牽牛星のよろず日記

自分の興味あることを思うがまま記述したいと思います。

冬備え・インサレーション編

 

lilin18thangel.hatenablog.com

 

以前、こういう記事を書きました。この記事では、僕の愛するアウトドアブランドの話を初心者向けに書きました。そして、アウトドアブランドが輝くのは冬。それは機能性に優れたウェアは寒くなると有用さを増し、アウトドアブランドの商品紹介のYouTuberさんもよく”冬は稼ぎ時”と仰っています。

 

ただ、今は10月初頭、冬と言うには早すぎないかと思いの方も多いでしょう。寒くなってからでいんじゃない?と

 

ただ、そう考える人は少なくないので、いざ寒くなってから防寒着を買いに行こうとすると人気モデルは売り切れで再販見込みも不明で打つ手なし。途方に暮れる。

 

このような事態に陥る事は少なくないでしょう。

 

では、いつ頃から動き出すべきなのか。その答えが10月です。

 

早くも10月初頭から人気モデルは予約や発売が始まり、年末年始に向けて早くも商戦が開始されることになります。

 

そこで、今回は秋冬のおすすめウェアの紹介と私見を述べることにします。

 

 

1-1 ダウンの弱点

 

まず冬のアウターとなると基本的にはコート、ダウンジャケットが列挙されます。しかし、これは声を大にして言いたいのがダウンは出来るだけ買わないほうが良いということです。

 

まずダウンを買わない方が良い理由が2つあります。

 

1、コスパが悪い

 

アウター、それもアウトドアブランドのものとなると値段は数万円になります。関西人の僕にとっては”元を取れる”かは重要です笑。ダウンジャケットを着る時期は結構限られるところがあります。寒くなってからでないと着るのは厳しいでしょうし、そしてダウンの天敵の水。もっと言うと雨が降っている時です。

 

雨に濡れるとダウンは保温性は失われ、水分を取り除かないとカビが生えてしまったり台無しになります。なので寒いけど雨が降らない時以外はアウターとしてのダウンは着ることは出来ないのです。

 

防水、撥水性能を付けるとなると更に金銭は弾みます。ゴアテックス級となると+5000円はマストで計上されます。そうなってくるとアウターとしてコスパが良くないのです。

 

2、洗濯が面倒

 

ダウンは水に弱いと前段で申し上げましたが、濡れるとダウンは台無しになります。そして濡れた際ダウンは弱体化し引きちぎれやすくなります。では勢いよく水の中でかき回したらどうなると思いますか?例えば洗濯とか。

 

答えは大惨事になります。なので洗濯機に放り込んで洗うことは出来ません。ダウン用の洗剤を使ってぬるま湯で手洗いし水分をよく絞り部屋干しし、乾燥機に入れてダウンの膨らみを回復させて洗濯完了です。こんな手間暇を1着のダウンにかけたいですか?

 

結局のとこ前段同様コスパが悪いんです。大して使いもしない、管理も面倒、水気対策もやらなきゃいけない。もう大変ですよね。

 

1-2 解決策

 

ではダウン系はどうすれば良いのか?

 

答えとしてはミッドレイヤー系の薄いものを買う、もしくはゴアのついた雨でも大丈夫なダウンジャケットが理想でしょう。まずミッド系であれば薄いですので洗濯もしやすく、雨耐性がなくても問題はないです。またゴアが付いていれば雨天でも羽織れますのでオススメです。まぁそれでも面倒なのですが笑。

 

そしてダウンを僕は否定しますが中綿ジャケットは否定しません。より具体的に言うと化学繊維系の中綿ジャケットが理想的です。

 

化学繊維であれば、まず洗濯機に放り込んで洗えます。乾燥は部屋干しですが幾分か楽ですし、化学繊維は乾燥が早いので多少の雨でも問題はないはずです。流石に台風クラスの暴風雨では無理でしょうけど、ダウンよりも個人的には優れていると言えます。温かさはダウンに負けてしまう部分はあるでしょうけど、各社の中綿の開発も進んでいて、もう化繊ジャケットで十分だと個人的には感じる次第です。

 

 

1-3 おすすめ商品

 

これまで語ってきた中綿系、いわゆるインサレーション、断熱中綿素材を活かしたアウターやジャケットについておすすめ品を紹介します。

 

●アトム系(アークテリクス)

 

人気アウトドアブランドのアークテリクスの最高傑作アトム。コアロフトという化学繊維を用いられているので、洗濯機での洗濯も可能で撥水機能も有しリブで袖口は締まり、ドローコードで胴回りのコールドスポットも消せる。

 

アトムは十数種類存在し、All Round(AR)、LighT(LT)、Super Light(SL)の3種類に加えてフードの有無やベスト型など様々なものが存在します。

 

個人的にオススメなのはSLフーディとLTジャケットです。

 

まずSLはソフトシェルとして運用できるので夏以外は使え元を取りやすいです、また薄いのでフードの中に押し込んで持ち運びやすくもなります。胴体部分にしか中綿がないため、春秋に僕はよく使用しています。

 

LTは動きやすさと温かさが丁度良くバランスの取れたウェアです。ARほどモコモコはしていませんが、これくらいの方が良いと思います。ARほど綿を入れると結構大柄で若干重く、また洗濯機に放り込むのも色々大変なので(ネットとか大きさ的に)。

 

●ノース系(ノースフェイス)

 

アウターといえばノース。商品をずらずら並べても大変なのでまとめて述べます。

 

アウトドアブランドで日本で一番人気のあるブランドこそノースフェイスで、巷でよく見かけると思います。そんなノースの一番の武器がアウターです。ヌプシ、バルトロ、ビレイヤ、マウンテンダウン、ヒマラヤン、数々の人気商品が存在します。

 

ただ何度も申し上げる通りダウン系はあまり僕は勧めません、特にアウターは。マウンテンダウンはゴアテックス仕様なので完全防水ですが、ヌプシは濡れると台無しですし、気候によって着用が制限される部分は否定できません。

 

ですのでミッドレイヤーとして使えるサンダージャケットを勧めます。

 

ダウン商品ではありますがシンプルで使いやすく、グレーのパーカーと相性の良い黒色のサンダーは個人的に大変重宝しています。ループウィラーのパーカーの上にサンダーは僕の秋冬の制服なので笑。

 

そしてノースと言えば、フリースであるデナリジャケットも有名です。フリースに関してはパタゴニアのレトロXも知られていますが正直防風フリースはユニクロで十分だと思います。細かい事言い出せばキリないですが、レトロXでなくとも安価で、このクオリティならユニクロで十分だなと思います。ユニクロのチェスターコートもカシミア混なのに2万円を切っていたり最近のユニクロはかなり良いと感じます。

 

 

●お買い得品

 

ここまで紹介してきた商品は、どれも数万円するものばかりで、そんなの買えないよーという人も少なくないはずです。また今シーズンは物価高騰の影響で昨季の定価よりも数千円上がっているのも痛く、この冬は安く済ませたい人もいるでしょう。

 

そんな苦しむ庶民の味方がモンベルとワークマンです。

 

モンベルのスペリオダウンラウンドネックは800FPの高級ダウンが使われていて1万ちょいで購入出来てミッドレイヤーとしてめちゃくちゃ重宝します。他のブランドなら数万円とるクラスの商品なのでコスパ高いです。

 

そしてワークマンですが、マウンテンダウンジャケットそっくりのイージスダウンは本当にコスパ良いです。加工なので防水とは言い切れませんがノースのマーク除いただけやろコレという出来です。

 

ヌプシブーティそっくりのケベックや、ユーロアルティメットデュアルフーディは白黒のデザインのものは特にカッコよく防寒着としても優れていますし超オススメ。

 

ワークマンはめちゃくちゃコスパの良い防寒着があるので、一度覗いてみてください。高級アウトドアブランドとは異なった高スペックハイコスパ商品に出会えると思います。

 

 

 

1-4 購入方法と注意点

 

まず、インサレーション系についてですが、中綿は勝手に温かくはなりません。地肌からの放熱を逃さない事によって保温することで温かくなります。ですので、いかに地肌に密着させて温度を”かき集め”いかに外へ逃さないか、が保温を考えると重要になります。

 

ですので、コールドスポット、つまりは隙間を減らしタイトに体表に近づける事が重要になるわけで昨今のオーバーサイズでダウンジャケットを着るのは保温性を考えると適切だとは思わないのが本音です。

 

ですのでサイズ感は本当に重要になります。

 

なるべく店頭などで現物を試着することを強く、強く、強ーーーく勧めます。

 

ですので実際に着てサイズ確認をしましょう。アウトドア系であればドローコードで隙間を消すことも出来ますが、防寒着として選ぶなら出来るだけジャスト目、目安としてはロンT一枚を着た際に上から着てちょうどくらい。もちろん動きづらいならやめるべきですが。

 

購入場所はどこでも構いません。ただし試着せずに購入するのはサイズ感という保温性能にとって一番大切なので、お気をつけてください。

怪物の肖像(『ダーマー』評論)

1991年7月11日、深夜、巡回中のパトロール中の警官の前に手錠を片手にかけ血相を変え『白人男性に殺されかけた』と黒人男性が助けを求めた。

 

そして、警官は男を連れ、その白人男性の住むオックスフォードアパート213号室へ向かう。部屋からは鼻を刺す異臭が漂い、白人男性は気さくに『冷蔵庫が故障して肉が腐ってしまったんだ』と説明する。しかし、手錠の鍵が入っている机の引き出しからは、人間の胴体が切断された写真が見つかり、緊急逮捕

 

その部屋の中から見つかったのは写真だけではなかった。

 

窓の下の青いポリ容器には人間の胴体が3つ、冷蔵庫からは内臓や骨、部屋のあちらこちらから人体の破片や頭蓋骨があり、部屋の中には11人分の人体があった。

 

白人男性の名前はジェフリー・ダーマー。ミルウォーキーの食人鬼の異名で知られ、14年間で17人の青少年を殺害した殺人者

 

 

 

①親の不在

 

1960年5月にミルウォーキーに生まれたジェフリー、通称ジェフ。幼い頃から父ライオネルは大学に通う学生で化学者となってからも研究に夢中で家庭を顧みることはほとんどなく、ライオネルの都合で引っ越しの耐えない環境だった。母親は精神的にかなり不安定な性格をしており、夫婦喧嘩はひっきりなしに起こっていた。

 

家庭に何の貢献もしないライオネルがジェフに与えたものは、昆虫採集のための化学薬品キット。この唯一の貢献が後の怪物のルーティンの原体験を産む。ジェフは昆虫を採集せずに、小動物の死骸を拾っては酸で溶かし骨を採集したり動物の死骸で遊んだりしていたそうだ。

 

死体に対して性的な興奮を感じるネクロフィリアに目覚め始めたジェフは内気でありながら、講義中に突然知的障害者のモノマネをして遊んだり、知能は高いと言われていたが、勤勉さに欠け、将来が危ぶまれていた。遂に両親は離婚。ジェフはどちらに引き取られるのか。

 

答えは、どちらもNOだった。

 

母親はジェフの弟を引き連れ家を出て、父親もどこかへ出て行った。裁判所も両親も、考えは同様だった。

 

ジェフはもう大人だ。

 

両親に捨てられ、自身を同性愛者だと自覚していたジェフは悲しみをぶつける先もなく、酒に溺れていった。このアルコール依存は社会からの隔絶を生む。

 

拒絶される愛情、マイノリティの苦しみ、貧困

 

彼が愛せたのは自身の愛情を拒絶しないものたちだった。マネキンを持ち帰り家で楽しんだり、虫や小動物を”壊したり”、死体に思いを馳せたり。。

 

こうして暗澹たる高校生活は終わりを迎え、17人を殺害する怪物が生まれようとしていた。

 

②17人の被害者

 

1人目 スティーブン・ヒックス(18)

 

1978年6月、高校を卒業したジェフはヒッチハイカー中の白人男性ヒックスを拾い、酒とマリファナで一緒に楽しまないか?と誘い自宅に招く。ひとしきりトークで盛り上がった後に、ヒックスが帰ろうとする。

 

帰って欲しくないジェフはダンベルでヒックスの頭部を殴打し気絶させる。そして首を強く締め、遂に絶命させる。その後に死姦し、腹を切り裂き飛び散った内臓を見てジェフは性的に興奮したそうだ。しばらく死体を放置しておくと腐敗が進むため、頭部以外を切断し肉片は全て森に埋めた。

 

決して計画性はなく、帰ろうとしたことに痛烈な寂しさを感じ突発的に殺害に及んだ。この後の殺人の手法は、この時点で形成されていたと言える。

 

2人目 スティーブン・ツオミ(24)

 

最初の殺人の後、オハイオ州立大学へ入学するもアルコール中毒で学習は困難で中退。その後に衛生兵として入隊する、しかしアルコールに再び依存し名誉除隊する。ジェフの将来を考えての名誉除隊であったが、皮肉にも、軍で学んだ化学の知識と一部軍人への投与も含めた実験によって殺人鬼の”ルーティン”は完成する。そして祖母の家に身を寄せチョコレート工場で働き始める。

 

1987年11月、ゲイバーの白人男性スティーブンと懇意になりホテルで性的関係を結ぶ。そしてジェフが目を覚ますと、一夜限りの恋人は血を流して死んでいた。ジェフは絞殺した記憶さえ失っていた。死体隠蔽のためトランクにスティーブンを詰め込み祖母の家へ持ち帰る。

 

そして地下室で死体を解体。複数のゴミ袋に分けてゴミの日に出した。

 

3人目 ジェームズ・オックスタトール(14)

 

1988年1月、お金を払うからモデルになってくれないか?とインディアン系の少年を誘い、祖母の家に招き睡眠薬を盛り昏睡させ絞殺、死体は地下室で解体し骨は細かく砕き周辺に捨て去ったそうだ。

 

ここでジェフの殺人ルーティンは具現化した。思い通りにならない人生への絶望から相手を殺してから性行為に及ぶことで快楽を感じていたジェフは、軍で学んだ化学の知識を用いて薬を盛り、少年時代の化学薬品セットによる研究で学んだ技術で死体や内臓を処理、そして、このルーティンをブラッシュアップし続ける。

 

4人目 リカルド・ゲレーロ(22)

 

1988年3月、ゲイバーで出会ったヒスパニック系の青年リカルドを誘い、モデルにならないかという決まり文句で祖母の家に連れていき、薬を盛り絞殺、死体を地下室で解体、ゴミ捨て場に捨てる。3人目で確立したルーティンの実践だった。

 

祖母は地下室の異臭に気づき、ジェフの父親であるライオネルを呼ぶ。地下室の異臭の正体を問われたジェフは剥製作りだと言い訳するも父親から祖母の家を出て自立することを促されることになる。

 

4人の殺害を果たしたジェフ、5人目を狙ったところでミスを犯す。ラオス系少年をルーティンに乗せようとするも途中で失敗。薬を盛ってフラフラの状態で少年は逃げ出し警察に。そしてジェフは未成年への第2級性的暴行容疑で1年間の強制施設行きを命じられるも、労働や自由時間も一定数許可される寛大な処分に終わる。

 

この少年トムサックの弟こそが13人目の死者であることは、この時誰も知らない。

 

5人目 アントニーシアーズ(24)

 

5月に判決公判を待つ身でありながら1989年3月にジェフはゲイバーに出入りしていた。そして5月に判決公判を待つ身でありながら例のごとく、黒人男性アントニーを祖母の家に誘い込み、薬を盛り、絞殺し、死体を解体し、ゴミの日に出した。

 

1990年3月に仮釈放となったジェフは新居を探す。金銭的に余裕のない彼にとって家賃が少ないミルウォーキー屈指のスラム街のオックスフォードアパートに居を構えるのは必然だった。213号室、ここでジェフは次々と殺人を行っていく。

 

 

6人目 レイモンド・スミス(32)

 

1990年5月、イリノイ州の刑務所を出所した青年レイモンドをルーティン通りに処理。”神殿”と呼ばれた213号室での最初の犠牲者となった。邪魔をする祖母はいない、スラム街なので警察の目も行き届かずジェフの殺人は加速してく。

 

 

7人目 エドワード・スミス(27)

 

1990年6月、ターバンを巻いたゲイの青年エドワードをルーティン通りに処理。この調子で8人目に手をかけようとヒスパニック系の青年を誘うも失敗。しかし殺人の快楽に取り憑かれたジェフの忍耐は数ヶ月しかもたなかった。

 

 

8人目 アーネスト・ミラー(23)

 

1990年9月、黒人男性ダンサーのアーネストを誘い込みルーティン通りに処理しようとするも、服毒し昏睡させてから喉を掻っ切り死体を処理した後に、食人に至った。

 

 

9人目 デイビッド・トーマス(22)

 

1990年9月、ひと月に2人というハイペースで、またも黒人ダンサーであるデイビッドを手にかけた。

 

 

10人目 カーティス・ストローター(17)

 

1991年2月、ルーティン通りに処理され遂に殺害人数は10人に至った。ただ、この殺害人数は認定されているぶんだけで軍人時代には周辺地域で死亡事件が発生しており、これをジェフの犯行とする説もある。

 

 

11人目 エロール・リンゼイ(19)

 

1991年4月、ジェフは、ここで新たな実験を開始する。ルーティンのアップデートに成功し、食人も達成した彼の次の目的は”完全なる飼育”だった。ジェフの犯行の中心にあるのは、相手を思い通りにしたいという欲求だ。

 

拒否されることへの異常なまでの恐怖心から相手を昏睡させてから行為に及んでいた。しかし死体相手では満足感が得られなかったのだろう。生きたままで服従させられないか考えたジェフはロボトミー実験を開始する。

 

早い話が前頭葉を除去し服従人間を作ることにあった。エロールを誘い込み薬を盛り、そして頭蓋骨に穴をあけて塩酸を流し入れた。しかし、そんなことなど上手くいくはずもなく失敗。ルーティン通り処理をした。

 

 

12人目 トニー・ヒューズ(31)

 

1991年5月、生まれつき耳が聞こえない黒人男性トニーをルーティン通りに処理する。

 

 

13人目 コネラック・シンタスモホイ(14)

 

1991年5月、モデルにならないか、ラオス人少年コネラックを誘いルーティン通りに処理しようとする。コネラックの兄はジェフのかつて性的暴行容疑における被害者だった。その事をコネラックは知っていたはずなので、よほどジェフの誘いが魅力的だったのかもしれない。

 

ジェフはルーティン通り薬を盛り昏睡させ性的暴行を加えた。ルーティン通りの絞殺へ向かう前にロボトミー実験第2弾を実施するも、買い物へジェフが出かけた隙をついてコネラックは外へ飛び出すもアパート外で倒れてしまい、心配した住人によって警察がやってくる。

 

警察に対してジェフは慌てず落ち着いて対応し、迷惑をかけてすまないこと、ラオス人少年は恋人で同居している。写真もあるので部屋に来てくれ。警官は、その穏やかな対応を見てジェフの言い分を信じてしまった。そしてジェフはいつものルーティンで処理する。

 

14人目 マット・ターナー(20)

 

1991年6月、シカゴで黒人男性を誘い、いつものルーティンで処理。しかし、ジェフが神殿で殺した数も9人になると、いくら解体しているとは言っても限界はある。さらにジェフは殺害が目的ではなく、無抵抗の状態の生命体の破片が好きなだけで、皮膚や臓器、頭蓋骨は保存してあるので異臭はとんでもないレベルだった。

 

異臭の苦情に耐えかねた管理人はジェフに退去勧告を送り、また職場でも欠勤が相次ぎチョコレート工場をクビにされた。それでもジェフはルーティンを止めなかった。

 

15人目 ジェレミー・ワインバーガー(23)

 

1991年7月、同様にシカゴの黒人男性を誘いルーティンで処理。

 

16人目 オリバー・レイシー(24)

 

1991年7月、トラック運転手を誘い、ルーティンで処理。

 

 

17人目 ジョセフ・ブレードホフト(25)

 

1991年7月、白人男性を誘い、ルーティンで処理。

 

そして月に4度目のターゲットとなった黒人男性が逃げ出し、ジェフの殺人は17人で止まり厳罰に処され936年の禁固刑の判決を受けたジェフは犯行を認め死刑を望んでいたそうだ。彼の願いは叶わなかったが、逮捕されてから3年後、塀の中で黒人の囚人によって撲殺され34年の生涯の幕を閉じた

 

③背景と分析

 

3-1 なぜ続いたのか?

 

これは持論ではあるが、頭の良い人間は殺人を犯さない。というのは大抵のコミュニティにおいて殺人は法で禁じられ、発覚すると厳罰に処されてしまう。完全犯罪を成し遂げるために労力を割くよりも、犯罪にならないレベルで対象者を苦しめる方法を考える方が生産的だと考えると自分は思う。罰せられるのは罪人であって悪人ではないので。

 

そして社会からの距離である。一定の食い扶持や集金装置を有し、家族や友人に囲まれているならば犯罪を犯すリスクは快楽よりも上回るはずだ。

 

こう考えると殺人、それも大量殺人が発生するのは相当に異常な精神を持っているか、それか調査側、警察側のシステムに何かしらの問題がある場合だ。本件はそれに該当する。

 

ジェフの一連の殺人が成功したのは、警察や司法の人種差別的方向性があったとの指摘がなされている。13人目のラオス人少年は警察に見つけてもらえたのに白人男性であったジェフの言い分を信用しIDもチェックせずに病院へ送る事もなくその場から離れてしまい、結果ジェフの餌食にあってしまい、当該警察官は辞職している。

 

ジェフは黒人の多い貧民街で治安当局のレベルの低い地域で黒人、それも同性愛者を狙い次々と殺していった。捜査は進まずダーマーの神殿が見つかるまで連続失踪事件として扱われることさえなかった。アパートの隣人からの再三にわたる通報も、”黒人街のいつものこと”と扱われ、まじめに向き合うことさえしなかった。

 

ダーマーは知能は高いらしいが、利口とは言えない。彼が優秀だったというより、あまりにも警察がザルだったと言わざるを得ない。突発的な殺人が従軍時代の薬学の知識と幼少期の解剖の知識によって体系化し、警察に対しての落ち着いた対応も起訴されたりした経験が慣れを与えていただけだ。

 

黒人の多い貧民街に住んだのも単純に家賃が少なかっただけで警察への警戒はなかった。捕まるのは嫌だが、捕まらないように必死に考えるほどの努力はしていなかった。服毒してから数回逃げ出されていることも、服毒してから拘束しておかないミスがあり、異臭が出れば通報は相次ぐはずなので対処すべきだった。

 

ロボトミー手術も、薬学や解剖学の知識を用いたルーティンに突然入れるには理論的に厳しいだろうし、まともな学習なしに頭蓋骨に穴をあけて塩酸を流し込むなど意味不明である。

 

怪物ダーマーは決して優秀な犯罪者ではなかった。むしろ彼は逃げている気さえなかったのかもしれない。自身の感情の赴くままに最低限の隠蔽のみをして淡々と獲物を狙い続けていて、それがたまたま捜査機関の不備で17人殺すまで捕まらなかっただけなのである。

 

3-2 怪物の正体

 

ミルウォーキーの怪物は前項でも述べたように警察から捕まらないサスティナブルに殺人を遂行し続ける方法を考案したわけではない。人種差別や同性愛嫌悪を背景として捜査機関が機能していなかっただけだ。

 

それは彼が殺人を目的にしていたわけではないからだ。彼が望んでいたのはNOと言わない自分を愛してくれる人物だった。昏睡、死亡と相手が意思表示できない状況にしてからでないと自分を拒絶されるのではないかとの思いからコミュニケーションが取れなかった

 

彼の境遇はシリアルキラーや大量殺人者によく見られるものだ。

 

父親の不在、愛の欠落、社会からの断絶。

 

彼は神格化されるほどの犯罪者ではない。場当たり的に自らの快楽に従って行動し続けた人間を環境的要因と時代が、殺人を見逃す結果となり怪物レベルの殺人数を許してしまった。本作では、そのことが強調されており本質的な批判であると感じる。

 

1980年代初頭にジョージア州アトランタでは黒人少年の連続誘拐事件が起きた。ウェインウィリアムズ逮捕によって終結した事件では、26人の黒人少年の死亡事件ということもあって被害者家族を中心に白人至上主義団体による犯罪なのでは?と言われ、犠牲者が黒人だから怠慢な捜査姿勢なのだと批判され、連邦助成金によって大規模捜査の末にウェインを逮捕した。

 

米国の警察、特に貧困層の多い地域における治安の不安定さは勿論だが警察力がそもそも劣っている。予算も十分ではなく人的資本も厳しい限りだ。

 

ただ大切なのはジェフは差別主義者ではなかったということだ。彼は全く人種で人を判断していなかった。そもそも金銭的余裕のない中で黒人街の安アパートに住むことになり、その周辺で適当なターゲットを拾っていったに過ぎないのだ。

 

愛を受けずに育った子供は、拒否されることへの恐怖を抱えながら愛されたかった。

 

殺人鬼を生んだのは”環境”だったのかもしれない。

 

 

終わりに

 

僕には昔から理解し得ない人々がいた。

 

性交渉を望み童貞であることを引け目に感じる人々である。

 

そんなに性交渉したいなら性風俗店に行けばいいのに、なぜなのか?と

 

しかし、彼らの思考が分かってきた。彼らが望んでいるのは性交渉ではなく、性交渉を許してくれた、という承認なのではないだろうか。金銭によってでなく、自分本来の魅了によって性交渉を許してくれる、そんな展開を欲しているのではないか。

 

この思考はジェフと、よく似ている。

 

自分を愛して欲しい、承認して欲しい、受け入れて欲しい、でも自分にそんなことを許してもらえる中身があると思えない、自信がない。だからこそ劇薬で昏睡状態にしないと気持ちを伝えられない。殺してからでないと愛せない。でも、本当は生きた状態で自分そのものを愛して欲しい、だから物言わぬ生きたゾンビになって欲しい一心で予備知識もないままにロボトミー手術を敢行する。

 

こじらせた童貞がジェフになるとは言わないが、”怪物”の思考は特別なものではなく、そこかしこに予備軍を抱えているように感じてならない。

 

ジェフは怪物ではない。両親のどちらかが側にいて熱心に彼の発言や言動に耳を傾けていたら、警察が黒人のいざこざと無視せずに近隣住人の意見に耳を傾けていたら、17人もの犠牲者は出なかったのではないだろうか?

 

もし怪物がいるとすれば、それは己のことしか考えず他人の意見や叫びや苦しみに耳を傾けなくなった社会そのものこそ真の怪物なのだ。我々が、この一件から学べるのは、弱者の意見に耳を傾け、相互の繋がりを大切にすることではないだろうか。ジェフはこう言っている。

 

『相手と深く関わることを意図的に避けていた。そうすれば相手を生き物と思わずに済むから。罪悪感がなかったことはないし、殺して良いとなんて思わなかった』

 

社会やコミュニティから隔絶され、愛を求め、相手の自由を奪うことでしか、心を開け無くなった悲しきモンスターの言葉だ。

 

これは遠いアメリカの昔の話ではない。今もどこかに”ダーマー”はいる。

 

弱者の声に耳を傾ける事、相互に連帯し、繋がりを持ち続ける事。今の社会には、こういったことが求められているのかもしれない

 

現在、ダーマーの神殿と呼ばれた、オックスフォードアパートは取り壊され更地にされているそうだ。遺族の一部から犠牲者を悼む慰霊公園にして欲しいとの願いがあったそうだが、それは未だに実現されていない。

 

ミルウォーキー警察の失態や行政の恥部を忘れて欲しいという思いがあるのかもしれない。しかし、この事件において重要なのは、目を背け耳を傾けなかったことにあるはずだ。

 

忘れてはならない。この悲劇を繰り返さないために、17人の死者とダーマーを。このブログ記事を書こうと考えたのは、慰霊碑の不在を受けて、一人でも多くに人に知ってもらうためだ。

 

慰霊碑にはほど遠く、このブログの読者数は知れているだろうが笑、このブログ記事を読まれた方が、ダーマーの事件を知り、第2のダーマーの出現の阻止について考えてくれたら至上の喜びである。

 

17人の犠牲者の方々に深い哀悼の意を表しますとともに、ご遺族の方々、被害者の方々に心より、お見舞い申し上げます。

 

この悲劇を忘れず、第2のダーマーを生まない社会を構成する一員として、自分に出来る事を考え行動して参ります。

 

ご一読賜った読者の方々にも、感謝申し上げるとともに、記事を結ぶこととします。

クロップとペップのポストペップバルサ10年戦争

 

 

第1章 英国上陸前

 

1-1 バルサを追いかけて

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ジョゼップ・グアルディオラユルゲン・クロッププレミアリーグでしのぎを削り時流に乗り遅れつつあったプレミアリーグを欧州列強戦線に引き戻した2人の指揮官は、対比関係によって取り上げられる。

 

ポジショニングのペップ、ストーミングのクロップ

静的クラシックのペップ、動的ロックのクロップ

バルサの名選手のペップ、叩き上げのクロップ

 

しかし、この二人は同種の仕事に取り組んできたと言える。

 

それは”ペップバルサの再現”である。

 

ゼロ年代最後の覇権集団にして近代最高峰の到達点ペップバルサ。世界のサッカー界の主人公であり主語であり続けたチームは全世界の定点観測対象と化し、10年代におけるサッカー界の最大のイシューはペップバルサの支配力を再現するためには、どうすれば良いのか、であり多くのチームがペップバルサを追いかけ続けた。

 

それはクロップも例外ではなく、ペップも同様だった。

 

一世を風靡した集団の本質それは

 

①可変5トップの形成

②即時奪還模型

③絶対的最終生産過程の構築

 

この3つに分解出来る。

 

可変5トップに関しては5レーン理論と呼ばれ、即時奪還構造はゲーゲンプレスと名付けられ、最終生産過程においてはMSNやBBCがその後の覇権を掌握した。

 

このどれかが欠ければ”バルサ”にはならない。保持は本質ではない。それは手段でしかなくパスサッカーというバルサの形容は間違いであり、ペップがティキタカをバルサはやっていたわけではないと言っていたのは、こういうことだろう。

 

 

1-2 五人囃子

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まず5トップ形成に関しては、今や当たり前のように多くのチームが最前列横幅に5枚を並べることを基準として取り組んでいる。初期フォーメーションがどうであれ、攻撃時には相手陣地に5枚を並べることを理想としている。

 

ペップバルサにおいては433から始まり、攻撃時には両翼は中央に絞り、大外はSBが取る

 

LSB+LWG+CF+RWG+RSBで5レーンを取っていた

 

このモデルを忠実に再現したのがクロップだった。クロップの率いるドルトムントでは攻撃時に両SBが大外を走り両WGは絞り5トップを形成していた。バイタルを蹂躙するために5レーンを埋める、というバルサ再現に挑んでいた唯一のチームだった。

 

ドルトムントではこの5トップの後ろからトップ下にいる香川、レバ(バリオスがCF時)が飛び出すシャドーストライカーとして暴れ回る。これはペップバルサ4年目におけるセスクに託したロールであり、クロップはバルサの先を見ていたかの如く見える。

 

リバプールの監督になってからもこの5レーン攻撃は継続しており、中に絞る得点力の高いRWGサラーと右前方をカバーし攻撃的貢献の高いSBのTAAの組み合わせは前期ペップバルサにおけるメッシとアウベスを彷彿とさせ、偽9番フィルミーノの組み込みも偽9番メッシのインポートに見える。

 

このようにクロップはペップバルサの再現を忠実気味に挑むのと対照的にペップはペップバルサから離れた形で再現に挑む

 

バイエルン時代、シティ時代両方ともに強烈なサイドアタッカーを用いて両翼はWGに取らせてハーフスペースにはバイエルンではSTミュラーとIHビダル、シティではIH2人を組み入れたバルサとは異なる設計を持ち込んだ。

 

この両名の選択が特異性を呼び起こす。バルサの構造的に近似性が強いクロップはバルサとは対極にあるように扱われ、バルサの構造から離れようとするペップのサッカーこそがペップバルサの正当後継として見られるという歪みである。

 

 

1-3 嵐を呼ぶ男

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クロップはバルサの本質的な部分に似せた立ち位置をとりながらドルトムントのサッカーとペップバルサのそれは様相を異にしていた。それこそがクロップがコピー出来なかった部分であり、それは経済力に起因する技術力の限界である。

 

技巧を持たないペップバルサ、乱暴な言い方をするとクロップのドルトムントはこう形容出来る。数年前まで破産の危機にあったクラブがバルサの選手のような人的資本は確保出来ない。だからこそクロップはスケールチェンジを図る。

 

19世紀、物理学は完成したと言われた。ニュートンとマクスウェルが作り出した古典力学と古典電磁気学で物理現象は説明出来るはずだった。しかし、これはパラメータのスケールが変わると簡単に崩壊した。光のスケールで運動する質点は相対論補正を要し、質点の大きさがミクロスケールになると量子力学の設計を要求した。

 

クロップが考えたのはプレースピードの高速化によるスケールチェンジである。高速化した無秩序状態にすればどんなチームでもミスは乱発する、そして当時のラインディフェンスを埋めるフィジカルの人の壁の隙間を掻い潜るアジリティを武器にする選手を用いてボールを回せばどんな相手でも対等に戦えると。

 

こうして秩序立った静的配置からメッシにボールが入ってから高速化するペップバルサ脱構築集団は、常にメッシのボールが入った状態のように狂ったようにプレースピードを上げ続けた、より速くより細かく、この無秩序な嵐の形成=ストーミングがドルトムントだった。

 

ビルドアップでは中盤を省略し前線に投げ打ちボールを収められる選手を9番起用してボールを運搬し、上手くいかなくても、ボール周辺に人の群れで襲いかかりショートカウンターを炸裂させ、ボールが前線に届けば可変5トップでバイタルを攻め落とす。皮肉にもバルサブームでバルサの表層的な部分をコピーしただけのペップバルサ劣化コピーチームは正当コピーであるクロップのドルトムントの格好の餌食だった

 

1-4 最終生産過程の建築者

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クロップが嵐を巻き起こしているドイツに上陸したペップ。選んだチームはバルサとは違い強烈なサイドアタッカーのいるバイエルンを選んだ。ペップバルサの生みの親はポゼッション原理主義者のように語られることもあるが、それは本質的ではない。

 

小生はこのブログで何度も主張しているようにペップとは最終生産過程の建築、そしてそこから逆算される支配構造の設置の両立が得意な指揮官である。そして歴史的選手メッシを得たことでペップバルサは圧倒的な戦績で伝説となった。

 

ポジショナルプレー、つまり質的優位、配置的優位、数的優位の3優位を複合的に捉えて具現化する能力に優れ、そのために圧倒的な財力が要求され、それを叶えられるチームとしてバルサの次にバイエルンを選んだ。

 

そこでペップは5レーンの形成においてバルサ時代とは異なり両翼はSBではなくWGに任せて中央にはマンジュキッチ、両側のハーフスペースにはミュラーボランチによって埋めてバルサ時代とは異なるクロス爆撃のチームへとデザインされた。

 

5レーンと即時奪還は可能だったが欠けていたものがある。生産者だ。そして引き抜かれたのはドルトムントで絶対的な軸だったレバンドフスキだった。ペップバルサの再現を目指した二人の率いたチームの栄光をもたらしたのはどちらもレバンドフスキだった。そして最終生産者を失ったドルトムントはレバ退団一年でクロップのドルトムントでの冒険は7年間でピリオドを打つことになった。

 

2人のポストペップバルサチームでエースとなった男はメッシ退団後のバルサでもエースとして獲得されており、支配チームにおける”メッシ”という要素に最も近しい代替パーツはレバンドフスキなのかもしれない

 

レバの引き抜きでクロップはドルトムントを去りリバプールへ向かう。ペップもまたバイエルンでレバの最大値を引き出すハイクロス爆撃集団を作り3年を過ごしシティへ舞い降りた。

 

第2章 交わる赤と青

 

2-1 逆襲の赤

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リバプールアメリカ資本、MLBマネーボールで世界を制したBOSでの成功をもつFSGが買収を果たした。彼らは野球的なものの見方が強く、クロスが上手いアダムとヘッドが得意なキャロルを獲得すれば得点を量産できるだろうという離散的な物の見方をしていた。そして、そんな彼らがLIVを強化するために考えたのは、一番強いチームだったバルセロナのようなチームを目指すことだった。

 

バルサの始祖であるクライフやLVGをダイレクターとして招聘しようとしており失敗に終わるも、彼らのバルサコピーの野心は消えなかった。当時プレミアで一番バルサっぽいチームだったスウォンジーの監督ロジャースを引き抜く、しかしポジショナルプレー導入は難航し、スアレススターリッジのカウンタースタイルはリーグを席巻するも、シティにリーグは取られ、そして途中解任されたロジャースの後任こそクロップだった。

 

ドルトムントで低予算で結果を出す姿にMLBのヘッドコーチみを感じたのだろうが、この選択はバルサコピー路線を無視したものだったにも関わらず結果的にバルサの再現という宿願を果たすことになる。それはポジショナルプレーに必要な財政的な支援がないため表層的にはバルサカウンターカルチャーと見られていながらも、実態として極めてバルサ的なチームを建築していたので、気づかれなかったのだろう。

 

MLBのようにGMスカッドを決め、監督は現場のいちコーチとして与えられた戦力の最大化を目指す、この極めてMLB的思想と低予算で勝った実績を持つクロップは相性が良かったのだろう。そしてクロップはサポーターに対して疑う人から信じる人になって欲しいと訴え、ヘビーメタルと自称するハードスタイルは労働者階級を中心とする熱心なサポーターのハートをガッチリ掴み、そのことが、このMLBスタイルが緩やかに現場の意見を最大限汲み取るというヘッドコーチを超えた待遇をクロップは掴み取るのである。

 

そしてLIVはクロップ成分が注入されていく。コスパ重視でクロップに合いそうな選手をピンポイントで獲得していく方針でゆっくりと確実に戦力が集まり出す。そしてサラー、アリソン、ファンダイクを手に入れ、チームは遂にクロップ就任4季目となる18/19シーズンにCL制覇の偉業を成し遂げ、翌季19/20にはリーグタイトルを獲得。クロップ政権は大成功を遂げた。

 

2-2 変異の発露

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クロップの5レーンはドルトムント時代から不変だ。しかし基本フォーメーションは4231から433に変貌した。前線はマネとサラーの両翼と偽9番フィルミーノのフロントスリーを基調にし大外はSBであるアーノルドとロバートソンがカバー。ドルトムント時代の6人目だった香川やゲッツェの役割は偽9番フィルミーノ、そしてSBであるアーノルドのサイドからのゲームメイクでカバーすることにした。

 

中を切って外へ誘導するプレスではなく、外を切って中へプレスで誘導し、そこで奪い去りカウンターをするなら外ではなくゴールに近い中の方が良いという発想で、よりクリティカルなカウンターを打つためのプレスが志向された。

 

ここで発生したのがIHのIH性の減退である。IHに求められるラストパスや攻撃的貢献より重要視されるのは前線の外切りプレスによって誘導された中央への侵入に対しボールを奪い、カウンターのために前線選手の体力温存のためサイドにボールが出されればIHが飛び出して潰すことが要求される。

 

LIVのIHに求められるのは一般的なIHよりむしろボランチである。拾い潰しカバーし時として前線に飛び出す。このボランチ的素養を有す存在としてチェンバレンヘンダーソン、ワイナルドゥムが登用されたのは納得できる。

 

そしてシティだ。5トップの組み方はLWG+IH+CF+IH+RWGである。クロップと違い参加しないSBは何をするのか、ペップはバルサ退団以降SBには純正の動きを望まなくなった。それは前線の五人囃子に参加させずに、後ろでゲームメイク、もしくはカウンター対策に防波堤になることを求めた。偽SBである。シティにおいてSBは右のウォーカーは3バックの右HVとしてプレーし、LBのデルフ、ジンチェンコはボランチ脇に入り2ボランチの一角としてプレーすることが求められた

 

そして生まれるのがSBのSB性の減退である。SBに向いてない選手ほどペップシティではSBとしてプレー出来る。そしてIHはゲームメイクよりもシャドーとしてクリティカルな最終生産過程への参加が求められた。ペップシティ1年目においてギュンを執拗に起用していたのもこうした得点を期待してのことなのだろう。

 

おそらくダビシルバはペップの求めたシャドーではない。しかし、要求を覆すほどの貢献を見せ、スターリングを左翼で輝かせたり圧倒的な貢献でペップに嬉しい妥協を与えた。支配力と柔軟なポジション変更によって国内を支配したペップシティ。LIVに手を焼きながらも国内においては圧倒的な戦績を誇った。

 

しかし欧州戦線においては苦しみ続けた。アグエロが耐久力に不安を抱え、アグエロ不在時の破壊力は厳しく、それはシャドーにシルバ、ベル、デブ神といった得点力だけ見れば厳しいメンツであることや、スターリングが絶対的な存在になれなかったこと、サラー抜きでバルサ相手に奇跡を起こせたチームとの違いは、この”妥協”にあったのかもしれない

 

このLIVにも見られる一部のポジションにおける典型挙動を離れたアノマリーは相手を出し抜くために作り上げる優位性の結果なのだろう。

 

2-3 正攻法という対策

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強いチームに蹂躙される光景を座して見ているほどプレミアは甘くない。ペップシティの弱点である偽LSBは狙われ、クロップリバプールの弱点であるドン引きを頻発され、対策の対策を提出することが両チームに求められた

 

クロップとペップの出した答えは、回答こそ違うものの本質的には同じだった。それは捨て去られた一般性を取り戻し、また特殊性も担保することである。

 

ペップMCIにおいてRBウォーカーは3バックのHVに加えて純正SBのように攻撃参加するための大外ランニングが求められ、LBジンチェンコにはボランチ脇への移動に加えて純正SBのように攻撃参加することが求められた。右は何とか上手くいったが、問題は左だ。

 

そして伸び代となったのが適応に苦しんでいたメンディである。大外のアップダウンが出来、素材として素晴らしい伸び代を持つ男に純正+偽のSBロールを仕込もうとした。しかしこの男は社会復帰さえ危ぶまれる状況となり頓挫した。

 

クロップLIVにおいてIHに求めたのが純正IHの動きに加えてボランチロールもこなせる選手である。そしてメンディ同じく不良債権一歩手前だったナビケイタに期待していたのだろうが厳しく、クロップは思い切った賭けに出た。チアゴアルカンタラの獲得である。

 

こうしてSBに”SB”させるMCIとIHに”IH”させるLIVという構図が出来た。SBが大外を走りゲームメイクまでするLIVのようなMCIとIHからキラーパスを通しそれに3トップが反応し走り刺すというMCIのようなLIVという同質化が発生した。

 

こうしてLIVは内容も様相も完全なるバルサコピーを成し遂げた。技術を差し引いたバルサに技術を注入すれば、そりゃバルサになるわな、という必然の帰結である。

 

ペップシティも433ではなく442で構える事が増えてきた。LIVのダイクのような信頼できるCBであるルベンを手に入れたことで強度も増し、遅攻ではなく速攻で刺すカウンターが有用になり、ハーランドも加え、ますますカウンターは精度と殺傷力を増すはずで、どんどんLIVに似ていくことだろう。

 

2-4 赤と青の行方

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ストーミングのLIVとポジショナルのMCIは互いに影響を与えることで同質化へと至ったわけであるが、今後2チームはどうなっていくのだろうか。

 

LIVにおいては歪みが発生しつつある。対策の対策と本来の原点の共存の中でIHのポジショニングはぐちゃぐちゃになってしまっている。エリオットは外に流れ、ミルナーは前線に上がり引いた相手に対しロングを投げざるを得ず空洞化した中盤を経由しカウンターが打たれ続けている。サラーはなぜかRSBの位置からドリブルを始めている。

 

何がどうなっているのか分からないが、一度原点に戻る必要があるのかもしれない。ドルトムント時代とは異なる状況であり、ポジショニングさえ修正出来れば覇権クラブに戻るはずなので、修正に期待したい。

 

MCIにおいても難しい問題に行き着く可能性がある。今のシティの最適な運用はボールを放棄しデブ神とハーランドでカウンターをし続けることなのだ。442で撤退守備をして、相手を誘き出したところでボールを奪取しデブ神からの高速カウンターを差し続ける。これがベストという皮肉を見ている。

 

LIVとMCIが当たると、チアゴを中心にポゼろうとするLIVと引いてカウンターを狙うMCIという構図になるかもしれず、混沌が展開されるかもしれない。一体どのような帰着を今季のプレミアは見せるのか期待しよう。

 

LIVはIHのアノマリーを修正し正常挙動に戻し、MCIはSBのアノマリーと正常挙動の両立に挑んでいる。実はこの違いに自分は一番の面白さを感じている。というのもペップバルサも同様の問題に行き着いているからだ。

 

ペップバルサはメッシの最終生産効率の最大化を目指しデザインされた。だからこそいかにバイタルにボールを入れるかの一点に特化したため、WGは裏抜けの得意なストライカーが使われたことで、メッシを活かすための外攻めの駒の人的資本が枯渇した。そのことがペップバルサ終焉の直接の引き金だった。特異性をもったがために世界を支配し、特異性を持ち続けたためにバルサは時代を終えたのだ。

 

この失敗を知るからこそ、ペップはアノマリーの温存治療を選択し、クロップはアノマリーの除去手術を実施した。チアゴの獲得で純正IHとなると問題なのは非純正IHゆえに価値の高かったアーノルド起用のデメリットが顕在化する。守備能力にケチがつき始めたのもこのへんか。

 

このアノマリーの扱いはペップバルサの終焉に対する、2人の名将の意見の相違なのかもしれない。特異性を捨てるか、一般性を付加するか、この選択の違いが、今後どのような帰結を招くか非常に興味深く見ている。

 

アノマリーで勝ちすぎると、結局のところ、それを捨てるに値するほどの正攻法に対するハードルが上がり続ける。だからシティはLBとCFの補強に難航しているし、LIVにとってもガチムチIHを捨てるに値するほどの価値を見出せる選手はアルカンタラしかいなかったのか。

 

交わった赤と青は再び平行線を描こうとしている。果たして、どうなるか。ある意味でのペップバルサ5年目の最適解合戦を楽しげに見ていようと思う。サードインパクトの向こう側を描くのに庵野が時間をかけてたどり着いたように、ペップバルサ4年目の向こう側の景色をペップバルサ脱構築集団の2チームを率いる指揮官が見せてくれることに期待する。

 

 

 

終わりに

 

ペップバルサは11/12シーズンをもって終焉し、10シーズンの時を経た。いまだに覇権チームの輝きは健在で、多くのチームに影響を与えたクラシックとして語られる。ペップバルサのコピーに挑みながら積もっていった挑戦者の屍を前に、ペップバルサの要素から5レーンが提唱され多くのチームで装備され、即時奪還装置も流行し、絶対的最終生産過程建築は富裕層がMSNとBBCという形で具現化した。

 

この10年というポストペップバルサ時代において、最もペップバルサに近づいたのは、生みの親のペップのチームではなく、クロップのリバプールのように思えてならない。守備構造には興味を示しながらもペップバルサは好みでないと公言していた男が”本家”以上にバルサのコピーを成し遂げタイトルを獲得したのは意外な結末と言える。

 

各要素を見ると、ペップバルサそっくりで。ポゼッションチームに見えて実はショートカウンターが最大の武器だった当時を思い起こさせる。得点力のあるRWGと異常な攻撃力を持つSBのコンビ、中裏外を突く攻撃ユニットの形成、偽9番の利用。確かにセットプレーの強度やファンダイクのような絶対的CBはいなかったものの、ペップバルサの全試合を見て、心奪われた自分の目から見てもペップバルサの匂いを一番感じさせるチームだ。

 

アゴの到来でIHが純正化した今、名実ともにポジショナルプレーのチームになったクロップのチームはLIVのバルサを目指す目的を成就し、更にその先へ向かおうとしている。ペップにとっては過去の栄光という意味でのペップバルサとの戦いに加えて、現在進行形でも”ペップバルサ”と戦うという庵野エヴァから離れられないような呪いにかかっているようにも見え、この構図もまた脱構築に身を投じた男の人生として面白いものに見える。

 

さて、次の10年どうなるか。今からとても楽しみだ。

ゲートを巡る『抑圧』と『解放』の物語(ストレンジャーシングス評論)

 

第1章 筋

 

S1 Should I Stay or Should I Go

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1-1 ウィルの失踪

 

1983年インディアナ州ホーキンス(架空の町)、フクロウが老婦人の頭に巣だと勘違いして飛び込んだ事が最大の事件という平和な町に住む中学生マイクはダンジョンズアンドドラゴンズに熱中するヲタク少年。

 

ある日、同級生のウィル、ルーカス、ダスティンと夜遅くまでゲームをして遊んでいた。会はお開きで帰路に着く友人達、その帰り道ウィルは何者かに襲われ失踪する。

 

我が子の失踪に動転するウィルの母親ジョイスと兄ジョナサンに対して真剣に取り合わない保安官ホッパー。友の捜索を開始するマイク一行が雨の森の中で見つけたのはウィルではなく、ホーキンス研究所から逃亡を図った少女だった。

 

その少女の腕に011というタトゥーを見つけイレブン(エル)と呼称し、ろくに口も聞けない少女を訝しげに見ながらもマイクは自分の家で匿うことにする。ルーカスはエルを受け入れず匿うことに強硬に反対。その中でエルの念動力の存在が明らかになる。

 

ウィル失踪の深刻さから大々的な捜索隊による公開捜査を始めるホッパーは同時に発生した飲食店店主の自殺事件も捜査し始めた。マイクの姉ナンシーは恋人であるスティーブとのお泊まり会に出かけるため、勉強会と両親を偽る目的でバーバラと共にスティーブの元へ行く。

 

ウィルの捜索活動中に偶然ナンシー一同を発見するジョナサン、手持ちのカメラでおもむろに手持ちのカメラで撮影しているとバーバラが顔のない怪物に引き込まれ消失する。エルはウィルの居場所を知っているそぶりをし、マイク一行は希望を抱く。

 

1-2 希望と絶望

 

ナンシーとスティーブが一夜を共にし帰宅、ホッパーはホーキンス研究所に何かあると疑い捜査を加速させる。ジョイスは家で電球が不自然に点灯する様々な特異現象に遭遇する。バーバラは行方不明となり謎が増えていく中、森の中の川からウィルの遺体が発見される。

 

我が子の死を受け入れようとしないウィルの母ジョイス、希望を失いエルに辛く当たるマイクだったがウィル生存の可能性をエルが示し希望を抱く。バーバラの捜索参考人聴取でナンシーの嘘がバレてしまう、そしてウィルを送る会がホーキンス中学で実施され、悪態をつきウィルを愚弄したいじめっ子をウィルが押し倒し、エルの念動力で大衆の面前で失禁させる。

 

ダンジョンアンドドラゴンズの”影の谷”のような現実世界の鏡像世界にウィルは引きずり込まれたのではないか、と仮説を立て、ウィルは探索作戦を立案する。

 

ホーキンス研究所に乗り込み違法捜査ギリギリの潜入を開始見つかり気絶させられ気づくと自身の家に寝ていた。ジョイスは半狂乱気味にウィルの生存を主張し続ける。ナンシーはジョナサンと共にバーバラ捜索を開始、マイク一行は裏側の世界に取り残されたウィルを探す方法を模索する。

 

裏側の世界と通じるゲートの膨大なエネルギーに気づき、方位磁石を利用して磁場の乱れた部分を探し求める。ゲートの先の世界にいる怪物を知るエルは捜査を妨害、そのことに気づいた一行は仲間割れ、ルーカスは怒り仲間の元を去り、エルも消える。

 

1-3 裏側へ

 

エルは単独行動を開始、ホッパーとジョイスはホーキンス研究所の特殊実験の被験者に会いに行きそこで組織の不可解さに疑いを深め、ジョナサンとナンシーはバーバラを見つけるために裏側の世界の入口を見つける。そこは現実の鏡像のような世界で顔のない怪物を見つけ命からがら逃げのびるも、次の遭遇に備え武器を調達する。

 

ティーブはバーバラ事件を真剣に受け止めない間に自分から心が離れていく様を受けて、幼稚な落書きを書きナンシーは激怒、スティーブをジョナサンがタコ殴りにし警察に捕まる。そこで怪物退治のために購入した武器を警察が見つけ署に連行する。

 

一方マイクとダスティンは不良少年に仕返しを喰らいそうになるがエルが加勢し追い返す。そしてエルは裏側につながる世界とのゲートを開いたのは自分であり自分こそが怪物だと告げる。しかしマイクは友人であり恩人だと感謝を示す。しかしホーキンス研究所の追っ手はエルを取り返すために動き出していた。

 

エルの念動力で追っ手をまき、ルーカスはエルを認め疑念を反省し謝罪する。逮捕された息子ジョナサンと合流したジョイス、ホッパーとナンシーと4人で子供達を探し合流し、エルの探査力でバーバラの死、ウィルが裏側での生存を確認し、ジョイスとホッパーは研究所へ行く。

 

研究所の存在を隠蔽することを目的にホッパーとジョイスはゲートの向こう側へ。そして体育館で避難していたウィル一行に研究所の追っ手が迫るも、同時に裏側の怪物デモゴルゴンが襲撃する。襲撃はナンシーとジョナサンにも降りかかるも無事に切り抜ける。

 

心肺停止のウィルを見つけるも、自身のかつて幼くして死んだ娘をリフレインさせながら必死に救命するホッパー。そしてウィルは息を吹き返し帰還する。そしてウィル、ダスティン、ルーカスに襲い掛かるデモゴルゴンを力を振り絞り撃退するも裏側の世界に消えていくエル

 

ウィルが消えやってきたエル、エルが消え帰ってきたウィル。まるで上下反転した世界が到来しクリスマスを楽しむホーキンスでの物語は幕を閉じる

 

 

S2 Ghostbusters

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2-1 ホーキンスへようこそ

 

ウィル失踪事件から約1年。ハロウィンを間近に迎えたホーキンス。引っ越してきたマックスとビリー兄妹。マックスはマッドマックスの名前でゲームセンター荒らしと化し、ビリーはスティーブの校内イチの人気者の立場を揺るがし、ジョイスはボブと交際を始め、平和な日々が流れていた。ウィルの様子を除いては。

 

ウィルはPTSD以上の何かに苦しみ、バーバラ死亡を知るナンシーは自責の念に駆られ、マイクはエルを恋しがった。ナンシーはスティーブと距離を置きジョナサンに接近。ダスティンはゴミ箱の中から不思議な生物を見つける。そしてエルはホッパーに匿われ軟禁状態ではあることに不満を抱えていた。

 

ジョイスウィルの異変の正体を調べるために動き出し、ホッパーは研究所の周辺で起こる怪奇現象を調査していた。エルはホッパーの言いつけを無視し出歩きマイクらを遠くから見つめる。その過程で住人に目撃されホッパーは激怒し関係は険悪になる。

 

ウィルは突然失神したり体が冷え切っていたり明らかに様子がおかしい。ウィルの書いた絵を分析すると何かの模様のような様相を呈していた。マックスには情報を与えようとしないマイクの姿勢に反感をマックスが抱き亀裂が入る中、エルは自身の生みの親に会うために歩を進めていた。

 

2-2 それぞれの戦い

 

ナンシーとスティーブは研究所職員に捕まるも事情を説明される、バーバラを死へと追いやる原因となったゲートを開いた研究所の消滅と破壊のため陰謀論者のマレーに暴露を持ちかける。一方ダスティンが見つけた小動物はデモゴルゴンの幼生であり飼い犬を食い殺しているところを見つける。そしてホッパーは裏側の世界への入り口を探していた。

 

影の怪物との繋がりを持ってしまったウィル。ダスティンは自身の育てたダートことデモゴルゴンの処分を考え地下室に幽閉する。マイクとジョイスはウィルを救うべくウィルの残した暗号の回答をボブに持ちかけ、それはホーキンスの地図なのではと考えた。

 

マックスに1年前に起こった出来事をルーカスが打ち明け、その頃地図の示す方向へ向かうウィルとマイクとジョイスとボブ、その先でツルに巻き込まれて動けないホッパーを見つける。その時、研究所職員に保護され、ツルを火炎放射器で燃やすとウィルも焼け付くような痛みに悶え苦しみ出した。エルは自身の出生と母親の身に起きたことを知り、悲しみに暮れる。

 

ダスティンは一人では手に負えずスティーブの手を借りる。ルーカスは告白した昨年の出来事を信じないマックスに証拠を見せると言って、異常な過保護のマックスの兄ビリーの目を掻い潜って連れ出す。ウィルはウイルスによる神経障害を起こしていて怪物の一部が残ってしまっているのでは、と研究所職員が説明する。

 

デモゴルゴンを誘き出し殺す計画を立てるダスティン、スティーブ、マックス、ルーカスの4人にデモゴルゴンの群れが襲い来るも突然向きを変え移動していった。その頃ウィルの助言をもとに裏側の世界に研究所の職員が向かうも、それはウィルを通した影の怪物の罠だった。

 

2-3 迫り来る怪物

 

エルは自分と同じ境遇だった008カリの率いる強盗団に接触し、姉と慕い強盗団の一味として研究所において研究に関わり多くの人生を台無しにしたもの達への復讐のために活動することを決意する。しかし殺害までは出来ない自分自身の迷いも抱いていた。そして愛するマイクの窮地を遠隔透視で確認し、ホーキンスへの帰還を決意する。

 

研究所ではゲートをくぐり、次々とデモゴルゴンの群れが襲い来る、そしてボブが電子系統の修復のためデモゴルゴンで溢れた中を掻い潜る。マックスが外出から帰ってこない事を父親に咎められたビリーは恐怖に怯えながらも服従する。

 

マイクとウィルを追いかけてきたナンシーとジョナサン、デモゴルゴンが走っていった先を追いかけてきたスティーブ、ダスティン、マックス、ルーカスの両組が合流。しかし研究所ではボブが電気系統のリプログラミングに成功するもデモゴルゴンに襲われ命を落とす

 

研究所の職員が全員抹殺された中を命からがら逃げ延びた一同は、デモゴルゴンを破滅させるためには、脳となっているマインドフレイヤーを殺すことを考える。そのために繋がっているウィルの利用を思いつく。マインドフレイヤーにバレないようにモールス信号の利用によりメッセージを受け取るも、敵方に勘付かれる中で、一同の前にエルが帰ってくる。

 

エルとホッパーはゲートを閉じるために移動し、残された一同のもとにビリーが襲撃するも鎮静剤を刺し”もう2度と関わらない”とマックスと約束し横たわり、ジョイスとジョナサンとナンシーはウィルを高温条件下に置き取り憑いていた怪物の一部を除去することに成功する。そしてエルは死力を振り絞りゲートを閉じる

 

そしてクリスマスが再び訪れる。スノーボール(学祭パーティ)会場で平和に包まれた中、幸せを噛み締めながら物語は幕を閉じる。

 

 

S3 Neverending Story

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3-1 続かない平和

 

年が明けて夏、マイクとエル、マックスとルーカスは恋人となり幸せな日々を過ごしていた。一方スターコートモールではスティーブはロビンと共にアイスクリーム屋で働く毎日を過ごし、ジョナサンとナンシーは新聞社で働いていた。しかしその陰でソ連はゲートを開け、そのことによって静かにしかし確実に彼らの生活に惨劇が近づこうとしていた

 

ダスティンはモルモン教徒のスージーという彼女がいて、マイクにはエル、ルーカスにはマックスとそれぞれが大人に変わっていく中で、一人残された孤独を感じるウィル、仮想娘の将来を心配するホッパーは苦い顔を浮かべていた

 

ホッパーが脅しマイクとエルの関係にヒビが入り、プールの監視員のビリーは帰りに襲われてしまい怪物に寄生される。ダスティンはソ連の暗号を傍受し解読を試み、暗号はモールの中の場所までの行き方を示していた。そして寄生されたビリーはヘザーを襲い寄生する。寄生はナンシーとジョナサンの取材相手だったドリスコルさんにまで及んでいた。

 

ヘザーとビリーが危機に瀕していることを感じたエルとマックスはヘザーの家に行く。するとそこには元気なヘザーとビリーがいた。しかし、エルとマックスの帰宅後、何も知らないヘザーの両親はビリーによって寄生されてしまう。磁気異常を見つけたジョイスの助言を受けゲートの開放を疑いホッパーは捜査するも、その中で何者かに襲われてしまう。

 

3-2 宿主の暴走

 

危機が迫っている事を感づくマイクはダスティンを除く放送部メンバーを招集しビリーが宿主なのではないかと疑い確認するために高温条件下での挙動観察を提案する。ホッパーは市長に暴力を振るいゲート開放疑惑土地売買に関する情報を力づくで入手する。暗号解読班はルーカスの妹であるエリカを仲間に引き入れて狭いダクトの中を進み、解決を図ろうとする。

 

暗号解読班はエリカの助力を得るもエレベーター内に閉じ込められ何とか脱出するも巨大な迷路のようなロシア人基地を見つけ、ビリー捕縛班はビリーが宿主と断定しエルの力で撃退する。ジョイスとホッパーは当該土地へ向かいロシア人テロリストと対峙し、その過程でロシア人科学者アレクセイを捕まえる。

 

ジョイスとホッパーとアレクセイ班(チームA)

ダスティンとエリカとスティーブとロビン班(チームB)

放送部メンバーとジョナサンとナンシー班(チームC)

 

3チームはそれぞれの目的のために行動を開始する。

 

チームAは陰謀論者のロシア語話者マレーを引き入れ、チームBはロシア人基地を突き進み司令室に入るとゲートを見つける敵に発見され拘束される。スティーブとロビンはダスティンとエリカを逃す。チームCはヘザーの家に向かい只事ではない何かが起きていることを確信しドリスコルさんの病室へ向かうと宿主となったヘザーの父が襲いかかってくるも撃退する。

 

3-3 2度目の封鎖

 

チームAでは開いたゲートを閉じることを考え子供達の居場所を知るため祭りに沸くホーキンスを訪れることに。祭りを全力で楽しむアレクセイはロシア人兵士によって殺害される。ホッパーも襲われるが間一髪で逃げ延びる。

 

チームBでは拘束された年上組を救助するため年下組が奮闘し救助に成功その後年上組は吐き気を催しトイレへ駆け込み一通り吐き終わった後でロビンは自身が同性愛者であると告白

 

チームCではエルの透視でビリーの過去を知った刹那に触手が襲ってくるもエルの力で撃退し命からがら逃げ延びる。

 

チームBはロシア人兵士部隊に追い詰められるもチームCが合流しエルの力で部隊を壊滅させることに成功、しかし脚部に入り込んだ触手をエル自ら苦しみに喘ぎながら取り除くことに成功した刹那、チームAが合流する。

 

そしてチームAはゲート破壊に向かうため基地に変装して潜入ロシア人兵士をホッパーが撃退、チームBは電波塔へ向かいスージーに通信しコードキーであるプランク定数を聞き出し、チームCはモールで待機している中ビリーとマインドフレイヤーが襲い来るもエルは力を消失しており、花火を浴びせ続け反撃し正気を取り戻したビリーが身を挺して子供達を守る。

 

そしてゲートを閉じ、マインドフレイヤーは完全に沈黙、ホッパーは爆風に巻き込まれ姿を消し、ビリーはこの世を去る。騒動がひと段落したある日、バイヤーズ家とエルはホーキンスを引っ越す。そこでエルにホッパーからの手紙を見つける。

 

それは手紙ではなく、マイクとエルの親密さに戸惑いホッパーが話し合うために作っていた台本だった。遠く離れていくようなエルへの寂しさ、大人になっていくエルに変わってほしくないという思いが綴られていて、最後には扉を8cm開けておいて欲しいと書かれていた。

 

2年前、ずぶ濡れのエルはマイクに服を借りた時、不安がって扉を完全に閉めないでほしいと願い出ていた、そんな少女が扉を開ける事を嫌がるほどの大人の女性になった。しかし開いていたのはエルのいる部屋だけではなかった。

 

”ゲートも開いていた”のである。

 

 

S4 Running Up That Hill

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4-1 変わるもの

 

高校生となったホーキンス高校放送部。未だにリーダーである留年生エディ率いるボードゲーム同好会ヘルファイアクラブでヲタ活に勤しむマイクとダスティン、引っ越し先で高校生活を過ごす能力を失いカースト下位に沈むエルとウィル、ピザ屋のアルバイトであるアーガイルと友人関係になったジョナサン、馬鹿話に花を咲かせるスティーブとロビンは変わらぬ日々を送っていた。

 

しかし、ルーカスはダサいヲタクを辞めバスケット部で人生を変えようとし、恋人だったマックスはビリーの死のショックからPTSD気味、そしてジョイスの元にはマトリョーシカ人形が送られてくる、そこにはホッパーの生存を知らせるメッセージがあった。エリカを引き入れたヘルファイアクラブが盛り上がりを見せる中、バスケ部でヒーローとなったルーカスは一抹の寂しさを感じていた。

 

エディが麻薬を売ろうと思っていた売却相手クリシーは突然宙に浮き惨殺されエディは恐怖のあまり逃亡してしまう。エルとバイヤース家の疎開組と再開するマイク。スケートで楽しむがいじめっ子のアンジェラに腹を立てたエルはスケート靴で殴打する暴力事件を起こす。そして宙吊り殺人は新聞部のフレッドに至り、この一連の殺人に関係しているとして捜査対象だったエディをダスティンとマックス、スティーブとロビンは見つける。ロシアで強制労働施設に監禁されたホッパーを救うため、ジョイスはマレーと共にエンゾという男と取引することに。

 

エルは留置所に送られるもオーエンズ博士がネバダの施設に移す。その時マックスも宙吊り殺人の予兆を見るようになっていた。そしてヴェクナによる最初の事件を突き止めナンシー、ロビン、ダスティン、マックス、スティーブは捜査を開始する。そこにルーカスも合流する。最初の被害者ヴィクターからの聴取で音楽がヴァクナからの解放に寄与すると見つけ、宙吊り殺人間近だったマックスをRunning Up That Hillを聴かせることで救済する。

 

マイク、ウィル、ジョナサン、アーガイルのエル奪還班(A班)

ダスティン、マックス、ルーカス、スティーブ、ロビン、ナンシーの調査班(B班)

ジョイス、マレーのホッパー奪還班(C班)

 

4-2 001の覚醒

 

感覚遮断タンクに放り込まれたエルは過去を追体験する。

 

特殊能力を持ったナンバーズの子供たちの中で011エルは、001の助言である過去の辛い寂しい記憶が力を与えるという言葉を倣い一番の出世株となった。しかし、そのことを面白く思わない002はトラブルを起こし、エルの襲撃計画の存在を感知し、001は逃すために協力することを誓う

 

001の力を抑制していたチップをエルの力で取り除き、001の助力を得て脱出しようとするも踵を返して研究所に戻ると他の被験者を皆殺しにした001がいた。そこで001はホーキンスのヴィクター家の長男であり弱者排除の適者生存論を唱え殺人者となったことを述べ選民による世界の支配への願望を告げる。

 

エルは騙されたことへの怒りから、001を焼き潰しゲートを開いてしまい裏側の世界へと追いやってします。そこで001はヴェクナという怪物へと変貌を遂げた。

 

A班はエルの居場所を調べるためにダスティンのガールフレンドのスージーに助けを求め、B班はヴェクナ最初の殺害事件の現場であるヴィクターの屋敷を訪れた後にラバーズレイクから裏側の世界に入る。そしてC班はホッパーを救出するために収容所急襲計画を考える。

 

B班は表側にダスティン、マックス、エリカ、ルーカス、裏側にナンシー、スティーブ、ロビン、エディに別れ、それぞれの世界で交信する。C班では収容所にホッパーを見つけ、内通者ユーリと共に救出する。

 

そしてクリシーの恋人だったバスケ部キャプテンジェイソンはホーキンス市民への警察の一連の殺人事件の説明会の場で、一連の殺人事件はエディーを中心とするヘルファイアクラブが主導した悪魔崇拝による猟奇的集団的反抗と断定し騒動を起こす。

 

 

4-3 始まり

 

エルは過去を知り、そしてゲートはただの亀裂に過ぎず、後に決壊しヴェクナによって裏側の世界と表側の世界のバリアは完全に破壊されるという暗黒の未来を聞かされ、ホーキンスに帰ることを望むも、米軍特殊部隊によって急襲される。そこにA班が合流。戦闘の最中にエルの遺伝子上の父親”パパ”は死ぬ。

 

A班は感覚遮断タンクを使ってマックスの心の中に入ることで001と戦闘する計画を立てる。B班はキャンピングカーを盗み決戦に備えて武器の調達し、ヴェクナの抹殺計画を開始する。C班はもう一度収容所に戻りデモゴルゴンの抹殺を計画する。

 

マックス、ルーカス、エリカはヴェクナを挑発し出現を促す。そこに怒れるキャプテンであるジェイソンが殴り込みにくる。そしてナンシー、スティーブ、ロビンはヴィクター邸に乗り込み、ダスティンとエディは裏側の世界へ向かう。

 

劣勢に立たされる各位。マイクの”君は僕のスーパーヒーローだ、戦え”というメッセージを受けてエルが反転攻勢に打って出る。形勢は逆転し見事にヴェクナを撃退し危機は過ぎ去ったかに思えた。しかしエディは死に、マックスは植物人間となってしまい失ったものを嘆いていた刹那、ホーキンスは大地震に見舞われる

 

亀裂は遂に決壊した。暗黒がホーキンスを包む中で物語は幕を閉じる。

 

 

第2章 考察

 

2-1 80s脱構築

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ストレンジャーシングスは80年代から90年代前半の音楽がふんだんに使われ、世界観やデザインも多分に影響を受けている。影響を受けていると思われる作品は

 

『炎の少女チャーリー』(1984)、『ET』(1982)、『ゴーストバスターズ』(1984)

エルム街の悪夢』(1984)、『IT』(1990)、『マッドマックス』(1979)

『スタンドバイミー』(1986)、『スターウォーズ』(1980)、『グーニーズ』(1985)

ターミネーター』(1984)、『未知との遭遇』(1977)、『エイリアン』(1979)

 

といったところが列挙される。ここに書ききれないくらい様々な音楽や作品の要素を抜き出し現代にも通用する部分だけを用いて再構築した作品、それがストレンジャーシングスだ。

 

立ち位置としてはエヴァンゲリオンに近く、エヴァが70年代80年代のアニメや漫画のエッセンスを解体して作り直したリミックス作品だったように、米国におけるエヴァ的な立ち位置でストレンジャーシングスはクラシックとして受容されるかもしれない。

 

エルの襲来を異星人の襲来となぞらえればETのように見えるし、少年少女の群像劇も極めて80年代の匂いを感じさせる。だからこそ血も涙もないことを言うとオリジナルな新規性をほぼないと言える笑。

 

ただ、この脱構築リミックス作品が僕は大好物なのでドンビシャにハマった。ただ、この80年代の雰囲気を再現するのはJJエイブラムスが2011年にスーパー8という作品でチャレンジしており、その他にも同様の手筋の実験はあった。

 

しかしネットフリックスの巨大資本によって1話あたり製作費を40億円注ぎ込めるといった優位性によって、この計画を成功に導いた。個人的にはネットフリックスは、このように新規性を追うのではなく、既存の計画に対して方向性は丸パクリで資本を投下することで根こそぎ成功をもぎ取るやり方が良いと思う。これからもネットフリックスには、このような既存価値体系への資本投下を軸とした作品作りをしてもらえることを願う次第だ。

 

 

2-2 少数者の戦争

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ストレンジャーシングスの舞台となった80年代のアメリカ、81年から89年までの2期8年を全うしたレーガン政権の時代。アメリカとソ連の冷戦の時代でありアメリカから見たソ連レーガンの言葉を借りるなら”悪の帝国”だった。その悪の帝国を解体し社会主義体制や反ゲリラ的思想にも攻撃的な政権であった。

 

そして、レーガン政権の中でも印象的な出来事が”エイズ”に対する政策だ。1981年に報告された後天的免疫不全症候群、通称エイズに対してレーガン政権は消極的な態度で公衆衛生の強化に乗り出さなかった。その結果、大量の感染者と死亡者を出すことになった。

 

このエイズ封じ込めに対しては、特にアメリカ保守層からは”エイズはゲイの病気”とされ、感染を言うことはゲイであると思われるのでは、という恐怖感から言い出せないこともあったそうだ。そしてエイズの流行を広めているのは性的少数者である、という誤った言説が流布し当時の同性愛者は自身の性的指向をカムアウトすることが極めて難しい時代であった。

 

この”ウイルスとマイノリティ”がストレンジャーシングスの隠れたテーマだ。カーストの下位のいじめられっ子、障がい者、ヲタク、ゲイ、レズビアンといった社会から抑圧され続けた人々が世界を救う物語、それがストレンジャーシングスだ。

 

裏側の世界からの襲来者が次々とフレイしていく様は感染病の流行というパンデミックに付合するし、変人がパンデミックに打ち勝つというある意味、今のコロナ禍とバチバチに合っているのは80年代を描いているのに不思議な縁を感じる。

 

そして、この物語は米国に限らない。日本でも数十年前まではヲタクが犯罪者予備軍として扱われていた。しかし今はどうか。アニメ映画が興行成績上位を独占し、アニメの売り上げや集金能力は社会を変容してみせた。あの時迫害されていたヲタクは日本の価値観を変えてみせたのだ。その意味でも決してローカルな物語ではなく、極めて一般性の高い物語がここにあると断言できる。

 

 

2-3 S5の予想

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2-2でも書いた通り、ストレンジャーシングスは抑圧された人々の戦争を描いている。物語の構造は常に一定で、一つの目的(ホーキンスを救う)にために複数の班に分かれて行動し同時並行的に進む形をとっている。

 

いつも日常パートから始まり、数人の新キャラが登場し、緩やかに裏の世界からの襲来が始まり、そして危機を察知して、いつものメンバーで世界を救済する。4年連続4度目の世界救済となっているわけでホーキンス名誉市民として表彰されていないのが不思議なくらいだ。

 

シーズン3とシーズン4は設定上は数ヶ月しか空いていないのだが、コロナ禍の影響もあって収録が出来ず、結果として3年空いてしまったので明らかにズレを生じている。ダファー兄弟もこの辺は修正を加えると宣言しており、次のシーズン5は数年後という設定で作ると宣言してもいるので、放送部メンバーも高校卒業くらいのところまで時間を進めるかもしれない。

 

物語のこれまでの傾向を見るに、ヴェクナ戦から数年後の世界で震災からの復興の進むホーキンスに人も戻ってきつつある、そんな中で、また緩やかに暗黒が始まり、復活したヴェクナとの戦いが描かれると予想する。そしてウィルである。ヴェクナとの繋がりが消えないところも気がかりだ。ウィルが闇落ちする可能性も十分あり、ウィルを倒さなければヴェクナを倒せないという鬱展開を持ち込む可能性もある。

 

ただシーズンのこれまでの傾向を考えても、最後はヴェクナを倒して大団円になるはずで、そこに至るまで何人のメインキャストが退場するか、である。

 

何はともあれネットフリックス史上最高傑作の脱構築アメリカンドラマの最後が素晴らしいものになることを祈っている

青眼労働党大会で話す予定だった事。

以下の文章は、サッカー日本代表についてスペースでブルーアイズさんと話そうと思っていた内容をまとめたものです。

 

今、巷では、森保批判論が渦巻いています。そこで普段は海外サッカーしか見ない”部外者”の自分ですが思うとことや雑感を付そうと思います。

 

 

 

 

第1章 後出し皆無ジャパン

 

 

1-1 ブラジル戦に見る後出し力の欠如

 

よく聞かれるのが森保監督には戦術がないという批判です。

 

わかりやすい例えを挿入します。

 

サッカーは”後出しジャンケン”の様相を呈しています。

 

相手がグーを出してきたら、こちらはパーに手を変更

 

すると相手もそれに呼応するようにチョキに変更

 

そうすると自分はグーに変更

 

このように相手の出方に合わせて手を変えていく、それがサッカーです。この何の手を出すのか、というのが戦術の選択になります。

 

森保ジャパンを見ていると後出しジャンケンが苦手に見えます。

 

最も視聴者の多かった注目試合ブラジル戦を例に取りましょう。

 

(1)自軍組立時

 

相手は442で2トップがDFラインへのプレスを実施します。日本代表は433で迎え撃つわけですから、ビルドアップ時には2枚のCBで組み立てます。GKが関与出来る低い位置なら数的優位をもてますが、高い位置では2VS2の同数。

 

これが自分達がグー、相手がパーを出しているような状況です。

 

この時、グーを変更しチョキに変えないといけない。

 

SBを絞らせる、もしくはボランチを落として仮想3バックを形成し数的優位を確保するのが最適応手、チョキになります。

 

しかし森保監督は何も動かない。

 

(2)敵軍組立時

 

ブラジルの戦術は偽FWネイマールを組み込んだ442。ネイマールは中盤深くまで降りる自由な動きが許され、CBがついてくれば、裏はマドリーの翼であるヴィニシウスが狙い、放置すれば中盤で数的優位が生まれる。

 

この偽FWに対しては、明確にネイマールを誰がマークするのか決めることが求められます。メッシの降りる動きにラモスが突撃して潰したり、ラモスクラスの選手がいないチームは3バックにして突撃CBによるリスクを軽減することが列挙されます。

 

板倉にネイマールにどこまでも付いていけと命令するか、(1)で述べたビルド問題も含めると3バックに変更してネイマークを実施するか。

 

しかし森保監督は動かない。

 

この動きを見たブラジルはネイマールフレッジという攻守の遊撃手を解放し、縦横無尽にボールを回し試合の主導権を完全に掌握してしまいました。

 

サイドに人を回し、日本がサイドに人を回せば、回した中央へとパスが送られる。中央を固めたらサイドでの数的優位からボールを前進させられる。

 

日本代表はネイマールフレッジという自由な動きを可能にするUT(ユーティリティ)の存在によって13VS11という数的不利を仮想的に背負うことになりました。

 

上記(1)(2)が生んだ必然の現象は、相手ボールを取れずにズルズルと交代し続ける。低い位置ならGKがビルドに関与出来るため、一時的にビルドが改善されたかに見えるが、低い位置から運ぶということはゴールまでの距離も遠くブラジルの撤退も間に合ってしまう。

 

この結果、ブラジルがボコボコに打ち込む、必死に守る日本代表という画像がTV画面に映し出されることになりました。

 

カウンターを打とうにも個人能力の高いブラジル相手では後ろ、特にサイドでは1VS1を挑めないため援護を必要とするためWGはプレスバックを要求されてしまう。これではカウンターのキレもなく、相手に回収され殴られ続ける、ずっとブラジルのターン。

 

1-2 サッカーの特性

 

①ジャンケンの揺らぎ

 

前述したブラジル戦での森保不動ジャパン。しかしスコアは0-1の敗北

 

これを惜敗と報じるマスコミもいました。確かにスコアを見れば最小失点に抑えての敗北ですから惜敗と言えなくもない。しかし実態を見ると相手UTポジショナルに対応出来ず無限支配を許し相手に押し込められたパークザバスによる失点率の減少、加えてブラジルの最終生産性の低さの結果であり、個人的には大敗に近しい結果と捉える。

 

ここまで語ってきた後出しジャンケンだが、ジャンケン通りにならないことが往々にしてあるのもまた事実である。チョキがグーに勝つのだ。それがアジア予選を日本が勝ち抜けている理由でもある。

 

日本代表に対して、最適応手を考え講じてくるチームがアジアにも増えてきている。しかし日本代表の人的資本力はアジア屈指であり、例えばWGの伊東にボールを預ければ独力で相手SBをちぎりチャンスを作ってくれる。

 

人的資本の優位性は後出しジャンケンの優劣を崩す力があります。

 

だからこそ日本代表は後出しジャンケン力の低い森保監督のチームでもアジア予選を勝ち抜くことが出来ています。

 

逆に言えば、相手が優れたチームであれば後出しジャンケンは無効化されるため、負けても仕方がない、という風潮が出来上がってしまう。

 

②最終生産評価競技

 

サッカーとはネットを揺らし合う競技だ。この最終生産行為の結果以外は一切の評価を受けない。どれだけ良いパス回しをしようとポゼッションを保とうとサッカーという競技にゴール以外の評価基準は存在しない。

 

この事は戦術的な選択の結果がスコアに反映されづらい状況を生み出す。まさにブラジル戦はその最たるものである。ブラジルには絶対的な最終生産者がいない。チャンスメーカーは数多いるものの得点能力に優れたエースは出現してこない。

 

だからこそ、必死に日本代表を殴り続けてもPKの1点しか奪えず終わってしまう。日本代表のラフプレーを審判が取らなかったことに不平を漏らしていたブラジル代表監督の言葉は、ドン引きした自軍の最終生産能力の低さへの批判を交わす目的でしょう。

 

そしてW杯で戦う強豪国であるスペイン代表とドイツ代表も、このセレソン同様にストライカーを欠いており、日本代表が実質完敗の”惜敗”でカタールから帰国する可能性もある。

 

1-3 考えるな走るな

 

オシムの言葉

 

日本代表らしさ、と言われると技術を活かし勤勉なサッカー、そして何よりも考えながら走るサッカーというオシムジャパンで提唱された言葉が思い起こされます。

 

しかし、それは間違いです。

 

理想のサッカーとは考えないし走らないサッカーである。

 

事前に発生する現象を想定し、そのそれぞれの状況における最適挙動を設定、これは試合中に考えなければならない事を減らすのが目的である。

 

戦術とは選手から思考を奪うためのものであり、アドリブで対応しなければならない部分をミニマムにすることで想定外を潰す、そうすることで後出しジャンケンをオート化し、思考停止で状況に集団が対応する。

 

そして走らないと言うのは、全体で同じビジョンを持ち動けば想定外のランニングを減らせ、ポジショニングによって中長距離のランニングを減退させ、さらに全員が最適挙動を身につけているため最小の運動量で事立ってしまう。

 

クライフが走るな、と言うのはまさにこれである。

 

バルサのサッカーとは思考停止のサッカーである。選手は考えていない。状況ごとの最適挙動を全員が脊髄反射レベルで理解しているからこそ迷いなく実行に移せる。

 

クライフの理想としたバルササッカーは、カンテラから一貫した最適挙動教育によるチーム全員の圧倒的な共有力により想定外を徹底して壊すことで、誰も考えず最適挙動を選択し続ける集団の構築にあったはずで、それを具現化したのが、バルデス、ピケ、プジョルブスケツ、チャビ、イニエスタ、ペドロ、メッシの共有力を活かした支配集団ペップバルサだ。

 

②観客監督の少なさ

 

メッシはカンプノウには監督がたくさんいるんだ、と言っていました。

 

ここ日本においては、まさに野球が該当するように思えます。高校野球プロ野球の人気は凄まじく、観客の野球IQは高く見えます。例えばノーアウト一塁で攻撃時、バントをした方が良いのでは、いやいや相手投手の制球が苦しいので、ここはあえてヒッティング、といった提案が容易に発生します。

 

これは文化的に野球の最適挙動における理解力が日本人は高い事を意味しています。日本国民のほとんどが”監督”のように采配を提案できるのです。

 

しかしサッカーはどうでしょうか?

 

森保ジャパンのビルドアップに対して、相手が2枚でプレスかけてんだから3枚作ってビルドした方が良いのでは、と言う提案がされる度合いは野球に比べてどうでしょうか?

 

自分は少ないと感じます。それは野球が野村克也氏を中心とした頭脳労働という解釈のもと古い歴史によって作り上げられてきた最適挙動の考察という下地の違いが大きいと思われます。

 

日本野球チームが寄せ集めでも一定の高出力のパフォーマンスを出せるのは最適挙動に対する理解が高く、観客の理解力もあるため要求も高くなり、更に向上する。

 

東京五輪日本代表野球チーム侍ジャパンは稲葉監督の采配に具体的にデータや意見を交えながら様々な声が飛び交っていた。しかしサッカーとなると

 

森保は戦術がない

 

森保は無能

 

である。

 

戦術はあるのだ。手は打っている。問題はそこに相手が対応してきた場合に何もせずに選手の自主性に任せるという妄言を繰り返していることで。これは文化的土壌の構築が必要なのでマスコミも含め時間を要するのかもしれません。早い話が現場もお茶の間にも基礎教養が欠落しているのだ。

 

1-4 日本という社会

 

①日本のコロナ禍

 

よく日本人の強みは勤勉なところだと言われる。真面目に黙々と仕事に向かい、震災時の配給においても列に並んで暴動を起こさない集団の調和を大切にする協調性は世界中から賞賛されています。

 

しかし日本はそんな良い国でもないことを日本人の我々は知っているでしょう。

 

日本は現在、第7波のコロナ禍に見舞われている。欧米に目を向けるとマスクを外し日常を取り戻しつつある中で、日本では毎日のように医療崩壊が叫ばれ、マスク着用も事実上の義務と化す時間が3年を迎えようとしています。

 

なぜ日本はコロナ禍が終わらないのか?

 

それは日本でのコロナ感染者の数が多いからではありません。感染者の全数把握を欧米が放棄してから日本は世界最大規模の感染者数を記録しましたが、これは律儀に感染者を全数把握しているからであって、それまで日本の感染者数は欧米の数分の一。

 

人口1000人あたりの病床数は世界トップ、全体では160万床を誇り、病院の数は8300を数え世界最高なのにも関わらず、なぜ医療崩壊するのか。それは単純に医療リソースが枯渇しているからであって、日本が欧米のようにコロナ禍を終われないのはひとえに医療リソースの拡充が困難であり、とても数年規模では病床利用を求める人の数に追いつかないからです。

 

原因としては長年にわたる医者数の抑制、開業医の肥大化、医者数全体の抑制に加えてIT化も進んでいないことといった医療従事体制に横たわっている諸問題であって、これは医療従事体制の構成者、また、この状況を作り出してしまった行政側に責任はあります。

 

病床を増やせない、だからこそ国民に自粛を迫り続け、各個々人の生きがいや生業を不要不急と言って切り捨てられるばかりかイベントや大人数が関与するものに参加する人々は感染拡大の温床への加担として強く痛罵され続けてきました。

 

この跳ね返しとして現在、医療従事者への反発は相当に高まっている次第です。

 

マスク着用も日本のコロナ禍も欧米並みになるには相当な時間を要す模様で、先行きもビジョンも提示されない中での自粛強要は私権侵害として強い反発を招くのは仕方ないのでしょう。

 

②赤信号を皆でわたる

 

この状況に対して日本政府が取った手は実に日本らしいなと思うのです。

 

それは言い換えによる本質の曖昧化です。

 

日本は売春は禁じられています。軍隊を持つことも。そして国営競技以外のギャンブルを禁じています。これは日本の法によって定まっています。

 

しかし、日本には売春婦がいて、重火器を持つ軍隊がいて、そしてパチンコという非公営ギャンブルが存在しています。

 

これらは全て言い換えによって正当化されています

 

風俗嬢、自衛隊、スロットマシーン。

 

法律に違反していても現実的に存在を認めざるを得ないものを言い換えることで正当化してしまう。これは非常に危険であると同時に日本国の問題解決の常套手段でもあります。

 

そして日本政府のコロナに対する対策はWITH コロナと呼称されました。

 

早い話が放置。経済活動の抑制もしない、医療拡充もしない。その代わり補償も応援もしない言わば解決策がないので放っておくという。それをコロナと共存しているのだ、と言い換えただけなのです。

 

職業仮想恋愛をアイドルと言い換えるのも個人的には気に食わないのですが、これを話し出すと長くなるのでこの辺でやめます笑。

 

③必要なのは悲劇

 

日本はコロナ禍に加え、統一教会問題が取り沙汰されています。これは一人の男を、まさに引き金にして発生したユニバーサルな現象でした。

 

安倍晋三暗殺事件

 

奈良県で選挙応援に駆けつけた安倍晋三元首相の演説中に背後から忍び寄り複数の銃撃を見舞った山上容疑者によって元首相が殺害された事件。

 

山上の殺害動機は新興宗教2世問題でした。自身の母親が家族の病気によって藁にもすがる思いで入信し財産を宗教団体”統一教会”に貢ぎ続けたために自分自身の将来決定が阻害され家族が苦しめられ、統一教会と関係が深いとされた安倍晋三暗殺に至った。

 

これは悲劇だ。山上自身は母親のせいで将来を暗くし、安倍晋三もまた生命を奪われた。自分は殺人は肯定しない。しかし、この悲劇をトリガーとして自民党党首であり現内閣総理大臣の口から”統一教会との関係を断つ”と言わせた。自身の未来を無茶苦茶にした統一教会への恨みを抱えた山上にとっては狙い通りと言えるでしょう。

 

ここで皆さんに質問です。山上の安倍晋三暗殺なしに

 

統一教会問題をここまで大々的にマスコミが取り上げたでしょうか?

 

統一教会との関係を自民党が絶ったでしょうか?

 

悲劇が改革のトリガーになるという最たる例だと自分は考えます。民主的プロセスを踏んでも日本の多くの組織は自浄作用は働かず整備上問題があると思われた部分に手を入れるためのモメンタムは失われてしまうことが往々にしてある。

 

だからこそ、このコロナ禍においても悲劇が必要であると自分は考えます。もう既に悲劇は起きていると現場は考えているでしょうが、おそらく足りない。このままでは、あのコロナも何とか乗り越えてしまったから医療体制の抜本的改革は必要なし、とみなされる危険性があります。リソース拡充に踏み切らない政府への抵抗としての医療従事者のボイコット運動や、誰の目にも明らかな医療崩壊現象といったものがないと現状の医療リソースの見直しには至らないと自分は考えます。

 

これは日本サッカーにもいえます。戦術的な応手力の低下がアジアにおける人的資本の優位性のよって遮蔽され、W杯で負けても強敵だったから仕方ないという風潮で4年ごとに監督が変わっていく。まるで安倍晋三第2次政権前の日本の総理のように。

 

今、日本代表に必要なのは悲劇でしょう。だからこそ、今回のW杯の組み分けは非常に残念なものとなってしまいました。負けても言い訳のできてしまう強国であるスペインとドイツと同組。これでは負けたとしても強国に挑み個の能力で負けたと言い訳を許してしまう。

 

日本型組織の強みは悲劇から学び体制を整え実施する勤勉さ、弱みは自浄作用が働かない組織を変革するのに悲劇を要するということ

 

日本代表の改革のためには、そもそもアジア予選で負ける必要があったのでしょう。しかし残念ながら勝ててしまう人的資本を有していたので改革は先送りされる。悲劇なしに組織が自浄作用を発揮し問題点をクリア出来るかそれはとても難しい問題です。

 

ジャパンズウェイと呼ばれる日本の指針、むしろ今の日本に求められるのは、悲劇なしに組織が自浄作用を発揮し問題点をクリアするという日本らしくない方法なのかもしれません

 

 

第2章 独と西にどう挑む?

 

そして本戦での2大強国のドイツとスペインの特徴の紹介と対策と提案を。

 

2-1 ドイツ戦

 

レバンドフスキのいないバイエルンだったドイツ代表、まぁバイエルンには、もうレバ神はいないわけですが、最終生産者を欠くバイエルンをコアに監督は元バイエルンの3冠監督であるハンジフリック。

 

印象的なのは前プレの強度、サイドをずらして前気味に圧力を高め、ホルダー周辺を抑え込むスタイルを徹底しており、SBでSBをマークするという現象の発生も確認された。パスを出す瞬間にスイッチを入れて全速力で窒息させてショートカウンターを発動させる。

 

このチームの弱点は元も子もないことを言うと、レバの不在とバイエルンの弱点の二つになる。レバ神抜きのバイエルンなので、バイエルンが持つ潜在的弱点とレバ神の不在によりもたらされる弱点が狙い所となる。

 

レバの不在は、攻守両面に見て取れる。

 

ビルドの出口を周辺全て抑えられるとノイアーはレバ目掛けてロングを蹴る。空中戦でも強度を誇るレバは、このロング一本を収めてマイボールにすることも出来るが、ポーランド人のいないドイツ代表ではノイアーのロング逃げはあまり効果はなくボール放棄に等しくなる。

 

そしてレバがいないため、前線は偽9番を採用しており、中盤も含めて積極的にポジションを離れトライアングルを旋回させて相手のマークを混乱させる。そして狙うのはバイタルの拡張であり、その開かれたバイタルに突撃し得点を取る形を得意としている。

 

バイエルンの弱点でもある、高強度のプレスゆえに、剥がされた時にリスクが顕在化しやすく保険のプレスバックも徹底しているものの、人的資本に優れたチームと戦うとサイドチェンジで一気にピンチを作られる場面も少なくない。

 

変幻自在のバイタル解放、高圧力の前プレ、再現性の高い攻守の連動、各ポジションに名手を配置し、コアチームバイエルンからインポートされた共有力

 

極めて危険なチームであり、現状の日本代表に付け入る隙はほぼないと言え、相手がシュートを外しまくってくれることを祈るしかない。

 

前プレで圧力を上げてノイアーに蹴らしてからの回収、コンパクトな布陣を揺さぶるようにサイドチェンジを連発すること、これくらいしか自分には弱点を見つけられなかった。

 

2-2 スペイン戦

 

メッシのいないバルサだったスペイン代表、前項と同じくメッシはいないわけで、ドイツ代表と同じく最終生産者不在のバルサをコアに監督は元バルサの3冠監督エンリケ

 

メッシがいないというところから得点力には不安を抱えている模様だが、基本的には裏を狙う意識が強いように見える。モラタ、オルモどちらでも引いて来てゲームメイクを行ない、相手CBに密着か放置かを迫る。ついてくれば裏をWGが突く。

 

ビルドでも正確に組み上げるよりも、行けるなら裏1発走らせる事も厭わず、名手を多く抱えるスペインらしく長短正確なパスや技術力を活かして、よりクリティカルな攻撃を志向しているように見える。

 

前プレでは積極的に前からハメにいき、ボールを高い位置で奪ってのショートカウンターの発動を狙っている。ドイツほどのマンツーではないが、前からのパス出しを妨害する以上に奪い切ってほしいというエンリケのオーダーを感じる。

 

メッシがいないのでバイタルを開けてもそこから云々するわけでもなく、MFはブスケツとペドリを軸としてあと一人をリキッドフルに試している模様。ペドリがレバとのバルサでの日々で得点能力が向上するとバイタルに突入してのシュートの危険性も増すか。

 

2-3 日本代表

 

では、日本代表として、中を狙うドイツ、裏を狙うスペイン、を考えると中と裏のケアは万全にする必要があり、ノイアーのロングを蹴らせられるだけの完成度の高いプレスが実行出来るとは思えませんし、サイドチェンジで相手を揺さぶり続ける以前にボールを保持できるかも未知数で、スペインからボールを取り上げることなど不可能に近い。

 

そもそも森保ジャパンとは問題解決ではなく問題設定の変更で対応してきました。

 

①第1期 偽翼中島システム

 

森保監督就任前の日本代表の課題は香川とホンダの両立でした。南アW杯の布陣に香川をどう落とし込むか、そこで当時代表監督ザックの選択は攻撃時10番守備時LWGの偽LWG香川という回答でした。森保監督も、これに倣い個人能力に優れた中島をLWGに起用し、攻撃時は自由を与え、そのファンタジスタシステムは攻撃で大きな成果を生みました。

 

しかし、歴史は繰り返す。偽翼香川は守備時にブロック形成が遅れたり、そもそもの奪い切る守備ではなく構える守備における強度の低さからディフェンス時に穴になりやすい。中島も同様の守備リスクを抱えていて、この攻撃と守備におけるアンバランスさに対して森保さんが出した答えは、静観でした。

 

②第2期 バランス時代

 

中島の怪我による長期離脱。これにより再編を求められた森保さんは4231のシステムはそのままに守備リスクの改善のために、中島よりは攻撃で貢献出来なくても南野、伊東、鎌田を2列目に並べたバランス型へと舵を切りました。

 

しかし、この攻守両面において平たくした結果、主な武器は伊東の突破のみであり、突出した武器であった中島の創造性を欠いた結果、その都度相手に合わせた微調整を要求されることになります。今までの中島頼むわシステムではないので。

 

その結果、前述している後出しジャンケン力の低さから修正出来ず、この辺から森保監督の采配への批判が高まったように感じます。

 

③第3期 433時代

 

そしてバランス4231を放棄し、田中、森田、遠藤の3人の中盤を形成し433導入。監督からのトップダウンの指令が出せない以上、現場で決めるしかないとなった時に、川崎フロンターレ出身の選手を多く登用し、スペインにおけるバルサ、ドイツにおけるバイエルンのように共有力を事前に確保するやり方にシフトしました。

 

そして、このやり方で現在までやってきているわけですが課題がないか、というとそんなことはなく外、中、裏の3点を抑える手法が徹底されておらず選手のアドリブ任せになっていることや、何度も前述した通り、相手の不規則な移動や応手に対する後出し力の低さは健在で、その都度一定の混乱の時期が続くことがあります。

 

さらに強化試合でも明らかなように、中盤3枚のアドリブ対応は強豪相手では命取りとなりアジアでは無双出来る伊東や三苫のドリブルも強豪相手では厳しいのも事実。

 

この課題に対し、どう選択するか、おそらくは3バック事実上の5バック導入によるリスク軽減と裏と中を徹底的に閉める方法を選択するはずです。

 

本戦では第4の時代、パークザバスが見られることでしょう。

 

前線には三苫、伊東、浅野のような槍を置いて、耐えてカウンターを狙い続ける日本代表が見られる可能性が高いと想定されます。果たして、そのやり方でうまくいくのか、注視したいところであります。

 

終わりに

 

先日、公表されたJway宣言書。僕も読みました。そこに記されていたのは、大まかな考えとビジョンらしきもの。僕が感じたのは、対世界との肉体的なディスアドバンテージへの後ろめたさから来る過剰なまでのデュエルとフィジカルバトルへのこだわりでした。

 

個人的に大切だと思うのは、これは宣言書にもちらっと書かれていましたが、移民ドーピングなしには日本代表の栄光は厳しいのでは、というところです。ドイツが多様な民族の調和を成しているように、日本代表もハーフやクォーターを始め移民選手を取り入れていくことが、こうした肉体的不利さを覆す方法の一つなのかなと思う次第です。

 

ラグビー代表から学べきはワンチームという聞こえの良い横文字ではなく、多様な移民選手の導入によるフィジカルバトルでの勝敗の是正だったはずです。もちろんトレーニングも重要ですが、こうした部分も国単位で考える必要があるのではないでしょうか?

 

さらに重要なのは国内の人的資本獲得についてです。大谷翔平はサッカーではなく野球を選んだように、少子化に苦しむ日本にとって貴重なアスリート人材にサッカーを選んでもらうためには、サッカー界でもNPBのような高額年俸選手を複数出し続けることが求められる。

 

残酷な話だが、儲けられない業界には人は集まらない。これからJリーグを始めとして、どこまでマネタイズ出来るのか、コロナ禍において声出し応援を巡り小さくない分断を生んでいる時間はないはずだ。

 

果たして日本代表は強くなるのか、果たして自分が生きている間に日本代表のW杯優勝を見ることが出来るのか、期待と不安を入り交えながら、カタールの地で戦う同胞に声援を送りたいと思う。

"Wonder Wall"(MCI22/23シーズン選手名鑑+α)

 

 

第1部 22/23選手名鑑

 

1-1 22/23陣容(仮)主要構成選手

 

①コア

 

魔神 ハーランド

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遂に念願の9番がシティに。3年間事実上空位の生産者の玉座に座る存在にしてシティOBの息子という縁もあり、紆余曲折を経てミッシングピースが埋まった。

 

今季の最大の補強であるが、取り敢えずはチームの基本生産体制であるロークロス爆撃を得点変換し、イニングを適度に食いながらの適応が求められる。期待も大きいがポテンシャルは十分で支配層候補の実力を遺憾無く発揮することに期待したい。

 

ペップシティサイクル3の主人公候補であり、シティはハーランドに点を取らせる戦型の構築と、そこから逆算されたモデルを生み出す必要がある。怪我も少なくないためプロテクトも含めて不安はあるが、まずは適応すること、そこからだろう。

 

神 デ・ブライネ

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昨季の弊ブログ選手名鑑で選手寿命を考えて4番で遊撃ピボーテという新たな描像を示すのではと書いたが、当人はそれに反するように中距離打者へとモデルチェンジした昨季は、積極的にゴールを狙い打点を求めた。

 

今季はハーランドの衛星としてチャンスメークしながらも本人も隙あらば得点も狙うSTへと本格コンバートする可能性もある、ペップ到来でトップ下からIHにポジションを下ろした時以来の”異動”を本人がどうこなすのか、楽しみである。

 

年齢と勤続疲労を考えるとフルシーズンの安定は望めない。リーグ戦のビッグマッチとCLでの同格以上との戦いで本領を発揮出来るように慎重な運用が求められる。必殺クロスを活かすべくRWG起用もあるか。今季は多彩なKDBショーが見られるかもしれない。

 

柱 ルベン

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昨季はシーズン通して相方が安定せず、無理のきくストーンズではなくラポルテ、アケというイマイチ信頼出来ない選手とのコンビということもあり負担は増したせいか、後半に怪我で離脱した時も早期に復帰しチームの窮地に駆けつけた。しかし身体的限界からか、リーグ優勝決定試合には出られず後味の悪い終幕を迎えた。

 

チームの柱ではあるが人柱になってもらっては困る。ルベン、ウォーカー、ストーンズは替えのきかない重要選手であり、特にルベンがコンパニの二の舞になるのは避けたいので、安定した相方を望みたいところ。ストーンズには昨季を上回る出場が求められるだろう。

 

LCBはまともなLBがいない左側のカバーもあるためポジ変更も出来ず、今季も不安定なDFラインの精神安定剤としての役割が求められる。何とかシーズン持ってくれ、祈るばかりだ。

 

決戦兵器 ウォーカー

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圧倒的守備力で相手LWGを封殺するデュエル絶対負けないニキはチームの大きな武器。しかし昨季は軽率なプレーでCLで3試合の出場停止処分を食らった挙句、大事な後半戦も怪我で穴を開ける試合が少なくなかった。重要選手として落ち着いた振る舞いを求めたい。

 

昨季から残る盾、攻める矛としても貢献が求められており、ハーランド目掛けてのクロス爆撃への参加となるか。ハーランドの得意戦型の見極めにもよるが昨季の23ビルド、41ビルドに加え柔軟な立ち位置を求められるだろう。

 

リーグ開幕戦ではIHのように中盤でパスを繋ぎ、偽SBも板についてきて、ウォーカーの変化と進化がチームに何をもたらすのか注目したい。今季のシティの重要テーマのSBの動かし方において挙動が注目される。

 

神へと至る道 ロドリ

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世界最高峰の4番、昨季のパフォーマンスは圧巻でMVP級の活躍ぶり。ボールを動かし相手を動かし、弱点だった周囲のカバーがないとトンデモ判断をしてしまうことは減り、ヘソからチームを動かすペップの理想を見事に具現化してみせた。

 

冷静な判断、ボール保持の技術力の高さ、正確なパス、そして機を見て持ち上がってのシュート、足りないのは高精度のロングフィードくらいか。ここは新加入のフィリップスから学べる部分は少なくないはず、左右に正確に長いボールを蹴り分けられるようになると、より完成度は増すはずだ。

 

支配層MFと呼ばれる日も遠くない選手なので怪我なくプレーして欲しい。2ボラ導入も十分に考えられ、そこでもプレー精度を落とさずにプレー出来るか、完成度は高いが、まだ伸び代もあるはず、ロドリ神へと至れるか、大いに期待したい。

 

終わらない逡巡 ベルナルド

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もしかしたら、今夏でいなくなるやもしれないシティの賢者は2年連続で退団騒動に揺れている。個人的には不確定因子の存在は中長期計画立案にとって小さくないノイズとなるため、出来たら将来にケリをつけて欲しい。毎年毎年故郷がうんぬん聞かされるもたまったものではないので。

 

とはいえ重要度は相変わらず。だからこそベルOUTのスキーム作りも残酷にも進めていくのがペップという男なわけで。4231にしてダブルボランチを導入し下り目のIHのベルの代わりに上がり目のボランチのフィリップスをコアにする考えもあるか

 

残るか出るか、どちらにせよプレス強度とインテリジェンスは傑出しており、残ってくれると良いのだがカタルーニャからのラブコールも声量を増している。個人的にはベルよりもチアゴ帰還の方がバルサには良いと思うのだが。

 

必殺の左足 マフレズ

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サラー、メッシという人外を除けば世界最高峰の逆足RWGという評はマフレズが優秀な選手ではあるが、支配層レベルに到達するほどではないことを示している。足りないのはコンスタントに圧巻のプレーを出力する継続性。大一番でクラッチヒットを打てば良いのは事実ではあるのだが、やはり物足りない部分が否めない。

 

至極のトラップ技術、ドリブルからシュートへ持ち込む暴力性、数少ないペップシティの得点の匂いを醸し出すWGだった。しかしハーランドがやってきた。レバ同様にペップがクロス爆撃を実施するなら同足のアルバレスがRWGとしてプレーしマフレズは”代打”の可能性も

 

ロッベンとレバはイマイチ上手く行っていなかったが、シティ入りを直接薦めた間柄のハーランドとマフレズがビッグゲームで、どのように調和を図るのか楽しみだ。

 

決意の一年 ストーンズ

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一度で良いから見てみたい

 

怪我しないストーンズと遵法精神のあるメンディ

 

昨季は失望の一年と言って良いはずだ。長期契約でシティのコアCBとして囲った矢先に代表での怪我を引きづり、最後まで安定しないフィジカルコンディションだった。コアから外すのかコアとして扱うのか厳しい選択を迫られた。

 

無理のきく守備力と国産コアCBという怪我さえしなければ覇権CBなのだが、今季はある程度はイニングを食ってくれると信じたい。まぁW杯でイングランドがどこまで勝ち進むかにかかってもいるので何とも言えないが。

 

昨季はRBにも挑戦しウォーカーの穴を埋めた。偽CBストーンズと偽4番フィリップスで攻守交代時にポジションを縦に入れ替えるUT戦術の使用もあるか、潰しとインテリジェンスに優れたコアCBの今季の無事を祈るばかりだ。

 

狂人 エデルソン

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ペップチームのポルテーロとして絶対的な存在として君臨して今季で6年目、昨季は危ないシーンに遭遇してもびくともせずに落ち着いて対処してみせ、相変わらずのサイコパスぶりを見せてくれている。

 

今季は最前線中央にハーランドがおり、裏抜けを得意としているため低弾道パントキックや長いパスは有用に働くはず。アグエロの時もそうだったが中長距離のパスによる貢献を更に求めたいところだ。

 

個人的にはエデルソンがフィールドプレイヤーとしてどれだけ出来るか興味があり、幻に終わったノイアーのMF計画の再挑戦を見てみたい。GKが共存するという新たな景色が見られることを密かに祈っている。

 

 

②準コア

 

新時代 フォーデン

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順調に育ったEDSの星、フォーデンは今まさに支配層になるかどうか、が求められる。ハーランドとの協調、独力でのGAという直接的な結果の出力向上に加えて生え抜きとしてシティを代表するワールドクラスになれるのか。

 

昨季はIHにも挑戦し、偽9番も含めてヘソ前の5ポジのうち3つをこなすコアUTとなった。残るは右方のWGとIHのみ。おそらくそちらにも今季は挑戦するだろう。マフレズの後継も考え始める時期なので、両翼での完備性を上げ、より完成度を上げる一年となるか。

 

破壊力抜群の同足LWG、独力最終生産可能なRWG、生産もこなすダビシルバIH、バイタルエリアから独力でゴールへ襲い掛かる偽9番、これらを同時に備えたウルトラコアUTが最終到達点になるか。

 

フィルこそシティ、コアUTこそペップシティなのだろう。

 

激務の代償 ラポルテ

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昨季は怪我で常時欠場が続いていたCBの穴を埋め、ルベンと共にシティの最終防衛ラインの死守に努めた。大一番でのやらかし癖とフィード力の活かしどころの喪失でストーンズにポジションを奪われた悔しさを晴らす一年となった。

 

ただ弱点がなくなったわけでもない。シティにとって重要なCLにおいてはストーンズを出せたらと嘆くことは少なくなかった。今季は裏のスペース目掛けてハーランドを走らせる事も少なくないだろう。そこでフィード力は活かされるか。

 

今季はペップバイエルンのように中央の巨人の最適運用の設定が求められ、その中でクロス爆撃するなら両翼にプレスのかかりずらい配置からの長いパスの重用は増えるはず。またLBオプション起用もあるやもしれない、昨季の限界を超えた起用で身体が悲鳴をあげたか今季は1ヶ月の欠場が確定、代償が重くならないこと祈る

 

色男の苦悩 グリーリッシュ

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昨季はカンセロのLB起用でハーフスペースを味方に占拠され、ゴールから離れた位置でのプレーも多く、そこを見かねたのか偽9番でニュートラルから中央でプレーさせる事もあった。王様はシティで輝くか、マフレズは可能と3年目で示した。そこに連ねるのか。

 

同足LSBの到来で好転するかと思われた立場は、相変わらず変態逆足LSBがスタメンを続ける限りはLWGでの輝きは限定的だろう。IHでデブ神を休ませながら同時起用でも輝く、というのが現実的か。

 

本人も自由を制限され、戸惑いと焦燥を感じているやもしれないが、実力は十分、マフレズのように王様時代の出力はシティでも出せるはず、今季が本番、雑音と焦燥の中でイキイキとプレーできる日々の到来を待つ。

 

3年目の遊撃手 カンセロ

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昨季は不動のコアLBへと序列を上げた印象のカンセロ。グリーリッシュから輝きを奪ってもなお、デブ神不在時のSBの仮面を被った10番として後方からチャンスメークし続けた。ダニーロとのトレードで来た控えSBは20/21シーズンに5レーンお助けSBとしてカンセロロールでブレイクし、昨季はラテラルファンタジスタとして逆足LSBの地位を築いた。

 

守備的不安は確かにある。最終生産が滞る最前線において遊撃するSBは大きな武器となり、デブ神がいなくても一定の好機を生み出すセカンドオピニオンを提示した。攻撃性能とチャンスメークには何の不満もないだろう。

 

プロパーLBが不在のチームで求められるのは当然守備力だろうが、むしろ攻撃力をもっと鍛えてほしい。具体的に言えばシュート技術だ。逆足なのだから力強いシュートを左翼から打ち込んで欲しい。今季から背番号は7。”WG”のような攻撃力を備えて、更なる高みを目指して欲しい。多少守備の出来る攻撃的SBではなくベイルのような変異を期待する。

 

クラッチ ギュン

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昨季最終節での大逆転劇の立役者ギュンは偽9番スキームもプロパー9番設置にも難なく対応出来る経験と実力はある。レバ時代も偽9番時代も、ここぞのタイミングで駆け上がりゴールを奪って見せるスタイルは不変だろう。

 

契約最終年となる今季、シティでのラストシーズンになるやもしれないが、果たす役割は大きいだろう。主将としてのリーダーシップも求められるだろうし、デブ神、ベル、フォーデン、グリといった選手たちとの競争も苛烈で、スタメンで出ることも簡単ではない。

 

9番獲得によるクロス爆撃に伴いロングパスが増える中で、長短様々なパスを用いながら正確で小気味良いリズムを刻み、膠着した中でクラッチを決める。今季で最後となるかもしれない勇姿を一年じっくり見せて欲しい。

 

英国の宝石 フィリップス

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功労者ジーニョの後釜として獲得された国産4番フィリップス。ヨークシャーのピルロの異名通り中盤底からのロングパスは大きな武器になるだろう。2ボラでロドリの相方として、1ボラで4番として、緊急時のCBとして、頭数の少ないLBとして、多様な起用が考えられる。

 

アロンソビダルを足して2で割ったような剛柔両方に長ける4番は前に出て潰す事も厭わず、中央底からの左右へのアイソレートWG目掛けてのロングパスを打ち込み、DFラインでも問題なくプレー出来るはず。早期の適応に期待したい。

 

前方5レーン全てをこなす前のコアUTがフォーデンの最終到達点なら、フィリップスは後方5レーン全てをこなすのが最終到達点になるか。アロンソビダル、ハビマルを足して3で割り、そこにウォーカーの成分も入れたウルトラコアUTになってくれたらと妄想している。

 

空位を傍目に アケ

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移籍も噂されたサラーキラー。守備的LSBとしてCBのスタメン奪取に燃える男は今季何を残せるだろうか。セットプレー時にはヘッドでチームに貢献出来、ラポルテの体調が不安定な今、最大のチャンスだろう。

 

まともなLSBがおらず、ルベンの相方候補の二人もスペのストーンズ、昨季のダメージを引きずるラポルテのLCBでスタメンが取れないなら、恐らくこの先のキャリアも期待は出来ない。チャンスでもありピンチでもある現状で何を残せるのか

 

昨季終盤に何か掴んだのか、支配層のサラー相手に指し手を読み切って止めていたので、その調子で今季も頑張ってほしい。LSBとして相手RWGを止め切る防波堤として、LCBでルベンを補助できれば。来季のDF補強次第では立場は危うくなる、今のうちにアピールを

 

 

③プロスペクト

 

蜘蛛男 アルバレス

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リーベルで大切に育てられたアルゼンチンの未来は半年のレンタル期間を経てシティに満を辞してやってきた。アグエロを意識しているのかもしれないが、個人的にはミュラーグリーズマンのようなSTで衛星的に動きながら幅広いシュートレンジを活かすプレイヤーの印象。

 

まず求められるのは欧州での生活に慣れ、シティでのプレーに順応すること。RWGでチャンスメークしながら機を見てシュートを打ったり、中盤でCFの空けたスペースに飛び込んだりと動いてナンボのスタイルを確立できるか。

 

アグエロよりはディバラのようにSTでのチャンスメーク能力を持ちながら、WGでもプレー出来るUT性を持った万能選手になるために、一歩ずつ順応していく一年になるだろう。

 

遺された希望 パーマー

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EDSの星フォーデンの再現を、といきたいところだが、デラップはレンタル放出間近、エドジー、ラビアは放出、マカティもレンタル放出と、シティの1軍に残ることの難しさを知らしめている。そんな中で唯一戦力としてカウントされているのがパーマーだ。

 

長い手足と確かなコマンド力を持っていて個人的にはロドリが不安定だった2年前には4番としての育成を提言もしたが、ロドリが一本立ち、フィリップスも加入となると、恐らくFWでの育成となるだろう。

 

どこまでイニングが食えるかわからないが怪我体質の改善とコンスタントな出力でチームに貢献してくれることを願いたい。

 

好機到来 エスブランド

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EDSのLB選手、としかほぼ知らない選手だが、PSMで見る限りは守備力は上々でバランスの取れたタイプに見える。ただメガクラブのLBとしてはいささか物足りない。身体能力の高さはあるものの怪我も少なくない模様なのも心配。

 

カンセロかメンディかと言うとメンディっぽいんだろうが、まだ荒削りでPSMでは好印象を残してはいたもののパスは雑でポジショニングもまだまだ修正が必要な印象。カップ戦要員が現状では精一杯だろう。

 

21を継ぎし者 ゴメス

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ククレジャを取り逃がし、ラストピースであるLBとしてコンパニの指導を受けていたバルサカンテラ出身のゴメスが獲得された。カンテラ時代は左利きで2列目ならどこでもこなせるUT選手の印象が自分にはある。

 

紆余曲折を経て、シティのLB獲得候補に上がった時は、LBが出来る選手になってることに驚いたものだが、ジンの穴埋めとしてはピッタリだろう。元MFで左利きでカンセロよりは多少は守備が出来て、シティズンらしくファン受けも良いだろう。

 

実際試合を見たこともないのでハイライトプレー集で確認したが、気になるのは何故LBにコンバートしたかだ、攻撃力が足りなかったのか、守備力が高いと判断したか。このコンバートの理由次第で評価は大きく変わるだろう。

 

 

 

 

1-2 ポジション別序列

 

システムは昨季までの基本布陣である433を想定している

 

①CF

 

主力 ハーランド

控え フォーデン、アルバレス

 

ここは当然コアはハーランドになる。主力としての活躍を望みたいところで、一番の得意技である裏急襲がとりあえずは中心で、既存スキームのロークロス爆撃も実施されるだろう。ただ怪我体質であることを考えると、アルバレスやフォーデン起用も求められる。

 

433のCFだけでなく、4231導入、442導入により2TOPをオプションとして使い、ハーランドと誰か、というデュオもあるか。FWデブ神も十分考えられ、新加入の2人であるハーラとアルバレスを適応させながらも最適解を探ることになる。

 

後方からの縦ポンや裏抜けとロークロス、そして出来たらハイクロス攻撃、こういった部分をどれだけ得点パターンとして確立出来るか、が鍵を握るだろう。

 

②WG

 

主力 マフレズ、フォーデン

控え グリーリッシュ、アルバレス、パーマー

 

ジェズスとスターリングの2人を放出しWG部門はアルバレスのUT性とパーマーの成長に賭け補強は見送られた。フォーデンは右でのプレーも増えるだろうが、勝負スタメンにおいては右はマフレズになるだろう。

 

グリーリッシュは純正レフティLBの加入が事実上見送られたことの煽りは受けるだろう。ハーフスペースへの侵入はカンセロに遮断される可能性がある。LBがゴメスの際にはグリーリッシュを起用、カンセロの際はフォーデンというセットでLWG+LSBは固定するか。

 

③IH

 

主力 デブ神、ベル

控え ギュン、グリ、パーマー

 

世界最高峰とも言われるシティのMF陣、特にIHは鉄板の二人にキャップがカバーに入る形が今季も採用されるだろう。ここにグリが一定の出力が出来るなら何の心配もない。パーマーもFW起用に集中出来るはずだ。

 

ベル離脱も考えるとレンタル先でマカティの成長に期待したいところだが、現実的には2ボラを採用しリスクを軽減するだろう。デブ神を10番にコンバートさせ、デブ神の後継をトップ下でもSTでもどちらでも対応出来る形を用意することも視野に入る。そうなると2ボラなのでロドリの相方はフィリップスでも務まるだろうし、ここはペップの運用に注目したい。

 

 

④DMF

 

主力 ロドリ

控え フィリップス

 

世界最高峰の4番ロドリが君臨するポジションにリーグでも屈指の国産4番フィリップスを加入させた。もちろん4番の層を厚くすることも狙いだろうが、ベンチにフィリップスを置き続けるとは考え難い。

 

おそらく2ボラで横に並べての同時起用、フィリップスCBでの縦に並べての同時起用が考えられる。ロドリにはないロングフィードの正確性や飛び出してのプレーと運動量をもつフィリップスの運用は鍵を握るだろう。

 

ロドリが昨季は1年完璧なイニングイートを見せただけに、フィリップスは遊兵として様々なポジションで起用出来るだろう。SB、CB、DMF、IHと様々なポジションで試されるはずなのでフィリップスのUT性に期待したい。

 

⑤SB

 

主力 ウォーカー、カンセロ

控え アケ、ゴメス、エスブランド

 

剛のウォーカーと柔のカンセロのラテラルコンビは今季も健在か。出来れば守備的LBが欲しいところだが、安定の純正LBレスで今季も戦う。RBが2人、ユースLB一人と元MFのLBが一人とLBの不安は解消されていない。

 

今季のSBは偽SBスキームに加えて、更に前のIHポジションにまで進出し、機を見て飛び出す方向性も求められており、ますます主力クラスでないと対応出来ない難解さ。アケは対応出来ないだろうし、ゴメスとエスブランドも荷が重すぎる。

 

主力2人が出れるか否かで大きく差が生まれるポジションであり、チームの挙動に大きな影響を及ぼすので、ウォーカーとカンセロのイニングイートは相当なレベルを求めたい。

 

⑥CB

 

主力 ルベン、ストーンズ、ラポルテ

控え アケ、フィリップス

 

絶対軸ルベンは良いとして、問題は相方だ。手術明けのラポルテと怪我がちのストーンズの2人で出場時間を分け合う形が理想か。そこにアケがどこまで食い込んでこれるか。フィリップスもUTで対応するかもしれないが、現状では厳しいか。

 

クロス爆撃や裏抜けを含めロングパスの精度は重要度を増すため、ラポのフィード力やストーンズのパスセンスは求められるはず。ただSBを両方インサイドに入れるスキームの導入のため帷を抜けてきたアタッカーを止める役割が、特にビッグマッチでは要求されると思うので、そういう意味でも理不尽な防御力を持つCBが欲しかったところだ。

 

来季、狙いのCBかLBがいるためにクク獲得を見送ったとするなら、今季は我慢の運用となるかもしれない。昨季のDFコアのプロテクト失敗から学び健康体を主力には保って欲しい。

 

⑦GK

 

主力 エデルソン

控え オルテガ

 

狂気をまとうペップシティのポルテーロのスタメンは今季もエデルソンで決まりだろう。控えにW杯を見据え出場時間を求めてレンタル放出されたステフェンに代わるGKとしてオルテガを獲得。

 

プレー集を見る限り、足元のテクニックもある模様で、これは自分の念願でもあるエデルソンのLB起用という狂気が見られるかもしれない笑。まぁそんな事はないだろうが、ここは鉄板のクレイジーエディがいるので心配はしていない。

 

ハーランドへの縦ポンや裏一発は大きな武器となるはずなので、エデルソンのフィードが輝く瞬間を多く見られるかもしれない。

 

 

第2部 イシュー

 

2-1 新入生紹介

 

①ハーランド

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ノルウェーの巨人にして支配層最終生産者候補のハーランド、一体どういう選手なのか、ドルトムント時代の2年半を見ていくことにしよう。

 

ブンデスリーガでの成績を見ると

 

21/22 1915min 22G7A

20/21 2410min 27G6A

19/20 1066min 13G2A

 

19/20の冬に加入してからコンスタントにゴールを挙げていることが分かり、その得点率も20/21の89.25min/Gというハイアベレージから21/22は87.04min/Gと向上が見られる。そしてこの向上こそがハーランドの最大の強みと自分は考えている。

 

リーグ戦での62G全てを何度もチェックすると、裏抜けが4割、ロークロス爆撃が3割という形で、相手SBとSBの間、もしくは相手CBとSBの間を走り抜ける、いわゆるゲートを抜け出してのゴールが多く、ボールを引き込み、ゲートを見つけて走り込み左足で強烈なシュートを見舞うのが十八番だ。

 

ゴールは左足49右足8ヘッド5という左足を使うケースが多く、高身長の割にはハイクロスを得点変換することは少なく、スペースへのボールにゲートを通り抜けて到達する。先天的フィジカルを活かすよりも予測を活かして走り込む選手である。

 

左足への依存度、スペースを求めがち、という部分は目に付くが、ハーランドはそれを克服しようとしている感もあり、左足ゴール率は88%から72%に昨季は減らし、ヘッドも前年度よりも2つ増えているため自身もそのことは理解しているのだろう。相手CBが待ち構えていてもフィジカルで競りハイクロスを得点変換出来る選手になれるかが次のステージに行けるかどうかを左右するはずだ。

 

同じ時代の支配層最終生産者のレバンドフスキと比べられることが多いが、潰しが利き多様な生産パターンを持っていながらも必殺のハイクロス爆撃を有していたレバとは異なりハーラは裏抜けを得意としながらも多様性を獲得している途中と言えよう。

 

シティ初年度では、まずデブ神やチャンスメイカーのスペースへのパスにゲートを破って到達し左足を振り抜く得意技を磨きながら多様性を身につけて欲しい。

 

最終到達点として望むのは

 

相手が4バックだった時は自軍WGがSBを引っ張りゲートを作り、そのゲートにハーランドが飛び込み最終生産する形

 

加えて相手が5バックだった時は自軍WGからのハイクロスを最終生産する形

 

この両立を目指して欲しい。

 

ゲートが閉じている時、何が出来るか、おそらくそこはペップの指導や、その狭いスペースでも通せるほどのシティコアメンバーの精度で解決していけるか。そしてWGの質だろう。WGには相手のゲートの幅を調整出来る器用さが求められる。その意味でもフォーデンは必須になるだろうし、アルバレスもUTとして貢献が求められるはずだ。

 

めっちゃ体のデカいヴァーディのような選手が今の印象で、ここからどこまで上積が出来るか支配層になる時間をゆっくり楽しみたい。何度も言うが、最大の武器はフィジカルではなく、苦手分野を認識しながらも学習し向上するインテリジェンスにあるので、シティでの研鑽の日々が実る日の到来を待つ。

 

アルバレス

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そしてハーランドのインパクトには負けるかもしれないが、アルゼンチンの至宝にしてリーベルの蜘蛛男アルバレスアルゼンチンリーグという事もあり、コア選手になってから日も浅いために21年シーズンだけの数値しか定量的に信頼できるだけのサンプル数はないのだが

 

21年 1584min 18G6A 

 

右足12左足5ヘッド1となっており、66%程度の右足依存なのでハーランドに比べると利き足依存度は低い、ただそれは絶対的な生産パターンがないとも言える。ヒートマップを見るに、右方向に位置するクセがあるようで、チャンスメーカーでゴール”も”あげるというのが実態なのかもしれない。

 

下がってきての左右へのパス配球、加えて右方向に流れての同足シュートやチャンスメークが武器の選手でロングシュートやボックスに入ってのシュート、裏抜けといった部分でも苦手な部分は少なく多様なプレーを見せている。

 

アグエロに似ていると言われるそうだが、どちらかと言うとフィルミーノのようなチャンスメーク型FWに近く、重心の低いドリブルと本人の国籍と所属クラブの関係で比較されるかもしれないが、ほぼ似ていないと自分は感じた。

 

シティではまず生活とリーグ強度に慣れ、RWGでのプレーで多様性を見せ、そしてハーラ離脱時は9番として生産してくれたらと思う。目指すべきはミュラー、ディバラ、グリーズマンのような選手になろうかと思う。

 

③フィリップス

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フェルナンジーニョの退団に伴い補強された4番でありビエルサの教え子、ヨークシャーのピルロことKP。ベル退団に備える意味でも良い補強と言えるはずだ。

 

マルセロビエルサという狂人は皆さんご存じだろうか?LVGの率いたマイティアヤックスの研究から独自の理論を構築し、その理論の実践により様々なチームで驚きをもたらしてきた。

 

ビエルサのサッカーは再現性のサッカーであり、当人が語るように125パターンのフットボールにおける場面を切り取り細分化し、ケーススタディとして最適挙動をドリル形式で選手に叩き込み、守備ではマンツーで責任の所在を明確にし、そして緻密に作り込まれた運動量溢れながらも華麗に再現性を持って相手を破壊し尽くすフットボールは一度固まれば、メガクラブさえ食ってしまうスペクタルを見せる。そこに少なくないヲタクは惹かれるわけだ。

 

そんなビエルササッカーにおいて頻出するのが

 

”ポジション下げ”

 

これはペップにも受け継がれているのだが、例えばビエルサは当時潰し屋だったボランチマスチェラーノをCBで起用しており、ビルバオでも4番だったハビ・マルティネスはCBで使われていた。

 

ビエルサがよく使う343はサイドに3枚を並べ強烈なサイド攻撃をデコイにしながら中央でのコンビネーションも織り交ぜる。サイドに多くの人数を割くために、中央は求める再現性の要求に応えるために当該ポジションの選手の類型の技術要求を大きく超えたものが発生する。

 

そこでビエルサはポジションを下げて使う事を好む。IHを4番に、4番を3番に、といった具合にしてポジションを下げる。そうしてブレイクする選手も少なくない。この背骨の安定感と再現性を担保する技術力は絶対なのだろう。

 

リーズで4番に使われたのがフィリップスだった。運動量豊富に様々なところに顔を出すMFだったKPをロングパスの精度に目をつけ、より深い位置で起用した。しかしビダルのようなファイターからアロンソのようなクォーターバック変容をビエルサはしたのではない

 

思い出して欲しいのは20/21シーズン前半のMCIとの試合。フィリップスは4番としてボールを配球する。当然シティはこの配球場所を潰す事を第一に考えるが、その時、IHとのポジション交換やSB位置に降りてのクロースロールで対応していた、しかしこれはただの変位ではない、フィリップスはIH、RB、CB、DMFをこなせるUTである。その位置に変位しても本職として振る舞えるというコアUTであり、これはペップシティが使うコアUTポジショナルそのものだ。

 

ビエルサ魔改造により、中央を広くカバーする元々の良さ、インターセプトやタックルに積極的な部分もそのままにリーズの前線5枚と後方5枚の前後分断サッカーにおける最適4番として仕上げ、そこにUT性を活かした柔軟なビルドアップを可能にする英国の宝石へとフィリップスを仕立て上げたのだ。

 

このコアUT選手がコアUT大好きおじさんペップと合わないわけはないだろう。様々な起用が考えられる。不安は怪我であろう。昨季は出場時間も多くなかったので慎重な運用によって英国のコアUTがシティで輝くのを楽しみにしたい。

 

2-2 チキった10M

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①唯一の欠落、LB

 

アルバレス加入を楽しみに、ハーランド獲得で踊り、KP獲得に胸を躍らせ、残された最後のピースであるLBの獲得候補としてククレジャが取り沙汰され2度にわたる正式オファーが提出されたが最終的にはCHEに掻っ攫われることとなった。

 

最大の争点は移籍金の要求額との差額を埋めきれなかったことで4000万£以上は出せないとしたシティに対し相手方は5000万£を要求、この差額に対し、シティは頑として要求額を満了する意思を見せずに物別れ、要求額を払ったCHEが獲得した。

 

シティは、これまでもマグワイア、ケインに対しても自分達の決めた入札限界価格を引き上げることはしなかった。健全と言えばそれまでだが、金満クラブとは思えないようなムーブであり、サポーターの中でも意見が分かれるところである。しかし我々は知っている、マグワイアとケインを取り逃がした後に到来した選手を、ルベンとハーランドである。

 

おそらく、DFコアの形成としてLBに守備型を使うのではなく、LCBにグヴァルディオルを獲得するつもりなのでは、と見られている。ククレジャに文句はないが、評価としてペップを含めた上層部は金銭投下は見送る決断をしたのであろう。そしてMFである。デ・ブライネも中堅後半で、ギュンは契約終了年、ベルは移籍願望、とMFの再編成は急務と言える、その中でベリンガムもターゲットなのかもしれない。

 

いずれにせよ、シティのLBがコアレベルの補強なしに終わった代償はどこまで高くつくかは今季の一大イシューとなる。カンセロほど技術もなくアケほど守れるわけでもないジンチェンコの放出にも寛容だったのは、いたとしても必要なパーツではないからなのだろう。

 

純正LBの存在はグリーリッシュを輝かせ、大一番、特にCL優勝の可能性を上げるものとなるがシティとしてはラストピースとしてククレジャよりも魅力的な選手を来季オフに狙うつもりなのだろう。そこでチームを完成させる予定なのかもしれない。

 

出し渋った10Mの重みを感じないような運用が求められる。

 

②グヴァルディオル

 

来季の獲得が噂されているグヴァルディオルにも触れておく。RBライプツィヒ所属のDFの選手で、左利きだが左右両方でのフィードが可能で、最大の魅力は飛び出して潰す対人能力の高さであり、シティOBだとオタメンディが近いかもしれない。ただオタメンディよりも技術力があり持ち上がってのプレーも得意としているようだ。

 

ただ、この類の選手特有なのがやらかし癖である。飛び出してのプレーは判断を間違えば命取りともなってしまうので相手が強豪になった際のプレー選択が、どの程度出来るのかは今季一年じっくりみたいと思う。

 

理想なのはラポルテよりもやらかさず、アケよりも怪我せず、ストーンズが健康体ならLBとしてプレーし、ストーンズが出られない時はLCBとしてプレーするという具合だ。これが出来る選手を求めたい。

 

そしてグヴァルを獲得したとして23/24シーズンのDF運用としては

 

RSB ウォーカー、(ストーンズ)、(カンセロ)

RCB ルベン、ラポルテ

LCB ストーンズ、(グヴァル)

LSB グヴァル、カンセロ、ゴメス、エスブランド

 

といった形が想定される。

 

今季一年の挙動にもよるが、おそらくアケは放出が濃厚で、エスブランドとゴメスも競争に負けた方はレンタル放出で換金要員と化すはずだ。ラポルテはRCBでもプレーしており、来季のグヴァル到来を見越している可能性もある。

 

大事なのはストーンズの体を守り抜くことと、カンセロを大一番でプレーさせなくて済むような運用が出来るかどうかである。

 

来オフはチキらない金満らしい夏を期待したい。

 

 

2-3 戦術面

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①ホールドープ

 

偽9番メッシ。ペップが作り出した最高傑作だ。この起用法自体は古典アーカイブに眠っていてローマでもトッティが偽9番としてプレーしていた。しかしペップの狙いは偽9のリバイバルをやったわけではなく、コアUTであるメッシを9番に起用した事に意味があった

 

メッシはドリブルで交わせるために10番位置に下がっても相手CBは飛び込みづらく、更に味方WGに裏抜けが得意なタイプを設置することで相手4バックの4人はWG2枚に釘付けにされ、特にCBは存在しないCFをマークする羽目になる。この-2を活かしてピッチ上に無数の数的優位と位置的優位を形成することで試合を支配したのがペップバルサだった。

 

半導体の中で、電子がエネルギー帯を移動すると、元のいたエネルギー帯には電子のいないスカスカの状態が生まれる。電子は負の電荷をもつ粒子であり、この電子がいない状態というのは、負の電荷を持つ粒子の欠落つまり正の電荷を持つ粒子で詰まっていると見ることができ、この仮想の粒子をホール(正孔)と呼ぶ。

 

ペップは偽〇〇と呼ばれるものをいくつも披露してきた。しかし、それらはペップによるホールドープと見て取れる。そこから選手を消す(移動させる)ことで、そこに偽選手を出現させ、その偽選手をマークさせることで、ピッチ上のどこかで優位性を獲得する。

 

偽9番は架空の9番を相手CBにマークさせ、偽SBは架空のSBを相手WGにマークさせ、付いて来れば相手はバランスを大きく崩す。大きくバランスを壊してまでマークにつくべきかの逡巡の間にボールは前進していく。このドープされたホールを利用した秩序を崩すゲームチェンジこそがペップが長らく欧州戦線の中心にいる理由だと自分は見ている。

 

ペップがプレミアに到来したことで、相手は嫌でも5レーンを意識した守備を構築するようになり3バックも見慣れるようになってきた。そこに対してペップはホールではなく、電子ドープ戦略としてカンセロロールを用いたが、彼の本懐であるホールドープも昨季は見られた。

 

ペップは5レーンを捨てたのではないか?

 

昨季のシティは442を使うことが増えた。5レーンに4枚を並べ、意図的にどこかのレーンからホールを生み出す。その-1をうまく使うということにチャレンジしているのでは、と自分は見ていて、メッシの時のように2WGで4バックをピン留めした時のように5バックに対しては3枚のアタッカーによるピン留めで−2を形成するというプランがあるのかもしれない

 

5レーンアタックへの興味が減退しておりバルサ時代のホールドープの応用を考えているのか。2323ダブル偽SBはカウンターチームには厳しく41ビルドで回避するのが昨季だった。しかし今季は2323を強豪相手でも臆せずぶつける算段なのかもしれない。CBからの楔をSBが受けてボールを運搬しながら、相手ボールになってもIH裏にダブルSBの壁を築き即時回収しペップの願望であるずっと俺のターン”を可能にするか。

 

この2323のリスクヘッジとして4231も準備しており、そのための4レーン戦略なのかもしれない。いずれにせよ、何か面白い事を見せてくれそうでワクワクしている。

 

②第3の時代

 

アグエロロークロス爆撃時代

ゼロトップリキッドフル時代

そして第3の時代はハーランドWW時代なのかもしれない。

 

ハーランドの得意技は前述したように、ゲートを抜けてのロークロス爆撃と裏抜けだ。そしてこの2つはシティが6年間やってきたことでペップシティの基本戦略の変更はないと思われる。やることはいつも通りサイドを深く抉っての折り返し、中央からのゲート破り、ポケット侵入といったことばかりだ。

 

恐らくハーランドの主武器がゲート破りにあることは相手チームは早々に気づくはずだ。だからこそ敵軍はゲートを狭める、つまり横幅に選手を増やす事を第1に考えるだろう。つまりは5枚を並べ人と人の間の距離を狭めハーランドの侵入を潰しに来るはずだ。シティとしてはこれが本当の狙いなのではないか。ハーランド起用で相手はゲートを狭くし余った選手もプレスにこようとしようものなら、突撃守備者によるゲートの開きを見逃さずにデブ神からゲート破りのスルーパスが出てハーランドが決める。相手3バックをハーランド一人でピン留めさせられないか、考えているはずだ。

 

そうすれば前述したように-2が生まれ中央での数的優位が生まれる。バルサではメッシが降りてきたが、ハーランドは降りずに、その中央にはSBが2人やってきて優位性を固める。

 

これが狙いなのでは、と見ている。

 

ハーランドのゲート破り能力を利用した5バックピン留めホールドープスキームこそが第3の時代のペップシティの基本形態になるかもしれない。

 

前半戦はハーランドのゲート破りと裏突きで恐怖を与え、相手を低い位置に縛り上げる。これは昨季もやっていたが、ハーランドでは訳が違う。完結性が向上しカウンター発生率も下がるのでリスクは軽減される。ダブル偽SBシステムの被カウンターリスクよりもハーランドによる5バック金縛りが機能するはずだ。

 

前年までのカンセロロールも含めて様々な取り組みは継続するだろうが、ハーランドを投入したメリットとしてバルサ時代の偽9番の本質であったホールドープ、そしてバイエルン時代の偽SBの両立を果たすのではないか、と自分は予想している。

 

③ゼロペップ時代

 

ペップ政権は終焉に向かっている。それは誰もが感じているはずだ。チームを前進させられなければ職を辞すと明言しているペップにとってシティの完成度と熟成度は限界へと近づいていると言える。

 

ポストペップも考慮に入れながらチーム作りを進めているように見える。これまでもそうだったように支配層最終生産者と使い方マニュアルを置いての辞任はハーランド加入で近づいているし、更にシステムに関しても、より汎用性のあるものへとなっている。

 

デブ神の後継として同様の選手ではなく10番でもSTでもどちらでも良いようにデブ神のプレースタイルを変更させており、ベル退団にも備えてフィリップスとロドリの2ボラも試しておくはずだ。ペップがいなくなっても4231でデブ神とハーランドのコンビによる高速カウンター型チームとしての素朴な運用も可能になっていくはずだ。

 

ペップはずっとW杯を戦いたいと明言してきた。今年はW杯イヤーであり各国の代表チームの結果に伴い、もしかしたら空位状況を見ながら将来を見極めたいからこそ契約延長を保留しているのかもしれない。

 

ただ、ペップを見続けてきたものとして、彼が代表監督として成功するか疑問はある。質的な要求が高いサッカーを具現化するのにクラブは補強できるが代表は異なる。更に最終生産者も国籍の縛りがあるためシティのようにゼロトップを強要されるかもしれない。

 

その中で理想のチームはイングランドだと自分は見ている。ケインがいて、若手も育ってきているし、何よりイングランドのクラブで7年間過ごした経験は信頼のあるものと受け止められるはずだ。個人的にはシティでLBいないよーと頭抱えながら新規性のある発案をし続ける彼を見続けたいものだが笑。

 

デブ神の後継を含めた中盤の再編成、DFコアの見直し、レンタル組の処遇、こういった部分にケリがつけば退団は組織としては問題なく実施できるはず。

 

問題は後任監督だ。バルサバイエルン両方でペップの最終生産構造の遺産を引き継ぎ3冠を達成したのがエンリケとフリックだった、両名に共通するのは、当該国と当該リーグへの理解があり、一定の指導経験もあることだ。

 

ペップらしさを求めるならナーゲルスマンだろうが、個人的にはプレミア経験があり指導者としてのキャリアも豊富で保守的にチームを運営出来る人物としてマンチーニポチェッティーノを推薦したい。両名共にMCI、TOTでの指導経験もありプレミアリーグを知りながら海外での経験もあり期待出来る。革命家の次に必要なタイプなのではないかと考える。アルテタ、ヴィエラ、コンパニは、まだ早い。ペップ革命から保守的にリフォームして、そこからの新時代を託す時に考えるべきだろう。

 

何はともあれ、ペップがシティを辞めて保守的なサッカーが続くと自分はシティズンでいられるのか、それも分からない。自分はバルサバイエルンのサポーターにはなりきれなかったしペップチームの定点観測者なのかもしれない。

 

仮にペップがミランにでも行こうものなら、シティのことについて熱心に語っていたアカウントがいきなりForza Milan!!!とか言い出すわけで、それなりに炎上しそうで怖い笑。未来は分からない。そんな不可測な世界で無秩序だった秩序を形成する変態指揮官の未来に期待する。

 

 

最後に

 

www.youtube.com

 

マジックマジャール、1950年代に4年間無敗を誇ったハンガリー代表。その異名の由来はシステムにある。3232の布陣は上空から見るとMの字が2つ縦に並んでいるように見える。そこから頭文字を取って 

 

Magical Magyars

 

と名付けられた。この覇権チームは、とある男が種をまいたことで始まった。ジミーホーガンである。マンチェスター生まれのジミーは英国由来のダイレクトフットボールよりもテクニカルフットボールを志向し、この思想をオランダ、オーストリアハンガリーに伝えた。

 

1930年代のオーストリア代表、ヴンダーチーム

1950年代のハンガリー代表、マジックマジャール

1970年代のミケルスのアヤックス

 

の成立に寄与したジミーはアヤックスのCL3連覇を見届けるように深い眠りについた。その当時のアヤックスのエースが偽9番クライフ、そんなクライフはバルサでジミーのトータル思想を伝承し、その種まきは2度の”エルドリーム”をもたらした。

 

2度目のエルドリームの監督ペップはメッシという最終生産者と別れを告げジミーのように宣教の旅に出かけた。そしてジミーの出身地マンチェスターへと降り立った。そして行き着いたのが変幻自在のUT5レーンアタック+偽SBダブルだ。

 

それはシステムにすると2323、上空から見ると2つのWが見て取れるはずだ。自分はペップシティの、この最終形態をマジックマジャールに倣って頭文字から

 

Wonder Wallと呼んでいる。

 

マンチェスターシティの大ファンとして知られる著名人ギャラガー兄弟のバンドOasisの楽曲にちなんだネーミングだ。

 

このWonder Wallとは、どういう意味なのだろう?

 

有名な楽曲なので、様々な翻訳が与えられているがノエル自身は、架空の友人に向けて書いたと言ってみたり、当時の妻に対して捧げたと言ってみたりしており、和訳も考えるのが嫌になったのか、ワンダーウォールと翻訳を投げている事もしばしば見かける笑。

 

I said maybe

 

多分言ったとは思うんだけど

 

You're gonna be the one that saves me

 

君が僕を救ってくれるのかもしれないって

 

And after all

 

とどのつまり

 

You're my wonderwall

 

君が僕にとってのワンダーウォールなんだ。

 

 

ペップはずっとメッシ、レバに連なる支配層生産者に苦しみペップシティにとって覇権へと導くラストピースが分からず苦しんできた、まるでwonderwallの訳語を思いつかず苦しむように、そして、その答えがハーランドだと信じて戦っていく、そんなシーズンに付合した歌詞だと感じる。

 

wonderwallとは一体なんなのだろうか?

 

その答えがハーランドであると自分は信じたい。

 

ペップは支配層最終生産者と、その生産性を最大化するスキームを残してきた。

 

バイタルエリアでメッシの前を向かせるための裏攻めと外攻めの設定

レバミュラに目がけてハイクロス爆撃のスキーム

 

この2つはペップが去ってから

 

エンリケの3冠MSNバルサ

フリックの3冠バイエルン

を産んだ。

 

もしかしたらハーランドも同様に最適生産過程のメソッドを残しシティもペップが去ってから3冠を成し遂げるかもしれない。トータルの種をまき偉大な3チームを産んだジミーのように偉大な最終生産者の活用メソッドを残し偉大な3チームをペップが残したとすれば、それはそれで面白い。出来ればペップ政権での大耳制覇を見てみたいが。

 

シティにとってのWonderwall(ラストピース)であるハーランドの到来でついにペップの望む最高の終幕に向けて走り出す今季。本当のWonderwallは左サイドバックだった、というオチもあるやもしれないと心配している。そうなってくるとますますメンディを恨んでしまいそう笑、まぁ彼もある意味壁に囲まれた場所にいるわけだが笑。

 

wonderwallを手に入れたと信じ、今季こそ7度目の正直で大耳制覇を祈っている。ペップが率いる最後のフルシーズンのクラブチームになるかもしれない覚悟で応援したい。

 

C'mon CITY!!!!!!!

犬鳴村を見て、、、夏

まぁ、そんな大層なことを書くつもりもないんですよ。一昨日に足を痛めまして、歩いて移動するのも億劫なので、ネットフリックスで映画でも見るかーと思い、本日から映画『犬鳴村』が配信されたとかで見た次第で、そして思うところかを駄文として書き連ねでもしようかと思い、ダラダラ書いている次第で笑。

 

こう見えて、僕はホラー好きなんですよ。まぁ、どう見えてるか分かりませんが笑。

 

ただ、それはホラーを面白がってるというよりも、Jホラーという構造物の欠陥を見て、学ぶところが多いなーと眺めてる僕は、製作者サイドからすると、クッソ面倒な客な訳で笑

 

というのもホラー作品は強度が低いんですね。

 

説明します。

 

まず、ホラー作品、大抵は呪いの物語をここでは対象としています。

 

物語とは着想と展開構築の2段で構成されます。題材として何を選ぶか、そしてその題材を使って、どう物語を展開していくか。

 

ホラーの場合は容易に出来ます。まず、ネット上で噂になっている心霊スポットや心霊話を見つけます、そうすればまず着想はOK

 

次に展開構築ですが、これも容易、だって呪いってめちゃくちゃ便利ですから。

 

まずサスペンスとかだと殺人や殺人未遂、襲撃といった山場において、動機や方法を考案する必要がありますが、ホラーはそんな必要はありません、全部、呪い、で武装出来るので。

 

いきなりTVから実体が出現しても、闇に突如引き摺り込まれても、瞬間移動しても、全て呪いの能力なんでOK、で済ませてしまえる訳で、

 

だからホラーって面白くなりようがない訳です。手垢の着きまくった噂話を作り込みの浅い展開構築を用いて死者を出現させて、特殊メイクで怖がらせれば事立ってしまうので。

 

Jホラー作品が、『リング』、『呪怨』といったクラシックを永遠に超えられず、マイナー分野に止まってしまっているのは、上記の事情に加えて、製作者の愚かな勘違いがあると自分は考えています。

 

それは、怖がらせる事を驚かせる事と履き違えている点です。

 

後ろから突然ワッ!!と言われると驚きますよね、でもそれは恐怖とは少し異なる。昨今の日本ホラー映画は基本的にこればっかです。怖がらせるような、ゾッとして延々と胸に去来する恐ろしさがない。刹那的な驚かせの連続に辟易するわけで。

 

驚いてるだけで良いので、役者に求められる演技力も必要ないため、ホラー作品の主演において、アイドルやモデル上がりといった演技経験の浅い人物が起用されやすいように見える。

 

近年のホラー作品だと、YouTubeブームの反映からか、動画をバズらせたくて呪われると噂の心霊スポットに行って見たら、実際に呪われちゃって、それを確かめるために第2班が、その場所へ向かうと不思議な現象に遭遇、というパターン。

 

本作は、モロにそれでした笑。

 

ネット上で噂の犬鳴村伝説から着想を得て、肝試しで動画を回してたカップルのうち、女性の方が呪われてしまい、帰宅後、謎の自殺を遂げ、彼氏が第2班として犬鳴トンネルへ出動、またも呪われ行方不明、それを追って主人公を中心とした第3班が出動する。

 

おい、何度目だ、この展開よー笑

 

ダム計画によって理不尽な殺戮と浄化という悲劇に見舞われた犬鳴村の人々の怨念が、そのダム計画を推進した男の子孫である主人公に降りかかるというもので、犬繋がりの”犬神家”っぽい血塗られた先祖の現在を背負う子孫というのは、あぁなるほどとは思ったが、例の如くのめちゃくちゃストーリーと驚かしに終始する内容で、あぁ、また凡作を見てしまった、と

 

また、つまらぬものを切ってしまった by石川五右衛門

 

的な感情が胸に去来したのであった。

 

ただ、ホラー=愚作という近年の構図に争う、それこそクラシック名作ホラー作品は、なぜ未だにクラシックたり得ているのか、

 

それは、世相や時代の本質を捉えながら、ホラーというメタファーで表現したから。

 

リングは天然痘ウイルスによるパンデミック呪怨は”イエ”を巡る父権主義の弊害や父の不在がもたらす猟奇的犯罪の発生、を描いていた。

 

ただ、貞子が怖い、伽耶子が怖い、だけではない、きちんとした社会情勢への鋭い視点と描写がそこにあるからこそ、驚きを超えた恐怖を観客に植え付け、いまでも、これら2作品はリバイバルが相次ぐ。

 

今の日本の作家はメタファー構築能力が劣っているように自分には見える。それは音楽もそうだ。より直接的な表現が尊ばれ、物語として構築する能力に欠けているように見える。幾許かの是正も見られれはするが希望は薄い。

 

文句を言うだけなら誰でも出来るので、提案をしようと思うが、コロナ禍というものを物語に落とし込むのに最適なのはホラーである。天然痘ウイルスによるパンデミックを描いているリングを見れば前例もある。

 

是非とも、面白いホラー作品に出会いたい、そう思いながら、今日も完備性のカケラもないホラー作品の死屍累々を眺める訳である。

 

コロナ禍、ウクライナ情勢、新興宗教2世問題、それこそ題材は転がっているのだから、ホラー作家のメタ能力に期待したい。

 

しかし、足の筋が痛い、調子に乗って歩き回るもんじゃないなぁ。笑

 

では、またの機会に、次回更新はマンチェスターシティ22/23シーズンプレビューです。

 

お楽しみにーーー。

 

追伸

 

犬鳴トンネルに突撃したYouTuberさんの動画貼っときますねー。

 

www.youtube.com

 

レペゼンVS犬鳴、この動画を見ると不思議と元気が湧いてくる。皆さんも是非ご覧あれ