牽牛星のよろず日記

自分の興味あることを思うがまま記述したいと思います。

ペップバルサ総論

 

 

⓪once upon a time

 

クライフの予言

 

『攻撃か守備か、フットボールの未来を決める試合になるだろう』93-94シーズンの大耳決勝前のバルサ監督クライフの言葉だ。

 

10番無双時代、攻守は分断され多数で守り少数で攻める文化の中で単独で守備組織を破壊する天才マラドーナバッジョデルピエロにサッカー少年は憧れセリエAは世界最高峰のリーグだった。

 

10番無双を止めるべく、ACミラン監督サッキは攻守分断の体系を否定しコンパクトな布陣でボールを狩る守備戦術ゾーンディフェンスを考案。クライフが選手として牽引したミケルスのオランダ代表の守備戦術のアレンジだ。10番は包囲され中央で居場所を失った。442のラインで整然と囲い込んでボールを奪う手法の流行はスプリントの多さと運動量から選手に求められる素養として肉体強度が技巧よりも優先された。

 

そんな時代への対抗文化としてウイング活用、ポゼッション、ハイラインDF、リベロGKという攻守一体のトータルフットボールで世界を魅了したチームこそクライフバルサ。91-92シーズンにウェンブリーでサンプドリアを下し大耳を勝ち取る。その中心が4番ペップ。ヘソとしてワンタッチでボールを弾き続けチームに活力を与え、下部組織出身のチームの顔だった。

 

サッキミランを引き継ぎ守備的で強固なチームを作り上げたカペッロミランアテネにて4-0でバルサを下しフットボールの未来は堅牢ゾーン守備と、それを破る技巧のぶつかりが主戦局面となりクライフ描像は過去のものとなった

 

 

伏線

 

クライフがバルサ監督を辞し、ロブソン招聘、通訳モウリーニョカタルーニャへやってきた。 ロブソンの短い治世の後にファンハールが就任し強さを取り戻しかけたが主力と衝突、カンテラ軽視を問題視され任を追われ、クライフの顧問弁護士ラポルタがバルサ会長になりライカーが招聘、再びバルサは欧州で躍動。

 

中央をゾーンで潰され自由を奪われた10番はサイドで偽翼のファンタジスタとなりマドリーではジダンフィーゴが銀河系を構築しバルサではロナウジーニョがクライフ時代以来の大耳優勝をもたらした。

 

戦場が中央からサイドへと移行し、モウリーニョはWGに守備意識を求め、ボランチ、SB、WGで挟み込みサイドでボールを狩る組織チェルシーで『スペシャルワン』となり、そこに『ロブソンの通訳』の面影はなかった。

 

モウは4人のDFと2人のMFの6人で守り前線の3枚とトップ下の4名で攻撃するという攻守分断スタイル。堅牢な守備陣と攻守に働く10番、サイドの片側は労働者、もう片方は突破屋、トップに屈強な9番を置く。

 

マスコミ敵視、審判攻撃、舌戦で自軍へのバッシングを誘い自軍選手を徹底的に庇い士気をあげ、戦術的ピオリダイゼーションに基づく4局面循環理論を軸とする練習、徹底したスカウティングによる分析を用いて富豪の道楽と言われたチェルシーをビッグクラブへ引き上げモウは名将の仲間入りを果たす。

 

イカー政権終焉後の08年にモウリーニョ招聘が議論され始め、モウ本人もチェルシーを辞めフリーだったため、バルサ帰還が噂されるも、選ばれたのはモウではなくペップ。こうしてモウはインテル指揮官、ペップがバルサ指揮官におさまり平和に終わったかに見えたが、両者は2年後苛烈な戦争を引き起こす。

 

 

①08-09 クライフ主義

 

ペップの帰還

 

2001年にバルサを去ったエルドリームの4番ペップはカルチョで多様性を学び、ドーピング疑惑と戦い疲れ果て中東へ向かい、最後はメキシコで尊敬するリージョと共にフットボールの可能性を議論し引退後バルサへ帰還した。

 

バルサB監督(バルサの下部組織)を務めリーガ4部から3部へ昇格。その後はエンリケが監督を務め1部昇格権まで獲得するほどにカンテラは強靭化する(同組織のチームは同リーグにいられない規定で2部残留)。

 

バルサBでトレントプランチャルトを分析官に任命し、相手チームを研究するスタイルの構築、パススピードの向上とポジショニングの修正、守備意識徹底による攻守一体のクライフ主義をもたらした。当時バルサBは3部リーグから落ち、ピッチの内外における改革を求めていた。

 

ペップはクライフからトータルフットボールを学び、カルチョで守備的文化を学び、メキシコでリージョと議論した。バルサのトップチームの指揮官に就任する前にアルゼンチンへ飛び、11時間の対話をビエルサと交わす。そしてカンプノウへ帰還。ウェンブリーの歓喜アテネの悲劇、エルドリームを誰よりも知るクライフの『息子』はバルサバルサ化する

 

整備

 

バルサ監督就任会見でロナウジーニョ、デコ、エトーを含まないチームを考えている。彼らの行動を検討し判断を下した』イカバルサの中軸放出宣言に加えチームの規律を徹底。集合時間厳守、体重管理、夜間外出制限を徹底した。

 

08年は永遠の優勝候補と言われ続けたスペイン代表がEUROで優勝し監督アラゴネスは4番にセナを置き、ラウールというエゴの強いエースを代表から外し黄金の中盤を用いたポゼッションスタイルで優勝した。エゴを排しボールプレーに殉じタイトル獲得、ペップ改革路線導入においてラロハの成功例は説得力のあるものになった。

 

 

● GK

 

正守護神バルデスが健在で控えGKジョルケラが膝の故障で長期離脱していたが、レンタル中だったピントを買い取り。バルデスはペップの求めるリベロ的なポルテーロとしてペップ政権を支えた。

 

● CB

 

主将プジョルと4番適合可能なマルケスミリートを残しテュラムとオレゲルを放出、若返りのためカセレスエンリケ、後の大黒柱ピケ獲得。プジョルがプレー出来る時間が緩やかに減り始めた事で流動的な起用も増えた。

 

● SB

 

ザンブロッタを放出したRBに信頼のセビージャブランドのアウベスを獲得、メッシとの縦関係は相手の脅威になりバイタルへメッシが移行する際には右全域をカバー。攻撃的な『右』の影響から『左』はバランスに優れたシウビーニョとCBのアビダルが使われプジョルも駆り出された。

 

● CMF

 

バルサのヘソ、4番にはヤヤが起用、控えのエジミウソンが移籍したため、カンテラの教え子ブスケツ引き上げ。

 

● IH

 

デコはチェルシーへ放出、司令塔チャビの相方はカンテラの宝イニエスタポリバレントグジョンセンも控え、フィジカルに優れたハードワーカーケイタガナーズからフレブを獲得。

 

● WG

 

ロニーはミラン放出、偽翼の10番はメッシへ継承。左は前年度不調だったアンリが躍動し、ドスサントスが放出、ボージャンが控え、アクセントになるジェフレン獲得。

 

● FW

 

構想外エトーは攻守に著しい貢献で信頼回復し絶対的9番として君臨。ペップと衝突したプレイヤーとして扱われる事が多いが、練習態度が悪かったりするロニーやデコとは異なり、守備も厭わず全力でプレーするお手本のような選手で途中出場で不貞腐れていたのをロニーに批判されたことに対して感情的にメディアに発言した事が不安定分子とみなされただけで基本的には最高峰の選手の一人なのだ。

 

しかしエトーは全力で戦う事を認めてもらえたがりすぎる、というのが厄介なのだ。チェイスも厭わず実施するが、その事を評価して欲しいと強く主張しすぎる、この事が小さくない障害を生む。エトーバルサは自分のチームである、と考え、それを毎試合証明するために奮闘した、しかしバルサはペップの『輸血』によってカンテラ出身のメッシのチームへと変貌する。

 

 

どう、戦うか 

 

まずペップはライカー時代のクラックの閃き頼みを否定。再現性を高めたチームを建築。目指すのはボール狩りとボール保持の2局面循環クライフ描像の現代的表現

 

フットボールは4局面(保持、被保持、迫撃移行、被迫撃移行)、3フェーズ(組立、保持、崩し)に分けられる。ペップバルサは、この4局面3フェーズにおける振る舞いを定義しバルサに独特のイデオマをインストールした。

 

ボールをコンパクトな布陣を用いて全員で運び、奪われたら囲い狩り、攻撃の最終到達点バイタルエリアを解放し、最適姿勢で受けられるように試行し続ける

 

1、組み立て

 

GKは最後尾のパサーとしてロングボール陣地回復よりも繋ぐ。そのためパスコースを増やす為に前線へのプレス回避術として適用されるのがサリーダ(出口)。

 

前プレ人数+1でビルドアップ隊を形成。大抵2人でプレスに来るので2人のCB+仮想3番でプレス回避し第1ラインを超える。4番を降ろしての疑似3バックもあったがチャビが降りるのが最も安定的。プレス回避のための仮想3番が肝

 

2CBにボールが入ると仮想3番が降り、余ったCBがドライブしてボールを持ち運ぶ、4番はマーカーを引き連れ移動しドライブするための経路を作り。余りCBへのマーカーはおらず、敵の誰かがプレスすれば、その敵がマークしていた選手が空き、そこへパス。

 

仮想3番が寄せられると、一端後方にパス、中盤へマーカーを引き連れて移動し後方のビルドアップ隊が動きやすいようにスペースを創出すべく相手中盤の選手が出て行くには微妙な距離まで仮想3番は出戻る。

 

チャビが仮想3番ならチャビのIHエリアにメッシが移動、4番が仮想3番なら4番エリアにチャビが移動、ボールを受け中盤まで運ぶ。

 

 

2、保持

 

前プレを回避したらCB2名は対人に強い方が前残り相手FWにマーク、もう一人のCBはカバーし中盤で循環不全になった場合の逃げ場所を作る。DFラインは高くし中盤との距離を近くコンパクトにする。楔は対人CBが潰し、裏抜けはフォローCBとGKの飛び出しによって防御。

 

保持移行する際アウベスは仮想RWGとなる。RWGの位置にいたメッシは中盤へ移動。中盤でメッシ、イニエスタ、チャビ、ブスケツの4名が中盤を形成。9番は相手後方裏への牽制でDFラインを押し上げ、左翼も裏抜けや外突破でDFラインを牽制。パスは短い方が成功確率も高く安定的なポゼッションが望めるのでショートパスを基調

 

相手が中盤3枚(433とか4231)ならば4番がフリーになり、相手が中盤2枚(442)なら黄金の3人のうち一人が余り数的優位が確保。そして位置的優位を確保するために三角形を用いたポゼッションが発揮される。

 

相手を動かすためにボールを回し、受けられない時はマーカーを引き連れスペースを作る、という動きを繰り返す。ボールを奪われたらプレスバックとカウンタープレスで囲いボールを狩る。最良の位置取りで攻める事が最良の位置でボールを狩る事に繋がる、というクライフ描像に基づく攻守一体のトータルフットボールだ。

 

3、崩し

 

バイタルに運んだらコマンド力で得点機会を創出する。バイタルで持つと、DFラインは迂闊には飛び込めない、交わされたら最後だから。エトーはボックスの中でも外でも様々なフィニッシュパターンを持ち、メッシ、アンリもサイドから仕掛けも可能。

 

一番怖いのはメッシ。遠目からミドルも打て飛びついたCBを交わしてドリブルで突進したり、サイドのアウベスとのワンツーでペナルティに侵入し天下無双。このバイタルでのメッシ無双はバルサの大きな武器となり、それが偽9番を生む

 

4、ペップ描像

 

GKからビルドアップ開始

仮想3バックの3421で組立

アウベスが上がりメッシが中央へ移動し3133

奪われたら即時奪還ボール狩り発動

5秒で奪還出来なければ撤退442ブロック

 

これを機械的に繰り返すのがペップバルサだった。

 

ペップのデザイン力と圧倒的なコマンド力を持つ中盤と破壊力抜群の3topによってクライフ描像のアップデート版ペップ描像のバルサは猛威を振るう

 

 

進撃開始

 

シーズン開始当初はライカー時代からの急激な方針転換に戸惑い、リーガでは一分け一敗スタート。ペップ懐疑論も挙がったがアトレチコを6得点で退け波に乗りシェスターの首が飛んだマドリーはバルサ相手に引き籠るしかなく勝ち点差12で首位と、年内でリーガは決着の様相を呈していた。

 

マドリーが混迷を極め、2年前の欧州王者が攻守にハードワークすれば大抵のチームは倒せ、23節まで19勝3分け1敗という圧倒的な成績でリーガを支配。

 

しかし2月中旬から3月初旬に公式戦5戦勝ちなしという苦境。ペップバルサは毎年、代表ウィーク2月中旬に調子を大きく落とす傾向があり、プレスが空転し苦しんだ。

 

バイタル攻撃を終点にデザインされたバルサ対策も進み、バイタルを収縮させてローラインDFで守備特化するチームも増えた打ち合ってバルサに勝つことは出来ない、という諦念からバスを並べ耐え忍ぶチームとの勝負が増えたのもこの頃からだった。

 

ペップはある『実験』を大耳16強リヨン戦で試す。メッシの偽9番。勝ち点差12あったマドリーとの差は4に縮むも、『底』を抜け大耳8強でバイエルンを合計スコア5-1で退け大耳4強チェルシー戦、エルクラシコへ向かう。

 

バルサ相手に引き籠り単騎カウンターを狙うチームは、この頃『アンチフットボール』と呼ばれ、マドリーは、この不名誉を怖がりクラシコで殴りかかってしまうのだが、バルサは常に引き籠った相手をどう崩すか、が課題となり続けた。

 

 

押すか引くか

 

 ● VSマドリー(リーガ)

 

クラシコ前日の22時30分にメッシの携帯がペップからの呼び出しを伝え、オフィスに入るとペップはビデオ画像を指さしながら、メッシに言った、『このDFとMFの間のスペースが見えるか、このスペースで君は明日プレーする。』

 

試合が始まる前にチャビとイニエスタはペップから『メッシを中盤ラインで見つけたら迷わずに配球して欲しい』歴史的偽9番は静かに披露される時を待っていた。

 

チェルシーとの大耳4強1stlegでバイタル埋めドン引き戦術でカンプノウで完封され今季一度も勝てていない大耳ノックアウトラウンドでのアウェイ戦に勝てるかどうか不安を抱えながらクラシコを迎えた。

 

リーガで勝ち点差を詰めマドリーは逆転リーガ連覇の好機。前期クラシコはラモス政権発足数日というエクスキューズがあったが誇り高きマドリディズモはバルサが強くて打ち合えば勝てないので守備的に、は許さなかった(モウが来るまでは)

 

バルサはアウベス、ピケ、プジョルアビダルのDFに中盤はチャビ、イニ、ヤヤ、前線はメッシ、エトー、アンリ。

 

マドリーはラモス、メッツェルダーカンナバーロエインセのDFにマルセロ、ロッベンの両翼にガゴとラスの2ボランチ、前線はラウールとイグアイン

 

試合が始まり、数分してからペップは分析通りの挙動をマドリーが見せている事を確認し、指令を放つ。『レオ、中央へ』そして、混沌がマドリーの前に現れた。

 

ピケから裏抜けするメッシへロングパス、続けざまにチャビから裏抜けするアンリへロングパス、『裏のスペースが、がら空きだぞ、埋めなくて良いのか?』マドリーにボールで質問をぶつける。

 

マドリーの狙いはロッベンとラモスの右サイドの攻撃で殴る事。カンナバーロからロッベンへロングパスが通るとラモスが追い越しをかけクロス、中でラウールが右斜めへのランでピケを引っ張りながらプジョルとアウベスの距離を開ける、そこにイグアインが入り込みフリーでヘッド、先制はマドリー。

 

しかしロッベンは守備免除要員、つまり右の裏が弱点。10番化した9番メッシを潰す為カンナバーロが寄せる、空いたCBにはラモスがスライド、空いたRSBにはロッベンは戻らない、ラスが埋める。メッシから浮き球でラモスの裏へループパス、アンリが抜けだし落ち着いてシュート、同点。

 

そしてセットプレーからチャビのクロスがボックスに入る。ブラウグラーナの波が一斉にゴールへ向かう、一人のCBを残して、そうプジョルだ。フリーでヘッド、お返しとなるヘッドからの逆転弾で1-2。

 

メッシが中央へ降り、イニ、チャビ、ヤヤと共にボールを運んでいく。アウベスが右全域をカバーするためウイングのエトーも群れに加わる。マドリーは数的不利に陥り、ただ殴られ続け、運よく奪ったボールをロッベンに渡すだけ。

 

前半35分、ラスから高い位置でボールを奪ったチャビからメッシへボールが渡る。カンナバーロの必死のスライディング虚しくボールはカシージャスが守るゴールへと吸い込まれていった。歓喜バルサベンチ。ペップは手を叩くだけ。

 

守備に参加しないマルセロとロッベンの2人を残しバルサのパス回しに振り回され続け前半は終了。1-3というスコア以上の絶望がベルナベウを支配した。

 

マドリーの武器はロッベンとラモス。FKからロッベンの前線へのクロスにラモスが合わせ得点。バルサはセットプレーに弱い。セットプレーでのゾーンでの守備をマンツーに変えるべきでは?という質問を何度ペップは受けてきたのだろう?

 

マドリーが息を吹き返し、オープンな展開からの打ち合いへ様相を変える。前線で殴り合えば、まだ勝機はあると踏んだのだろう。ただそれは人と人の間のスペースが広がる事を意味する。バルサの中盤にスペースを与えるとどうなるか、

 

オープンな展開からボールを取り返し、チャビがバイタルでボールを受ける。圧力が一切ない空間でふわりと裏へ抜けるアンリへのラモス裏配球。落ち着いて決め、2-4

 

10番化するメッシを追うのか、放置して引くのか、その迷いがメッツェルダーの足を止め、その刹那にチャビとメッシのワンツーから10番の仮面を脱ぎ捨てた9番メッシがカシージャス目掛けて突進する。2-5

 

前線の単騎突破を主軸とする攻守分離のマドリーは攻勢が失敗すれば、中盤には広大なスペースが広がる。そのスペース目掛けてCBピケがドライブし、メッシに渡し、サイドのエトーへ。折り返しにピケが飛び込み2-6.

 

80分を過ぎ、惨劇のベルナベウから多くのマドリディスタが試合途中に続々と観客が退場していく、まるでAKB総選挙で指原莉乃が1位を獲った時のように。

 

リーガはバルサのものとなった。そして全世界に中盤に広大なスペースをバルサ相手に渡せば惨劇を生む、という教訓が2-6というスコアと共に打電された。

 

●  VSチェルシー(大耳4強)

 

カンプノウでの1stlegをスコアレスドローで封殺され、スタンフォードブリッジで迎えた2ndlegはバルサ対策を徹底するチェルシーの壁をどう崩すかポイントとなった。

 

バルサはアウベス、ヤヤ、ピケ、アビダルの後ろに中盤はブスケ、チャビ、ケイタ、前線はイニ、メッシ、エトー

 

チェルシーボシングワ、テリー、アレックス、コールの後ろに中盤はランパードエッシェンバラックマルーダ、前線はドログバアネルカ

 

バルサプジョルマルケス、アンリを欠いた中でチェルシーも得点が欲しいので攻撃姿勢は取るだろうし好機はある、というのがペップの狙いだったがプランは悲しくも早々に砕け散る。

 

クロス処理のもつれの中で、エッシェンのスーパーミドルが前半早々に決まり、チェルシーはウノゼロ狙いのドン引き戦術を80分やればいい、カンプノウで出来た事をホームで出来ないわけはない、

 

バイタルを埋めローラインを敷けば質的優位で壊せないビッグクラブならプライドさえ捨てればバルサを封殺できる、それをチェルシーは証明した。ペップは頭を掻きむしりながら苦悩に沈む。

 

後半に入るとアビダルアネルカへのファールでレッドで退場、勝機は完全に消滅した。しかしチェルシーは攻めなかった。あくまでもドログバへのロング一発を中心としたカウンターに攻撃は留め、引き籠りウノゼロ戦略を変えなかった。

 

80分を過ぎ、ブスケツを降ろしボージャン投入。エトーを左翼へ回し、イニエスタを中盤に入れ、中盤の指し手が鋭くなる。メッシは10番に固定され、黄金の中盤3枚でバイタルをこじ開けにかかる。バイタル攻撃に殉ずる揺るぎない意思が伝わる攻撃。

 

ひたすら殴るバルサ、耐え続けるチェルシー。右はアウベスがひたすらクロスを上げ続けるも高さのないバルサ攻撃陣には届かず落ち着いてブルーズがはじき返す。中盤からの鋭い攻めもバイタルを埋めていて弾かれる。詰み、そんな言葉が脳裏に浮かんだ刹那に試合は動く。

 

アウベスのクロスが流れ左のエトーからメッシへ渡り、3人を引きつけている間にボックスの前でイニエスタがフリー。ダイレクトでボレー、ツェフの右手の上に放たれたシュートはネットを揺らした。

 

歓喜の熱狂がバルサベンチに生まれ、ペップは喜びながら走り出し、イニエスタは黄色いアウェイユニフォームを脱ぎ振り回す。シウビーニョだけは冷静にペップに『まだ試合は終わってない』と伝え、グジョンセンとシウビーニョを遅延目的の交代で途中出場させアウェイゴールルールで熱狂は閉じた。

 

この試合はジャッジを巡り様々な波紋を広げ、ピケとエトーのハンドの見逃しもあり、特に後者の判定に対してはイニのゴール後だったので大紛糾し、バラックは主審に詰め寄りながら並走した(僕は当時、体育の授業の時のアップのランニング時にクラスメイトにバラック走りと称し詰め寄りながら走るモノマネをしていた笑)。

 

 

●  VSユナイテッド(大耳決勝)

 

ローマでの大耳決勝、3冠をかけた決戦を前に、ペップは映画グラディエーターの音楽にバルサのこれまでの名シーンを編集したビデオを見せモチベーションを向上させバルサの面々は燃え上がった。後日談であるが、バルデスだけは、『あの類のモチベ上げは負の影響もあるし浮足立つから自分はどーかと思う』と言っていた。

 

バルサはGKバルデス、DFはシウビーニョ、ヤヤ、ピケ、プジョル、中盤はブスケツ、チャビ、イニエスタ、前線はアンリ、エトー、メッシ

 

UTDはGKにファンデルサール、DFはエブラ、リオ、ヴィディッチオシェイ、中盤はパク、キャリックアンデルソンギグスルーニー、前線はロナウド

 

ルーニーは偽翼メッシ戦術の封殺目的だったがアウベスを欠くバルサに対してルーニーをサイドで攻守に走らせるのは得策だったのか疑問を残す。

 

ロナウドのFKがバルデスを襲い、開始10分間は前年度王者の猛攻を受ける。しかしペップは前半早々に応手。偽9番発動。

 

偽9番メッシの奇襲への困惑の刹那にイニエスタがボールを持ちドライブする、圧縮を始めるUTD、ウイングのエトーへパス。サイドに追い込めばボールは狩れるはず、だったのだが、ヴィディッチを交わしアウトサイドでシュート。名手ファンデルサールが触れるもボールはネットを揺らす。先制はバルサ

 

ギグスキャリックアンデルソンの3人に対し偽9番メッシを含めた4枚が中盤に君臨するバルサ、UTDの4バックはウインガー2枚でピン止めされる。偽翼から偽9番へと変容する新時代のペップ型UTに困惑の様相が広がる。

 

ロナウドは守備に参加せず、ルーニーとパクはサイドから身動きも取れず、バルサに中盤を支配され、カウンターを仕掛けるも、思うような決定機も作れず膠着。バルサからすればティキタカで回せば良いだけ。

 

後半にアンデルソンを降ろしテベスを投入442へ変形、カウンターを強める。しかしバルサの中盤は、より数的優位を確保し攻勢を強める。そしてサイドアタックとしてSBの上がりを解禁、ルーニーとパクを走らせ消耗させる。

 

疲れが見えるパクに代えて、ベルバトフ投入。創造性とリンク力に切り替えリスク覚悟で同点弾を目指すも、これが悪手となる。オープンな打ち合いになると中盤には広大なスペースが広がりティキタカが勢いを増す。

 

解放された中盤で攻め手を繰り出し続け、チャビのクロスにメッシがヘッドで合わせて追加点。UTDは前線の駒を増やすくらいしか攻め手が残されていなかった。

 

ギグスに代えてスコールズを入れ中盤の主導権奪還を図るも、バルサはアンリに代えてケイタを投入し試合を眠らせる。ボールを思うように奪えずロナウドはイライラからファールを連発。バルサが主導権を握り優勝。

 

 

 望外の3冠と課題

 

終わってみればトップチーム監督経験のない青年監督によってスターのエゴで空中分解寸前だったチームはパスサッカーという哲学を形成し、リーガクラブ史上初の3冠を成し遂げ、バイタル攻略バルサの出現はサイドを主戦場としたフットボールを変えた

 

VSバルサにて、バイタルを閉めて引くか、真正面から殴り合うか、という2択において前者を選択したチェルシー、後者を選択したマドリー、UTD、正解不正解は分からないが、高さを持たないバルサにとってクロス爆撃の選択がなくショートを基調としたパスもスライドが間に合ってしまう問題点があった。

 

シーズン終了後エトーは自身の活躍に対しての評価としてメッシを超える年俸とキャプテンの地位を要求し、この事がトリガーとなりバルサ姉妹クラブアヤックス出身のイブラヒモビッチとのエトー+4600万ユーロでのトレードとなった。

 

イブラの高さをバイタル攻めバルサの新たなオプションとして加えバイタル埋めへの応手を整えようとしていた。

 

シウビーニョ、グジョンセンエンリケカセレスが退団し、イブラと代理人が同じSBマクスウェル、CBチグリンスキ獲得。バイタル殺しのバルサは(UCLになってから)前人未踏の大耳連覇(決勝の舞台はマドリーホームのベルナベウ)を目指す。

 

 

② 09-10 連覇の夢

 

完璧な一年

 

バルサの3冠を横目にペレスが会長に就任したマドリーは世紀の大補強を敢行。バロンドール受賞者、ロナウド、カカに加え、アロンソアルベロアアルビオルベンゼマ獲得。指揮官はマラガで魅力的な攻撃的フットボールを展開していたペジェグリーニを招聘。VSバルサに向け戦闘準備を始めた。

 

イブラはバルサに早速フィットし開幕から5試合連続ゴール、新たな武器をバルサに持ち込んだ。足元のテクニックもあり、周囲と馴染むのが早く、前線での守備にも積極的に貢献した。

 

アンリがフォームを崩し、イニエスタはケガがちであったが、ペドロが全大会でゴールをあげる活躍を見せたり、ブスケツがヤヤから定位置を奪うほどの活躍を見せ、新シーズンに入ってから、スペインスーパーカップ、ヨーロッパスーパーカップクラブワールドカップの3つのファイナルを制し、2009年に6冠という前人未踏のタイトル数を記録した。

 

VS マドリー(リーガ)

 

バルサはGKバルデスにDFがアビ、ピケ、プジョル、アウベス、中盤がブスケ、チャビ、ケイタ、前線にイニエスタ、アンリ、メッシ

 

マドリーはGKカシージャス、DFがアルベロアアルビオル、ペペ、ラモス、中盤がマルセロ、アロンソ、ラス、カカ、前線がロナウドイグアイン

 

 

マドリーはハイラインを敷き素早い寄せでボールを奪い、カカがボールを運んでロナウドイグアインに渡すスタイルを選択。裏を攻められずバイタル狙いのバルサにとってはボールを持てず苦しい展開。

 

マルセロとのワンツーで駆け出すカカが横にスライドしアビダルが寄せたタイミングでロナウドにパス、バルデスのセーブで失点は免れる。バルサはボールを持てず、何より有用な攻め手もなくマドリーの速攻に押され続けた前半だった。

 

ペップは後半開始早々に動く。1トップで機能していなかったアンリに代え今季のイブラ投入。早速、アウベスがクロスを入れるとダイレクトボレーでゴールを沈め先制する。バルサ2年目の新たな武器、クロス攻撃が炸裂。

 

前がかりのマドリーを優雅に交わしていたバルサだが60分過ぎにブスケツが2枚目のイエローで退場。ペップは激怒しながら冷静にケイタからヤヤへの交代を行い4番を送り込む。ペジェは体調の考慮か、ロナウドを下げベンゼマを投入。

 

マドリーは一人多いアドバンテージを使って攻め込むも決定打がない。ロナウドを下げた影響か、枠内にシュートが飛ばないのだ。プジョルを中心に防ぎ続け、バルサも数度は決定機を作るも決め切れず、マドリーはラウルを投入するも試合は動かずペップバルサらしくないウノゼロ決着となった。

 

イブラの決定力が勝負を分けたが、65%の保持で試合の主導権を握りながら退場者が出ても落ち着いて対応出来た成熟度の差が大きかった。

 

揺らぐ王朝

 

年明け、バルサは国王杯でセビージャに敗北。誤審気味な判定が相次いで2度ほどゴールが取り消された敗戦だった。ハイプレスによる窒息と大雨の降った重いピッチがバルサには厳しい環境となった。ペップバルサにとって初めてのタイトル獲得失敗。ペップは自身の契約を1年延長し、3年目もペップ体制が決まった。

 

そしてイブラが得点力を失っていく。スランプに陥り、思うようにプレーが出来ない。ブスケツとヤヤの4番問題も浮上し、イブラかメッシ、ヤヤかブスケツどちらをエースにし、どちらを4番にするか。決断の時が迫っていた。

 

VS マドリー(リーガ)

 

バルサはGKバルデス、DFはプジョルミリート、ピケ、マクスウェル、中盤はブスケツ、チャビ、ケイタ、前線がペドロ、メッシ、アウベス

 

マドリーはGKカシージャス、DFはラモス、アルビオル、ガライ、アルベロア、中盤はファンデルファールト、ガゴ、アロンソ、マルセロ、前線はロナウドイグアイン

 

バルサアビダル、イブラを欠く中でアウベスをRWGで起用。メッシの偽9番を選択。マドリーは厳しくファールし続け、人的ファールリスクギリギリの守備を仕掛けた。

 

前半30分過ぎ、マクスウェルからメッシにボールが入り、近くのチャビは首振りでDF裏のスペースを確認、チャビにボールを渡しワンツーでアルビオル裏めがけて突進するメッシにボールが入り右足一閃、先制点を奪う。

 

後がなくなったマドリーはマルセロに代えてグティを入れ攻め倒しを選択するもバルデスの好守もあって得点が奪えない。ペップはボールを握るためにマクスウェルに代えてイニエスタを投入、中盤にティキタカが戻る。

 

メッシが中盤に降りてチャビにボールを渡す。チャビは首を振りギリギリまでボールを持ちながらアルベロアの背中越しを走ろうとするペドロにパス、裏抜けしたペドロは落ち着いて沈め2-0

 

ベルナベウの観客は昨季同様に席を立ち帰り始めた。ペップはクラシコ4連勝となり直接対決2試合の結果がリーガ決着にケリをつけた。マドリーとバルサの最終勝ち点差は3しかなかった。ペジェマドリーは強かった。しかし国王杯のアルコルン戦の敗北と16強敗北はペレスにとってペジェ解任の恰好の材料となった。

 

ペドロという裏抜け、イブラの高さが加わったバルサは穴が無くなり、選手層もブスケツとヤヤの4番競争、アンリとボージャンとペドロのウイング競争といった具合に競争力激しく、4231や532などシステムの多様性も増し、マドリーのホーム球場での大耳連覇の夢へ向け前進し続けた。

 

VS インテル(大耳4強)

 

アイスランドの火山噴火でバスでミラノ入り、一日かけて移動した疲れはバルサの面々に間違いなく降りかかっていた。

 

イニエスタが不在の中、ペップはイブラとメッシの縦2top4231を選択し両翼にはケイタとペドロ。

 

対するインテルはGKセザールにDFはマイコンルシオ、サミュエル、サネッティ、中盤はモッタとカンビアッソに10番はスナイデル、前線はミリートを頂点にエトーパンデフの両翼。

 

チャビがルックアップしても誰も走り出さず、ペップは大声で『繋げ、繋いでボールを運べ』と大声で指示を出すもパスは回らず、故にボール奪還のボール狩りの姿勢も不十分インテルの猛攻に3失点を喫し、ペドロのゴールはあったものの3-1で敗戦。

 

正直、戦術がどうと言うよりバルサの状態があまりにも酷すぎた。天変地異とは言えコンディションの悪さが試合を左右したと言える。このアドバンテージをもってモウはカンプノウバルサ封じを決行する。

 

カンプノウで迎えた2ndleg

 

インテルパンデフに代えてSBのギブにしたのみ。バルサミリート、ピケ、アウベスの3バックを選択し、ヤヤとブスケツの2ボランチにケイタ、チャビの2IH、前線にはメッシ、ペドロ、イブラが並んだ。

 

ペップはホームで2-0狙いの総攻撃。モウはリードを守る専守防衛に徹する。

 

モウは、この試合前年度のチェルシーと同様の策を打った。ローラインバイタル埋めである。これによってペドロの裏抜けを封じ、メッシのバイタル解放を封殺。モッタがレッドで前半早々に退場となり、専守防衛プランは試合を通じて徹底された。

 

しかしペップバルサにはイブラが居る。当然アウベスからのクロス爆撃が可能となるがインテルにとってイブラは昨季まで同僚。クセが分かっていたのかもしれないがルシオとサミュエルのCBコンビに完全に封じ込められ、中と裏と高さが封殺され完全に手が出せない状態にあった。

 

後半始めにミリートに代えてマクスウェル。外に活路を見出したい狙いがあったのだろうが、SBに堅牢の崩しを任せるのは酷。イブラとブスケツを降ろしボージャンとジェフレンを入れて4top攻めで圧力を高めるも1点止まりに終わり終戦。連覇の夢は散った。

 

結局のところ、イブラに高さを求めたものの、ゴールを挙げたのは前線でパワープレイを実施していたピケだった事を考えてもペップ自身『高さ』の攻撃が水物であるという一種の教訓を得たのかもしれない。

 

モウは喜びのあまりカンプノウのピッチを走り回って、メディアは『モウリーニョはペップバルサ対策の発明をした』と言ったが、それは違う。外捨てローラインバイタル埋めはヒディングが実施していたし、1stlegでのリードがものを言っただけで、火山活動が無ければ正直どうなっていたか微妙なところだ。

 

イブラとの衝突

 

ペップは2年連続で9番との不和を抱えた。有名なペップとイブラの衝突は何故起こったのか、多数はエトーの時と同様にエゴイストを嫌うペップが原因と言うのだろう。しかし、個人的には賛同しない。

 

『ペップはイブラを望んでおらず、イブラはペップの評価を求めたが、手に入らずメッシを中心としたチームで居場所を失い、その理由を自分のプライドを守るために全てペップのせいにした』が真実と思えてならない。

 

ペップはエトーを切った。それはエトーが自身の献身に対してチームから『お前がエースである』という承認を求めたからだ。放出を考えたバルサだが、そもそもエトーの給料は安くなく引き取り手に困ったところに左SBマクスウェルも付けてくれそうなライオラ案件のイブラとのトレード案が持ち上がったのではないだろうか?

 

イブラはバルサに興味を持った。ライオラに言いバルサ移籍をまとめるように言った。転売利益の欲しいライオラは喜んでまとめた。ではバルサはイブラを求めたのか?正確に言おう、ペップはイブラを求めていたのか?

 

ペップはビルバオジョレンテを求めていた(実はモウも)。バイタル埋めに対する応手は『裏』『外』『高さ』しかない。そのうち『裏』はローラインで無効化される、となれば残された選択肢は

 

・メッシを9番に固定し『外』を補強

・メッシの柱として『高さ』を補強

 

ペップは後者を選択した。ジョレンテを獲得し、メッシと縦に並べる。そしてバイタル埋めローラインに対してクロス爆撃で『上から』攻める。

 

 

ジョレンテの所属クラブ、純血主義のビルバオは契約満了以外での移籍は認めない独特のクラブ、当然契約の残っていたジョレンテは手に入らない。そしてイブラが選ばれた。ペップが求めていたのは守備『納税』し高さという武器をバルサに持ち込める選手だった。イブラは少し違った。

 

バルサは歴史を作ってて自分がその一員であることにとても満足だ。誰もやったことのないことをやろうとしている。僕はその道に途中から参加したが加われたことは幸せなことだ。』これはイブラの言葉だ。

 

イブラはペップバルサという伝説に加わりたかった。その一心だった。そしてペップに認められたかった。最初は良かった。ペップも積極的に話した。しかし年が明けると得点から遠ざかった。そしてサラゴサ戦、メッシは2戦連続のハットトリック、その試合の終了間際でメッシがドリブルで相手ファールによって得たPKをイブラに譲る。決めた後、屈辱を感じたはずだ。バルサの主役が誰か、痛いほどよくわかったはずだ。

 

そして迎えた大耳4強でのイブラの不振、引いた相手を崩す為の『高さ』は全く機能しなかった。試合後のペップへの『臆病者が』という言葉が2人の関係に終止符を打ってしまった。ペップは臆病だからイブラを交代させたのではない。イブラが全く脅威になっていなかったから交代したのだ。

 

イブラはメッシとの9番競争に敗れた。そしてメッシを活かす翼としてもペドロに敗れた。純粋な競争の敗北による放出だった。

 

イブラはマドリー移籍をちらつかせてバルサを退団し、10年間ペップの悪口を言い続けている。しかしイブラを追い出したのはペップではない。メッシだ。メッシを中心としたチームとイブラを中心としたそれ、比べれば当然なのだ。イブラはメッシを悪くは言わない、あくまでもペップとの不和が退団の原因と言っている。

 

また、イブラはマドリーには行けなかっただろう。第2次銀河系の主役はロナウドであり守備免除要員を2人も抱えるはずがない、特にモウリーニョは。

 

『君を中心とするよりメッシを中心とするチームの方が強い、そして君はそのシステムの中では活きないしペドロの方が上だ、だから君はベンチで高さが必要な場面が来るまで使い道はない』これがペップの本音だろう。

 

 

 

未来へ

 

イブラという『高さ』の移植に失敗し、メッシ偽9番システムの『濃度』を上げる事にした。初年度のエトーのようにウイングでも献身的に攻守に貢献し『裏抜け』出来るタイプ、もしくは外攻めが出来るタイプの獲得を目指した。

 

そしてビジャが選ばれた。生粋のストライカーでありながらスペイン代表でバルサ選手との相性も良くチャビも歓迎した。失望に終わったイブラとチグリンスキを放出しヤヤもシティに移籍し穴埋めとしてマスチェラーノ、左右両方のラテラル起用が可能なアドリアーノも獲得。

 

マスチェラーノは移籍金の一部を自己負担しペップサッカーの研究のために何度も映像で勉強し、ペップにも積極的に質問をし、バルサ不動のセントラルとして定着していく。プジョルの後継者がマスチェになる事をこの時の誰も知らなかったが、ペップはビエルサが若き日のマスチェをCBとして起用していた事を知っていた。

 

 

偽9番メッシを『中』で解放するため『裏』攻めが可能なビジャを偽翼とし2年前の3冠の再現を目指す戦いが始まった。そして歴史的激闘となる3年目が幕を開ける。

 

 

③ 10-11 VISCA BARCA 

 

 

銀河系2.0

 

第2次銀河系軍団マドリーの目的はただ一つ、バルサを止める事。インテルバルサを下しベルナベウで大耳を掲げたモウのマドリー招聘は必然の選択だった。そして銀河系はモウを加えバルサ王朝を止めるべく始動した。

 

モウは銀河系に実利性を与えた。

 

作るチームはチェルシーインテルと変わらない。屈強な4バックとGKの堅牢な守備を土台とし、マケレレロールと司令塔、ハードワーカーと突破力のある両翼に攻守に貢献度の高い10番に前線で体の張れる9番だ。

 

足らなかったピースとしてカルバリョ、マリア、エジルケディラを獲得。銀河系の一人カカは干された。守備意識の軽薄さと安定しない体調はモウに不信感を抱かせた。

 

9番に常に不満をモウは抱えた。ドログバのようにロングボールを収められてワンチャンスを決め切るストライカーという描像をベンゼマイグアイン両名が満たしていなかった。冬のアデバヨル獲得が、その証左。

 

守備範囲の広いペペと経験豊かなカルバリョのCBコンビが控え最後尾には守護神カシージャスが君臨、右は守備力の高いモウ好みのラモスがRSB、左は攻撃的なマルセロでバランスをとり、中盤はマケレレロールをケディラが担い、アロンソが司令塔、エジルとマリアが攻守に貢献し、ロナウドの突破力でゴールを狙うチーム。

 

ただドログバロールをこなせる9番が不在でロナウドは前線でファイトする選手ではなく、彼の不可測な動きを、どう落とし込むか結局答えは出なかったが、リーガではバルサを抑え首位を独走し、カンプノウでのクラシコへ向かっていく。

 

 

バルサという暴力

 

VS マドリー(リーガ)

 

進撃するモウマドリーはカンプノウで最強バルサと相まみえた。安定的な強さを見せていたマドリーは真正面から殴り合いを挑んだ。

 

バルサはGKバルデス、DFはアビダルプジョル、ピケ、アウベス、MFはブスケツ、チャビ、イニエスタで前線はビジャ、メッシ、ペドロ

 

マドリーはGKカシージャス、DFはマルセロ、ペペ、カルバリョ、ラモス、MFはアロンソケディラエジルで前線はロナウドベンゼマ、マリア

 

正真正銘の真正面からの殴り合いクラシコが幕を開けた。

 

バルサは仮想3番による組立、裏へのお試しロングパス、中盤での軽い球回し、による3分間の『診断』の結果、DFラインは浅め、マリアはアウベスマーク、ロナウドを右に置いての迫撃狙い、が本日のマドリーと算定。

 

ロナウドシザースからのクロスの際、ピケの足がバルデスの頭と肩にあたり治療で試合が少し止まった間にペップはアウベスを呼び伝える『マリアがお前に付いてきてる、RWG化してDFラインへ押し付けろ』

 

アウベスはすぐさまハーフラインを超えマリアをLSB化。メッシのループがポストを叩きマドリーはマリアを加えた5バックへ。アウベスが偽翼となりメッシを中央右寄りの位置、ペドロとビジャは裏を牽制。

 

メッシ、イニ、チャビ、ブスケツの4枚が中盤に君臨し、エジルケディラアロンソが抑えにかかるが、一人不足。チャビがターンでベンゼマをいなしフリーのブスケツにパスしメッシへ通す、チャビとメッシのワンツーからメッシはドリブルで威嚇しマドリーの収縮が始まったところでハーフにいたイニへパス。視線が左へ向く中でチャビは静かにペナルティへと走り出していた。到達後、手を挙げる。

 

火の出るようなキラーパスがカルバリョの横に位置するチャビに届く、ヒールでトラップし放たれたループはカシージャスの伸ばした手を乗り越えてネットを揺らす。ゴラッソ。生え抜き4人衆による圧巻の崩しで先制。

 

今季のバルサは中央突破だけではない、ラインの高いマドリーの裏へピケからロングボールがビジャ目掛けて放たれる。ビジャはサムズアップ。チームに裏抜けのオプションが付いた事を示す一幕。15分が過ぎバルサのボール支配率は75%を記録していた。

 

中央右側へメッシ、イニ、チャビが寄りボールを回す、ペドロが追い越しをかけようと走り出すもマルセロが押し倒れるペドロ、マドリー側の集中が切れたところで逆サイドでフリーだったビジャへとチャビがパス、次は左へ注目が集まるところで、右サイドのカバーへ走り出すマルセロの後ろを走る男がいた。先ほど倒されたペドロだ。ピッチは寝る場所ではない、戦う場所なのだ。ビジャのクロスにマルセロの後ろから追い越したペドロが合わせて2点目。

 

浅いラインの裏への両WGの抜け出し、数的優位を利用した中央制圧を繰り出すバルサに対しマドリーは裏へパスするもバルデスが飛び出し、ロナウドに渡すも思うように突破が出来ない。そして前半30分にロナウドがボールを保持できずラインを割りスローインという展開でボールを拾ったペップの胸を小突く。カンテラのアイドルへの無礼な行動にイニ、バルデス、ピケが激怒。モウ到来以降クラシコは小競り合いの連続だった。

 

後半からエジルを下げラス投入。中盤での圧力の向上を図ったが、ロナウドへのパス経路が減り、マドリーの攻撃力は減退。ロナウドへのロングパスをアウベスがカットしチャビとワンツーで右前方へドライブ、バイタルでメッシに渡り、裏へパスしビジャがゴール。アロンソはDFラインに吸収されていた。

 

次はラスからボールを奪ったチャビからブスケツ、メッシへと渡り、メッシがマドリーの視線を左へ引きつけて置き圧縮させたところで、ラモスの裏へパスしビジャが抜けだしてゴール、4-0

 

追いすがるマドリーをあざ笑うかのようにティキタカで交わすバルサ。ペップは身振り手振りで力強く鼓舞し指示を送るのに対しモウは座りながらカランカとと話したりメモを取るのみ。そしてペドロと試合終了間際に交代したジェフレンがラモスの裏から侵入し追加点。マニータ、モウのバルサ初陣は惨劇に終わった。

 

 

モウのVSバルサにおいて、

ラインを上げて挑んだ初戦は裏を取られまくり

偽9番にも対応できず

ラスを入れてもティキタカは止まらず

アウベス潰しも機能しなかった

 

ここからモウマドリーはバルサを止めるべく、次々に策を打つ。

 

 

モウの挑戦

 

当時の欧州サッカーにおいてバルサに勝つ事は欧州制覇と等号で結ばれていたために欧州制圧を狙うビッグクラブはVSバルサが最大の命題でバルサ対策を次々考案してた。

 

その筆頭が同リーグのモウマドリーで、バルサに勝つことを託されたモウはマドリーでバルサ対策のレベルを少しずつ上げる。カンプノウでのマニータではアウベスを消すためのマリアマークを打ったが、バルサの完成度の前に早期に崩壊。そしてここからリーガ後半戦、コパ決勝、大耳4強という4連戦でマドリーはVSバルサ決戦兵器としてアップデートを続ける。

 

(ⅰ)リーガ2nd

 

バルサは(バイタル攻め特化集団+裏攻めビジャ)であるため、まずバイタルを埋める戦術をVSバルサで固定。中盤はアロンソケディラ、ペペを用いる3ボランチ(トリボーテ)を打った。バルサのボール回しに付き合わず前プレも最低限に留め、中盤の保持段階で潰そうとした。

 

一定の効果は得たものの、やはりメッシは止められずペペが中盤起用されたため控えのアルビオルがCBで出場しており一発レッドでPKを取られ崩壊、ベンゼマを下げてエジルを投入しロナウドを復活させ、マルセロがPKを獲得し1-1エンパテ決着。

 

裏攻めビジャ対策としてのローライン、バイタル埋めのミックスは人的ファールのリスクがどうしてもあり、バルサにボールを渡す以上仕方はないのだが人的資本の質が落ちると攻め落とされてしまう事を露呈した。

 

またロナウドを活かす為にはエジルのようなパサーが絶対必要、またCBにもVSメッシとして質的向上が必要と判断した。そして偽9番メッシの止め方の一つとして飛び出すCBの必要性にモウは気づいた。

 

(ⅱ)国王杯決勝

 

CBにラモスを起用し偽9番メッシが10番化すれば前へ出て潰す。これによりメッシは本来の右翼へ押し出され、ラモス起用によりメッシ番ペペの役割はチャビとイニの妨害へ代わりIH起用。

 

中盤はトリボーテでバイタルを封鎖し、ローラインで裏も消す。ロナウドを前線に一人残しエジルをシャドーで使い、ボールを奪えばマリア、エジルロナウドのカウンターで刺す。

 

ボールを狩るのではなく人に付きマーカーを切らない守備と奪ってからの持ち運びというハードワークを徹底しティキタカを封殺した。これまでの引く守備から追う守備へと切り替えた。アグレッシブな高い位置でのプレス、奪えばバルサのSB裏を攻めてロナウドに渡す、を徹底。

 

前半はバルサは氷漬けにされるも後半マドリーの強度が緩み始めるとパスを回し何度か決定機を作る、しかしマリアからロナウドのヘッドでウノゼロ敗北。遂にモウはバルサに土を付けた。そして3冠を阻止しマドリーにタイトルをもたらした。

 

飛び出すCBラモスによる偽9番メッシ封殺

ペペのIH起用によるティキタカ妨害

マンツーで不規則配置への応手

トリボーテによるバイタル封鎖

ローラインによる裏潰し

 

これまでのVSペップバルサに喫した敗北から学んだ完璧なペップバルサ殺し。

 

この試合のペドロのゴール取り消しの判定に対してペップは不平を会見でもらし、モウは『審判の正しいジャッジに対して文句を言うユニークなグループが今夜誕生した、そのグループに属するのはペップのみだ』と挑発を送った。再三に渡る挑発的言動を受けてペップは大耳記者会見にて反撃を見舞う。

 

『Mr.モウリーニョが私をペップと呼んだので、私は彼をジョゼと呼ぶ。彼のカメラはどれだ? きっと全部だね。明日、私たちは20時45分にピッチで対戦することになる。ピッチの外でのチャンピオンズリーグは彼がすでに勝利をしたし、それをプレゼントするから、自宅に持ち帰って楽しんでほしい。彼はこの部屋の愚かな主人(Fuck Master)だ。私は彼と競いたくない。ただマドリーを祝福するよ』

 

ピッチ外での諍いに対して温厚なペップはカウンターを放った。スビサレータSDやロセイ会長は、止めようとしたが、ペップは立ち向かった。本来はフロントが、こういった事に対して言及すべきなのに動こうとしない所にペップは頭にきていた。

 

会見から帰ると選手たちが拍手で出迎えた。『よく言ってくれた』そんな気分だったのだろう。モウは素晴らしい指揮官でありペップバルサを最も苦しめた、しかしピッチ外での言いがかりは残念だったし、フットボリスタにはピッチ上でこそ戦って欲しいと思うのだが。

 

(ⅲ)大耳4強1st

 

完璧に機能したコパ決勝から、ホームマドリーが狙うのはウノゼロ。一方のペップはLSBにプジョルを起用し、アウベスの上がりを制限、引き分けでも構わない。という塩展開をモウに見せる。中盤はイニがおらずパスも回らない、アウェイ退き戦略を提示した。しかし、これがマドリーには厄介だった。これがモウマドリー最大の弱点、相手が殴って来てくれないと何もできない問題である。

 

殴るバルサ、交わしながらロナウドカウンター狙いのマドリーの構図が壊れた。殴ってこないバルサ、戸惑うマドリー。エジルを下げアデバヨルを投入し、案の定ロナウドは孤立。この悪手に加え、ペペがアウベスに足裏を見せるファールで一発レッド、この一枚のカードが試合を決定づける。執拗な抗議でモウリーニョは退場。ペペの退場はVSバルサ戦略の事実上の崩壊を意味していた。

 

トリボーテが解除され中盤には『酸素』が戻り落ち着きを取り戻すバルサ、ペペを失いバイタルは解放。ペペを中心に中盤を抑えているからこそのラモスのメッシ封じ、それもリスクが高く飛び込みづらくなる。

 

ペップは勝負手を打つ。裏中攻めが膠着状態になった時、サイドから外攻めを与えられる存在になりうると踏んで冬に獲得していたアフェライ投入。

 

ペップはマドリーを殺しにかかる。アウベスの右上がりを解除、アフェライの外攻めによりDFラインを外へ広げる。裏中に対応していたマドリーは混乱。アフェライが外を攻め落とし、メッシへクロス、マドリー失点。バルサらしくない塩前半からバルサらしくない外攻め得点。

 

外へのケア、ペペ不在、バイタルは当然空く。そして歴代最高のバイタル殺し最終生産者が暴れ狂う。メッシが単騎突破でマドリーを地獄へと落とす2点目を奪う。

 

ペペが退場しなければバルサは勝てていたか分からない。しかし外攻めというバルサらしくない攻め手こそがマドリーを苦しめた、という事実は興味深い。ペップバルサというバイタル殺し名人メッシの解放を活かす裏攻めビジャに次ぐ新たな武器外攻めの有用性が示された試合であった。

 

『中』のメッシを活かす為の『裏』と『外』の攻め手の装備、これがペップバルサの次なるフェーズとなり、11-12シーズンのセスク、サンチェスの獲得、テージョ、クエンカの抜擢に繋がる。

 

モウは会見でバルサの胸スポンサーがユニセフだからUEFAに圧力がかかったのではないかと話していた。それなら全チームのユニフォームにユニセフがプリントされると思うのだが。

 

 

中興の祖モウリーニョ

 

10-11シーズンの大耳4強は1stlegでほぼ決着していた。ペペ出場停止、モウはベンチ入り禁止、歴史的バルサ相手に0-2のスコアをひっくり返す力は残っていなかった。

 

ペップバルサを最も苦しめたモウマドリーは苦々しく受け止める人も多く、マドリディスタも品性を欠く言動の数々に呆れアンチモウも一定数いる。ペップバルサヲタの自分のモウマドリーへの所感を述べる。

 

自分は一貫してモウリーニョはマドリーを再建し、第2次銀河系を成功に導いた英雄でありカルロ、ジダンの2人による4度の大耳制覇はモウの功績によるものであり、マドリーのレジェンドと考えている。

 

大耳16強の壁を越えられず、歴史的バルサの後塵を拝していたチームをモウは変革した。最大の功績は現実主義を導入しマドリーに伝統はいらない、勝利したという結果がマドリーをマドリーたらしめる、という哲学を形成した事にある。

 

ペップバルサへの応手の数々は有用であり、手段を選ばず挑む姿は新たなマドリディズモを作り上げた。ビラノバへの目つぶし行為や記者会見での蛮行は決して正当化出来るものではないし自分もそこは否定的立場を取る。しかしモウはマドリーの中興の祖としてリスペクトされるべきと主張したい。

 

(1)カシージャス干しの是非

 

マドリーの象徴、カシージャスのケガに合わせモウはロペスを正GKとして起用し、カシージャスがチーム内情を恋人だったレポーターにリークした事への私怨、ペレスが嫌っていた事を代理した、と言われ続けた。

 

このイケル干しは波紋を広げた。しかし、この選択は正しかった。後任のカルロがイケルをカップ戦要員として使った事からも明らかなように、カシージャスには重大な欠点があった。それは守備範囲の狭さである。

 

偽9番メッシ用兵器CBラモスがレギュラーに定着し、スピードと対人能力の高さからDFラインの高低調整が可能になったマドリーにとって、カシージャスの裏への飛び出しの欠如はマドリーにとっての障害になる、と踏んだモウは間違ってはいない。

 

私怨から来るか、それは分からない。しかしカシージャスからレギュラーを取り上げるという操作はマドリーが強靭化するには必要だった。ある意味、その面倒な操作をモウは実行に移し一人でその罪を背負った。運動神経の高さによるカバーは加齢により、いずれ限界が来る。モウのイケル外しは間違ってはいない。

 

ラモスのCB起用もカルバリョと揉めた事に起因すると言われるが、キッカケは何にせよラモスのコンバートの正しさは歴史が証明している。モウは自軍選手と揉めた、と言われるが、残したものはもっと正しく評価されるべきだ。

 

 

(2)大耳での躍進

 

ペップがバルサで3年で2度大耳を獲ったのと対照的にモウはマドリーで3年で1度も大耳を獲れなかった。1年目はバルサに手の内を全てコパで見せてしまった事が原因だが歴史的チームゆえ仕方ないといえば仕方ない。

 

2年目は4強でPKでバイエルンに負け、3年目は4強でドルトムントに1点差負け、本当に、あと少しだった。能動的攻撃デザインが欠けていた、と言われるがモウマドリーは間違いなく最高峰のチームだった。

 

カシージャスを外しGKの守備範囲を調整し、CBラモスを定着させ、ペペの新たな可能性を広げ、ヴァランを抜擢し、エジル、マリアをワールドクラスへ引き上げた、そしてロナウドを終点とするカウンタースタイルの土台を築き、チームを欧州で戦える競争力のあるチームへ導いた。まぎれもない功労者だ。

 

ロナウドの9番転移に失敗した事が唯一の失敗であるが、偽翼ロナウドを活かす為の土台を作ったのはモウリーニョであり、後の4度の大耳に繋がる歴史的チームへの貢献を果たしたモウリーニョは再評価される人物である。

 

ジダン政権の大耳決勝アトレチコ戦でのボールの放棄はモウ時代の名残でもあり、勝つためならば如何なる手段も正当化されるという勝利至上主義的マドリディズモというモウが植え付けた精神を見た。

 

 アンチフットボールも勝てば正道、モウが与えた最大の遺産であろう。

 

完成

 

大耳決勝で待つ相手は2年前と同じUTD。復讐に燃えるファーギーは真正面から殴り勝つ戦略を選択したが、伝説的バルサは想像の遥か上のパフォーマンスを見せた。

 

バルサはGKバルデス、DFはアビダル、マスチェ、ピケ、アウベス、中盤はブスケツ、チャビ、イニ、前線はビジャ、メッシ、ペドロ

 

UTDはGKファンデルサール、DFはファビオ、リオ、ヴィディッチ、エブラ、中盤はバレンシアキャリックギグス、パク、前線はルーニー、チチャ

 

前回大耳決勝ではルーニーをサイドで起用したが、3年目のペップバルサの強みはアウベスと偽翼メッシにあらず、黄金の中盤によるメッシのバイタル無双と見極め、中央へルーニーを動かした。ルーニーの10番起用により4番ブスケツを牽制しながら、奪えば広大に広がるバルサDF裏へ走りこむチチャへのパスでバルサを刺すのがデザイン。

 

3ラインで一糸乱れぬ守備、442の陣形の中で10人の選手は誰一人任務をサボらず90分間連動し続ける近代サッカーの完成形であるUTDバルサは完膚なきまでに破壊する。バルサバルサである限り、UTDがUTDである限り、永遠に埋まらない差がより明確になっていく。

 

この試合でペップは最低限の指示はしたが、基本的には選手が決め判断した。指揮官ペップは必要なかった。なぜならピッチ上に司令塔チャビがいたから。この試合はチャビのベストゲームであり、ゆえに常軌を逸したポゼッションサッカーが展開された。

 

バルデスがボールを持つとCBは大きく広がり、仮想3番チャビが降りる。そして仮想3バックを作り、チチャとルーニーを引きつけさせてマスケにドライブさせボールを運んだり、ブスケツはマスチェを避けるように動きマーカーと共に進路を作る。チャビマークが厳しくなれば、引き連れて中盤へ戻りピケにビルドアップさせる。

 

チャビは特別な事はしていない、相手を食いつかせ相手を動かし、食いつかなければ限界までボールを持ち運ぶ、スペースを作り味方に常に優位性を譲渡し続ける

 

GKへ激しいプレスが来れば、ふわりとしたロングパスを前方へバルデスは蹴りだし時間を稼ぎ、その間にラインを上げて裏を狙うチチャを封殺する。DFのクリアも同じく大きく蹴りだして時間を稼ぎラインを上げてチチャを封殺する。この試合、チチャの裏抜けは完全に無効化された。

 

ルーニーブスケツへのマークをしながらも無効化されたチチャの援護に回っていた事に加え、中盤2枚に対して、メッシ、チャビ、イニの3枚で回され、ボールに触れる事さえ困難だった。アウトサイドハーフを絞らせ3枚で守っても、メッシ、チャビ、イニの三角形は旋回を繰り返してプレスを空転させてバイタルへボールを運び続けた。

 

攻撃が失敗に終われば網を張ってボールを狩り、再び保持へと移行するバルサに対してロングボールを前線に送るも、楔はマスチェが潰し、裏パスはピケが封殺し、バルデスも飛び出しハイラインの保険を形成。

 

偽9番メッシが中盤へ降り、ビジャが9番となり、アウベスがRWG化して、攻撃。バイタルへカンテラ三角形を中心にボールを運び続ける。チャビがバイタルでボールを持ちDFがアタックを仕掛けようと収縮した時、裏を走るペドロにアウトサイドパス、ニアをぶち抜き先制。

 

ギグスの起用により攻勢を維持したUTDはルーニーとのワンツーからゴールをあげ前半を折り返すも、ギグスバルサのビルドアップ隊に食いつくと、中盤はカンテラ大三角に蹂躙され続け、守備面でのリスクが厳しい展開を招いた。

 

チャビにキャリックがマンツーでマーク、チャビは涼しい顔で後方にパスしキャリックをサイドへ引き連れ、ボールはメッシへと経由される、メッシはパクとの1VS1、ここでもメッシはチャビ同様にパクを引き連れ前方へ移動しチャビにパス。アビダルとペドロが前方へ走りラインを引っ張る、空いたバイタルにビジャを残して。

 

ファーガソンは何もできず、顔を紅潮させて拳を握り続けるだけだった。

 

再三に渡るバイタル侵入を受け、バイタルを閉じローラインで裏を消す。バルサは深くサイドをえぐって折り返してミドルという手筋を繰り返す。この手筋からメッシのミドルとビジャのミドルが決まり、1-3でバルサが勝利、ボールを握り試合の主導権も握るというクライフ描像の勝利を見せつけた。

 

3年間で2度の大耳優勝、世界の模範であり、ラインDFの殺し方マニュアルとして教典となったバルサを作り上げたペップの未来は黄金に輝く、と誰もが思った。しかし、この優勝が長く続く大耳10年戦争の始まりであった。

 

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④ ペップバルサとは?

 

ペップバルサが与えた影響について見ていこう。

 

(1) 10番復活

 

ペップバルサによる2度の『王者』UTD殺しも相まって多くのチームでポゼッションスタイルが実装され、特に、ラインDF全盛のプレミアリーグでは、ライン殺しとしての『間で受ける』事が出来る選手が到来した。

 

(シティ)   シルバ

(ガナーズ)  カソルラ

(リバポ)   コウチーニョ

(チェルシー) マタ

(スパーズ)  エリクセン

(UTD)    香川

 

カルチョのゾーンが10番をサイドへ追いやったのとは反対に、バイタルエリアの崩しが主局面となり10番は再び『10番』へと戻っていった

 

間で受けてラインを殺す、というスタイルの実装がプレミア覇権の王手飛車取りとなった時代、UTDは香川の落とし込みに手こずり王者から陥落し、シティがプレミア覇権の中心となっていく。ペップバルサ時代以降、リーガが欧州で覇権を握りプレミアもBIG4という言葉が死語と化し始めた。

 

サイドに10番を追いやったゾーンと相対したクライフの思想を受け継ぎ、見事にラインDFを崩し時代を中央へと戻したのはペップバルサの大きな影響と言える。

 

 

(2) トータル性の実装

 

10番の流行と同時に、ペップバルサによる守備陣の組立貢献から4番性の装備、CBの繋ぎ、GKのディストリビューションが流行し始めた。

 

バルサではブスケツボランチとして潰しを担当しながらも4番として組立に従事し時にはバイタルのメッシに楔を打ち込んでいた。

 

この影響から4番をチームに設置し守備専用の潰し屋は徐々に淘汰され始めた。バイエルンのグスタボはハビマルに居場所を奪われ、そのバイエルンは大耳を制覇。シティではジーニョがヤヤの相棒に定着し、潰しながらも繋ぐプレーでシティの大耳で戦えるチームへの変貌に寄与した。

 

相対するチームも4番を抑えるために、44の2ラインでは厳しいため、45の2ラインという9枚ブロックが流行し始め、4231がデフォとなっていった。オシムは、この現象を『モウリーニョシンドローム』と表現し、正確に言うと、『4番抑制ブロック』だ。

 

そして偽9番メッシの躍動によりゼロトップも流行し、モウの応手であったラモスの飛び出しによる偽9番殺しが飛び出すCBの重要性を生み、また9枚ブロックへの応手としてピケのような繋ぎもCBに要求された。コンパクトにするためのハイラインを敷く上でのスピードの要請も加わり、求められるCBの描像はペップバルサ以降大きく変貌を遂げる。

 

飛び出すCBのリスクを考え3バックを採用するチームも増え、2014W杯は3バックが流行し偽9番ゲッツェが3バックのアルゼンチンから決勝点を奪ったのは2010年代中盤の描像の表現として好例と言える。

 

2010年代中盤はリーマンショックと欧州サッカーバブルにより格差がかつてないほどに広がり7枚を残し3枚の暴力3topで刺すバルサ/マドリーが9枚ブロックのチームを壊し続け、リーガが欧州の頂点に君臨していた。

 

アトレティコはリーガ第3クラブとして常にバルサ/マドリーと向き合う。最初は9枚ブロック横スライドで戦い続けるもボールを追うのに必死で逆サイドのボールへのアプローチを続けるうちに段々とブロックに穴が出来て崩される、という構造に気が付き、シメオネはブロック枚数の増加に着手する。

 

遂にブロックは10枚、フィールドプレイヤー全員が守勢をとった。レスターが10枚ブロックでプレミアを制覇し、人的優位性のあるリーガのような格差社会と違い、プレミアのようなリーグだとデザインされた崩しでないと勝てない時代が2015年以降到来した。

 

その崩し方は『ポジショナルプレー』と呼ばれた

 

そしてプレミアはBIG4時代以来となる新たなコンペテティブなフェーズへと入り、続々とコンテ、サッリ、トウヘル、クロップ、ペップ、モウ、エメリといった戦術家が招聘された。

 

 

(3) 前例の呪い

 

『我々はこの10年間、グアルディオラを間違って追いかけ続けた。グアルディオラフットボールを全員ができるわけではない。あのプレースタイルには、イニエスタやシャビ、メッシがいなければならない』

 

カルチョの名将アッレグリの言葉だ。ペップフットボールへの誤った解釈と人的資本のないチームでの実装が招いた悲劇を指した言葉だ。

 

偽9番はメッシ以外では成功例が乏しく、最終生産性を自ら潰してしまうためにゴールから遠ざかるパスで繋ぐスタイルであるティキタカも意図のない無駄なパス回しに終わりボールを奪われカウンターを招く事が多かった。

 

マイティアヤックスを研究する事でビエルサフットボールが生まれたようにペップバルサの即時奪還スキームはラングニックの研究成果と合わさってドイツではゲーゲンプレスを生み出し、ドイツで、その洗礼をペップは受ける事になった。

 

またペップバルサカンテラ、自家製の生え抜き選手が多くを占めた。バロンドール投票においてメッシ、チャビ、イニエスタの3名が3強を独占したのは快挙。そしてバルサカンテラ主義という生え抜き至上主義の純血思想が広がった。

 

カンテラ重視は結果論に過ぎない。ペップはカンテラに拘ってはいなかったし、あくまでも強いチームを求めた結果だ、しかしバルサでは今でもカンテラ信仰が根強く存在しており、ペップバルサという成功例の呪いに囚われている。

 

バルサはチャビ、イニエスタ、メッシがいたから強かっただけ、その証拠にペップはバルサ退団以降、大耳を制覇していない』

 

よく聞く台詞だ。実際ペップも、この類の質問を数度受けている。そして、いつも返事は変わらない。

 

『その通りだ、素晴らしい選手がいたから多くの成功を得られた。選手のおかげで沢山のタイトルを獲れたんだ』

 

メッシがいたからバイタル攻めを中心とした中央制圧をバルサは選択した。ロベリならサイド解放、レバミュラならハイクロス爆撃、アグエロならロークロス爆撃にする、

 

手元にある最終生産者の得意戦型の選択、それこそがペップサッカーであり、バルサはメッシを活かすスキームを選択した。ただそれだけだ。

 

人的資本に応じた戦術を選択し、相手を研究し微調整を加え最適応手を選択する。それを4年繰り返し続けたのがペップバルサだった。

 

ペップバルサという歴史的チームが与えた影響は凄まじい。ペップはバルサ退団以降、コアUTを用いたポジショナルサッカーによってバルサ時代以来の欧州制覇を狙い続け、大耳を逃す度バルサ時代の栄光と比較され、上記の様な質問を浴びせ続けられている。

 

ペップバルサという前例は様々な弊害をもたらした、しかし偉大なる前例の影響を一番受けているのはペップ・グアルディオラその人なのかもしれない

 

 

(4) 10年目の『5年目』

 

ペップはウェンブリーでの大耳制覇の翌季にセスク、サンチェスを獲得し、メッシという中の覇者を解放するための外攻め裏攻めの設置に挑む。しかしケガ人が相次ぎ、メッシの守備放棄も重なり即時奪還スキームも壊れ4年でペップはバルサ監督を辞する事になった。

 

ペップバルサ5年目があったとしたら、ペップは何をしただろうか、少々ドラスティックな推察だが、メッシ放出を選択したのではないか?

 

思えばペップは守備の税金を払わない『脱税者』を放出し規律への遵守を怠る人間を排除しバイタル攻め攻撃と即時奪還の両立を追求した、それがペップバルサだった。

 

メッシは明らかに守備を放棄し始めていた。しかしバルサの最終生産者メッシの守備放棄は攻撃のリターンによって十分にお釣りがくるレベルで、即時奪還を一部放棄すれば正当化出来る。

 

しかしペップは認めたと思えない。メッシを切って再編する想定をしていたのではないだろうか。

 

メッシ解放のための外攻めと裏攻めを任せうるクラックを獲得し、メッシの守備放棄を認める路線はペップのアイデアにはあったはずだ。そのアイデアは後にMSNとしてエンリケが具現化する。

 

メッシかバルサ、個人か組織、という2択において後者を選択するとして、メッシを放出するというのは事実上不可能で、この究極の命題にペップは苦しみバルサ指揮官を辞したのではないか、と想像するのだ。

 

だからこそメッシを出すのではなく、ペップ自身がバルサを出て、メッシを切った後の世界線を別に建築する事にしたのではないだろうか?

 

そしてバイエルン、シティではコアUTになり得るポリバレントな選手を最適配置理論に基づいて配置変換し続け幻惑するバルサとは異なる描像を打ち出す。

 

ペップバルサとは共産的な組織に見えて、その実態はメッシという稀代の天才コアUTの個人能力に立脚した組織だった。高いコマンド力とカンテラ純正培養による最適配置の理解力、これが簡単に再現できるわけがない、アレグリの嘆きは正しい。

 

ペップは、メッシという超人のいない世界線でポジショナルプレーをするという『仮想ペップバルサ5年目』を生きているように自分には見えるのだ。

 

メッシという超人を放出した『ペップバルサ』の別の世界線を生きる男の苦闘を我々は見ているのかもしれない。その意味で『ペップバルサ』は未だに続いていると言えるだろう、メッシを放出した超人なき『ペップバルサ』のβ世界線が。

 

2021年、長らく続いたエヴァンゲリオンが完結した。旧劇というα世界線の別世界線となるβ世界線を新劇は構築した。作者庵野秀明は、現実にγ世界線を建築し虚構の世界に囚われる人々の解放を描いた。エヴァもペップもアーカイブからの引用と脱構築性においてシンクロする部分が少なくない。

 

保持と即時奪還の両立というクライフ描像遵守における特異点メッシのいる世界線といない世界線、両者は昨季オフにメッシのシティ加入で交わろうとしていた。エヴァがQにおいてカヲルという特異点で交わったように。

 

しかし絶望に終わったα世界線とは反対に希望のある破壊によりβ世界線は現実というγ世界線を生み出した。

 

エヴァヲタの自分が『ペップバルサ』に熱中するのは、脱構築手法によって古典アーカイブの引用によって成り立ち、複数の世界線を建築するという極めてユニークな様相を呈しているという共通点を感じているからなのかもしれない。

 

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歴史的最終生産者メッシと脱構築の天才ペップは、どのような帰結を得るのだろう。

 

来季でペップはバルサを去って10年を迎える。メッシを放出していたかもしれない『ペップバルサ』の10年目の『5年目』が始まる

 

新たなコアUT生産者ムバッペという超人を加えて『ペップバルサ』的描像へと回帰するのか、それとも『ポストペップバルサ』的描像を追求するのか、楽しみでならない。

 

超人を超えた組織が生まれる瞬間を、ペップが『バルサ』を超える瞬間を見られる事を楽しみに、これからもペップサッカーを見続けたいと思う。その瞬間こそが『ペップバルサ』の完結の瞬間になるのだから。

 

 

⑤ 終わりに

 

ペップバルサのウェンブリーでの戴冠から10年の時が過ぎた。ペップは3年間で2度の大耳制覇を果たすが、そこから10年間大耳決勝から遠ざかる。あの時、僕がフットボールに強く惹きつけられた時代、バルサとレアルしか存在していなかった。決して過言ではなく、あの時代、クラシコこそが主役だった。

 

ペップ、モウが退任し

『中の覇者メッシを活かす為の外裏の攻撃設定』

『偽翼ロナウドを活かす為のカウンター攻撃設定』

 

という悔恨を残し不全に終わった両クラブの名指揮官が残した遺言を活かす為に両クラブは似通った経路を辿る。 

 

両クラブはMSN,BBCという3topによる前輪駆動へ変貌し、バイタルエリアを巡って火花を散らした時代から戦力を全面に押し出し相手を圧殺する質的優位の時代へ変わる。

 

2013-2014シーズンから5季連続バルサ/マドリーが大耳優勝を独占し、ペップとモウの去った両クラブは時代を謳歌した。最終生産者と、それを活かす2人の組み合わせは、守備戦術の発展と圧倒的な攻撃力ゆえの守備免除の絶対防衛ラインを超過しだし、一つの命題を与える。

 

守備をしない最終生産者を維持するか、否か。

 

前者をバルサが選び、後者をマドリーは選んだ。メッシのいるバルサロナウドのいなくなったマドリーもロナウドのいるユーベも大耳決勝に上がれずにいる。これが何を意味するのだろうか?

 

バルサ/マドリーはどこへ向かっていくのか。10年代最高のバウトを見せた両クラブは20年代にどのようなサッカーを見せてくれるのだろうか。

 

次世代の最終生産者、ムバッペにはマドリーの偽9番、ハーランドにはバルサの9番になってもらいたいと願ってしまう。それは事実上のペップバルサとペップバイエルンの仮想対決になるからだ。

 

偽9番ムバッペがバイタルで躍動し、ハーランドとファティの2topが前線をかき回し、殴り合うエル・クラシコを見てみたいのだ。

 

ペップの残した2つの描像が新世代クラシコの図式になって欲しい、そんなペップバルサに魅せられペップサッカーを追い続ける者の願望を付し、記事を結ぶことにする。