今回は、アーセナル移籍が決まったジェズスについて、シティに来てからのキャリアをずっと定点観測している自分の目から見た、シティでの各年の経過、選手としての特性、そこから導かれる最適運用法について付します。
第1章でシティでのジェズスの来歴、第2章で選手としての特徴を語り最適運用について提言を行っている次第です。
グーナーの方にとって有益になりましたら幸いです。
第1章 『未来』
①16-17 メシア到来
リーグ成績
651min 7G4A
全成績
741min 7G5A
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ジェズス(イエス)と名付けられ、当時バルサの大スターのロナウジーニョに憧れたブラジル生まれの少年は、キリストが十字架に磔にされた享年33にちなむ背番号33を付け2015年にパルメイラスでデビューした。
2016年シーズンは27試合出場12G5Aの活躍でパルメイラスをブラジル全国選手権優勝に導く原動力に。シーズン途中、欧州夏市場が開き、憧れのバルサのレジェンドであるペップが就任したマンチェスターシティからオファーとペップの直接メッセージを受け、3000万ユーロで2016年冬からの加入が決定。
ペップが望むのはロークロスを得点へ変換する9番。理想の9番はスペースと言うペップにとってサイドに流れたり中盤に降りるといった多様性をアグエロが満たすかについての疑義からオーバ、サンチェスといった選手の獲得にも動いた。そんなアグエロのバックアップをこなしながら、アグエロにはない守備意識と多様性、伸び代をたっぷり残した若さ、そこにシティとペップは賭けた。
ジェズスがブラジルで栄光を味わっていた2016年、対照的にシティは苦しみに喘ぐ。偽SB戦術が機能せず、新加入選手は、凄惨なパフォーマンスのブラーボ、サネはフィット不全、ノリートは環境に苦しみ、ギュンも怪我がち、空転するポゼッションから反転攻勢を浴び続けチームはPL優勝はおろか、CL出場権獲得さえ暗雲が立ち込め、ペップは監督人生史上初めて無冠という危機を迎える。
ポゼッションサッカーとは、そもそもミスが少ないことを前提にしている。相手との一対一に勝て、最終生産過程までボールを運べば高確率でクリティカルな場面を作り出せる事が前提にないと、ミスを受けカウンターへの脆弱性から好成績は望めない。
カウンターにペップチームは弱い、その弱さをミスの少ないプレー、メッシ、レバミュラという誰も止められないような絶対的な武器で遮蔽してきただけだ。
ビルドアップでのミス、ペップチームに常備されていたエトー、メッシ、ビジャ、レバ、ミュラーといった最終生産能力に優れた選手がおらず、ポゼッションの負の側面だけがチームを支配した。
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そして年が明け、2月、ジェズスはウエストハム戦でスカイブルーのユニフォームを纏って先発出場すると、いきなりの1G1A、その後も両翼のサネ、スターリングと共にSGSトリオはチームに活力を与え、ペップは彼ら3人を『チームの未来』と評した。
中央で動き回りながら積極的に中盤選手との連携でボールを運び、サイドでは同足クロスを供給し続ける自慢の両翼のチャンスメークを得点へと変換させていく、まさにペップがシティに求めていたロークロスの最終生産者こそジェズスだった。
しかし、ジェズスはボーンマス戦で負傷、シーズンアウトレベルの重傷を負い、それに呼応するようにCLモナコ戦逆転負けでのCL16強敗退、アグエロが9番に復帰しペップ政権不毛の初年度は無冠で幕を閉じた。
②17-18 2年目
リーグ成績
1672min 13G3A
全成績
2564min 17G3A
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雪辱を期すペップシティはSBを全取っ替え、システムは3412を導入。アグエロかジェズスか、という問いに対し共存の道を選んだ。アグエロとジェズスを2トップで起用した。
ジェズスのチャンスメークでアグエロをカバーし、レバミュラのバイエルン時代に並ぶ新たな最終生産コンビを結成しようとしていた。当初は良かった。ゴールも量産出来、良い船出となっていた。
しかし、メンディである。チームのプロパーLB不在という長期的課題の生みの親が怪我で離脱すると、LWGでサネがイキイキと活躍するのと対照的に、ジェズスはアグエロとのスタメン争いに巻き込まれ共存の道は断たれた。アグエロは守備の献身性、ポジションチェンジの円滑さを身につけ、いつしかベンチに座ることが多くなっていった。
チームとしてもサネスタからのアグエロ目掛けてのロークロス爆撃というスタイルによる5レーンアタックは4バック主体の英国プレミアリーグで猛威を振るい、チームは国内で支配的な存在となった。
ジェズスに目を向けると、2トップ体制解体後、12月初頭から4月初頭にかけてゴールへの関与が激減してしまい、いつしかアグエロのバックアップ守備要員的な扱いへと緩やかに変わっていった。先天的にシュート自体が上手い訳では無く、聡明なポジショニングと走り込みでチャンスに関わる頻度が多いだけに、余計にストライカーとしての物足りなさが映ってしまった。
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そしてアグエロの唯一にして絶対的な弱点でもあった耐久力の無さからCL8強リバプール戦でジェズスに出番が回ってくる。しかし、この2戦で1得点はしたもののパフォーマンスとしては不十分でチームにとってもCL8強の鬼門化を招くことになった。
膝の怪我での数ヶ月の離脱、シュートが苦手という覇権を競うチームのコアのストライカーになれるか疑問を残し、初めての欧州フルシーズンは、ほろ苦い一年であった。
③18-19 従者
リーグ成績
1019min 7G3A
全成績
2252min 21G7A
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国内で支配的なペップシティの第1サイクルの最終年。このサイクルの主人公はアグエロだった。彼に点を獲らせるのが全て、アグエロが決めれば勝つ、外せば負ける。それぐらい圧倒的な存在。そしてアグエロがシティで見せた最後の勇姿であった事もまた事実であった。
安定したポストプレー、中盤選手との協調、ビッグゲームでのスーパーゴール、エースに相応しい9番としてペップシティに輝きを与え続けたアグエロの影で、ジェズスはもはや存在価値さえ失いかけていた。アグエロとの差別化として守備能力しか残されておらず、救世主はベンチが定位置だった。
この頃のジェズスと言えば、アグエロにお疲れと言ってリード時のクローザーとして途中出場する事が仕事だった。このアグエロの途中交代により、アグエロの出場時間が限定化されるので、総得点数を出場時間で割った平均得点がリーグ歴代屈指レベルになったのは、ある意味ジェズスのお陰だろう。
激しいリバプールとのリーグ争いの中で、アグエロのスーパーゴールで直接対決を制しリーグを獲ったのと対照的に、CL8強ではアグエロがPKを外しアウェイゴールルールで敗退。アグエロが決めれば勝つ、外せば負ける、という象徴的なシーズンであった。
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エースアグエロの耐久力に泣いた前年度の反省から、リード時には積極的にジェズスと交代することでプロテクトしたものの、最後はPKを外しチームは8強で大耳には届かなかった。アグエロの肉体のプロテクトと優先度の低い試合でのイニングイート、この2点が仕事であったと言うのであれば、ジェズスは完璧にこなしたと評価は出来るはずである。
④19-20 NEW ERA
リーグ成績
2026min 14G7A
全成績
3275min 23G11A
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エースアグエロ時代の終わり、サイクル1終焉、それを感じさせるに十分なシーズン。思えばペップチームは最終生産者が主人公のチームで3年目にピークを迎える。試行錯誤の末に、誰に点を取らせるかを決め、その決めた誰かの得意線型から逆算しチームを設計する。
バルサではメッシがバイタルでボールを受けて前を向かせるために、狭いバイタルへのパス供給が可能なカンテラ産MFが重用され、WGにはメッシのためのスペースを作るべくサイドからの牽制が出来るビジャとペドロが選ばれていた。常にバイタルを目指すシステムだ。
バイエルンではレバミュラをボックスの中で解放するために、縦に強いWG、ロベリーではなく同足のコスタコマンを用いて、サイドでのアイソレーションを有効化するためにSBは中央に絞る偽SBをこなすことになった。
シティではアグエロにロークロスを同足のスターリング、サネから供給するシステムであったが、アグエロの肉体は、もう限界を迎えていた。このシーズンアグエロは1456分のリーグ出場となり、これは前年の2480分から劇的な減少だ。
ポストアグエロ時代、次の最終生産者は誰か、白羽の矢が立ったのはジェズスとスターリング。前者はベンゼマの如く従者からの王位継承が望まれ、後者は加入未遂に終わった有翼ストライカー、サンチェスやオーバメヤンのような活躍が望まれた。
しかし、結果としてはどちらも最終生産能力が良化することはなかった。
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CBに怪我人が相次ぎ、カラバオカップ以外の国内タイトル防衛に失敗、CLではマドリー相手に16強はクリアしたものの、難敵リヨンの前にスターリングが決定機を外し、3バックの奇策に対し批判が集中、奇策ハゲ炎上祭り2020が開催された。
アグエロのバックアップだからこそ価値を見出せていた部分が消失し、皮肉にも競争相手の存在自体がジェズスの価値に一番の影響を与えていたと示す結果だった。
メッシの居ないペップバルサ、レバミュラの居ないペップバイエルン、そんな状況のペップシティは”終点という名の始点”を失い、チームの方向性も曖昧だった。
⑤20-21 シルバなき世界で
リーグ成績
2060min 9G4A
全成績
2836min 14G4A
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サイクル1の終焉に加え、チームの絶対的司令塔であったシルバが退団し、チームはかなり影響を受けると言われたが、その影響はスターリング以外にはネガティブに影響することはなかった。フォーデンの台頭、マフレズの覚醒、カンセロのブレイク、ルベンの加入、ストーンズの復活、ギュンの得点源化と、むしろ前年を上回る収穫に溢れたシーズンとなった。
チームは自律完結性を強く帯び、単独で複数の選択肢を提示し、独力での後出しジャンケン可能な個人能力とインテリジェンスを持った選手が中心の偽9番システムは前線5枚の流動性を押し出し、シーズン前半の不調が嘘かのように国内での支配力は復活を迎える。
5バックを相手が敷けば、シティ自慢の5トップにRBからカンセロが6番目の進撃者として加勢し数的優位性で相手を幻惑、ギュンが飛び出し得点をもたらすハメ技で4バック優位のプレミアを支配した4バック殺しの上位互換5バック殺しとしてのカンセロロールが炸裂した。
一方ジェズス。右翼でマフレズほどのプレゼンスはなく、左翼でフォーデンほど独力でシュートに持ち込むことも出来ない、9番ではチャンスメーカーの起用による好機喪失に見合ったリターンをもたらせるほどの得点力など持ち合わせていない。当然の如くベンチに座る日々が続いていった。
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一方チームはカンセロロールの賞味期限が切れ、5バックを崩すにも手を焼き、クラブ史上初のCL決勝ではチェルシーの堅牢の5バックを崩し切れず、デブ神が怪我で途中離脱、そして急所であった左サイドの防衛力の低さを突かれ、ウノゼロに沈み、負けた時のお馴染みの光景である、LWGスタ、4番ギュンという采配に対して、2年連続奇策ハゲ炎上祭りが開催された。
ジェズスも、この自律完結型5トップの中に居場所を見出せず、皮肉な事に、チャンスメーク力が異常に高く、最終生産者を固定しない流動的なモデルの完備性が強まりすぎて、それを犠牲に出来るだけの得点能力と圧倒的プレゼンスの要求が過去最高クラスに高まりを見せると、出番は限られてしまった。
この頃から残り契約の問題もあり、放出の噂もで始めることになった。
⑥21-22 新境地
リーグ成績
1878min 8G8A
全成績
2570min 13G11A
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前年度のCL決勝敗北を受け、ケイン獲得に動くも失敗、プロパーLB起用もメンディはピッチには帰れない身となった。結局前年度と何も変わらないメンツ。アグエロが退団し、グリーリッシュが加入したことくらいだった。
『我々はストライカーなしでシーズンを戦うことになる』
ペップのセリフはジェズスに対する評価を端的に表した。救世主として加入したセレソンのNo.9はシティを栄光に導くことはない、アグエロの後継者にはなり得ないだろうという風潮が強まる中で、ジェズス本人はWG起用を志願し、新境地で活路を見出すことにした。
自律性の強いチーム方針は、守備における組織的な連動性を奪っていて、その中でネガトラを強化する方向性の中でジェズスは少しずつ、しかし確実にRWGとしてチームの武器となっていった。
コア選手マフレズを休ませるための守備とチャンスメーク力に優れたRWGとして前半は大いに貢献し、難敵相手でマフレズの出番がやってくると、今度はコアCFとしてフォーデン、マフレズを両翼に構え後半戦はキーマンとなり、CL4強マドリー戦でゴールも挙げた。2年連続決勝進出が見え、2点のリードを逃げ切ろうとジェズスもマフレズも下がった。そして悲劇の大逆転が訪れた。
マフレズをベンチに置いてクオリティを下げない選手はベンチにいなかった。いや、正確に言えば、その男はマフレズの隣にいた、ジェズスだ。そしてジェズスも交代したシティは大きな波に飲まれてしまった。FWのコアを休めるジェズスの活躍とは対照的にDFのコアを休ませられる運用が出来なかった事、敗因の一つと自分は考える。
ベンチ要員を低く見積もる人もいるだろうが、コアを休ませられる選手が、どれだけ貴重か、それを思い知った1年であった。
契約延長の報が出ず、シーズン終盤には移籍が盛んに報じられた。シティでリーグ連覇を決めた彼は、アグエロのようなスター性はなかったかもしれない。しかしジェズスが見せた献身とイニングイートはチームを大いに助けてくれた。チェルシー戦でのゴールが無ければ優勝はなかったのだから、救世主、は言い過ぎだろうが、功労者である事は間違いないだろう。
そして、噂されていたアーセナルへの移籍が決まった。
第2章 特徴とトリセツ
今は、フットボールにおける統計数値や定量的データの分析は容易に出来るはずだ。ここでは、そうした客観的なデータも参考にはするが、この記事に期待されているのは定点観測し続けてきた者だからこそのテキストだと思うので、定性的な部分が多く含まれることを、ご理解いただきたい。
①強み
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ジェズス最大の強みは、オフザボールの質に代表されるインテリジェンスと守備能力の高さが挙げられる。
第1章でデマンドの変化は見てきたと思うが、ジェズスは具体的には
1年目 ロークロス爆撃のゴール変換
2年目 2トップの一角でチャンスメイク
3年目 クローザー9番
4年目 逆足LWG兼CF
5年目 前線のUT選手
6年目 チャンスメークRWG
という役割を果たしてきた。
どの時代の評価が一番高かったかというと、6年目と2年目前半ではないだろうか、そこにジェズスの特性が表れている、得点能力の高いCFを活かす2トップの相方、チャンスメイクと守備能力でサイドに厚みをもたらすRWG、これが向いているのだろう。
ドリブル能力については、暴力的な突破が出来るわけではないが確度が高いと思える時のみトライしているので成功率は高く、そこにも聡明さが表れていると言える。
裏への走り込み、確度高いプレーセレクト、守備意識の高さと戦術的タスクの遂行能力において大変優れた選手である。
②弱み
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弱みは絶対軸を任された時に露呈してしまった得点能力の物足りなさであろう。シュートが苦手、とまでは言えないのだろうが、ストライカーと呼ぶには寂しい。またRWGとしても突破力が優れているというタイプではなく、あくまでも”いけそうなとき”だけトライしていく、というタイプなので、メガクラブ相手だと厳しくなるのも事実。
足は早くなく、シュートが特別上手いわけではなく、空中戦もRWGでロングボールの逃し所としては一定の光明はあるだろうが9番で屈強なCB相手に競り勝てるほどのものではないだろう。また、シュートも多彩なパターンがあるわけではない事も事実で、それ外すか、というシーンもシティでは少なくなく見られた。
理不尽に得点を取る、というタイプでもなく、好機で確実な場面を押し込んだり、左から中へ入ってのシュートが多く見られた。もっとシュートシーンのパターンや得意戦型を増やすことが求められるだろう。
そして耐久力である。もちろん、シティでの6年間でコアを担うという経験自体がなかったためでもあるが、出場時間は多くはないし、怪我での離脱も少なくはない選手である。
そもそもチャンスメーク力に優れたWG転用可能な選手、というのは妥協の産物で、万能型9番としてアグエロを上回る最終生産者というのが彼の目指すべき未来であり、その意味では”副業”が評価され過ぎている感も否めず、その意味でシュートの正確性を含め理不尽レベルの9番として成長出来るプロセスを消化できる環境に身を置くべきなのかもしれない。
③最適運用
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強み、弱みを見てきて言えるのは、9番としては得点力に物足りなく、7番としては突破力に物足りなく、一番の武器はオフザボールの質の高さと守備能力という玄人好みの選手、というのがジェズスの評価となる。
耐久力に優れているわけではないので、複数選手とのローテーションで肉体をプロテクトし、調子が出てきたところでスポット的に集中的起用を敢行するのが良いのだろう。
最適ポジションとしては2トップのセカンド担当だろう。9番の周囲を衛星的に飛び回り相手を幻惑するインテリジェンスを武器に出来、得点を取らなければならないという義務感から解放することで、一層の輝きを見込めるはずだ。
3トップならRWGやLWGでチャンスメークさせる方が良いかも知れない。出来れば中央に9番がいる場合だとクロス選択の価値も上がる、そしてシティは周知の通り9番がいない時期を3年過ごしている。そんな偽9番でもチャンスメーク力は発揮されていたので、使い勝手は良いと思う。
個人的にはベンゼマのような着地が出来るように、失敗しても目を瞑ってもらえるような環境で根気強く9番で起用してもらえる環境下で理不尽万能型9番に成長して欲しいと望んでいるので、出来ればCLという大一番も経験出来、リーグでも一定の競争力を保持し、9番起用してもらえるチームでのキャリアを選べると良いのだが。
④ARSの印象
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自分はMCI定点観測しかしていないが、同リーグに所属するARSの試合も見ている。ペップヲタクの自分はバイエルンでの政権後はサンチェスという最終生産者がおりパスサッカーの文化があり、英国を代表する歴史を持ち、325というダブルペンタゴンシステムの利用者であるペップがWMシステムの生みの親であるチャップマンが率いていたアーセナルでインビジブルズ2ndを建設して欲しいと自分は考えていた。
だからこそペップガナーズ、悪くないねぇ。と思っている自分は同リーグの敵軍としての敵意はなく、定点的とは言えないが好感を持って見ている。
07/08くらいから今に至るまで欧州サッカーを見ている自分のガナーズのイメージは、最終生産者が絶えず、攻撃的なタレントを多く擁し魅力的なフットボールをするも、ヘソから下のタレントの少なさ、特に4番を欠く傾向にあり、またCBにもコアレベルに乏しい傾向にあり、4番と3番にコアクラスの補強さえ出来れば覇権レベルに到達する可能性を秘めている。
といった感じだ。
アンリ、アデバヨール、ファンペルシー、サンチェス、オーバメヤンと次々に最終生産者が抜けても代わりが出現し、セスク、ロシツキー、カソルラ、エジルといった魅力的な中盤を抱えている。しかしWGに強烈なタイプが少なく(ウォルコットもWGかCFか微妙な立ち位置だったし)、攻撃が中央に寄り過ぎて中央閉鎖に苦しく、ボランチ部門もフラミニ、Gシウバ、ソングとコアクラスの質が少し足りず、CBも10数年間でコシエルニー以外はコアとしては厳しかった印象だ。
人的資本で優位に立てる格下相手では攻撃面は中央閉鎖にはタレント力で切り崩せ、サイドもSBの上がりを含めた協調を武器に出来る、しかし守勢に回ると4番から下の防衛力の低さは勿論、SBの上がりなしに崩せるだけのサイドの破壊力のなさを突かれSB裏を中心にカウンターを食らうリスクもあり、一定の取りこぼしが起こってしまう弱みを抱える。
格上同格相手では中盤を抑えられると4番とCBからの質が低い事、またGKに足元が使えるタイプも少ないので、こうした覇権レベルとの乖離で、2010年代中期の世界最先端を行くチームには付いていけず、列強に置いて行かれている感のあったプレミアリーグにも10年代後半にシティ、リバプールが強靭化し、唯一の拠り所だったCL出場権さえ失った。
レスターが奇跡を起こせた15/16プレミアリーグがガナーズが最後にプレミアリーグで覇権を争えたシーズンだったのだろう。
そして長らく続く低迷の末に、セスクショックのパニックバイで選手としてガナーズを支えたアルテタが監督に就任し、チームは再建へと向かう。
⑤ジェズスの居場所
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彷徨っていた無冠時代、多くのタレントが外部に流出した。しかし国産タレントは残留傾向にあり、CL出場権を持たないガナーズにとって主な獲得可能選手はプロスペクト若手と国産タレントとなる。
アルテタは問題認識能力と中長期にわたるビジョンを持っており、試合での応手も的確で意図を持った采配も見て取れる指揮官である。そして21/22シーズンは多くの若手選手と共に浮き沈みの激しいシーズンを送った。
自力でCL権獲得可能まで行きながら、最後は力尽きたガナーズ、弱みとしてはコアが薄く、そして耐久力と経験に不安がある点だ。そういう意味でも前線のUTであり、シティで栄光に浴してきた経験を持つジェズスは大いに期待できるだろう。
エンケティアの成長を促す”壁”としての9番、ぺぺがフィットせずサカが精一杯支えているRWGでコアプロテクターとして、丁度良い補強となるだろう。
スカッドがフルメンバーであればCL出場は十分可能なメンバーでも、ELとの二足の草鞋を履きこなすにはコアのプロテクトが必須で、プロテクターとしてのシティでの経験を持つジェズスは上手く順応するはずだ。アルテタもシティ在籍時代に旧知の仲ゆえ、そこも上手く寄与してくれると願いたい。
第3章 最後に
これはシティズンとして反省しているのだが、ジェズスに過剰な期待を向けすぎたのかも知れない。彼をアグエロの後継者ではなく、得点能力を多少備えたチャンスメーカーに追いやったのはアグエロという英雄の壁でもシティのコアレベルの高さでもなく、我々シティズンの過剰な期待の産物だったのかもしれない。
加入当初の数試合でのパフォーマンスを見て、一部を全部と勘違いしてしまい、アグエロ時代の次の主人公という期待は彼の評価を歪めてしまったのかも知れない。ジェズスというメシアの名前を持ち、チームの低迷時期に到来し少ない試合で圧倒的なインパクトを与えた、あの一部分の姿を全部と思い込んでしまった自分も含めたシティズンは少なくなかったと思う。
そのアグエロを上回る後継者という視線や期待、得点を取らなければならない、という義務感自体がジェズスを苦しめていかのかも知れない、CFからのコンバートをペップに志願しRWGで伸び伸びとプレーするようになった。
自分はペップバルサ新規の海外サッカーヲタクであり、本ブログではペップチームの定点観測者とし、関係する記事を執筆してきた。今回のような一人の選手に対しての記事を執筆するというのは初めてである。
というのも上記したようにジェズスがシティズンからのアグエロの後継者という初年度の期待を背負わせ過ぎた事がもたらしたかもしれない負の影響についての悔恨の念、そして同様の悲劇が繰り返されて欲しくないため、移籍先のサポーターに向け、ジェズスを5年半見続けた者としての文章を残す事とした。実像と乖離した期待の醸成を阻止することが主目的であった。
読まれた方にとって、役立ってもらえると幸いである。