或るエヴァヲタのよろず日記

自分の興味あることを思うがまま記述したいと思います。

ペップシティ総論(序論)ペップの足跡、そしてコアUTへ

①中攻め特化型ティキタカ460ペップバルサ

  今回は僕が大好きなグアルディオラ監督率いるマンチェスターシティについての僕なりの分析を付した記事にしようと思います。まずペップがシティを選んだ理由を考えるべく、これまでの主な監督時代を振り返りましょう。

 

 ペップは熱心な海外サッカーファンの方はよくご存じでしょうけども自身も選手時代を過ごした故郷のクラブであるFCバルセロナの監督として伝説的なポゼッションスタイルのクラブを作り上げ一世風靡した監督であります。

 

 ではなぜバルサ監督を辞任したのか、本人は疲れ果てたから、と理由を説明しましたが、詳しく言うならば進化するためには大きな軋轢が発生するという課題を自身の手では解決出来なくなったから、というのが理由だと僕は思います。

 

 ペップのチームは基本的に3年サイクルで作り上げるモデルを採用していて1年目で哲学と基本概念を注入しながら得点能力の高い選手が得点を獲りやすいようなスタイルを開発し2年目で幅を広げるべく様々なシステムを採用して3年目に自分たちのストロングポイントを発揮できるシステムを採用し足りない所を補強して結果を出すという流れでしょうか。バルサでは1年目にポゼッションスタイルの原型を完成させメッシという得点源のために偽9番も開発され2年目には基本陣形となる433に加え4231や352といったシステムを開拓し更にはイブラヒモビッチのようなフィジカルスタイルの9番も獲得するなど幅を広げ3年目にはメッシを偽9番とした433を完成形と設定し、幅と裏を狙えるビジャを獲得し伝説的チームを完成させました。

 

 翌年の4年目はセスクを獲得しメッシとのダブル偽9番を採用することで343という超攻撃的3バックチームへと昇華させることを目指しました。しかしディフェンスラインの中心選手であるプジョルはケガで離脱、ピケは調子を大きく崩し、チャビはインテンシティーが低下し、サンチェスはケガが続き、ビジャはCWCで大きなけがを負い、メッシは得点数は伸ばすものの増長し守備への貢献は0へと近づいていきました。

 

 そもそもバルサとは相手選手の間で受けるポジショニングで密集地帯を好守両面で作り出すことで数的優位を活かしたポゼッションと獲られたらすぐに取り返すハイプレス守備の一体性をウリにするチームなので主力の大幅離脱とメッシの守備放棄はペップバルサの事実上の崩壊を意味し、また中央突破とショートカウンター以外に主だった得点手段もないチームゆえに中央に選手を並べる中締めを受けるとボール回れど得点獲れずといった状況が続いたのであります。

 

 その状況を打破すべく考案されたのが外攻めのための純正ウイングの活用と中攻めの強化のためにセスクを用いてメッシの負担を軽減する事でしたがあえなく失敗し歴史的得点力を有するメッシに守備を厳命出来るわけもなく自身の辞任が一番と考え身を引いたのです。外攻めをしようにもカンテラーノのクエンカ、テージョでは荷が重すぎ、また中央突破に特化したツケとして高さのある9番もおらず、柔軟性が良い意味でも悪い意味でもないところにペップバルサの特徴があったのかもしれません。

 

②レバミュラハイクロス供給型442ペップバイエルン

 そして1年の休養期間を挟み次に就任したクラブがドイツの名門にして当時の欧州王者であったバイエルンミュンヘンでした。ペップ自身はブラジル代表監督が第一志望でしたがブラジル人監督を望む協会側の考えもあり就任とはならず、選んだクラブはバルサ時代には存在しなかった強烈な外攻めを可能にするロッベンリベリーが在籍するドイツの巨人でした。マンジュキッチの高さに加えロベリー(ロッベンリベリーのコンビの愛称)という速さを備えたクラブにバルサ仕込みのポゼッションを仕込めば最強のクラブになるのでは、という期待から凄まじい注目を浴びるのでした。

 

 ただ下部組織から一貫したメソッドで鍛え上げられたカンテラーノ(生え抜き)を中心とするバルサの選手とは技術レベルで大きく劣りボール保持のためのボール保持に終始してしまい中々上手く行かなかったのが1年目でした。このことについては僕自身も強い懸念をペップ就任直後から感じていて、監督の仕事とはビルドアップとポゼッションによる組み立ての部分までで、そこからの得点を狙う崩しは選手の質に大きく依存するために最終生産者となる点取り屋の質以上のチームを作ることは出来ないのです。

 

 マンジュキッチは得点能力というよりもハードワークとフィジカルに優位性を持つタイプでペップバイエルンはペップバルサを超えるならば9番に本物が必要だろうと、そしてポゼッションに関してもバルサを知る人間が必要だと思っていました。ペップは就任してから補強選手として要求したのはワールドクラスのアタッカーと中盤選手でした。前者は自身の弟が代理人を務めるスアレス、そしてネイマールレバンドフスキ、後者がチアゴでした。前者に関してはレバンドフスキ獲得で当時の所属クラブであるドルトムントと合意したのですが監督であったクロップが拒否し加入は1年後となり、またゲッツェという望んでいない10番が到来したのは誤算だったでしょう。チアゴは獲れたので良かったのですが、選手補強がバイエルンの場合資本の大量注入を良しとしないところがあるのでペップ自身悩みの種になったのは事実でしょう。

 

 そんな1年目はバルサ仕込みのポゼッション導入のために5レーン理論というピッチを縦に5つのレーンに分割し中央レーンと左右の端のレーンに挟まれた2つのレーンでの攻守を戦術の重要概念と捉えた新機軸を導入しビルドアップ、ポゼッションの完成度は向上していきました。

 

 しかし前述したようなアタッカーの獲得未遂により1年目は得点力に大きな障害を抱えロベリーもシーズン後半にケガがちであったのでCLではレアルに大敗し無念の1年となりました(それでも国内では2冠)。2年目にはレバンドフスキアロンソを獲得し、バルサ時代同様に3バック導入を含めたシステムの幅を広げるも中盤に使うには動きすぎサイドに置くと突破力のないミュラーの配置の問題、そしてゲッツェという望まぬ選手の扱い、ケガ人の続出、こういった問題により国内リーグ獲得のみの1冠に終わり翌年3年目はロベリーに見切りを付け、バイエルンのストロングポイントはレバンドフスキミュラーの2トップへの同足ウイングからのクロス爆撃と捉えて、配置に囚われないポジショナルスタイルと2トップへの爆撃を兼備したチームを志し完成へと向かいます。

 

 この成果が出たのがCLベスト16のユベントス戦でしょう、純正CBを欠く中でポゼッションで圧倒した1stleg、後半にリードを奪われながらも同足ウイングであるコスタ、コマンの突破からのクロスを浴びせ続け同点に追いつき逆転でベスト8進出を決めた試合はペップバイエルンの目指す形が具現化出来た試合として印象深いでしょう。しかしながらベスト4のアトレティコ戦でペップ自身の持病(後の記事で付します)が発病しアウェイで競り負けホームで巻き返そうとするも追いつけず敗退し、バイエルン時代は3年間でCLを一度も獲れずに敗退する憂き目にあいました。

 

 バルサ時代の中攻めはミュラーの起用による2ボランチの採用に伴いゲッツェ、チアゴの起用を不可能にしてしまったので落とし込めずバルサ時代とは逆に中攻め以外の武器のみ揃うことになりました。フロントも会長であるヘーネスの収監、ルンメニゲCEOのドイツ人を集めたチームを作るという願望、出来るだけ金は使わないというスタンス、メディカルが練習場に常設していない問題、といったことに頭を抱えながらもクロス爆撃チームを構築しバルサ以外でもポゼッションは出来ることを示したことは大きな成功と言えるでしょう。

 

バルサでは中攻め特化型ゆえの柔軟性のなさに泣き、バイエルンでは周囲のサポート不足と中攻めの付加失敗に泣いたペップが次に指揮するクラブとして選んだのはイングランドマンチェスターシティでした。バルサ時代のフロントであるソリアーノとベギリスタインの2人が幹部にいてオイルマネーを背景にバイエルンでは不可能だった大型補強も出来るという環境は理想と言え、また戦術面でも技術力を武器としたパスフットボールを導入しているので柔軟性にも可能性がもてそうなことも就任を決めたキッカケになったかもしれません。しかしペップマニアの僕としてはシティではバルサはおろかバイエルンさえ超えられないだろうと今でも思っています。そして就任が決まった時点での僕の見解を付したいと思います。

 

③前途多難なシティスカッド

 僕がペップシティの成功は難しいと考えたのはスカッドにおいてペップのサッカーについてこれないであろうメンバーが多すぎて殆どチームを入れ替えるぐらいのことをしないといけないからです。

 

 まずペップのチームは相手陣地での攻撃の時間を増やすことで得点効率を向上し失点確率を減らすことをチームコンセプトとして掲げます、なので最後尾のGKには純粋なストップ能力に加えて組み立てへの参加と広大なDF裏の領域のカバーを任せられる選手が必要なのでハートでは不可能でしょうし、そもそもケガが多くて計算出来ないコンパニは構想に組み込むことが困難、繋ぎが苦手でローラインの潰し屋のマンガラも厳しく、また高齢化したサイドバックの4人は左足からの正確なキックに定評があるコラノフ以外の3人(サニャ、サバレタ、クリシ)では国内を制覇するのさえ難しく、中盤でも潰し屋のフェルナンドはペップのチームには居場所はなく、高齢化し動けない上にペップのことを忌み嫌う代理人を抱えるヤヤトゥレは論外、素行不良のナスリも構想外、突破力がないナバスもしんどい、そして多くの方に否定されるでしょうが今でも思っているので結果を出した今でも言いますがアグエロでは到達点は高いものにはならないので最終生産者として本物が必要だとずっと思っていて、ペップ自身もジェズスを獲得したりサンチェスを狙いに行くなどアグエロに満足していないのは事実だと言えます。

 

 

 このようにペップのサッカーを実現するスカッドとしてシティがふさわしいのかに疑義を抱いてしまうのです。実際に高齢化したサイドバックをムバッペに突かれてCLではモナコにベスト16で敗退しリーグでもハートを切ることには成功したものの代わりに獲得したブラーボ(ペップはバルサでストレスを抱えていたもう一人のGKであるシュテーゲンを欲したのだろうが)が自動ドア状態で守備は崩れアグエロはポジショニングと守備貢献不足からスタメンをジェズスに奪われ、1年目はペップの監督時代の中でも何も残らない不毛な1年だったと言えます。僕は、ほれ見たことかと思ったのを覚えています。補強資金があっても理想的な選手を獲得するには巡り合わせがあり、特に最終生産者は獲得が困難でペップチームのベースが備わっていないシティは正直いばらの道だと思っていましたし、今でもシティ行きは良い選択ではなかったと思っています。様子見で1年休養しても良かったと思います。

 

④ペップの諦念とコアUT

 しかしペップはシティを選んだ。旧知のフロントがいてデブライネ、シルバ、スターリングという自身のフットボールの具現化に寄与する選手もいる(少なすぎるが)からこその選択なのでしょう、というよりも自身のフットボールの具現化に適したクラブは、あの時代のバルサだけで、どのクラブでも一長一短なので仕方なかったのでしょう。メッシという21世紀最高の最終生産者、カンテラ時代から脊髄反射になるまで叩き込まれている保持と組み立てのメソッドを有したスカッド、前者の不足を同足ウイングの突破で補い後者は5レーン理論を駆使し叩き込んでいくしかない、しかしペップのような聡明な人間なら分かっているはずなのです。『ペップバルサを超えることは不可能である』ということを。ではペップのシティでの真の狙いとは何なのか、それはおそらくですが『究極のコアUTスカッド』なのではないかと思うのです。

 

 これはバイエルンでもシティでも変わらない彼の願望として抱いていると考えていて、バイエルンファン、シティファンは特に熱心な方からするとあまりペップが好きでない方も少なくないと思います。それは彼が明らかに自チームの勝利確率を向上させる一手を特にCLのアウェイ戦で打たないことが原因でしょう。ペップは勝つためのチームをこしらえること以上に別の目的があるのではないのかと思うのです。 バイエルンではバルサのポゼッション理論を5レーン理論としてハーフスペース攻防という表現で輸入することに熱心だったので勝利への拘りも強かったとは思いますが特にシティではそこへの拘りが薄れているのではないか、と思うのです。

 

 ではペップの真の狙いである『究極のコアUT集団』とは何なのか。UTとはユーティリティの略で文字通り複数のポジションをこなす人間の事を指す言葉です。コアというのは核になる選手の事を指し、プロ野球でも読売巨人軍の岡本選手は4番でありながら3塁、1塁、外野をハイレベルにこなしコアでありながらチームの起用の可能性を広げる選手でしょう。このことはサッカーにおいても当てはまるのではないかと、僕は考えています。

 

⑤サッカーにおけるコアUT

 

 サッカーとは11人対11人の対決ではありますが局所的なフェーズにおいてはGKを除く10人の位置ごとに相対する1人の相手と向き合い攻防を行うことが多いと思います。だからこそ、いかに誰を浮かせて数的優位を確保するか、そして誰をぶつけて質的優位を確保するか、という競技こそがサッカーの本質でしょう。

 

 そこでUTを多く抱えていれば故障者が出ても即時対応が可能で安定して成績を残せるので重宝されるのは理解できます。しかしペップはもう少し進んだ考えを持っています。ペップの言葉に『システムは電話番号である』という有名な言葉があります。これはサッカーとは野球のような競技とは異なり展開や守備のマークする選手の受け渡しなどで、いかようにもシステムと陣容は変更されるのでシステムは数字の羅列に過ぎない、という事でしょう。それは事実で、特にペップは右ウイングと左ウイングを時間帯ごとに入れ替えることで相対する敵サイドバックを混乱させたり、ビルドアップの際にもサリーダデバロンと言われる独特の配置入れ替えにより一時的な変更を与えています。

 

 しかしながら一時的だからこそ可能なのであって永続的な配置変換は不可能でしょう、なぜならUTでない選手ならば一時的な変更でないとかえって混乱してしまうでしょうし本来の能力が発揮されないことは明白だからです。例えばバイエルンだとビルドアップの段階でサイドバックのラームとアラバはボランチに移動、ボランチアロンソは3バック中央のCBに移動、CBはSBのように大きく横に広がります。アロンソはそのままCBでプレーするには守備力もありませんので組み立てが終了すると元に戻ります。実は、ここで組み立てが失敗すると一時的に3バックのCBとしての守備が求められるために危機を招きやすいのが難点ではあるのです。

 

 ペップの様々な戦術、戦略は実は一時的配置変換が基礎にあって偽SBもボランチ変換するサイドバック、偽9番もトップ下変換する9番ですしこのように一時的なUTを担わせるのがペップ戦術の肝と言えるかもしれません。配置変換した先でも本職の様に振舞えると変換による効果もより発揮されますし、何よりも守備のフェーズに切り替わった時にこそ効果を発揮すると思っています。本当の意味でのUTつまりは変換先でも本職のように振舞える選手のみでチームを構築することが出来ればペップの理想のチームが出来るのではないか、というよりもペップの狙いとは変換可能選手を数多く抱え、一般的なUTとは違いチームの核を担えるクラスの選手でありながらUTとして変換に耐えられる選手を集めたチームを望んでいるのではないか、というのが僕のバイエルン後期以降のペップの考え方への予想なのです。

 

 バイエルンではIH,SBに対応可能なラーム、アラバは代表的なコアUTでしょう。ペップのチーム以外でも9番が左右に流れたりしてMFもしくはウイングの侵入を促すケースがありますが、仮にウイングでも本職として振舞える9番ならばサイド突破にも対応しなければならないために相手DFは大いに手を焼くことが予想されますね、実はこのUT性を有していたのが獲得未遂に終わったアレクシス・サンチェスなのです。具体的に変換性を増やすペップの考え方とシティでの歩みについては次の記事で詳しく掘り下げ、CL優勝が何故離れていくのか、にも触れたいと思います。