップ(オフシーズンの親善試合)の後、バイエルンフロントのカール・ルンメニゲとウリ・へーネスはハインケス勇退後の指揮官を探していた。バイエルンの両名とペップの3人は強い結束で結ばれることになるのだが、ペップはバルサ後のセレソン監督就任を狙っていたが困難となったために1年の休養期間を経てバイエルン指揮官になることを決意した。

 

ハインケスの3冠チームを受け継ぎ、そして更なる高みへと導くことが求められた。ルンメニゲとへーネスが求めていたのはブランド力だった。世界中の注目を集めうる監督のもとで大きなブランドへとバイエルンを押し上げてくれる人物を求めていた。

 

ペップもバルサでしか成功したことのない指揮官という立ち位置をアップデートすべくある程度成功が約束されたクラブを求めていたので思惑は合致していた。そして3者面談の場において選手補強や移籍戦略が話し合われた。そこでペップが提案したのは実に彼らしいオーダーだった。

 

才能のある選手、特にアタッカーが欲しい。彼が列挙したと伝えられる面々はスアレスネイマールレヴァンドフスキである。スアレスは素行面からバイエルンフロントが拒否し、ネイマールは移籍に関して権利関係が面倒なのと当人のリーガ移籍願望の強さから撤退。残り契約が1年半ほどのレヴァに狙いを定める。しかし所属元のドルトムントは放出を拒否する。こうして最終生産者抜きの初めてのシーズンが確定した。

 

そして獲得されたのはゲッツェとチアゴであった。ペップのバルサでの4年間がいかに恵まれていたかはこの時からも明らかで、プレシーズンからボールは回らずドルトムントとのドイツスーパーカップではボコボコにされてしまい、ペップは早速ドイツの保守派から総スカンを喰らうことになるのである。

 

2-2 輝く両翼

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ペップとはどういう人か、それは前述した通りだ。手駒の中で最も得点能力の高い選手の得点能力を最大化させる装置を生み出す。そして生み出された装置を無限開放させるための環境を整えるバイエルンの中でそれはロッベンリベリーだった。つまり外攻めの逆足ウインガーの能力の最大化となる。

 

ロッベンリベリーにとって一番良いのは1VS1である。ここまで持ち込めば大抵は勝てるだろうしそこから中に入ってズドンというイメージであろう。だからこそWGに対しての2枚の挟み込みを殺すことが求められるわけである。ちなみにWGとSBのダブルチームでWGを殺しにかかる方法はモウリーニョの18番なわけで、モウマドリーとの対戦で疲弊したペップにとってモウの亡霊との戦いとも言えるわけである。

 

早い話がダブルチームを壊す方法はダブルチームの片方を外から剥がせばいいのである。そんなわけでペップが取った作戦がSBの内側寄せ、通称偽SB(ドイツ本国では偽IHとも言われていた。これは定義の問題でIHでないのにIHの位置に来ていることを偽とドイツでは表現するメディアが複数いたことに起因)を用いて相手サイドハーフを内側に引き付ける。食いつかなければSBが内側でボールを受けてサイドに展開する。

 

こうしてラームとアラバの2人は偽SBというUT性を用いた解決でWG開放スキームを作り上げたわけである。バイタルにとにかくボールを運び続けメッシを活かしたように、バイエルンではとにかくボールをサイドに集めロッベンリベリーを活かし続けることにしたわけだ。

 

一部ではバイエルンバルサ化と言われていたが、これも全くのデタラメであり何度も言うがペップの興味は最終生産過程にしかないのだ。そういう男なのである。

 

そして最終生産者をオーダーしていたペップのアナライズは正しかった。ロッベンリベリーでは大耳を取れるだけの耐久力と得点力に乏しかった。そこで彼らを諦めてレバンドフスキを1年遅れで獲得し組み直す。そしてレヴァの得意技と最適挙動を定めるのに1年を要したもののペップ時代3年目にシステムは完成した。

 

同足ハイクロス爆撃レバミュラ生産過程である。

 

ひたすらサイドにボールを渡す1年目のスキームに変化を加え、そこから同足のコスタとコマンが突破しクロスを放り込むスタイルだ。レバは丁度いい案配で気の利いたポジショニングの出来る選手(ミュラー)が好きでWGには外で張っていて欲しい。さらに裏抜けが大得意なのでロングキックの得意な選手を後ろにおいてほしい(ボアテン、アロンソノイアー)ということを理解し完成したのである。

 

2-3 ペップバイエルンとは

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バイエルン時代はケガとの戦いであった。それゆえ満足なスタメンを組むのにも苦労する始末で苦労をUTで埋める毎節で、それゆえに常にどんなサッカーをするのかと毎度毎度議論がなされていた。

 

しかしバルサ同様の大成功を収めることは出来なかったものの、バルサでやっていたことと本質的には同じことであった。得点能力に優れた選手の最大化、そこから逆算された支配構造の設置。これこそペップの真骨頂なのだ。サッカーという競技が得点数を競うスキームである以上、得点能力を持つ選手の最大化が得意なペップが欧州サッカー界の中心にいるのは当然と言えば当然なのだ。

 

初年度はロッベンリベリーの最大化、3年目はレバミュラの最大化。やってきたことはこれまで通り。ただ大耳に届かず3年連続4強敗退となってしまったのはやはりケガ人が多すぎて安定しなかったことも大きい。ゼロセンターバックシステムであったりクワトロSBシステムであったり、ケガ人が多いからこそ、それを埋めるペップの知恵が見れて面白くはあったのだがペップバルサを超えるチームにはならなかった。

 

ウリ・へーネスは脱税容疑で収監されてしまったことや、保守的なバイエルンファンからの批判的な論調はペップを苦しめたかもしれない。バルサ化など目指していなかったのにバイエルンはティキタカをしていると言われてもいたし、ペップ本人がティキタカはクソッタレだと怒っていたのも納得である。

 

そして自分が最も興味深かったのがノイアーのフィールドプレイヤー起用計画である。ノイアーボランチとして起用しようとしていた。これが具現化されていればサッカー界に議論を起こせた可能性もありGKの運用としてもライバルとの共存を含め様々なことが考えられたので大変残念である。この起用をしようとした時に止めたのがルンメニゲであり『敵軍への挑発行為になる』と言われたそうだ。鉄の大三角が本当に良かったのかも疑問を残すところである。

 

ソリアーノとチキとの大三角による成功の再現

生産過程の構築によるペップモデルの成功例の増加

バルサ以外でのチームの成功

 

これらを求めたペップの冒険は静かに幕を閉じたのであった。

 

第3章 始祖の地にて

 

3-1 友を追いかけて

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ペップが次に選んだクラブは、チキとソリアーノの待つシティであった。バルサ時代の再現を狙いつつ自身の夢とも語っていたプレミアリーグでの監督キャリアは幕をあける。そしてバルサ時代と同様に粛清から始める。そして各ポジションにリクエストを出しつつも微妙に第1志望からは外れたもののメンバーは揃った。

 

俺たちはグアルディオラ取ったんやでぇ的なチャントをシティズンが歌うと同時に自分は一抹の不安を隠せなかった。それは単純にこれまでのペップチームの中で最弱のメンツであったからである。さらにペップが来たんだからCL取れるっしょ的な空気感にも不安を感じていた。

 

いや、このおっさんはリーグ向きなんやけど。。。

 

しかしペップはブレない。もうしつこいだろうがあえて言おう。チームにおいて最大得点能力保持者の最大化を目指す。それはアグエロである。彼は身長はないが神出鬼没のポジショニングで一瞬の隙を見逃さずボックス内で枠を確実に捉える純正ストライカーでありアブダビシティに栄光をもたらしたクラッチゴーラーである。

 

そしてペップが選んだのはロークロス爆撃モデルである。サイドの選手にボールを入れて同足のスターリングとサネがぶち抜いてロークロス、それをアグエロが押し込む形を最終生産過程と定める。そのためにハーフスペースでIHを経由してのプレーを狙いシルバとデブ神をIHにコンバート。4番には万能のジーニョが用いられた。ここまでは良かった、そうここまでは。

 

しかし偽SBが一切機能しない。補強が足りていなかったのだ。そこに加えてアグエロは耐久力も低く、最適配置を理解出来ていない部分が散見されていた。そして冬に加入したジェズスがスタメンに抜擢されると輝きをますシティであったが、初年度はペップ史上初の無冠に終わってしまった。

 

2年目、SBをフルーツバスケットしようやくチームは機能し始める。

 

偽SB→ハーフのIH→サイドのWG→折り返してアグエロ

 

この形が猛威をふるい、4バック主体のプレミアリーグにおいて可変5トップの325システムは凄まじい破壊性能を誇った。しかしCLでは8強が限界であった。LIV戦ではアグエロの体調が不安定で機能せず、メッシ抜きのバルサ、レバ抜きのバイエルンのような夏休みのない8月のようなシティは怖さが全くなかった。

 

3-2 壁

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3年目、主な補強はマフレズのみ。そして昨季の反省を活かしてコアプロテクトを徹底する。より正確に言うならアグエロの出場時間を抑制するようにチームが管理に入ったのである。

 

リードしていればアグエロは70分を過ぎた頃から交代に入る。そしてジェズスとバトンタッチして交代。これが日常であった。LIV相手でのゴラッソを始め、大事な試合でアグエロを欠くことのないようにと気を使っていたシーズンであった。そこに加えて同足クロス爆撃のアレンジとして逆足攻撃も加えようとしていた。右に左利きのマフレズ、左に右利きのスターリング、これによって自在に相手を幻惑しようと戦った。

 

リーグではLIVの猛烈な追い上げもあり極めて緊張感のあるリーグ戦となる中で国内カップであるFAカップカラバオカップは両方制覇。リーグに関しても14連勝でフィニッシュしコンパニのラストシーズンに花を飾った。

 

しかしである。。CLである。。。

 

アグエロは無事に出場出来た。しかし1stlegでPKを外してしまい2ndlegでは2度の際どい判定もあってTOTの前にアウェイゴール差で負けてしまった。アグエロが悪いと言いたいわけではない。しかしながらアグエロで外してしまえばペップシティには成すすべはなかった。

 

アグエロの能力の最大化、それに徹した3年の答えは国内制圧は出来ても国外では厳しい。そして興味深いのがCLで負けた相手がLIVとTOTという国内の相手であるということであり、この3年間でペップシティはリーグ戦のような試行数の多い系においては機能するものの試行数の少ない系において厳しい結果を招いてしまうという現実だ。

 

バルサバイエルン時代において一度もCL4強に行けなかったことはなかったのにも関わらずシティでの3年間では一度もたどり着けなかった。優勝以前の問題であり、何かがおかしいというのは明らかである。

 

そしてアグエロはペップ政権3年目をもって事実上キャリアを終えることになる。次のシーズンからは耐久力の劣化は絶対防衛ラインを超越し戦力としてはカウント出来なくなってしまう。

 

まるでペップの1サイクル3年説に従うようにアグエロは3年の時をもってペップ時代初期3年の主人公としての役割を終えるのであった。

 

3-3 アグエロ時代とは

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メッシシステム、ロベリシステム、レバミュラシステム、アグエロシステム、この4つはペップが生み出した最終生産モデルである。過去3作品と比べ、なぜアグエロシステムはCLにおいて機能しなかったのか。それについて考えることとしよう。

 

大抵、難問というのは複数の要因が絡み合い生じるものでこれはおそらくであるがアグエロ本人の素養に加えてLBに代表される守備コア不足もあるのだ。LBメンディは論外の耐久力の低さからプロパーLBは不在。そしてDFラインの要であるラポルテとオタメンディのコンビもCLレベルにおいては厳しさがあった。

 

負け、それは得点が失点に比べて少ないということでTOT戦もLIV戦もどちらも合計スコアは派手なもので失点が多すぎる、相手の最終生産に耐えうるだけの守備力がないということがまず挙げられる。

 

そしてアグエロである。ロベリと同様に耐久力に問題があり3年目はプロテクトをしたものの残念な形で終わってしまった。そして何よりもメッシやレバミュラの時は生産までのフェーズが少ないというのがある。バイタルへの供給、サイドへの供給からの中央へのクロス爆撃、これに比べてハーフスペースからサイドへ、そしてロークロスとメッシ時代と比べると2段多いのである。

 

こうしたズレはバイエルン時代の失敗にも共通する。そもそも最終生産者の”ステージ”上にボールを供給するところからのズレはあるのだ。シティで言えばアグエロシステムというよりもIHが得点するスキームでなら上手くいくのではないかと思えてならない。デブ神とシルバに得点させることが出来れば。

 

しかしペップ自身は3年間の苦悩によって、そこを埋めうる何かを出さなければならないと感じてしまったのかもしれない。そしてここから3年間の新たな時代へと入るわけであるが自分は極めて否定的な見解をもっている。それは上述内容から明らかだろうがペップという男の本質に反しているからである。

 

アグエロ時代、それはペップにシティでの自信を失わせるのに十分な3年間だったのかもしれない。何かを変えなければいけない。普通にこれまでどおりでは通用しないしCLでは勝てない。その恐怖と焦燥が作り上げたのがゼロトップ時代という呪われた時代なのである。

 

第4章 ゼロの焦点

 

4-1 王座

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アグエロが耐久力の限界を迎え、次代のエース候補として、スターリング、そしてジェズスが列挙される。得点力から考えてスターリングが選ばれたのは必然か。そしてチームはゼロトップへと舵を切る。しかしペップシティ4年目は苦難の連続となった。

 

怪我人が連発しコロナ禍突入によりリーグも波乱を迎える。LIVが走り出すも止めることの出来ないシティはカラバオカップを取るので精一杯であった。スターリングは王位に座るにはシルバという従者が必要であり、そのシルバがペップシティ4年目をもって退団したことは事実上の王座の空位スターリングシステムの構築ではなく純粋なゼロトップへと舵を切ることを余儀なくされた

 

ペップの行動原理は一貫している。得点能力に優れた選手の最大化。ではスターリングの能力を最大化するにはどうすれば良いのか。そもそもスターリングとはどういう選手なのだろうか。アグエロ時代の同足RWGで安定感のあるプレーを見せる。また耐久力も抜群で国産のタレントとして注目度も非常に高い。

 

しかし実態としてはダビシルバがいるからこそ成り立つ選手であり、周囲の理解がなければ成立しない。EURO2020を見ると明らかなようにグリやマウント、フォーデンらが黒子となって支え、そして後ろからは気の利いたルークショーが加勢する。そして中央のケインは10番のように振る舞いスターリングは王様としてチームを決勝にまで導いたのである。この再現をシティにインストールしていたらどうなったのだろうか。

 

メッシ、ロベリ、レバミュラ、アグエロ、と来たペップシリーズは遂にゼロトップというペップバルサのフォロワー作品の本家による表現という時代を迎えた。

 

4-2 救世主と加勢

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ゼロ生産者となりスターリングシステムの構築にも失敗したペップシティは5年目に最悪の状況に陥る。優勝はおろかCL権さえ危ぶまれる状況であったがオタメンディを放出して獲得されたルベンによりチームは輝きを増し始める。ルベンのコーチングによりストーンズが復活。守備の安定感は”遊び”を許容するようになる。SBカンセロは偽SBとしてボランチ化した後に前線へとあがり5レーンに加勢する。6番目の攻撃者としてチームを盛り立てる

 

カンセロが上がり浮いたベルナルドがボールをキープし最後はギュンが決める。ゼロトップ時代のハメ技の完成である。連勝街道に乗り、いつの間にか首位に立っていたシティはその勢いのままにリーグとカラバオを制覇する。カンセロロールで復活したチームであったがいつしかカンセロの守備能力の低さからDFラインはウォーカー、ストーンズ、ルベン、ジンで固定されCLでは念願の8強超えを達成するも準優勝。

 

奇策ハゲ炎上祭り2021が開催されるわけだが、スターリングとギュンの起用云々よりも5レーンを封鎖されると生産システムを持たないシティはデブ神とフォーデンの閃き頼りになってしまう中でデブ神が負傷交代で途中離脱、そしてLBの守備力の無さを突いてきたトゥヘルによってシティはウノゼロ敗北を招いた。

 

ペップシティ6年目はスターリングシステムの構築に移行する。グリーリッシュを獲得し、そして加勢するLBとしてメンディを抜擢。さらにケイン獲得を狙った。しかしケインは取り逃がし、メンディは性犯罪者として逮捕。こうしてスターリングのシティでのキャリアは事実上終焉した。より正確に言うならば玉座に座る道は完全に閉ざされ、脇役扱いを好まずデブ神と同額レベルの年俸を要求する男はシティでの居場所を失いファンからの信頼も徐々に薄れていった。

 

ゼロトップという苦肉の策は3年目を迎え、そしてチームは耐えて耐えてデブ神とフォーフォーデンに全てを託しつつ、リスク覚悟でLBカンセロを選択した。しかしながら国内カップは全て敗退。黄金時代の集大成を狙うLIVが国内カップは総取り。リーグ戦でも肉薄されるもののスターリング、ジンチェンコ、ギュンの活躍もあって劇的逆転勝利でリーグタイトルは防衛出来た。

 

そして課題のCLである。マドリーに大逆転を喰らい敗退。一発勝負への弱さを露呈したシティはCL最多優勝クラブの前に散った。

 

4-3 ゼロトップ時代とは

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自分はゼロトップ時代については控えめに言ってクソだと思ってるが、ペップの気持ちも理解できなくはない。というよりもペップのやり方自体が通用しなくなってきているというのがあるのではないかと考える。

 

ペップがバルサ指揮官だった頃に比べてハメ技の賞味期限が短くなってきている。分析のスピードとソリューションの提案のスピードが向上することで対応されてしまうまでが極めて早くなってしまうので、最終生産過程の規定化自体が危険な行為なのではないかと考えるようになったのかもしれない。

 

だからこそ一定の空白をもたらし、そこに遊びとしての可動域を一定設定し個人能力に優れた選手の個人技による即興性を付加させることで対策を取りづらいように変えてしまう方がいい、それがペップの出した答えだったのかもしれない。

 

ペップを見続けた人間として最終生産者抜きのペップがCLを取るのは極めて困難と考えるのは納得してもらえるだろうが、ペップ自身がアンチペップ的な、ある種の生産過程の規定化の否定を決断した。それがゼロトップ時代だったのかもしれない。

 

ケインを取り損ね、スターリングシステムの構築が困難になったがゆえなのか、それとも本来の狙い通りなのかそれは謎のままであるが。

 

そしてバイエルンでのロベリーシステムの名残を受け継ぎ外への経路制作のスキームをレバミュラクロス爆撃にも応用したように、この後、ハーランドという最終生産者を獲得するものの、ゼロトップ時代に培われた構造自体は受け継がれることになるとは定点観測者の自分も全く予想だにしなかったのである。

 

こうしてポストアグエロ時代は終わり、新たな時代が開幕するわけである。

 

第5章 MCI 22/23レビュー(仮)

 

5-1 戦後処理と新時代

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ゼロトップ時代3年間が幕を閉じると同時に市場が開く前からシティ周辺は騒々しさを増していった。

 

ハーランド加入決定

 

シティズン待望の最終生産者の獲得。これでついにペップの本領発揮なわけであるが、その前にペップ恒例の粛清から夏は始まった。

 

それは、まるで戦犯処理の様相を呈していた。

 

シティが大耳を取れなかった原因は最終生産者とLBの力不足、この2点に尽きるわけである。そして前者を担ったのがスターリングとジェズスであり、後者を担ったのがジンチェンコとカンセロである。

 

奇しくもと言うべきか、22/23シーズン後半になって、以上に列挙した4名はいなくなった。カンセロは正確にはレンタル移籍なので帰ってはくるが事実上構想外に等しい。いわば、こうした戦犯を放出しチームを再建することから今季は始まった

 

シルバがいたからこそ輝けていたスターリングは要所での活躍は見込めず、ジェズスは絶対的なクオリティが欠落しておりジンチェンコは対人能力は一向に改善する兆しさえなかった。カンセロも遊びとしては機能しても格上相手ではリスクにしかならず、彼らの粛清が次への移行には必須だったのだろう。

 

スターリングはチェルシー、ジェズスとジンチェンコはアーセナルへと移籍し、彼らの残した移籍金はシティにとっての久々の売りオペ成功例となった。

 

そしてやってきたのがハーランド、アルバレス、フィリップス、アカンジである。本当ならここにククレジャも獲得予定であったが、例年のごとくチキったわけで。チェルシーの高額投資の前に戦略的撤退をしたわけである。

 

こうして、新生シティの新たな時代が始まった。

 

時代の名前はハーランド

 

ハーランドにいかにして得点を取らせるか、その一点集中のチームが誕生した。

 

 

5-2 ハーランド祭り

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耐久力に不安があり、ゴールパターンが左足シュート依存が高く、イブラの二の舞になる可能性がある

 

これがよく聞かれた懐疑論である。

 

今、改めてこれを読むと笑いが止まらない。完全に覆したからだ。

 

というよりもハーランドの成長スピードと学習能力の高さが凄まじいのだ。苦手と思われていたポストプレーも急に出来るようになったりビッグゲームで消えてしまうところがあったのに、突如としてゴールも決め出す。

 

シーズン当初は怪我を一切せず、ひたすらロークロス爆撃と裏抜けで相手DFをキリキリ舞にしハットトリックを積み上げるという祭り状態であった。しかし、その祭りの裏で悩ましい一件が起こっていた。

 

ハーランドの得意技はゲート破りのランであるが、ゲートは広いに限る。そう広大なスペースなら最高だ。さらにデブ神はポジティブトランジションの鬼であり、カウンターに転じた時の高速ドライブからの最適判断のパスを投げ放つという天下一品の武器を持っている。

 

こうなるとシティの最大値は、デブ神とハーランドのカウンターアタックとなるわけである。しかし、それは準備が整っていない状態でボールを失う危険性を内包する。このことから例年になく失点が増え、例年になく格下相手でもポロポロ勝ち点を落とす始末であった。LIVやCHEが低迷していたことも手伝ってシティには”猶予”が与えられたわけであるが、ARSはしっかりとそこを逃さず首位を走り出した。

 

リコルイスの抜擢こそあれ、チームにはどこか疲弊感が漂っており、マフレズの調子は上がらずウォーカーも万全ではない。何かがおかしい、そんなシーズンである。

 

ペップはカウンター自体は否定しない。しかしバルサバイエルン、シティ、どの指揮においてもボールを失っても良い状態をパスの連続で作り出し最適配置のもとで相手を殴ることを求めていた。全員でボールを運び、そこから群れとなって襲いかかることを理想とし、最終生産者の最適化という旗印のもとに相手を完膚なきまでに叩きのめすことを理想としていた。

 

カウンターが最大値、という課題に対してペップは頭を悩ませる。一時期は秩序とカオスのバランスについて会見で述べていたこともあったほどだ。

 

そしてペップは、この疑問に対して回答を出すことになる。

 

5-3 ゼロは死なず

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その答えは、ゼロトップ時代の精神でハーランドを取り込む

 

意味がわからないだろうから説明を加える。

 

ゼロトップ時代、それは明確な最終生産者を置かないということである。正確に言うと絶対的最終生産過程不在のままにチームを作り上げるということで、それはペップの仕事としては異形であることは前述の通りである。

 

ハーランドの理想の最終生産過程はカウンター。そう判断したペップが取ったのが、支配層選手の即興芸を最終生産過程とし、その曖昧な遊びを含んだ過程から逆算し、明確なフィニッシュパターンを設計しない、というものだ。

 

ペップは自身の理想と現実の間で折衷案を出したのだ。これはかつてサイドに生産過程を建築しようとし、その残骸をレバミュラ爆撃の際にWGへのパス経路確保として再利用したように、ゼロトップ時代の最終生産課程を規定しないという精神をそのままに即興芸を終点としたのである。

 

ハーランドとデブ神のカウンターアタック。そしてリスクとなるのはトランジション時の守備的リスクである。そのためバックスはこれまでの23ビルドに代表される偽SBダブルやカンセロを用いた6トップ攻撃は捨てられた。

 

求められたのは屈強な5人による32ブロックの構築である。そしてSBに用いられたのは純正CBのアカンジ、アケ、ストーンズといった選手たちで、カンセロは完全に構想から外れてしまいバイエルンへとレンタル放出されていった。

 

後ろをしっかりと固め、中盤でのプレスはミニマムにする。デブ神とハーランドのカウンターアタックを最大化するために、ハーランドの開けたスペースへの突撃としてシャドーに任命されたのはギュン。WGは攻撃性のないSBを後ろにおいても問題ないほどの数的不利でもボールを失わずに運べるグリーリッシュとベルナルドによる偽WGが用いられた。

 

こうして完成したのはクワトロCB+偽翼によるハーランドとデブ神のカウンター最終生産過程。これが今季のペップシティの姿である。

 

精神性としてはゼロトップ時代とまんまなのだ。確かにゼロトップ時代もスタンドアローンな挙動が最終的には複合的産物の意思のようになるスタンドアローンコンプレックス的な現象が見られたと言及したことがあったが、今回はまさにそれである。

 

今回、弊ブログのファンの方には耳が痛くなるほどにペップの仕事における本質的解釈と自分が考えるものを述べてきたが、今回、異形に見えるペップシティもよく考えると彼らしい作品であると言える。

 

最終生産者の得意戦型に合わせた生産過程を用意し、それをサスティナブルに連発させられるような装置を作り上げること。

 

これこそがペップなのである。そのためのアイデアを古典アーカイブから引用して作り出して見せる脱構築的なアプローチ。これこそペップ、これこそ僕の興味を大いに惹きつける男の正体である。

 

そしてポゼッションも捨て、ついにはサスティナブル支配のためのプレスルーティンさえ捨て去ろうとしている。異形に見えるが、これがこの男の正体なのであろう。まるでマドリーのように支配層の即興芸を軸にしており、これが本家の銀河系にどこまで通用するのか、実に楽しみである。

 

 

5-4 大耳戦争終結の確率

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長らく続いたバルサ以降の大耳戦争。オンリーワンのプロセスでナンバーワンを掴み取るというバルサの精神性の具現者がたどり着いたのは最大のライバルチームであるナンバーワンのレアルマドリーの精神を取り込むことだった。

 

こんなオチで良いのだろうか、とも思えるがこれがペップなのかもしれない。矛盾的な人間と言われる男が見せるバルサと対になる代物、マドリーライクなカウンター型のチーム。これが答えと言われたら仕方ない。

 

正直、弱点はある。カウンターが得意とはいえ、相手が引いてくるとどうしてもWGの突破力は求められるだろうし、また選手層は今季は厚くない。昨季のように離脱者が続出しマドリーに逆転される可能性も十分にある。

 

勝負はこれからで、まだ分からない。確かなことは自分は初めて即興芸を生産過程として取り込んだペップのチームを見ているということだ。もう誰もペップをポゼッションの男とは呼ばないだろう。

 

彼が3度目の大耳制覇を成し遂げた時、それは真の意味で最終生産過程構築の鬼。最終生産者に魂を売った男ペップ・グアルディオラという本質が白日の元に晒される時なのかもしれない。

 

バルササッカーの伝道師の巡礼の先に見つけたものは、レアルマドリーというペップのずっと前から近くにあったものであった。というのは実に面白い帰結でもある。

 

灯台下暗し、それも悪くはない終戦の景色であろう。

 

第6章 MCI 22/23選手評価(仮)

 

S評価

 

ハーランド

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この男なしに今季を語ることは出来ないだろう。得点力やハットトリックの数で評価されがちであるが一番の魅力は学習性能である。AIアンドロイドのように苦手なものも時間をかけて解決に至る姿は次代の支配層の匂いを存分に感じさせてくれる。

 

ゴールパターンが左足に偏っているという弱点も緩やかに解決に至っていたり、何よりも耐久力は相当に良くなっている。ドルトムント時代は怪我が絶えなかったのにも関わらずほとんど怪我することなく出場できているし、ポストプレーも上達していたりと常にアップデートを止めないところに最大の強みがある。

 

課題としては偽9番で下がってきての10番的なプレーでパスを前方に投げるといったプレーになるか。またWGに入ってのプレーといったUT性の部分にも伸び代を残している。学習した先に怪物がどのように育つのか非常に楽しみである。

 

アケ

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長年のLB不在問題に終止符を打ったかつてのベンチウォーマーは今季のコア選手としてチームに貢献してくれた。元々がSBとCBのUT混合種であったものの、チームは長年3バック可変する際はRBがRHVとなりLBはボランチ化するスキームであったために日の目を浴びることはなかった。

 

しかし、今季はウォーカーの不調とリコの台頭で右が前方遷移するようになったためにLBはかつてと逆でLHVを求められた。こうなると3バックのLHVをやらせれば最適な選手であるアケは大いに活躍を見せてくれた。

 

そもそもサラーとの1VS1に勝つなど対人性能は高かったのがチームの構造変化と同時にチームに不可欠な存在となったのは極めて素晴らしい。左利きのウォーカーの覚醒はウォーカーのピークアウトによって生まれたのは皮肉の極みではあるが。

 

KDB

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神は今季も神である。肉体疲労を上手く隠しながら相手に合わせてプレー強度を調整しておりゼロトップ時代に磨いた得点力とアシストマシーンとしての性能を合わせ当代随一のMFの称号を欲しいがままにしている。

 

ただし今季から目に見えて守備強度が落ち始めているのは確かで、ポジトラの鬼の能力の最大化となった今季はボールが早く前線に送られており、そのことも相まってデスコルガード気味のプレースタイルで守備免除とは言わないが守備能力が発揮されるシーンはあまりない。

 

ただビッグゲームになるとパスミスを掻っ攫い高速ドライブからの神パスと神クロスでチャンスを演出しており意図的なチューニングと見て取れる。これからは1日も長い延命が求められるだけに、このスタイルは仕方ないのかもしれない。

 

グリーリッシュ

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評価が追いついてきたと思えば突然罵声を浴びせれたり、得点した試合では蹴り殺されかけたりと呪われているのかと思うほどの不憫さであったが今季は相当に活躍が可視化されつつあると思われる。

 

デブ神とハーランドのカウンターのために間延びしても後ろで殺せるようにクワトロCBが準備しており、SBからの加勢は見込めないからこそ独力でボールを失わずに運び切れる能力は現在のシティのWGとしては必須の能力であり最高のコア選手である。

 

課題としては得点力といった部分での存在感もそうだが、一番はデブ神のプロテクトが可能になって欲しいと考えている。タイプ的には緩急の緩の部分の担当ではあるのだが高速でボールをドライブさせてから前方に投げるプレーに磨きをかけてほしい。またプレースキックの質も向上させてほしい。セットプレーでのデブ神依存もあるので、そこを薄められるだけでも寄与は大きいはずだから。

 

ストーンズ

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調子の良い時は誰にも止められない。最大の敵はサウスゲートで知られるストーンズは今季後半は欠かせない選手となった。これまで培ってきた偽CBとしての前方シフトのUT選手としての能力。ルベンとのコンビネーション、昨季から取り組むRBでの仕事に加えて今季はリコロールもこなすようになった。

 

リコと同様のシフトが出来て、リコの数倍守れる選手がいればリコに取って代わるのは仕方ない。対人の強さ、UT性を兼備したスーパーなDFである。怪我さえしなければ本当に本当に最高なのだ。

 

体調管理さえ出来ればワールドクラスのCBなだけにここからのキャリアにおいてどれだけイニングを食っていけるかだろう。その意味でも来季はCBの補強は欲しいところである。リコの遷移能力を盗んだようにグヴァ加入があれば彼のプレーを参考にして次はLBでも出力できると非常に面白い。

 

ルベン

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前半は不安定な体調であったがシーズン佳境にしっかりと調子を合わせてきて得意のスライディングでバイエルン戦を始め要所要所でのプレーは光っている。何よりもルベンがいないと試合終盤での気落ちから一気に崩れるというシーンもあっただけに本当に重要な選手である。

 

UT性はなくプロパーCBであるもののチームにいないと所々でボロが出始める。特に今季はクワトロCBで後ろはカチカチになったとはいえ、前半戦ではカウンタースタイルと後ろの適正の不一致から相当に失点は喫した。クワトロのリーダーとしての振る舞いに加えて昨季終盤の離脱を繰り返して欲しくないものだ。

 

対人における安定感。周囲のレベルを引き上げるコーチング、チームを鼓舞できるメンタリティ。チームが覇権を狙うに必須の選手。これからペップはこの男にUT性を付加するのか、そこに注目している。

 

ロドリ

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エンリケのCBコンバート魔改造実験の成果は相当にシティに多くを与えている。まずCBストーンズの前方遷移を可能にしているのはロドリがCBになっても計算出来るというセーフティがあることが大きい。

 

そしてロドリの聡明なところはストーンズが上がった時にCBとボランチの間に位置しながらジグザグを作り出しボールの逃げ道をしっかりと確保しながら、相手が丁度飛び込みづらい絶妙な位置どりでボールを回すところである。

 

残されたスキルはロングパスである。ハーランドは裏抜けが相当に得意なのでロング一発で得点というシーンはもう少し欲しいところだ。中盤を省略して前方に投げ飛ばすパスを出来るようになるとより面白い選手になるだろう。ペップはCL決勝を制した時MFがCBをやっていた。今季ももしかして???

 

A評価

 

ベル

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今季も恒例のバルサ行くかも、ベルちゃんはやっぱり辞めへんで2022でシーズンが幕を開けた。今季終わりにもベルちゃんはやっぱり辞めへんで2023が開催されるだろう。おそらくだが契約終了後にベンフィカに帰るのが一番リアルな気がする。RWGとIHに選手が溢れかえるバルサに行くのは意味不明だ。

 

そんなイニシエーションを終えての今季はマフレズの調子が当たり前のように前半上がってこないので偽翼としてRWGに入ることが多かった。左利きのグリーリッシュのようなロールをこなしつつではあったもののやはりIHの方が向いているような気がしてならない。

 

しかし、今のチームではRWGとしてボールを収めて運ぶというベルナルドの特性は活かされているので、ダブル偽翼システムを続ける限りは必須の選手であろう。代わりとなる選手はいないので、退団するなら根本的にシステムの作り直しになるわけであるが、どうするのだろうか?

 

アカンジ

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前半、この男がいないとチームはどうなっていたのか想像もつかない。契約で揉めていただけでドルトムントではコアレベルの選手だったと評判であったが、よく理解できた。表現として合っているか分からないがメガクラブの3番手CBとしては最高の選手と言える。

 

左右問わずプレーが可能でCBでもSBでもこなす。また卒なくプレーするので目立ったミスはなくフィジカルである程度は解決出来る。ただパスや位置どりで?となるシーンは目立ち戦術理解も少し足りてない節も見えた。

 

ただコアプロテクターとしては最高の部類でルベンとストーンズとウォーカーとアケの4人が疲弊しないように各ポジションでイニングを食わせられるバックアッパーとしてみれば十二分だろう。だからこそラポルテは完全に構想から外れてしまったわけで。まだ伸び代もあるので、これからに期待したい。

 

ギュン

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今季がラストイヤーの可能性もある元祖3番手IHは今季、意外な活躍を見せた。というのもハーランドの開けたスペースに入って得点出来る抑止力はフォーデンだと考えていた。IHフォーデンが正解だろうし、そこへ向かうだろうと。そしてそこのバックアップとしてギュンを構えさせて退団後のダメージを緩和すると見ていた。

 

しかしシャドーに抜擢されたのはゼロトップ時代のストライカーであったギュン。コアとして今季もチームを支えている。フォーデンが体調が安定しなかったというのもあるが今季はバックアップに徹して欲しかったので、ここは誤算か。

 

ただ確かに得意技ではあるのだ。IHで仕事しながら機を見て開けたスペースに飛び込みゴールネットを揺らすのは。今季限りで退団も噂されているがフォーデンに技を伝えてから出ていってもらえたらと考えている。

 

マフレズ

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前半は死んだように静かであったが後半になって徐々にギアを上げてハットトリックするまでに戻してきた。左が溜めて人を集められるグリのため右はアイソレーションでロングパスをトラップするのが大得意なマフレズの出番だったのだがスロースターターぶりが今季も健在であった。

 

助っ人外国人のようにポストシーズンクラッチすりゃエエねんろ?と言わんばかりの形であるがデブ神そうだが、加齢には勝てないのだろう。コア選手は全体的に年齢と肉体と相談してのプレー強度に落ち着きそうである。

 

ただ将来の話をするとRWG自体が枯渇気味の市場において後継者へのバトンタッチは非常に難しい問題である。今の偽翼システムをやるとしても純正WGの後継者は確保しておきたい。パーマーが伸び悩む現状において主力級選手をとっても共存も出来るはず。個人的にはドリブラーの延命には中盤コンバートが欠かせないと思っているので、いずれはIHやトップ下に移るのではないかと期待している。果たしてどうなるか?

 

フォーデン

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EDSの星にしてクラブの未来は今季は浮き沈みの激しいシーズンを送っている。怪我の影響もあって思うように体が動かないのか精彩を欠くシーンも少なくないが、やはりハーランドのシャドーとして得点能力のあるダビシルバとしての期待は大きい。

 

UTD戦でのハーランドとの協調は希望を抱かせている。そしてフォーデンはハーランドとのコンビだけでなく、その先の未来でも必要とされる。ハーランドが3,4年程度で移籍していったとき、ペップシティ初期スキームの派生系であるハーフにボールを供給するサッカーにおいては得点能力のあるIHならメッシシステムと同様に直接的に最終生産に移行できるので非常に期待している。

 

ハーランド移籍後は、シティはIHが得点を取るチームへと変貌し、そのIHコンビこそがフォーデンとアルバレスになるだろう。自分の予言であるが当たるかどうか。

 

アルバレス

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W杯での印象的な活躍とは裏腹に相当慎重な運用をなされていた印象である。ペップ自身も期待こそすれハーランドが想定以上のイニングイートを見せたので前線のUTとして便利使いしながらも得意のST起用が中心だった。

 

適性的にはトップ下やSTでストライカー周辺をうろうろするアルゼンチンの”ミュラー”のような立ち位置になろうかと思うが、いずれはデブ神の後継者となるだろう。中盤でゲームメイクとパスで試合を作りハーフでボールをレシーブすればフォーデンとの協調でゴールに迫る。そういったプレーが求められるだろう。

 

ジェズスが果たせなかったベンゼマ化の夢を追うか、それともデブ神の後継者としてSTとゲームメーカーの混合種となるか、将来が期待される。

 

エデルソン

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パフォーマンスだけなら年々下がっていると言わざるを得ない。エデルソンのおかげで拾えた試合はさほど思いつかないし、撃たれたシュートをビッグセーブするというのもあまり見ない。また得意のフィードも陰りが見えておりハーランドめがけて1発というのもなかった。

 

LBになりたいのか、本当にお前LBやるのか、そんな期待を彼には見てしまうのだが、それでも正GKとしてビッグマッチでのセーブには期待したい。パスミスも少し散見されるので勤続疲労なのか、少し真剣に見直した方が良いだろう。

 

個人的にはノイアーを取ってGKで使い、LBでエデルソンを使うとどうなるのか見たくてしょうがないのだがペップはあまり興味がないようだ。残念でならない。日本中のシティズンが期待しているというのに。。

 

リコルイス

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前半ポジティブな効果をもたらしたプロスペクトはカンセロの存在価値を無に帰すのに十分過ぎるほどの活躍ぶりであった。偽RSBとして素晴らしいプレーを見せ、ペップからもラームに形容されるほどの安定感と技術力でチームに貢献してみせた。

 

しかし、やはりというべきか、守備力に関しては一抹の不安は禁じ得ない。身長やサイズを考えるとフィジカルを鍛えて願わくばRJのような怪物守備者になってもらえると助かる。SBも人材が枯渇気味なだけにウォーカーの後継者になって欲しいのだ。

 

課題は明確で守備力である。ウォーカーよりはポジショニングセンスはいいもののビッグマッチで強烈なLWGと相対させるにはやはり怖さが残る。これでフィジカルを鍛えすぎて怪我が増えないと良いが。

 

B評価

 

ラポルテ

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昨季の優勝はラポルテの献身の賜物であることは事実だ。体調不良の中で必死に戦い続けて何とかリーグだけは防衛できた。そんな男は怪我の影響もあって、シーズン序盤はハーランドのハットをTwitterで祝うというリモート出場していた。

 

しかし残酷な現実がそこにはあって、3番手CBとしてアカンジが定着。ラポルテよりも潰しが効いて、今のクワトロCBの求めている対人性能にもアカンジの方が合っている。更にLBも幅広3バックに対応出来るエリアの広さ、LHVに対応出来る使い勝手の良さを考えてもアケには勝てず、ベンチが定位置となってしまっている。

 

得意のロングフィードでハーランド目掛けて縦1発もみせられていないので、このまま行くと売却が既定路線である。バルサあたりに売りつけられないだろうか?ついでにファティとかも取れたら最高なんだが。まぁそんな馬鹿なことはしないか。。

 

ウォーカー

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もうSBとしてほぼピークアウトした。これが自分の見立てである。マフレズのようにイニングを限定しながらスロースタートで入り、シーズン佳境に進んでからRSBで使い倒すみたいな方向性がいいのかもしれない。

 

ポジショニングは悪く235システムが2年連続で早期終了となってしまったが怪我やピッチ外での問題行動であったり放出に向けて少しずつ動き出していてもおかしくない。リコの成長次第では来季以降の去就は不安定と言わざるを得ない。

 

出来れば来季以降は入りは慎重になりながらCBで出場しつつ、調子が上がってきたらリコに変わって対人性能を使ってRBとしてビッグマッチを戦うといった運用になっていくのではないだろうか?

 

肉体は衰える。これからは賢く生きることが求められる。ピッチの中でも外でも。

 

ゴメス

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正直、戦力としては自分は初めから計算はしていなかった。今の所ジンチェンコの劣化版に過ぎず、将来換金出来たら御の字である。守備力もそうだが判断、テクニック全てにおいてシティでプレーする水準には達していない。

 

シティは上手くて当たり前で、その上で何を上乗せ出来るかで決まる。全ての面でのレベルアップがないと来季は途中でのレンタルも考えられる。このままではマズイ。悪い選手とは言わないが、何かを見せないと生き残るのさえ困難だろう。

 

左利きのリコルイスとしてプレゼンスを示す必要がある。4大リーグのどこかで武者修行するのもアリだろう。ここから本当の試練の連続だろうが、ここを乗り越えてスカイブルーのユニフォームを着続けられるか、試される時間である。

 

パーマー

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強みは体躯、弱みは体躯ゆえにボールが知らないうちにロストしてしまう。まるで長いバットを使う打者のように普通は拾えないようなボールをフェアに出来るものの近いボールには詰まる。それを自身が一番理解しているのだろう。極端にロストを怖がりプレーのリスクテイクが下手に見える。

 

WGで使われたなら挑んでナンボである。それが出来ないならキープしなければならない。体躯を用いた独特のテンポとプレースキルの高さが全く活かされていない。個人的には一度提言したがIHの方が良いのではないか。個人的にはヤヤの後継者に見える。体躯を利用しドライブしながら独特のテンポで前線にボールを放つのが良いように見える。

 

ロストが多いから中盤起用は厳しくWGということなのだろうが、このままでは良さが活かされないままに放出されてしまうだろう。ゼロトップで使われていたのも、ヤヤと似ていてペップ自身も重ねているのか?中盤で一度見てみたい。

 

フィリップス

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失望としか言えない一年である。期待されたロドリのバックアップは全く出来ず、肩の怪我の治療で前半はほぼ棒に振り、W杯後はオーバーウェイトで合流してくるといった姿勢の面でも疑問を残す結果である。

 

そもそもロドリと共存出来る差別化が可能でロドリのプロテクターとしての役割をこなしうるUTかつ国産路線にも合致する選手のはずが今季は全く良いところがなく、放出の噂もそろそろ出てくる可能性もある。

 

来季の稼働率が悪ければベンメンディコース確定なので、来季次第でシティでの命運は決まるだろう。

 

終わりに

シーズンが終われば22/23シーズンについての詳しいレビュー記事も書くつもりなので、今回はあえてそこまで踏み込まず要点だけを述べてある。しかし自分の言いたいことを伝わっていると思う。

 

ペップはこれまでの仕事の本質としての精神性は継承しながらも異形の作品を作ろうとしている。土着性やその国の持つ文化をペップは引き出し、そのチームの特色を色濃く反映したものを作り出してきた。バルサバルサらしく、バイエルンバイエルンらしく、そしてシティもシティらしくなるのだろう。

 

よくよく考えるとキックアンドラッシュのダイレクトプレーのサッカーの母国においてカウンターサッカーで天下を狙うのは納得出来る。しかしカウンターを軸として即興的に規定を拒むとは全く想像できなかった。この男の深淵はまだ底知れぬということか。

 

今回のブログタイトルは『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』という小説のタイトルを引用したものとなっている。過去アーカイブ引用を得意とするペップを表現するにこれが良いと考えた。この作品は高度なロボットと人間を識別するものなどあるのだろうかという問いであり、攻殻機動隊マトリックスに大きな影響を与えた。

 

電気羊(ロボットペット)しか飼えず本物の羊を飼いたいと願っていた主人公のようにペップは本物の最終生産者を求めていたはずだ。夢を見るのはもう飽き飽きだ。

 

大耳獲得が夢で終わるか、現実になるか。

 

その差はまるで高度なロボットと人間の差異くらい僅かなものなのだろう。

 

羊の群れを先導する巡礼者の未来に幸在らん事を祈り記事を結ぶことにする。