弊ブログにてかつてこのような記事をupした。
文字通り、苦境に喘ぐLIVについてなぜ苦しんでいるのか。どうすれば救われるのかという観点からライバルチームのサポーターの立場から現状の報告と提言を行った。
そこでは無秩序配置を指摘、その上で各選手の特性に合った配置に戻すことで上手くいくとしダブルボランチや3バック導入を提言した。
この記事を書いた次の試合でLIVは4231を披露。シティを1-0で破り、見事に”救われた”訳である。そして時は流れシーズンは終了。LIVは結果としてはCL権を逃しクロップ政権としては黄金時代の終焉を感じさせ、かつての覇権集団は見る影もなく厳しい様相を呈している。
そこで今回は、LIVを救ったはいいもののLIVを救いきれなかった自分自身の贖罪として来季どうすれば上手くいくのか、そして現状の問題点は何なのか、こういった部分にフォーカスし来季のLIVの復活を願うテキストを残そうと思う。
前編 TAA最大化の功罪
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苦境に立たされたクロップ、解任も囁かれる中で蘇生の勝負手として選択されたのは旗頭との心中、TAAショットガンシステムの導入である。
433の布陣からRBのTAAが絞り偽SBロール発動、布陣は325へと変形する。TAAの中距離パスを用いて多くのチャンスを創出すること、そしてファビーニョとファンダイクをプロテクトするための2ボランチと3バックの導入。そしてTAAの守備的リスクの減退という僕がかつて”LIVを救いたい”で書いた提言が受け入れられているではないか。
起死回生の一手でLIVはCL権獲得に向けて確かな加速こそ見せてはいたものの自分は上手くいかないのでは、と考えていた。それはこの偽SBを利用した325というシステムはシティの基本陣形であり、利点と欠点、何が必要なのか、どうすれば機能するかということを長年嫌というほど見てきたからである。
そんな325の先輩であるシティについて少し語らせてほしい。
まずシティの監督ペップについては弊ブログを通じて何度も話してきたように最終生産者の最大化からチームを組み立てることが最大の本質と述べてきた。そしてシティにおいてはアグエロの最大化が至上命題であったわけだ。
そして考案されたのがアグエロロークロス爆撃システムである。
90分間決定機を増やしたい
→アグエロにボールを集めたい
→アグエロにロークロスを入れたい
→サイドから手数をかけず即座にクロスを入れたい
→同足WGを置きたい、また同足WGと協調しながらニアゾーンやペナ脇侵入できる器用なIHも置きたい
→ハーフスペースで待つIH、サイドにいるWGにパスを通したい
→偽SB、偽CBを運用してサイドへの差し筋を確保したい
この結果生み出されたのが325システムである。
4バック主体のプレミアリーグで猛威をふるった5トップシステムと可変を用いた安定的なビルドアップとポゼッションでシティはLIVとリーグの覇権を争い続けた訳である。
ここまで話すと賢明な読者は気づくであろう。自分が言いたいこと、そしてなぜLIVの325システムに対して自分が懐疑的なのか。
偽SBを手段として用いているシティとは違いLIVは偽SBが目的となってしまっているのではないかという疑念である。
LIVの最終生産能力の高い選手はヌニェスとサラーと考えられる。両名にとって325は果たして有用と言えるのだろうか。
まずヌニェスについては馬力で押し続ける選手で細かい芸当は出来ない。安定的なビルドアップをするために適宜ポジションを取り直し出口役になることも求められ、それが達成されると相手は退いてしまう。それはスペースがなくなることを意味するが、そんなロールを彼がこなせるだろうか。LIVサポーターに思い出して欲しい。なぜペップシティ1年目のCFはアグエロではなくジェズスが使われていたのかを。325のCFに求められる細かいリポジショニングが出来なかったからである。
そしてサラー。WGで大外に貼り付けになってしまいゴールからの距離は遠くなってしまっている。シティの場合はWGでもプレー可能なIHシルバ、ベルナルド、デブ神のような選手がサイドに流れてポジションチェンジしていたがLIVのIHにその質を求めるのは困難と言わざるを得ない。それでもシーズン19得点上げるのだから凄まじいのだが、活かせているかと言われると厳しい。
また後方に目を向けるとSBのトランスフォームによってTAAはボランチ化し、LSBのロバートソンはLHVのプレーを求められており、これも適材適所とは言い難い。シティではデュエル最強ウォーカー、本職MFのデルフ、ジンチェンコを両SBに配置していたので無理なく使えたがLIVではそうも上手くいっていない。そもそもダイクのプロテクトをするための3バックが、これでは本末転倒な気もする。
シティは325を長らく運用してきた。そしてLIVを始めとする強豪チームとの対戦を通じて独自の発展を遂げてきた。そしてそこで出てきた課題を並べていく。
同足WGは縦を切られると詰む(TAAによってサネ封鎖の17/18CL)
5トップワクチンとして5バックで埋められると詰む(トゥヘルのCHE)
可変は守備時にリスクになる(何度もLBの偽遅れを狙われた)
こうした数々の課題に対してペップは
逆足WGの使用
5トップ+1となるカンセロロールの使用
偽SBより戻り距離の短い偽CBの使用
といった方法で対抗してきた。
LIVがこの後を追うのかもしれないが、自分は否定的である。LIVの新戦術はTAAの最大化であるが、それが本当にLIV全体の利益に還元されているのか、その部分に対して自分は疑問を抱いている。
サッカーは得点を取り合う競技であり、攻撃的SBの最大活用が目的ではない。サラーとヌニェスの両名を中心にどうやって得点機会を増やし、ファンダイクとファビーニョをプロテクトしながら失点機会を減らすか、そう考えた際に、シティが散々やったことで耐性を持っているプレミアリーグでシティライクな325を展開するのは本当に正しいのか自分は否定的な立場である。
なぜならそれは今のシティが325と言いながらも陣形をほとんど動かさず4バックをガチムチにした4CBの442カウンターシステムが主武器になっているからだ。シティの後追いは金銭もかかるしリターンがシティほどシティのリバイバルで見込めるかも厳しいのであまりお勧めしない。
解決編 固定3バック導入のススメ
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課題編でも述べたように、確かに433無秩序配置の反省は見え、TAA最大化システムという新基軸を用いて窮地を脱しようとするのは良いと思われるもののシティライクな325システムの運用に関してはIHの質の問題、サラーとヌニェスの犠牲などを考えるとどうも厳しいと言わざるを得ない。
前回の”LIVを救いたい”でも書いた通り343の運用がベストのように感じる。
TAAとロバートソンは両翼大外にいてこそだろうし、サラーとヌニェスはなるべくゴールに近いところに置きたい。そこにジョタやカルバーリョも配置したいところだ。カルバーリョはライン間でもプレー出来る選手であり、貴重な戦力に思えるのだが。
ファンダイクとファビーニョのプロテクトのためにデフォで3バック2ボランチシステムは設置しておくべきだ。ベリンガムを取り逃がしたことを考えても3センターの維持が出来るほど頭数はないのだからチアゴのスペ体質を考えると獲得が噂されているマックに加えてもう一枚中盤は欲しいところ。
自分の主張は前回の”救いたい”から変わってはいない。素晴らしい選手たちがいるのだから彼らの得意ムーブを組み合わせたチームにすればCL権獲得どころではなくCL優勝も争うことが出来るはずだ(中盤の補強は必須だが笑)。
3421システムでもう一度覇権を取って欲しいと願っている。
しかし、それでも325システムを続けるというならば、ヌニェスの大幅なレベルアップを待たなければならない上に、加齢による突破力の減退が考えられるサラーは苦しいキャリアを送る可能性もある。出来ることとしてはIHの質の向上であるが、それだけでうまくいくか正直微妙である。
格下にアーノルドの戻り遅れを突かれて失点する未来が、ジンチェンコとデルフに泣いてきた自分だからこそ見えてしまうので心配でならない。
終わりに
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ペップシティ7年間で5度のリーグ優勝。その歴史は325システム運用の歴史そのものであった。その中で様々なエラーを見てきたし、そこで様々なソリューションの提案も見てきた。しかし、それはシティだけではなくプレミアの他のチームも知っている。だからこそLIVのシティ後追い懸念をシティ定点観測者だからこそ感じてしまう。
シティの所属選手を集め始めているARSやシティライクな325にチャレンジするLIVを見ているとかつてのペップバルサのようにペップシティのフォロワーがついに出現したのかと心が躍ると同時に、『その道行くと行き止まりやで』という老婆心も発揮されてしまうわけである。
ずっとLIVというライバルに追いつけ追い越せでシティを応援してきて今季はようやく覇権集団への道筋も立ち、ホームではハーランド抜きの布陣で4得点を挙げて勝利出来ていよいよ天下も見えてきた。今季ARSとの首位争いにおいて仮に例年のLIVが競争相手であれば優勝は厳しかっただろう。
シティがマドリーに逆転出来るようなチームとなり成長してきたのは、ひとえに同国に強烈なライバルがいたからであり、好敵手としてLIVには強くいてもらいたいし、その上で、その強力なライバルを打ちのめせるチームでシティにはいてもらいたいと自分は強く願っている。
来季、覇権集団へと再び返り咲いたLIVとシティの最高の試合が繰り広げられること、そしてLIVを今度こそ救われるこを祈念し、記事を結ぶことにする。