牽牛星のよろず日記

自分の興味あることを思うがまま記述したいと思います。

3年目のゼロ(21/22MCIレビュー)

本記事は4部構成で

 

第1部で当該季の方向性と結果や考察を与えた。

 

第2部で当該季の各選手をS,A,Bの3評価で区分、コメントも付した。

 

第3部で各論を議論。

 

第4部で自分の総評を付した。

 

また付録として自分の持論を記した。

 

膨大な文字数のため全てを読もうとする異常な自分のブログファン(褒めてます笑)以外は摘み読みしてくれるだけで十分だ。

 

 

 

 

第1部 変遷

 

1、開幕前

 

①対CHE

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まず今季を語る上での視座になるのが、昨季CL決勝CHE戦での敗北。あの試合、スタリン起用、4番ギュンの奇策を何故ペップが実施したのか。

 

結局のところ、メンディ不在常態化、アグエロ耐久力低下、この2つからシティは質的優位性が担保されないケースにおける5トップの破壊力の低下、左サイドの守備力の低さを課題として抱えていた。カンセロロールは6トップ戦術を可能にするも守備的リスクは低くなく、ジンをLBで起用しても守備力改善に限界はあった。

 

トゥヘルはシティの弱点を何度も突いた。シティの5トップに5バックで対応、ストライカーもいないためクロス爆撃なしと見切り、シティの右サイドにジャブを打って左で仕留める形を丹念に繰り返した。その結果ウノゼロ勝利。

 

ペップはマフレズとスターリングでサイド攻撃を狙い、相手の堅牢を見越し4番に安定感を失っていたロドリに代わってギュンを起用。求めたのは守備より継続性のあるパス。耐えてフォーデンとデブ神になんとかしてもらう。2人が中央で使うスペースを作るためにサイドを張らせるスターリング起用。しかしデブ神は怪我で途中離脱、必然の敗北。

 

課題は

サイド攻撃の弱さ

最終生産者の欠落

本職LBの不在

 

この修正が今季のテーマ。

 

②応手

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独力突破可能なWGがマフレズしかいない現状を考え、複数選手でのコンビネーション攻撃が求められる中、ペップはシティの基礎布陣を235に変更。これまでの325と異なりダブル偽SBシステムで、RBもLBも中央に絞るV字陣形が形成された。

 

この布陣の狙いは3つ。

 

まずロドリ。ギュンを大一番で使わなければならなかったのはロドリの不振にあり、周囲に選手がいない時のプレー判断を間違え無理やり繋ごうとしてパスミス、というシーンが少なくなかった。だから側に偽SBの2人を置きプレーを安定化させる寄与に期待した。

 

次にサイド攻撃。カンセロロールによる6トップ化の一般化をするためにSBはサイドのヘルプに入りやすいようにボランチ化した後に機を見て前線に駆け上がることを求めた。SBに偽SBと純正SBの両面の役割を与えた。

 

そして守備。前線に向かって人員が多く配置されたフォーメーションはDFラインで受けるのではなく、ボランチを3枚とし前に圧力を上げ、高い位置でのボール奪還を可能にする。

 

次は人員の変更。

 

デブ神の体調を整えるために、神の代わりにIHでイニングを食い共存も可能な選手としてグリーリッシュが獲得。シルバ同様にWGとIH間を横断しながら、独力突破に苦しいスターリングの補助も期待された。

 

LBの守備力問題は、メンディ登用という原点回帰に賭け、左利きのウォーカーという難題に答え得る選手として念願のフィットが待たれた。

 

そして最終生産者。求めたのは英国の9番ケイン。スターリングをEUROで支えていたこともあり、プレミアへの順応も心配ない。クロス爆撃にも対応し下がってのゲームメイクも出来るなどフィット間違いなしの選手をマーケットで狙った。

 

 

③開幕

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チェルシーからの宿題に対するペップの提出。残念ながら満額回答とはならなかった。メンディは開幕早々に病院ではなく裁判所に向かう羽目になり、構想から外さざるを得ず、LBの守備保険に関しては棚上げされ、リスク覚悟でLBカンセロをビッグゲームでもぶつける方針を取らざるを得なかった。

 

デブ神のプロテクトとして一億ポンドでグリーリッシュが獲得され、アグエロの背負った背番号10番を背負うこととなった。アップダウン出来るSBとの協調が上手かっただけに、メンディの喪失は悔やまれるところである。

 

そして最大の優先事項であったケイン獲得はスパーズ会長レビーの徹底抗戦で失敗し最終生産者のいない3年目を迎えることになった。アグエロの事実上の離脱となった2年間と同じ状況が繰り広げられた。

 

235布陣は一定の機能性を有している事をプレシーズンから見せ、チームのゼロトップ体制も円熟味を帯びていた。ケイン獲得失敗以降、ロナウド、ブラホビッチといった獲得候補の名前が躍るもフロントは動かずゼロトップ体制3年目を迎えた。

 

 

2、シーズン前半

 

①暴走するSAC

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ダビシルバ、シティのレジェンドにしてアブダビ時代の功労者。そんな魔法使いが退団して以降、互助より自助というどこぞの国のような光景が広がった。各位の自己判断で複数の選択肢を単独で提示し、独力での後出しジャンケンで相手を出し抜く。明確な最終生産者の不在は、再現性を確かにそこに残しながらも即興性の強い多彩なアタックを可能にした。

 

前線5枚は柔軟にポジションチェンジし、横断を繰り返す。そこに後ろからカンセロが縦断し前線は6枚で相手を叩きのめした。そこで活躍したのはマフレズ、デブ神、フォーデンといった個人能力に優れた選手に加え、貴重な得点源のギュン、そして何より即興性が創り出す負の側面である守備リスクをベネフィット方向にリカバリー出来るベルナルドだった。

 

SAC=Stand Alone Complex

 

独立した個人の行動が総体としての集団の挙動になること

 

自分にはシティがこう見えた。

 

スターリングは存在感を失い、フェランは方向性が毎年変わり、ポケットを殴る、大外を起点に折り返して殴る、という再現性はあるが、そこへ至る道は多彩な様相を呈した。

 

グリは加入早々に即フィットし、CLのRB戦では水を得た魚の如く広がるカオスを楽しんでいた。しかし、シティのボスはサイドの選手を呼び寄せ憤怒していた。ペップの目指す秩序だった無秩序とは異なる集団での守備構造の減退を見て、チームは方向性を緩やかに変容する。

 

ネガトラ強化

 

これがシーズン通じてのテーマだった。

 

RWGでは守備能力の高いジェズスが重用され、前線からのボール奪取も向上し235システムのサイド攻撃の強化という側面よりも、前線での奪取力が強く目立っていた。

 

カオスな個人の自己判断の総体としての再現性のあるアタック、カオスな状況を抑制するための守備力強化の方針、ゼロトップ時代はこの2つの方向性の調和と協調に主軸が置かれた。

 

②死のアウェイ3連戦

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CSレスター戦を落とし、リーグ開幕戦スパーズ戦を落とし、ケインは取り逃がし、ロナウドは来ない、メンディは帰らない。チームに活力を与えたのは放出候補たちだった。

 

メンディの離脱、最終生産者の不在、3年目の苦境に対してベルナルドは絶妙なサポートでボールを前進させ、守備に転じればピッチを駆け巡りチームを助けた。

 

救世主イエス(ジーザス)の名前を与えられペップシティ1年目の苦境に現れ『未来』と呼ばれながらも近年は燻っていたジェズスは9番からWGへのコンバートを志願しRWGでチームの守備力向上とチャンスメークで貢献した。

 

ストーンズが代表で負った怪我を引きずり満足なプレーが出来ない中、ラポルテはルベンの相方として最終防衛ラインを支え、得意の左足のキックでも貢献、昨季3番手に落ち込んだところからの必死のアピールが続いた。

 

 

 

そして、『あの試合』がもう一度やってきた。宿願CLを奪い去ったライバルCHE

 

lilin18thangel.hatenablog.com

 

CHE戦に関してはレビュー記事を書いたが、23ビルドを放棄、41ビルドで相手WBが”届かない”配置を心がけ、右サイドは旋回大三角、左サイドはカンセロの攻撃参加、守備面では4231外圧縮マンツープレスでCHEから酸素を奪う。ベルナルドは必死に走り、ラポルテはルベンと共に怪獣ルカクを完封。そして貴重な決勝点をジェズスが挙げ、リベンジを果たした

 

 

 

続くパリ戦、大外とポケットを殴るシティがシュートの局面に苦しむ中でパリはシティの弱点である左サイドを狙い撃ちカンセロを引きずり出してムバッペを走らせて折り返してゴールを奪い、中央を固めてクロスを弾き返して前残りのメッシ、ネイマール、ムバッペが悪魔の如きカウンター攻撃を加え続けた。

 

左サイドの守備力の低さ、同格格上相手の際の決め手の欠如、これらが結果に如実に現れた結果であった。ベルナルドは決定機を外してしまい、守備でもカンセロリスクが顕在化してしまった残念な敗戦となってしまった。

 

 

 

3連戦最後の宿敵LIV戦、ゼロトップにグリーリッシュが使われ前線からのプレスでLIVを苦しめにかかった。対してジョタが降りて中盤の数的優位を確保してボールの出口を増やすことで散らすLIVの応手。シティは41ビルドでSBを浮かしたり、グリが降りて偽9番化したりして出口を増やしていた。

 

拮抗したプレス合戦と試行の数々の応酬は結局互いの生産者の殴り合いに発展した。LIVはサラーとマネが得点を奪い、シティはフォーデンとデブ神が同点弾を2回演出した。シティの守備力の低いエリアである左サイドから2度の先制点を奪われても、シティは何とか同点に持ち込めた。ロドリのスーパーブロックなど必死の決戦で勝ち点1を持ち帰れた。

 

こうしてアウェイ3連戦を1勝1敗1分。必死に耐えて愚直に用意してきたギミックを用いたながらCBとSB間を狙い撃ちサイドを抉って折り返し、フォーデンとデブ神の質的能力で得点を奪い去る、そんなシティの方向性が見えた3連戦だった。

 

この3連戦で出番のなかったフェランは冬に放出されることになるが、この移籍金が後のハーランド獲得資金と、ほぼ同額になることを、まだ誰も知らない。

 

地獄から生還したシティはパリとのリベンジマッチをジェズスの決勝点で勝利し、その勢いのままにリーグは独走、今季もシティのリーグマスターぶりが目立っていた。しかし、カラバオカップPK戦の末に敗北、CLもGL5節の時点で1位突破を決めるも最終試合のRB戦で主力のウォーカーを出場させ、まさかのレッドカードでCLノックアウトステージで3戦出場停止となってしまう。

 

必死の守備と愚直な攻撃、シティの今季のモメンタムに暗い影が落ちた瞬間だった。

 

13試合12勝1分という圧倒的な成績で駆け抜けて迎えたTOTとのリベンジマッチではケインのスーパーゴールの前に散る。CLでのウォーカーの代役を務めたのは本職CBのストーンズ。耐久力に不安を抱え非本職位置で使われ続けるも好パフォーマンスでチームを支えた。この連勝街道の最中、ルベンも数ヶ月離脱クラスの怪我、これが厳しい選択を迫ることになった。

 

 

3、シーズン後半

 

①死の4連戦

 

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シーズン後半の佳境

 

CL8強アトレティコ戦1stleg(HOME)

リーグのLIV戦(HOME)

CL8強アトレティコ戦2ndleg(AWAY)

FA杯4強LIV戦(ウェンブリー)

 

という4連戦を迎えた。

 

堅牢の550ブロックを構成したアトレティコには、また愚直に攻め続け最後はフォーデンの虎の子の一点を最後まで守り切り4強へ進出。アトレティコは今季は堅牢から攻撃寄りにデザインを変更していたので、それをぶつけられると厳しかったが、引いてくれていたのでシティに取ってはやりやすかったのかもしれない。しかしウォーカーが2ndlegで怪我、後半途中に退いた。

 

2つのLIV戦に関してはFA杯に関してはメンバーを落とさざるを得なかったシティに対してベストメンバーで挑んだLIVを止めれず、あと1点まで迫るも、GKステフェンの凡ミスによる失点が響きタイトルを失った。

 

そしてリーグ戦。4231の2ボラのロドリとベルナルドが中盤底で砲台となってLIVの裏のスペースやSBの裏に走り込んでいるウォーカーとカンセロに配球し続けた。LIVは中央を5レーン封鎖する45ブロックを形成するも、シティの強度は凄まじく、一旦非保持に転ずるとベルナルドを前に押し出して窒息に向かっていた。

 

これによってLIVはロングパスで散らさざるを得なかったものの、シティは徹底的に攻め続け先制してはLIVが返すという前回のバウトとは反対の展開だった、僅かにシティは優勢に進め決定機も少なくなかったがデブ神とジェズスの2点に留まってしまった。

 

この試合、素晴らしいバウトと第3者的には見えるかもしれないが、個人的には絶望感を得る試合だった。何度もLIVのゴールに迫っても決定機を数回外してしまっていて、覇権クラスのストライカーがいれば、もっと得点出来たのではないか、と頭を抱えてしまった。

 

そして、耐久力に不安のあったストーンズを2週間の間に4試合フル出場を課してしまったツケを払うように、怪我で離脱することになった。

 

②遮蔽されたもの

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残されたタイトルはペップシティ得意のリーグ戦、苦手なCL。前者ではLIVが勝ち点3差まで迫ってきて、後者では白い巨人と争う4強を迎えた。

 

宿願の大耳を巡る4強、怪我で欠場と伝えられていたウォーカー、ルベン、ストーンズだったがルベンは間に合わせ、ストーンズも強行出場した。ストーンズは前半中頃にジーニョに途中交代、体のキレも不十分で今季怪我での離脱が続いた自身の状態に申し訳なさがあったのだろう、明らかに無理のある出場だった。

 

シティは何度も何度も決定機を作り4得点を奪い去るも、スタメンクラス2人を欠き、ルベンも本調子でない中、マドリーはしたたかに3得点を奪いベルナベウに希望を残した。

 

そして2ndleg。ウォーカーが帰還し、ストーンズは欠場。ウォーカー、ルベン、ラポルテ、カンセロという今季お馴染みの4バックで挑んだ試合。シティは攻めかからずに時間を潰しながら試合を殺しにかかった。そして後半に得点を奪い合計スコアで2点のリードを守りながら逃げ切りを図った。

 

後半40分頃にウォーカーを下げ、カンセロをRBに回しジン投入。マフレズもジェズスも下げスリープモードに突入しようとした。しかし後半45分と46分に立て続けにロドリが得点し、試合は振り出しに戻る。

 

逃げ切るためにデブ神、マフレズ、ウォーカーを下ろしたシティ、対して勢いに乗るマドリー、もはやPKに持ち込むしか手の残されていないシティは相手の最終生産者ベンゼマのゴールで敗走。絶望と失望に支配されたベルナベウでシティの夢は散った

 

繰り返すが今季のシティはデブ神、フォーデン、マフレズの3人のゴールを祈り、それまではウォーカー、ルベン、ストーンズで耐え続けるしかなかった。それがDFコアの保全に失敗してしまったので敗北は必然だったのだろう。

 

これまでペップの奇策で負けたと評され続けたチームは、”正攻法”で挑んだ結果、1stlegで優勢状況をゴールに反映する能力の低さを露呈し、2試合通じてDFコアを守り抜く事、控え選手ではラポルテ以外は寄与を与えられなかった事が重くのしかかった。

 

奇策は、こうした現状を埋めるためのものだったのだろう。奇策で負けていたのか。様々な意見が別れるところだろうが、奇策が、こうしたシティの厳しい現実を遮蔽していたのは確かで、この現状を露呈させたという意味で収穫のある敗北だったのかもしれないが。

 

Life goes on. It always does until it doesn't

 

戦い続けるスカイブルーの戦士たちは最後のタイトルの防衛に向かった。ウエストハムに引き分け、LIVとの勝ち点差1で最終節を迎えた。

 

ルベン、ウォーカーを欠く試合、ビラに2点をリードされる苦しい展開、しかしリーグマスターは砕けない。後半終盤5分の間に3点をぶち込み大逆転。裏のリバプールは2点差をつけリードしていたものの、狂気の逆転劇でシティが戴冠。

 

プレミアリーグを制覇し、ゼロトップ時代が終焉した。

 

 

第2部 選手評

 

1、S評価

 

4番 ロドリ

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ブスケツ、ラーム、アロンソ、ペップチームには常に最高峰の4番がいた。ドリームチームの4番を務めたペップにとって4番への要求は凄まじいものがある。そこに応えるのに時間は要したがシティの絶対的な4番として大活躍した今季、個人的なMVPだ。

 

控えのジーニョがトップレベルでの限界を示していただけに怪我が許されない立場でシーズン通しての活躍を見せてくれたのは大変素晴らしい。来季はストライカーへのクロス爆撃も予想される。そのため中距離パスで左右に散らすコマンド力の向上に期待したい。

 

神の余命 デブ神

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やはり神は神だった。開幕当初は怪我を抱えながら何処か本調子からは程遠い様子であったがシーズン佳境に進むにつれて調子は上がり、特にビッグゲームでの得点関与は増え、より決定的な仕事をするようにシフトした。

 

しかし、限界はある。不毛な高橋由伸政権に全盛期を捧げてしまった菅野智之のように、いざストライカーが到来してチャンスメークの得点変換率が向上しているのに、怪我で不在とならないか心配でならない。神にバロンドールを与えられる日を待ち望む。

 

駆ける賢者 ベルナルド

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契約を延長するか否か、暗雲も立ち込める中で始まったシーズン。自慢の運動量とインテリジェンスでチームに多くをもたらした。あえて言えば得点が欲しいところだ。デブ神のように決定的な仕事をもう少し望みたい。

 

本人はシティを去るのかどうか釈然としないが、チームとしては放出ということも考えなければならない。シティにとっては痛い放出になるが出たいと考えている選手を残すデメリットもあるだろう。新たなMFの獲得もあるやもしれない。できれば残って欲しいが。

 

最高の逆足ラテラル カンセロ

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メンディの離脱で狂ったLBのプランを埋めてみせた。テクニックと持ち上がりからのチャンスメークはデブ神の不調時に大いに助かった。ビッグゲームでのスタメンも増えてきて課題も少なくないが来季に期待したい。

 

いないと崩しきれず、使うと左サイドの守備力は下がる、この難しさは相変わらず。本音を言うと第3SBとして控えに置いておいて、崩しきれない時の”代打”に使えたら最高なのだが。。

 

何者になるか フォーデン

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ケインを取り逃がした時、自分はフォーデンの到達点がシティの到達点になると述べた。今季は名実ともに次世代のエース候補として認知されたはずだ。シティのスタメンとして十分な成績は残したと言えるのではないだろうか。

 

ただ得点能力に関しては覇権クラスと比べると見劣りはした。適正としてはボールを運ぶ能力に優れ、シュートも下手ではない、という点を考えるとIHで育てたいところ。WGとIHを高次元にこなすシルバの後継者としてフランチャイズプレイヤーになってほしい。

 

狂気は死せず エデルソン

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感情は母の子宮に置いてきたのか、脳の恐怖を感じる部分が切り取られている、というよもやサッカー選手を形容しているとは思えない賛辞を受ける狂気のポルテーロ。リバプール戦でのコントロールミスを突かれそうになっても全く動じない。本当に人か?

 

今季はアーセナル戦でのCBの前に出てのプレーといったかなりリスキーなプレーもこなしながら相変わらずの狂気を見せてくれていた。この狂気の先に自分が予想するLBとしての出場があるのか楽しみにしている。

 

2、A評価

 

主将の矜持 ルベン

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昨季のパフォーマンスが凄すぎたせいか、今季は目立っての賞賛はなかったように感じるが、この男の存在はカンセロのリスクを最小限に留め、ラポとのコンビで卒なくチームの防衛ラインを支えた。

 

怪我で離脱したシーズン終盤、治りきっていない中であったが、ストーンズの不在、ウォーカーの体調不良を見て、立ち上がったのだろう。マドリー戦に間に合わせた。名手が選手寿命を生贄にチームに全てを捧げる姿は美しいし心を打つ。しかしルベンに、ここまで背負わせてしまったことに責任は感じざるを得ず、運用は再考すべきだろう。

 

王になれるか マフレズ

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シーズン序盤のネガトラ強化で序列を落とすも、ビッグゲームが続く佳境では、この男の左足は必要となった。個人能力の高さは勿論、独力で得点を取れるのは素晴らしい。昨季からチームに必要な選手と価値を示せた。

 

この男を語るとき、やはり引っかかるのがサラーの次元に到達するか。支配層に行けるか否かが問われ、個人的にはその次元にいく素養は持っていると感じる。ゼロトップ時代において得点力のあるWGの価値は高かったが、来季はハーランドが来る。果たしてどうなるか。

 

脱3番手 ラポルテ

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ストーンズの怪我でルベンの相方一番手となったラポルテ。今季は出場も多くアピールは出来たはずだ。大一番でのやらかし癖も減り大一番でシティの守衛としての存在感は増し、左利き同士のCBコンビをアケと形成したり選手としての幅も広がったか。

 

しかし大一番のCBとしては心許ない部分もありルベンの負担を軽減出来ているかは微妙で単体として見た時の能力が支配層レベルではないルベンにとっては相方に求めるのは無理のきくディフェンス能力だろう。言いづらい部分ではあるが、ストーンズは第4CBとしてカウントし、ラポはルベンの相方を別のCBを争うという3番手の方が合っているかもしれない。

 

コンバート ジェズス

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待望のアグエロの後継者、ペップシティ初年度の暗澹たる雰囲気に光を差した未来。このインパクトは見るもの全ての期待値を大きく上げてしまったのだろう。ベンゼマのようにエースの従者からの格上げはならず、チームの9番としては戦力外とされた。

 

しかし本人は腐らずWGに転身し、守備能力とチャンスメーク力でチームに貢献し、そしてクラッチ力をビッグゲームで見せ、シーズン終盤には輝きを増した。来季はどこでプレーするか分からないが、感謝とリスペクトを送りたいと思う。

 

柱だからこそ ウォーカー

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シティのDFの絶対的コアであり、だからこそCLのRB戦での不用意なレッドカードはチームに小さくない影響を与えたはずだ。ウォーカーがいなくなり、ストーンズを駆り出す機会が増えてしまった事、右サイドの守備力低下がルベンに与えた負荷もあったはずだ。

 

選手として見れば、どれほど素晴らしいかあえて書くまでもない。だからこそ自覚と責任のある行動とプレーを見せて欲しい。ウォーカーなしの大耳制覇は絶対あり得ない。あえて厳しく、この評価にしたのは期待も込めてだ。頼むぞ。英国の壁よ。

 

丁度良いIH ギュン

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中盤選手の控えとしてデブ神、ベルを休ませて非常時には4番にも対応、9番不在の状況においては飛び出してのゴールも演出するなど、貴重な中盤選手としてよくやってくれた。今季の前線中盤選手が健康体を保てたのは、この男の献身があったからだ。

 

退団も報じられ始めているが、おそらく遅くなく退団は数年以内にやってくるはずだ。半スタメンとしてチームを支える将来の監督候補を何年見れるか分からないが、銅像にならなくとも彼の貢献に見合った未来が訪れる事を祈りたい。

 

探し物 アケ

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DFのコアを守り切る、それがアケの役割だった。第4CB、第3SBとして控えながら今季は格上げがやってきた。メンディの離脱、ストーンズの怪我によるラポルテのスタメン化で序列は上がった。確かにLIV戦でのサラーへの対応やリーグ戦での随所の活躍など光るものも見せ来季以降の希望となるだろう。

 

ずっとチームは左利きのウォーカーを探していた。その答えはアケなのかもしれない。来季はDFに補強はされるだろうが、本当の勝負はここからだ。耐久力に不安もあるので無理なくLBとLCBの2ポジでイニングを食えるようになってほしい。

 

罵声の中で スターリン

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印象が悪すぎる。それに尽きるのだが、守備面での怠慢さを見せることもしばしばあり、大事な得点機会でのシュートミスに加えて自己評価が相当に高いので余計にヘイトを買ってしまう。

 

実態は第4FWで前線コアを守り抜くことにあって、耐久力の高さはチームに安定をもたらすのだが、やはりビッグゲームで使うには質と方向性に問題を感じる。契約を延長するのか退団か。チームとしても新たなハーランド時代における挙動を見てからの判断で良いはず。来季存在価値を賭けた戦いに挑むことになるだろう。

 

3、B評価

 

名手への道 ストーンズ

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耐久力、もうそれに尽きるシーズンだ。怪我さえなければルベンと共にコアを担える存在で無理のきくタイプなのでチームには欠かせないメンバーであるが、コンパニへの道を着々と歩んでしまっているのは気掛かりである。RBへの挑戦などUT性も見せ始めてるだけに肉体面でセーブをかけなければならないのは。。

 

残念だが来季構想では第4CBとしてカウントして新規CBの補強を敢行すべきかもしれない。耐久力を考慮した運用によってスタメンとしてコアとして輝いて欲しいのだが。

 

色男の苦悩 グリーリッシュ

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正直文句はないのだ。任務は果たしているのだから。そもそもデブ神の体調管理と前線コアのためのインングイートこそが本来の役割であり、1億ポンドは彼の移籍金というよりもデブ神を含めとする攻撃コア選手の体調管理への投資だと個人的には考えている。

 

しかし大一番で出来たらコアレベルでのプレーをして欲しかった。ジェズスが活躍してはいたものの、フォーデン、マフレズに並ぶ前線の主力として期待せずにはいられなかった。悪くはないのだ、ただ、しかし、、、

 

来季に期待しよう。

 

さらば英雄よ フェルナンジーニョ

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ヤヤを攻撃に全振りさせられる潰し屋の相棒、ペップの望む4番、常に仕えた指揮官の要望に応えてきた功労者は岐路に立つことになった。ロドリの一本立ちで立場を終われクローザーの役割を担うことになった。

 

CBでのプレーもこなすが、それでも強度が足りず体がついてこれないことでファールで止めねばならず衰えが顕著であった。彼が死に場所に選んだのはエティハドではなく母国ブラジルであった。銅像にはならないかもしれないが、功労者に違いない。本当にありがとう。その言葉以外何も思い浮かばない。

 

4、評価不能

 

騒乱の中で ジンチェンコ

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想像して欲しい。母国の人々が無慈悲に殺され、犯され、土地が蹂躙される様を。無実の同胞がネオナチと呼ばれ大量殺害されている。自分がかつて遊んだ場所、暮らした日々、培った幸せな思い出がつまった場所を汚されていく景色。あなたは正気でいられるだろうか?

 

だからこそ今季のジンを選手として評価するのは極めて厳しいのだ。この精神状態の中でチームに帯同し続けるのは、どれほど大変か。評価不能というのが正直なところだ。左利きのキミッヒとして来季の奮闘に期待する。

 

今でも長らくウクライナでは毎日のように死傷者が発生し世界中の人々が心配しているが、ウクライナの人々に平穏な日々が訪れることを心よりお祈り申し上げる

 

法律に縛られ武器供与も軍事的援助も出来ない極東の臆病な島国の国民として、素晴らしいウクライナ人選手が所属するチームを応援する立場として、あなた方の幸福を祈ることしか出来ない自分の無力さを痛感する次第である。

 

 

第3部 イシュー

 

1、クン時代VSゼロ時代

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アグエロ時代3年間とゼロトップ時代3年間の比較による検討と総括を行う。試行数が38と多いリーグ戦を対象に定量的指数を見ていこう。

 

16/17 アグエロ時代1年目

23勝9分6敗 勝ち点78(3位) 得点80 失点39

得点期待値2.11 HOME2.29 AWAY1.94

失点期待値1.08 HOME0.98 AWAY1.18

得点-(期待値×38)=-0.18

失点-(期待値×38)=-2.04

 

17/18 アグエロ時代2年目

32勝4分2敗 勝ち点100(1位) 得点106 失点27

得点期待値2.22 HOME2.44 AWAY2.00

失点期待値0.81 HOME0.75 AWAY0.88

得点-(期待値×38)=+21.64

失点-(期待値×38)=-3.78

 

18/19 アグエロ時代3年目

32勝2分4敗 勝ち点98(1位) 得点95 失点23

得点期待値2.12 HOME2.4 AWAY1.84

失点期待値0.73 HOME0.69 AWAY0.77

得点-(期待値×38)=+14.44

失点-(期待値×38)=-4.74

 

アグエロを最終生産者としていた3年間、ハーフスペースに立つデブ神とシルバにボールを渡して、そこからスターリングとサネが同足でサイドをぶち破りロークロスを供給。それをアグエロが決めるのがお馴染みの光景だった。

 

1年目こそ苦しんだものの、大幅に選手を入れ替えて臨んだ2年間は得点において圧倒的な理不尽さを発揮しており国内全てのタイトルを手中に収めるという支配チームとなっていた。

 

一方CLに目を向けると8強の壁に阻まれてしまった。というのもアグエロの成績を見てみると

 

17/18 8強 1stleg ベンチ外 2ndleg  24分出場

18/19 8強 1stleg 19分出場 2ndleg 90分1ゴール

 

となっていて勝負出来た2年目と3年目のうち前者では耐久力により出場出来ず、後者においてはジェズスと出場機会を分け合って負担を軽減するもPKを外し合計スコアで1点足らず敗北することになった。もちろん誤審まがいのものも18/19にはあったが。

 

シティが8強が鬼門になっているのは、アグエロが8強で思ったような活躍を出来なかった事に起因していて、DFコアのラポルテのやらかし癖、同じくコアを担うべきメンディの常時不在による左サイドの守備力の低さを抱えチームは国外での活躍が見込めなかった。

 

アグエロがプレミア史上最高のストライカーだ、と主張する際、エビデンスとしてリーグのひと試合あたりのゴール数と総得点数をエビデンスにされる方がいる。それに対しても自分なりの反駁を用意する。

 

アグエロと同時代同リーグの優れた生産者とのリーグ成績比較をしてみよう。

 

ケイン(TOT)

14/15 2581分出場 21G4A

15/16 3370分出場 25G1A

16/17 2536分出場 29G7A

17/18 3083分出場 30G2A

18/19 2427分出場 17G4A

19/20 2590分出場 18G2A

20/21 3087分出場 23G14A

年平均試合出場2811min 1試合あたり0.75G 0.16A

 

サラー(LIV)

17/18 2922分出場 32G10A

18/19 3262分出場 22G8A

19/20 2888分出場   19G10A

20/21 3082分出場 22G5A

年平均試合出場3039min 1試合あたり0.7G 0.24A

 

アグエロ(MCI)

11/12 2598分出場 23G9A

12/13 1947分出場 12G2A

13/14 1538分出場 17G6A

14/15 2540分出場 26G8A

15/16 2375分出場 24G2A

16/17 2405分出場 20G3A

17/18 1969分出場  21G6A

18/19 2480分出場 21G8A

19/20 1456分出場   16G3A

20/21 559分出場   4G1A

年平均試合出場1987min 1試合あたり0.83G 0.22A

 

ケインはスタメンとなってからを対象としていたりサラーは4年だけなのでサンプルとしての不公平感はあると思うが、言わんとする事は理解出来るはずだ、アグエロは同クラスの生産者と比べて出場時間に差が相当ある。というのも耐久力の低さから、そもそも出場試合も少なく、ゴールを奪えばジェズスと交代させる事が多いので結果としてゴール÷時間は高く評価されてしまうのではないかという指摘である。

 

アグエロは優れたストライカーである、という事に疑念を持っているのではなく、プレミア史上最高というのは言い過ぎでプレミアの歴代でもトップクラスと表現する方が適切に思える。最近アグエロを超えるストライカーは早々出てこないと言われているがサラーはアグエロを耐久力では大きく上回り絶対的最終生産者として傑出した才能であると思うのだが。

 

ペップはアグエロに満足する事はない、自分のペップシティ政権発足前に抱いた直観は正しかったか分からない、しかしペップはサンチェスの獲得に動いた。2TOPでアグエロと併用するなら3センターを捨てはしないだろうから532を使うつもりだったと仮説が立つが、だとするならペップが未来の3人と名指しした内の2人であるサネとスターリングは外される。343で縦2TOPだとしてもウォーカー、メンディーの両名獲得が理解出来ない。そこで成り立つ残酷な仮説は『ペップはアグエロを粛清しようとしたがサンチェスを取り損ねたためにアグエロで妥協した』というものだ。

 

アグエロとサンチェスの共存という仮説が打ち消される以上、当然の推測ではあるのだが、この妥協がチームに暗い影を落した、というのが自分の意見だ。結局ペップシティはペップが妥協したアグエロを最終生産者として組み上げた為に、最大値が想定を下回るものとなってしまい、ケガでCLの大事な試合で不在というのが常態化し、そこを埋めるために常に『策』を用意する必要に迫られ、その結果として負けた時にシティズンからの奇策ハゲの大合唱になる、というものだ。

 

だが根本原因はメンディーの不在常態化、アグエロの低耐久力により、守り切る力/攻め切る力の両面において欧州覇権レベルになり損ねている事と自分は考える。ただ少なくないシティズンはアグエロのケガを『事故』とみなし能力の欠如とは決して見なさず、アグエロへの批判が感情的に出来ないので、その怒りが全て奇策ハゲペップに向くのではないだろうか。

 

しかし実態としては9番の不在がもたらす必然の最大値不足と補うために苦闘する指揮官がいるわけで、だからこそ自分はアグエロに代わる最終生産者を獲得して絶対的最終生産過程を作るべきだ、と提言してきた。

 

このことはアグエロが在籍していたゼロトップ時代初年度2年目がモロに影響を受けてしまったと言える。19/20と20/21においてはアグエロはCLではほぼ使えなかった。

 

 

19/20 ゼロトップ時代1年目

26勝3分9敗 勝ち点81(2位) 得点102 失点35

得点期待値2.54 HOME2.66 AWAY2.42

失点期待値0.97 HOME0.86 AWAY1.08

得点-(期待値×38)=+5.48

失点-(期待値×38)=-1.82

 

20/21 ゼロトップ時代2年目

27勝5分6敗 勝ち点86(1位) 得点83 失点32

得点期待値2.12 HOME2.32 AWAY1.94

失点期待値0.93 HOME0.91 AWAY0.96

得点-(期待値×38)=+2.44

失点-(期待値×38)=-3.34

 

21/22 ゼロトップ時代3年目

29勝6分3敗 勝ち点93(1位) 得点99 失点26

得点期待値 2.53 HOME2.60 AWAY2.46

失点期待値 0.84 HOME0.77 AWAY0.90

得点-(期待値×38)=2.86

失点-(期待値×38)=-5.92

 

おそらくペップが好き好んでゼロトップを受け入れたわけではないと思う。しかしながらアグエロの不在は必然的にチームの構造を変えることになった。更に守備コアの不安定化も是正される事になった。

 

ルベンの獲得、カンセロの起用、ストーンズの復調でチームは守備に重きを置くようになっていく。理不尽な得点がない代わりに、守備でプラスを生み出していた。しかしCLにおける絶対的な武器の不足は明白であり、ゼロトップでは覇権クラスになることは難しかったと結論づけられる。

 

ペップはゼロトップを3年間も何故受け入れたのだろうか?

 

ペップはアグエロの耐久力が臨界点を超えだした19/20オフに動かずアグエロの契約満了まで9番獲得を見送り続けた。何故か。ここに良くも悪くもペップの良さが現れている。ペップはアグエロ最後の試合後インタビューで涙を流しながら『彼の代わりなんていない』と絶対的な存在であると主張していた、多くのシティズンも感動したのだろうが自分は苦々しく思っていたし、その気持ちをアグエロの父親が代弁していた。『あの涙はTV用だ、そんなにウチの息子が大事なら何故契約延長オファーを出さなかったのか』まさしくその通りなのだ。

 

ペップは明らかにアグエロに不満を持っていた、でないならサンチェス獲得未遂の道理が合わない、しかし取り逃し、ペップは優しさから神話を支持した。『アグエロは最高のストライカーである』というものだ。代替の9番を獲得しなかったのも神話のためである。

 

仮にサンチェスを獲得したとしよう、そしてアグエロが試合出場可能な状況なら、どちらかをスタメンとして選ばなければならない、その状況においてペップはサンチェスを選ぶだろう、だからこそ獲得したのだから。

 

そうすれば神話は崩れる、アグエロがベスト』という神話は対外的に否定されシティズンのアグエロへの信仰に対し水を差すことになる、だからこそアグエロが世界最高9番というスタンスを守りながら次のストライカーに移譲するために満了まで待つことにしたのだろう。個人的に、この姿勢は立派だとは思うが、この神話堅持のせいで最大値は低くなってしまったので、大耳戦争敗着の一手だったと個人的には考えている。

 

イブラ、マンジュとの不和はペップの有名なエピソードだが、その原因が見えてくる。

 

イブラはペップバルサ2年目の目玉補強だった。しかしメッシが覚醒しバルサの王ではなくなった。ペップはイブラへの敬意からメッシ中心の方がイブラ中心よりも優れたチームだから偽9番メッシと偽翼イブラを決意した、という腹の内を絶対に口外しなかったが、それは誰の目にも明らかだった。

 

ペップはイブラを『主役』として見切った。イブラはそれをハッキリ言わない事にイライラしていたのではないだろうか、明らかに自分を評価せずメッシ中心を決めていているのに、その事をイブラに言わない。インテル戦後の『臆病者め』という怒りはコレに起因するのではないだろうか。聞こえの悪い事は明言しないという相手への哀れみはイブラのプライドをかえって傷つけたのではないだろうか

 

 

マンジュキッチもそうだ。バイエルン就任時、ペップは生産者の獲得をオーダーしていたしレバンドフスキを『予約』していた。ドルトムントフロントが1年後のフリー移籍を決断したため、合流が遅れただけで、レバとマンジュは共存させる気はない。ペップにとってマンジュはレバの『代替品』でしかなかった

 

しかしペップは、その事を明言はしない。『誰か一人戦争に連れていけるならマンジュキッチを連れていく』と言って見せる。それはマンジュはレバの代役ではなく素晴らしい選手だと主張したかったのだろうが、それならレバを獲得する理由は何なのか?マンジュがそれだけ良いなら大耳『戦争』に連れていけば良いではないか

 

イブラはメッシに次ぐ2番手、マンジュはレバに次ぐ2番手、その事実がありながら行動にも移しながら、ペップは、さも彼らが最高であるかの如き発言を対外的に行う。このやさしさとプライドへの配慮の姿勢がかえって彼らの気持ちを傷つけたのではないか、と自分は考える。

 

アグエロにも同様の事をした。ペップにとってアグエロはNo.1ではなかった、サンチェスの獲得に動いた後で平気な顔で涙を流しながら世界最高のオンリーワン選手のように彼をほめそやす、アグエロとの間に不和は発生しなかったが、ペップの2番手のプライドの尊重というのは逆効果になりうるという好例で、本人は、これを優しさと捉えているから余計にタチが悪いのだ笑。

 

ペップは少なくないシティズンの信仰する神話『アグエロは世界最高』を支持し、それが崩れ去る決断を避けた。ある意味ではペップ政権5年間は神話と共に歩んだと結論できる。そして、その神話がペップシティの最大値の低さを招き、欧州覇権を阻んでしまった事も、また事実なのだ。

 

ペップは神話を守った。2番手を1番手と言い切り続けた。その姿勢が良かったのか、自分は大いに疑義を抱く。アグエロのピークアウト後、ケインは18年夏に長期契約で囲われており、サンチェスはUTDで完全にトップフォームを失っていた。ムバッペもマドリーがつばをつけていたし、ハーランドも未知数、オーバもピークは過ぎていたし、その意味では神話と心中するしかなかったのだろう。17/18でケインを狙えばよかったというのはあまりにも結果論によりすぎている

 

その意味では、仕方なかったのかもしれない。やはり最終生産者は獲得が難しい、だからこそメッシとエトーのいたバルサ、レバを囲えたバイエルンと異なりブランド力に乏しく、アグエロのいるシティを選んだ時点でペップチームの最大値の問題は避けられなかったのだろう。もしサンチェスを獲得出来ていたら、どんな未来があったのか、神話は崩れたが大耳戦争勝利の確度は変動したか

 

 

2、来季構想

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ここまで読んでお分かりの通り、自分の主張は実にシンプルである。支配層の生産者を連れてきて分かっていても止められない武器を生成し、コアレベルの選手の健康体を維持してビッグマッチにぶつける調整を実施すべきというものである。

 

GK部門

 

ここはエデルソン、ステフェン体制を維持するだろう。流石にエデルソンのLB起用はないとは思うので笑、来季も国内カップ戦をステフェンに担当させて、それ以外の試合は全てエデルソンに先発させるだろう。

 

DF部門

 

まず今季のCL敗北の原因はDF部門の運用にある。コアであるルベン、ストーンズ、ウォーカーはシーズン後半に揃って不在となる試合も少なくなく、明らかに運用に問題があったと言わざるを得ない。

 

コア3は絶対としてコアを休ませる役割を担うのがラポ、アケ、ジンのはずで、そこにカンセロ、メンディが異分子としていた。後者はなき者として扱うとして前者は確かに攻撃面での寄与はあるとはいえ守備は厳しくデブ神不在時のスポット起用に留めるべきではないだろうか?

 

ストーンズはコアから外し、CBのコア候補を一人連れてくる必要がある。出来ればパウトーレス。彼をラポルテと競わせる形がベスト。もしくはLBのコア候補を取って来てアケとラポルテでルベンの相方競争をさせるか。

 

いずれにせよCBかLBのどちらかは必要でプロパーな存在がいないという意味ではLBの補強となる可能性が高いだろう。ストーンズをルベンとウォーカーの控えとして扱い、代打としてカンセロをベンチに置く体制になるか。

 

RBウォーカー、ストーンズ、カンセロ

CBルベン、ストーンズ

CBラポルテ、アケ

LB(新加入)、カンセロ、アケ、ジン

 

RBウォーカー、ストーンズ、カンセロ

CBルベン、ストーンズ

CB(新加入)、ラポルテ、アケ

LBカンセロ、アケ、ジン

 

このような形が想定される。不安なのはストーンズの耐久力でありCBとLBの両獲りもあるか。そうなればジンを中盤選手として運用する可能性もある。

 

MF部門

 

正直、運用は完璧だった。デブ神、ベル、ロドリの3人がMVP級の活躍を見せてくれ、特に控えが事実上不在だったロドリはよくやってくれた。IHの控えもEDS組もおり、そこにグリーリッシュ、ギュンがいて充実の一途であった。

 

4番ジーニョの離脱は頭数減少以外さほどの穴にはならないだろう。ただロドリとの共存も可能な異なるタイプのピボーテは必要でフィリップスは完璧。もしくはジンをここへ転用するのもアリか。左利きのキミッヒのようなプレーを望みたいところである。

 

IHに関しては、デブ神とベルは絶対軸としてギュンが何年いるかである。早ければ今季にも放出と言われているが、パルマー、マカティがどこまでやれるかも重要で、やはり一枚欲しい。グリもIHでイニングを食ってもらう必要がある。

 

フォーデンもIHとして計算出来るので、そこも考えると頭数的にIH対応可能な4番を獲得するのみに終わりそうだ。

 

4番 ロドリ、(新加入1)、ジン

6番 デブ神、グリ、パルマ

8番 ベル神、フォーデン、(新加入1)、マカティ

 

ギュンが残れば安泰であるが、最悪のケースも想定してこのような形か。

 

FW部門

 

ここも今季は何とか運用出来た。グリがLWGで頑張ってくれ、フォーデンとマフレズはチームに欠かせないコアだ。ジェズスが前半はRWGとして守備で貢献し後半は9番としても一定の活躍を見せてくれた。

 

本当ならメンディがLWGとしてベイルのような凶悪ぶりを見せてくれたらと思っていたのだが妄想は、この辺にして。ハーランドとアルバレスの加入で前線は少し余裕は出来るだろう。まずフォーデン、ハーランド、マフレズの3人がコアだ。そこに誰を控えとして体調管理要員とするかである。

 

出来れば9番とRWGを兼任出来るジェズスに頼みたいが放出が濃厚なので、ここはアルバレスに任せるしかない。カイキー、エドジースカッド入りは時期尚早でパルマーは中盤で育てるべき。グリとフォーデンは中盤起用もありそうで、デラップはシーズン前半まで保有し起用機会が少なければ後期のレンタルもあるか。

 

RW マフレズ、アルバレス

CF  ハーランド、アルバレスデラップ

LW フォーデン、グリーリッシュ

 

こうして見ると、今季は選手獲得は多いシーズンになるだろう。DFと4番とFWに補強は必要で、既に半分は終えている。出来れば運用に苦心したDFには最低1名出来れば2名ほどを獲得したい。

 

この布陣で、やるべきは最終生産過程の構築である。まず初年度ハーランドの得意技を見つけていくことに尽きる。新加入選手がフィットするようにチーム全体での試行錯誤の多いシーズンとなるだろう。ペップの最後の戦いが始まる。次の3年でチームの新たなサイクルを作るはずで、魅力的なチームで宿願の大耳を掲げる日を待ちたい。

 

 

 

第4部 最後に

 

シティのゼロトップ時代は終焉した。ハーランドがやってくる。念願の9番だ。遂に時代は変わろうとしている。しかしハーランドを獲得することは手段であって目的ではない。何度も言うように重要なのは絶対的最終生産過程の創造である。

 

大耳、唯一シティが手にできていないタイトル。これまでの王者には圧倒的な誰も止められない必殺技があった。ハーランドを用いて、何が出来るか、シティは覇権チームになるスタートラインに立ったに過ぎない。

 

ルカクの落とし込みに失敗したCHE、ロナウドを3年間持て余したユーベ、最終生産者がいても、それすなわち最強とはならない失敗例もある。しかしシティは、その挑戦権さえ、ここ3年で得られなかった。ハーランド到来、これは9番獲得以上の意味がある。

 

ペップの得意技は最終生産過程の構築だ。バイタル無双メッシ、ハイクロス爆撃レバミュラ、ロークロス爆撃アグエロ、これらに続くハーランドを主軸とした必殺技を作り上げることが出来るのか、そして、それが完成した時、大耳を獲れても獲れなくてもペップはシティを去るだろう。バイエルン時代と同様に。

 

シティは完成が近づいている。同時にペップの別れも。これからペップシティは何を見せてくれるのか。欠落が生み出す狂気と騒乱のスカイブルー。ペップシティの最後の戦いが始まろうとしている。

 

今季は我慢のシーズンだったが、来季は試行錯誤のシーズンだろう。しかし今季の、どこかストライカーがいないことに引け目を感じながら覇権チーム相手に知恵を絞り尽くしてDFコアの離脱に怯える苦しみとは異なり、希望を抱えながらの戦いとなる。

 

『サピエンス全史』を著したハラリは”人類は疫病と戦争を克服した”と述べている。人為的な災害による疫病以外は発生せず、大国による古典的な戦争が起こり得ないと。しかし新型コロナの発生、そしてロシアのウクライナ侵略戦争である。昨季のCLを優勝したのは最終生産者のいないCHEで、シティズンの中には自分に対して『トゥヘルが出来たのだがらペップが出来ないのはおかしい、CL敗北の責任はペップである』と。

 

サッカーはネットを揺らし合い、その数を競う。その原始的風景は不変なのだろう。ネットを揺らす能力を持つ選手の最大活用、改めて、その原始的模型に立ち戻る時なのだろう。

 

来季こそ宿願を果たす事を祈っている。

 

付録

 

 

●FPとCL

 

牽牛星といえば最終生産者という言葉を思い浮かべる人はtwitterシティズン界隈でおられるかもしれないが、これは自分が作った言葉ではない。

 

書籍で読んで便利と感じ使っている。ゴール=最終生産、と和訳を与え、そのプロセスを最終生産過程と呼び、その過程における主役を最終生産者と定義する。これはポジションは問わない。ストライカーは9番にしか使われなくなってしまい(定義上は問題ないが)スコアラーは結果論としての得点者なので、最終生産者とは実に便利な言葉なのだ。

 

自分はペップバルサ新規で0809から欧州サッカーを定点観測しているのだが、今季も入れると14年欧州サッカーを見ている。その中で経験論的に得たのは最終生産過程の完成度が高いチームが勝ってるという事実。

 

0809メッシバルサ

0910インテル

1011メッシバルサ

1112ドログバチェルシー

1213ロベリのバイエルン

1314ロナウドのマドリー

1415 メッシのバルサ

1516ロナウドのマドリー

1617ロナウドのマドリー

1718ロナウドのマドリー

1819サラーのリバポ

1920レバのバイエルン

2021チェルシー

 

この13年で明確な最終生産過程が構築されていないチームの優勝は2年しかない。この歴史的結果から自分はCLというのは最終生産者のためにある大会であると結論づけるのだ。だからこそCL獲りたいならワールドクラスの最終生産者を中心に誰も止められない最終生産過程を構築することにあるというのが自分の論となる

 

もちろん例外は2度ある。では聞くが

 

6人に1人しか効かない薬と6人に5人は効く薬、どっちを買うか聞かれて前者選ばんでしょ、という話だ。

 

だからシティに対しても最終生産者の選定が必要だと。そのために外注するか内部選出しかないと主張を繰り返すのである。

 

ただ系を考えるときに、最も結果に影響を与えうる要素だけを残した理論模型として、このCL最終生産者至上主義論が正しいのかを合理的な立場では議論することは困難である。

 

サッカーとは22人の選手とボールの23体問題を解くことに等しい。もちろんパラメータとしてコンディション、交代もある。そして物理学の立場では3体以上の問題は解けないとされる。そうなると、我々は全ての要素を拾わず本質的なものだけを残した妥協としてのモデル理論を要求されるのである。

 

 

●クライフとペップ

 

ペップサッカーはクライフ描像の現代的な表現であると自分はよく話す、ここでクライフとペップという縦軸の話をしよう。

 

ペップのポゼッションフットボールを語る上で、クライフ時代は避けて通れない文脈。クライフのサッカー観は非常に有名でポゼッションフットボールの潮流そのものと言われ、サッカー監督は選手時代の経験が強く影響する。

 

クライフは歴代でも最高クラスの偽9番。凄まじいテクニックと戦術眼でチームを栄光に導きいた。その経験は監督時にかなり影響する。そしてそのことこそがペップとの最大の違いになってもいる。

 

クライフのサッカーはGKから攻撃が始まりCFから守備が始まると言われ、サッカーという競技における勝利の確度の高い戦略が体系的に定まっているのが特徴。相手の前線からのプレス枚数に+1をした枚数でバックスを形成。相手が2トップなら3バック、相手が1トップなら2バックといった感じで相手に合わせてDFラインは決まる。

 

ビルドは常に数的優位を確保して中盤にボールを渡し、中盤はトライアングルを形成しボールを前進させる。そして両翼の大きく開いたWGが相手のSB(WB)を引き付け、相手選手の間に位置取る味方にボールを供給する、そして、そこからは偽9番ならバイタルからのコンビネーション、純正9番ならWGからクロス爆撃を実施して相手を圧倒する。

 

コンパクトに位置することで多くのパスコースを作り、相手ボールになれば即座にコンパクトな布陣で囲い込む、DF裏の広大なエリアへのロングボールはGKが処理すれば良い。これがクライフのサッカーの概形。

 

しかしこのサッカーはカウンターへの脆弱性を持つ。

 

コンパクトな布陣によるポゼッションはカウンターへの脆さ、そしてGKの飛び出しに加え、リスクのある選択を実施しなければならない。これはポゼッションサッカー潜在的弱点だ。

 

ただ、クライフは、このリスクを承知で理想を追求した。それはなぜか、それは個人能力への絶対的な信頼があるから。

 

このポゼッションサッカーのリスクの軽減に必要なのは質的優位性と最終生産能力。なぜなら高度なプレーを完遂できなければ、その時点でカウンターが発生する。最終生産能力がなければシュートミスからカウンターが発生する。そもそもパスミスといった事案が頻発するとカウンターを受けるリスクが発生する。

 

つまり自軍選手が敵軍に対して圧倒的な質的優位性を持っていれば、これらのリスクはスクリーンされる。クライフは基本的に技術への信頼が強い。基本的に一対一では負けないし、ミスはそもそも発生しない。これが大前提になる。

 

クライフ政権8年間でリーガ四連覇があったもののCLは一回しか制せなかったというのはなぜか、ポゼッションのバルサが歴史的にリーグには強いがCLとなるとマドリーに分があるのはなぜか、これこそがクライフが無意識のうちに前提としていた質的優位性にある。

 

そもそも質的優位性が強ければミスしてもすぐに取り返せ、基本のどのプレーも完遂はされ、リスクが顕在化しない。GKのリベロ化に関しても飛び出すという展開自体が少なく相手FWの質が低ければ個人能力で何とか出来てしまう。

 

このクライフサッカーの隠された前提、これにメスを入れたのがペップだ。ペップがクライフのサッカーの思想を具現化しながらも、CLでも支配的になれたのは、この前提をペップが理解していたことが大きい

 

最終生産過程の精度が低いと攻撃失敗からカウンターを受ける、相手に対して質的優位性がないとプレーの失敗からカウンターを受ける。ポゼッションは格下との対決が多いリーグなら成功するが同格格上との一発勝負となると、どうしてもリスクの方が勝ちカウンターにさらされ続ける

 

だからこそペップはバルサにおいて最終生産過程の徹底、推定されるミスの発生確率を上げた上でのリスクヘッジをした。それがメッシを中心とする最終生産過程の構築、即時奪還のためのハイプレス戦術の徹底。

 

クライフがミスするわけないだろ、と見込んでいたものをペップは疑った。ミスをしても取り返せる布陣を作る必要がある。そこで数十本のパスを命じる。そのパスで最適配置をとって、そこから攻撃を始めなさい、と。そうすれば即時奪還に適しているからミスや攻撃失敗にもある程度対応できると。メッシという攻撃完遂能力の高い選手へと精度の高いパスを打ち込むシステムを構築し、世界を支配した

 

ペップはクライフほどの信頼はない。だからこそバルサっぽいけど初めてこんなサッカーを見たと言われた。ここまで奪還が激しいバルサはクライフ時代にはなかったのだろう。

 

だからポゼッションサッカーでリーグとCLの両方を獲るとなると最終生産者がいないとゴール未遂が増えカウンターの誘発を招いてしまい、リスクが勝ちCLでは勝てない、ただポゼッションを捨てるとリーグでの取りこぼしが増えてしまう。これが難しい。

 

ペップのサッカーの最大値は最終生産者で決まる。シュート未遂、プレーミス、といったものを極力減らさないと、格上や同格との一発勝負では厳しい結果を招いてしまう。

 

そんな事実を証明してるのがペップシティなのだろう。

 

 

●ペップのデザイン

 

ジョゼップ・グアルディオラ、希代の名将にして伝説的チームのエルドリームバルサの司令塔を勤めた生え抜き戦士。バルサ退団後の”放浪”の末に彼はバルサ監督へと至る。

 

バルサで4年、バイエルンで3年監督としてリーグは6度制覇、CLは毎年ベスト4に進出し、そのうち、2年は優勝を果たした。率いたチームが強かったことを差し引いても世界最高クラスの指揮官と言える。

 

ペップは前述のように最終生産過程を設定し、ミスによるボール回収との共存で支配構造を生み出してきた。そしてそれは支配層の最終生産者を主軸にデザインした。バルサではメッシの狭いスペースでもボールをコントロールしドリブルで突破しシュートも上手い、9番と10番の両方を高次元にこなせる特性を見つけた。

 

メッシにバイタルでボールを供給し前を向かせてドリブル突破、これが必殺技となった。メッシのポジションはバイタルで固定。そして両翼は相手SBを高く押し上げ、相手CBがメッシを追いかけようとした際の裏のスペースへの突撃が狙えるビジャとペドロが起用され、狭いバイタルへのコマンド力の高い選手としてチャビ、イニ、ブスケツが徴用された。

 

レバンドフスキはボックス内でボールを持たせれば頭でも足でも多彩なシュートパターンを持つ純正9番。囮として得点力を有し変幻自在のポジショニングでレバの周囲を衛星的に動き回るミュラーとのコンビで能力の最大化を狙った。レバミュラにクロスを供給し続ける同足のコマンとコスタが重用され、WGへの経路作りとして偽SBシステムも搭載されていた。

 

このように、メッシ、レバンドフスキといったバロンドール候補の常連クラスの支配層の適正に合わせた理想のフィニッシュパターンをデザインし、それをコンスタントに発生させる構造を形成することでチームの形成を図ってきたのがペップのチーム作りだ。

 

ポゼッションスタイルはカウンターへの脆弱性が付き纏う。その弱点は高品質な選手を集めてミスの絶対数を減らし、最終生産効率を限界まで上げ切ることで、カウンターを受ける総数を減らして、カウンターによる失点の実効性を減退させることでリーグ向きだったクライフの方法でもプレス構造の付加と合わせて、リーグ・CLどちらでも支配的な存在になることを可能にしたのである。

 

バルサでは2度のCL制覇を成したが、バイエルンでは3年連続4強に泣いた。初年度と2年目は明らかに怪我人の数が異常で、この耐久力の低さの中で、ペップバイエルンはUTの利用へと動いていくことになる。

 

ユーティリティ=UT、その名の通り、複数ポジションに対応出来る性能を利用すれば最小人数で最大の効果が見込め組織のスリム化と人件費の圧縮が可能になる。ペップはより進んだ応用を見せている。

 

複数ポジションをこなせる選手を複数運用することで互いにポジションを変更し合ったりしても本職から本職へ移動しているので相手に合わせた柔軟な変更、相手に与える影響の維持や強化を可能にする。最適配置理論に基づき、ポジション変換とUT選手の運用を主軸としたペップのサッカーを自分はコアUTポジショナルと名付けている。

 

詳しくは以下の記事にて書いている。

lilin18thangel.hatenablog.com

 

またシティにおける、このモデルの運用の経緯と直面する困難さに関しては以下の記事で書いているので参照されたし

lilin18thangel.hatenablog.com